禍の団の二天龍たち   作:大枝豆もやし

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前回は申し訳ございませんでした。修正したものを改めて投稿します。


第36話

「で、結局ここでやることになったんだよね」

 

 真夜中、三大勢力の会談が結局駒王学園で行われることになった。

 

「しかもわざわざ臨時休校にしやがって。本当に学校をなんだと思ってるの。ここはお前らの私有地じゃねえんだぞ。なにテメエらの都合で学校休学にしてんの」

「そ、そんな我儘いわないの。これは人間のためでもあるのよ。私たちが無駄な戦いをしないことで、人間が守られるのだから」

「我儘はテメエらの方じゃん。三大種族が勝手に殺し合いしてるのに、なんで人間がその被害被らなきゃいけないの?お前らの事情を人間に押し付けんな」

 

 本当にふざけてるとしか思えない。

 だって、例えるなら今まで勝手に他所様のお宅に上がり込んで喧嘩してた馬鹿共が、今度はよそ様の土地に上がり込んで勝手に話合ってるんだよ。しかもまた喧嘩してめちゃくちゃするリスクもあるのに。……どんだけ勝手なんだよ。

 

 けど、それも最後だ。今日は決して和平なんか結ばせない。なにせ今日はお前らが滅びの道を辿る最初の日なんだから。

 

「(頼りにしてますよ、最強の白龍皇さん)」

 

 扉を開けて中に入る。そこは新校舎の職員会議室ではなく、荘厳な造りの部屋に改装されていた。

 内装はここ本当に学校の会議室かと聞きたくなるほど豪華になっており、その全てが今回特別に用意されたものばかりだった。中央に丸いテーブルが置かれている。それもまた豪華な作りで、それを囲む形で三大種族の代表が座っていた。

 ……ちゃんと後で戻せよ。

 

「ま…まあまあ。後で片付けるんだからいいじゃない」

「ちゃんと今日中にしろよ」

 

 部屋の周囲をざっと見る。全て情報通りのメンツだった。

 

「コカビエル撃退に協力してくれた私の妹とその関係者だ」

「悪かったなうちのバカのせいで」

「前回のことについてお礼を申し上げます。本当にありがとうございました」

 

 上から順に、サーゼクス、アザゼル、ミカエルと発言する。

 ミカエルは天使のトップらしく礼儀があるが、アザゼルは不遜そのもの。とてもトップの態度ではない。

 リアス達は若干信じられないという態度をとるも、代表たちは特に何も反応はなかった。

 

「では座ってください」

 

 リアス達は指定された席に座った。

 リアスはサーゼクスの隣に、ソーナはセラフォールの隣に座り、それに続いて駒の順に眷属たちが座る。そして堕天使と天使の陣営を挟むかのようにイッセーが座った。

 

「全員が揃ったところで前提条件を一つ。ここにいる者達は、最重要禁則事項である神の不在を認知している」

 

 サーゼクスの言葉に、全員が無言で肯定する。

 

「…何も問題ないようだね。では始めようか」

 

 こうして、三大種族の会談が始まった。

 

 

 

「(……つまらん)」

 

 イッセーは寝ながら三大種族の話す内容を聞き流していた。話の内容はほっとんど彼に関係のないものばかり、というか無駄話ばかりだった。

 いい加減眠くなったので彼は居眠りする。

 

「ああもうやめだ。ぐだぐだ話すのは性に合わねえ…じゃあ、今回の目的、和平を結ぼうか」

 

 無駄話がある程度決まった後、アザゼルはそう切り出した。

 

「サーゼクスもミカエルも分かっているだろうが、俺たち三大種族は互いにその力を大きく落としている。このまま争い続ければ共倒れとなってしまうになっちまう。だから手を組む。種の存続のためさ。分かりやすいだろう?」

「「「…」」」

 

 そう言われて全員黙った。

 どの陣営も争いによって消耗しており、未だに回復の傾向が見られない。どの陣営も出生率が低いため復興を行うことが難しいのだ。この状況で小競り合いを続けていれば、どこの種族が勝利しても、長続きしないことは明白だ。

 

「たしかに我らが滅びれば、聖と魔の調律が完全に崩れて人類が滅んでしまう。だから長年の因縁を捨て、全員が手を取り合うべきなんです」

「…変わったなミカエル。お前は神を中心としてそれ以外は排除してたってのに。…いい時代になったもんだぜ」

「しかし良い変化だと私は思う。その言葉には同意できる。…その和平、結ぼうか」

 

 サーゼクスとミカエルはアザゼルの申し出た和平に賛同する。しかしイッセーはその様子を冷めた様子で見下していた。

 

「(今更和平…?そんなことを本気で出来ると思ってんの?)」

 

 今まで殺し合いをしていた隣人といきなり仲良しこよしに手を繋げられる者がいるであろうか。今まで武器を握り、敵を殺してきた手で、敵と握手出来るだろうが。

 三大種族はずっと昔から争っていた。戦友を目の前で無残に殺され、大事な者を奪われ、何度も苦汁を舐めさせられ、舐めさせてきた。今更すべて忘れて戦いをやめられるか。

 

 

 無駄だ。木場だって復讐のために暴走したではないか。

 

 

 人間だってそうだ。昔の戦争が原因で終戦して大分経った今でも、隣国と犬猿の仲であることなど珍しい話ではない。それほど根深いものなのだ。

 

 

「(だがどの陣営も消耗していることは事実。しかし車が急に止まれないように、憎しみの連鎖をいきなりなかったことには出来ない。だからここは徐々に、ゆっくりと小競り合いの規模を小さくさせる規制を作りつつ、意識改革を下の連中にすることを専念するべきだ。なのにいきなり仲良くしましょうねだって?……君たち本気で言ってんの?)」

 

 和平がそんな簡単に出来るなら、最初からこれほどこじれない。そんなことは子供でもわかるはずだ。

 よって、ここは何段落かステップを挟んで一つずつクリアするべきなのだ。アザゼルなどが聞けば『悠長なこと言うな』とかほざきそうだが、ならばこちらは『無茶苦茶言うな』と言い返してやる。

 

 下の事情も考えず、いきなり和平を結ぼうとすればトップ達に不満が募り、暴走する。そんなことは分かっているだろ。なのにコイツらはそれを理解していない。本当にコイツらはそれぞれの種族の代表なのか?

 

 結局、こいつらは下のことなど全く考えてないのだ。現場の意見など一切聞かず、一方的に方針を押し付ける。下の視界がこいつらにはないのだ。とても上に立つものではない。

 

「(というか、コイツら自体は敵対種族に恨みとかないの?)」

 

 敵対種族に恨みを抱いた経験があるならば、こんな安易なことをしないはずである。恨みを抱いたことのある者ならば、その気持ちを理解出来るからだ。しかしそれを理解できない限り、彼らはそういった恨みや怒りを抱いたことがないらしい。

 練度の高い戦士ならば感情と切り離して考えることが出来そうだが、このバカ共を見る限りそういったものはなさそうだ。

 

 

 要するに、この男たちは部下を大事に考えておらす、死んでも大して心が痛まないのだ。

 

 

 ある程度ならば上に立つ者に必要な冷酷さだが、それでも彼らのは行き過ぎだ。本当に欠片だけでも部下を思う気持ちがあるのならば、部下たちの怒りや恨みを理解できるはずなのだ。

 それが理解できないということは、まるで手下を道具のようにしか思っていない証拠だ。

 

「(こんな奴等がトップなら、何もかも破断するな)」

 

 イッセーはあくびして会談が終わるのを待った。


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