禍の団の二天龍たち   作:大枝豆もやし

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第38話

「魔王、お前は妹の活躍によってこの事件は収まったと言ったな。俺はそのことについて物申し上げたい」

「ど…どういうことだい?」

 

 苦笑いを浮かべながらサーゼクスは聞いた。

 僕は黙れとアイコンタクトを送るが、ヴァ―リは無視。さらに言いたい放題に言いやがった。

 

「そこの赤毛がやったことは格上相手に無策で特攻してボコられただけだ。報告によれば眷属も含めて暴走したと聞く。マイナスはいくらでも挙げることはできるが、活躍や功績など一つもない。これでよく妹の活躍とほざけたな」

「いや、それは…」

 

 妹を弁論しようとするも、ヴァーリは機関銃のように喋って割り込みを阻止した。

 ヴァーリの発言はまだ終わってない。反論を聞くのはその後だ。

 

「この女の何処が有能だ。むしろ俺にはただの無能以外にしか見えん。ライザー・フェニックスとのレーティング・ゲームでは格上であるライザー相手にも無策で突っ込んで苦汁をなめたにもかかわらず、なぜ今回も同じようなことを繰り返す?

 戦術や戦略なんて難しい話ではない。準備をするという発想など、遠足前の小学生でも出来る。それすら怠り、かといって上にも報告せず、何も行動しない。……俺はコイツ以上の無能を今まで見たことない」

 

 そう言った途端、アザゼルは腹を抱えて笑い、ミカエルは苦笑いを浮かべ、リアスは悔しそうに黙り、セラフォルーはサーゼクスを心配そうに何度も窺っていた。

 そして、主を公的な場でボロクソに侮辱されたことで、グレモリー眷属達は怒りを見せていた。しかし、それを無視してヴァーリは続けた。

 

「ソーナ・シトリーも魔王に報告が遅れた時点で同罪だがソイツはそれ以上だ。リアス・グレモリーは活躍するどころか、味方の足を引っ張っている。自分の眷属もロクに管理出来ない主なんて存在価値はない」

「ま…まあまあ。彼女も頑張ってるんだから。そんなに責めるなよ」

「…………頑張ってる……だと?」

 

 瞬間、俺はヴァーリに吹っ飛ばされた。

 一瞬の出来事だが理解した。あいつ、ほぼ反射レベルで魔力弾を打ち出しやがったんだ。

 会談の場でいきなり攻撃なんて仕掛けないと、だいぶ落ち着いている今なら衝動に任せて動かないと。要するに油断していた。

 

 けど僕の一番の失態はそうではない。彼の逆鱗にズガズガと触れてしまったことだ。

 

「イッセー!!?」

「黙れ無能。この程度でコイツが死ぬものか。……喚いてると殺すぞ」

「「「!!?」」」

 

 怒気を撒き散らしてリアス達を黙らせる。彼の強大な龍のオーラを含むその言葉は、一瞬で彼よりも弱い全ての化物たちを黙らせた。魔王たちを除いて、彼に逆らえる者は誰もいない。

 

「お前、この無能共が頑張ってると言ったな?ならばどこを頑張ったと言うんだ?

 頑張ったと言うなら具体的な根拠を言ってみろ。何を計画し、何を行い、何を実現したか。そうした過程をふまえて頑張ったと言えるのだ。口だけで頑張ったとほざくだけなら言葉を覚えたての赤ん坊にでも出来る」

 

 ……お前の言うことは正論だけども。それでもいっちゃいけないことってあると思うよ。

 第一、今ここでそれを言ってどうする? お前の気持ちは分かるけど、それ優先してしゃべっちゃ昔に逆戻りだよ。

 

「俺は口先だけの努力が何よりも嫌いだ。ただ怠けるだけならまだマシだ。怠けの報いだけで済むからな。だが、偽りの努力だけは絶対に許さん!!」

 

 …………そうだった、忘れてた。コイツ、義にかなり熱くなってから、こういった内容に対してかなり過激になっていた。

 

 これは僕の失態だ。何かルールを自分の中に創るということは、絶対に引けない一線があるというデメリットが存在する。当然僕にもある。そして、僕はその線の先に踏み入ってしまった。

 コイツが一番嫌がるとこを、逆鱗にわざわざ触れてしまったのだ。これは僕の罪だ。

 

「まだあるぞ。土地の支配者を名乗るならもっと早く把握しておけ。この男が入る前ははぐれ悪魔や堕天使が侵入し放題のザルではないか。

 しかも堕天使が侵入しているのに気づいたのに、何故球技大会なんて遊びに興じている。無能だけでなく怠け者でもあるようだな貴様は。有事の際に行動しない支配者とか居る意味あるのか?」

 

 出るわ出るわリアス・グレモリーに対する悪口。まるで濁流のような勢いで溢れそれらは確かな事実に基づいたものであるだけに一切の反論を許さない。

 うん、僕はこの女の下僕でも彼氏でも友達でもないからいいんだ。けどここは会談の場。いくら本当のことでも相手のメンツを潰すのはよくないよ。話がややこしくなる。

 

「コカビエルの件で明らかになったが、リアス・グレモリーの領地管理の不届きはひどすぎる。領地内に侵入したはぐれ悪魔への対応があまりにも遅すぎる。報告では太公アガレスからの指令を受けてから動き出したとあったではないか。遠く離れた本国にいるやつのほうが事態を把握するのが早いというのはおかしくないか? アガレスからの指令を受けてから動くのなら、わざわざ土地の管理者を置く意味もない。アガレスが私兵を派遣すればいい。いちいちトロいんだよ。マジでもっと早く行動しろ。自分たちで集めた情報を上に送って判断を仰ぐくらいのことはしろ。上に頼り切りか?そのくせにプライド優先で報告はしないのか? 本当によくできた管理者サマだな」

 

 ……言ってる意味は分かるよ。

 土地の管理者は愚鈍で鈍間な無能。普段でもロクにはぐれの対策も出来ないのに、有事でちゃんとした対策など取れるはずもない。

 堕天使側からはあいつが派遣されていたけど、当時のリアスたちが知るはずがないし、仮想敵である堕天使を当てにしていいわけがない。

 自分たちに対応できる範囲を超えた事態が目の前にあるのなら、上の者に判断を仰ぐか援軍を要請すればいい。しかしそれも下らない意地で拒んだ。普段の管理も出来ない癖に。

 故にあいつは言う。リアス・グレモリーは無能なのだと。

 

「有事には一切動けず、普段の管理も杜撰なノロマ。そして格上相手にいつも無策で突っ込む愚鈍。更に下僕の管理もロクに出来てない。そこの……お花畑っぽいのがいなければ絶対に暴走していたぞ」

「…すまない。リアスが活躍したことにしなければグレモリー家の評判が落ちてしまい、下手をすれば貴族間のパワーバランスの崩壊にも繋がりかねないんだ」

「だからこの無能を担ぐと。愚鈍で鈍間な偶像をかつぐため、それに価値があると嘘をつくために手柄を下や他所から取ると。……逆の立場で同じことを言われて納得できるのかお前らは」

 

 その内容は理解できるし、賛同する者も多いだろう。衰退している悪魔の現状から見て争いを避ける。それは間違っていない。

 

 しかし、それは上にいる者の理屈だ。そのために潰される下の者たちの気持ちなど全く考慮されていない。

 弱者は利用してポイ。捨てられた側がそれで納得できるはずがない。

 

「そんなにグレモリー家を活躍させたければ養子を迎え居れたらいい。少なくともそこの無能よりはいい働きをするだろう。パワーバランスを保つことが目的なら、邪魔者を消せばいい。衰退している現状を見るとキツイが、パワーバランスが崩れた程度で敵対するならいつかは敵になる。それが早いか遅いかの違いだ」

「……」

「言いたいことはそれだけか。…あっけない。はぐれ退治の手柄をアガレス大公から、そしてそこのお花畑から横取りする。そんな組織に誰が忠誠を尽くそうと思う?」

 

 ……おいコラ。いつの間にか僕のことお花畑って断言してるぞ。どういうことだ?

 

 

「故に俺は嘘と汚職に塗れたお前たちを否定する。これはその一歩だ」

 

 ヴァーリがそう言って指を鳴らす。瞬間、時間が停まった。

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