禍の団の二天龍たち   作:大枝豆もやし

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第40話

「……どうやらデマだったようですね」

 

 急いで天界の首都に向かったミカエルはため息をついた。

 どうやらニセの情報を掴まされたらしい。折角転移して向かったのだが、無駄足に終わってしまった。

 

「ミカエル様、どうやら襲撃者は一度現れて何か仕掛けをしましたが、それだけして去って行きました。おそらく幻術で襲撃を見せかける類かと」

「……なるほど」

 

 天使の報告を聞いてミカエルは納得する。この天使はミカエルをここまで転送するための術式を用意してくれた優秀な部下であり、どうやらトップがいない間に襲撃することを予想し、こうして準備をしていたらしい。

 しかし、今回はマンマと乗せられてしまった。たしかに街が無事なことにこしたことはないが、この偽情報に乗ってしまったせいで見す見す将来大きくなる敵を見逃してしまった。これは後で大きな被害となるであろう。

 

「そうか。しかし君は優秀だな。こうなることを予期して準備していたとは。何か褒美を与えよう」

「そうですか。では……」

 

 

 

「お命戴きます」

『Transfer!』

 ズドンと、天使はミカエルの胸を貫いた。

 

 

 

「ガハッ!!」

 

 ミカエルは驚きながらも、咄嗟に行動する。目の前の天使を蹴り飛ばし、心臓から腕を引き抜いた。

 

「……バカだなぁ。同じ手に二度も引っかかるとか」

「ま…まさか……」

 

 ミカエルは刺された箇所を抑えながら下がる。幸いにも貫かれた箇所はそれほど深くない。おそらく咄嗟に力を解放したおかげだろう。

 だから今は目の前の裏切り者をどうするか。それだけを考えていた。

 

「貴様…赤龍帝軍団か!!?」

「そう。私は貴方達の天敵、赤龍帝軍団の一人です」

 

 天使が着ているジャンバーのチャックを下ろす。服の下、腹の部分に別空間に繋がるワームホールがあり、その中から赤龍帝の物らしき左腕が突き出ていた。

 おそらくあの腕がミカエルを貫いたのだ。天使を差し向けて油断した瞬間、別次元から攻撃。そして見事奇襲を成功させた。

 無論、通常ならワームーホールが出た時点で気づくだろう。しかし目の前の天使の着ているジャンパーには魔術を隠匿する機能がある。そのおかげでミカエルに気づかれることなく、攻撃に成功したのだ。

 

「何故だ!?何故君は赤龍帝に味方する!?その男は我ら天使の敵だ!!」

「決まっています。我ら天使族の未来のためです」

「……は?」

 

 ミカエルは天使の反逆に激昂して怒鳴るも、返ってきた返事によって一瞬だけ激情が消沈した。

 何を言っているんだこの天使は。天使の長である熾天使に反逆し、三大種族を敵視する赤龍帝に味方することが天使の未来のため?……一体何を訳の分からないことを言っている。

 

「聖書の神は滅んだ。それを隠すため、そしてシステムに不具合が出ないように貴方は働いてきた。……そのために多大な犠牲を出して」

「……そうだ。しかしそれは必要なこと。だから……」

「ならそれを犠牲者の前で言えるのか!!?」

 

 今度は天使が激昂して怒鳴った。

 

「お前の杜撰な管理の結果、行き過ぎた隠蔽の結果!!どれだけの不幸や悲劇が起きたと思っている!!? 全てはお前のせいだ!! お前が主の跡を継ぐという身の丈に合わない事をするからだ!!」

「もう一度聞くぞ! 必要な事だったからと犠牲になった者の前で言えるのか!? 神の不在を隠すために最愛の人を殺された者の前で。異教徒狩りで死んだ者たちの前で『あの犠牲は仕方ないことだから私は悪くない』と言えるのか!!?」

「……しかし、それしか方法が………」

「それをなんとかするのがお前らの仕事だろうが!!」

「……」

 

 沈黙。天使の言葉に反論できず、ミカエルはただ黙ることしか出来なかった。

 

 原作ではアーシアは簡単に許したが、それはイッセーというご都合があったから、アーシアにも非があるから、そしてディオドラという黒幕がいたからアレだが、実際に考えてみたら普通は許せない。

 ゼノヴィアとイリナの件を考えてみよう。彼女は神の不在を知ったから断罪されたのだが、普通ならばこれを許せるだろうか。

 今まで神に妄信的に仕えてきたというのに、少し都合が悪くなればポイ。……私が同じ立場ならば悪魔に魂を売ってでも復讐する。

 

 考えられないことだ。彼女たちならばバラさないという確証があるし、万が一心配なら監視などをつければいい。何故そんなことも思いつかないのか。少し考えたらわかるはずだ。

 しかも一旦切り捨てておきながら、すぐにまたイリナ呼び出す始末。一度切っておいて、どの面下げてまた勧誘するのか。

 

 あまりにも簡単に人を切りすぎている。というか軽く扱いすぎている。

 違うというのならば是非教えていただきたい。こんな簡単な対策が思いつくのに、何故そうしないのか。

 

「しかしあの方は違う!粛清などしなくても、様々な方法で神の不在を隠す手段を考えついた!聖女アーシアの件は『敵である悪魔さえ治療する神の慈悲』と偽ればいいと、異教徒狩りも『神の慈悲はたとえ主義主張がなくても届く。むしろ違う思想を持つ者の教えを学ぶことも神のご意思だ』と言えばいいと!他にも様々な方法でシステムの管理や信仰集めと維持についての知恵を出してくれた!」

 

「そしてこうも仰った!『本当に信徒を、人を思うのならこの程度簡単に思いつく。それが出来ないということは、その程度にしか人を思ってない。切り捨てる前提なんだ』と!

 ミカエル!そして熾天使共!お前たちは人間も教徒も愛してない!信仰生産装置としか人間を見てないのだ!だからこんな簡単に人間を切り捨て!あの方のような発想も出来ないんだ!!」

 

「そして今度はあっさり和平協定だと?今までのことを水に流して手に取るだと……ふざけるな!!悪魔や堕天使に大切な人を奪われた祓魔師はどうなる!?天使だって同様だ!! 過去の遺恨を償わせることなく、全てなかったことにするなど出来るか!!」

 

「結局お前は私たち下の者をこれっぽっちも考えてない! すぐさまなんでもかんでも粛清し、簡単に切り捨てる!! 無能なお前に上に立つ資格などない!!」

 だがあの方ならばお前らなかよりもよほどシステムを動かせる!だから無能なお前らは、神の名を騙って動いてきたお前は裁きを受けろ!!」

 

 天使が怒鳴りながら剣を掲げる。それを見てミカエルが動こうとしたのだが・・・

 

『そこまでだ。作戦は成功だレオナーロ。君のおかげで毒を盛ることに成功した。……あとは僕に任せろ』

 

 突如天使がミカエルの前から後方100mに瞬間移動した。

 これは赤龍帝の魔法だ。魔法を使う瞬間はある程度魔力を感知出来るおかげで対処出来るのだが、逆を言うとそれ以外では対処が難しい術。このようにいきなり発動すると、ミカエルでも対処は難しい。

 

「せ、赤龍帝様……」

『お前はよくやった。この術式を維持するためお前は体力を消耗している。それに戦闘は君の得意分野ではないはずだ。……あとは僕に任せろ』

「あ……ありがとうございます……」

 

 天使は感慨深く涙を流しながら、命令通り去った。

 

『さて、話を戻そうかミカエル。先ほどの攻撃で毒を盛った。話し込んでくれたおかげで毒の効果がより強まったよ』

「毒!?」

 

 毒という単語に反応すると同時に、ミカエルの体に突如倦怠感が襲ってきた。

 

『無駄だ。さっきの刺突で毒を盛った。今の君はマトモに戦えない』

 

 赤龍帝がワームホールから出てきながら、冷たい声で言う。

 

「だれか!だれかいないのか!?」

 

 大声で部下を呼ぶ。ここは天使の本拠地、味方がたくさんいるのだ。自分の力では無理でも、上級天使たちが合流すればやれる。そんな希望を抱いていた。……しかし、その希望も簡単に否定される。

 

『もしかしてここが天界だと思った?……残念』

 

 パチンと、指を鳴らす。瞬間、町の中から悪魔、堕天使、妖怪、ドラゴン…。あらゆる化物達が姿を現した。

 

「……な!!?」

『ここは天界に見せかけて作ったニセの町だ。光栄に思ってよミカエル君。わざわざ君一人を倒すためにここまで大きな仕掛けを用意したんだから』

 

 

 

 

 

 

『さあ、お前たちの大好きな試練だ。ブーステッド・ギア・ギフトで強化された毒に侵された身体で、どこまで僕たちと戦える?』

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