禍の団の二天龍たち   作:大枝豆もやし

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第41話

「作戦は成功だな」

「ああ。今まで潜伏してきた甲斐があった」

 

 熾天使との戦闘を終えたイッセー、魔王との戦闘を終えたヴァーリは本拠地に戻り、その情報交換をし合っていた。

 

「魔王と熾天使それぞれ一人を無力化及び捕獲。これで俺たちの夢も現実味を帯びるようになった」

「そうだな。長かった…。本当に長かった」

「……ああ」

 

 イッセーとヴァーリは感慨深いよう雰囲気で物語る。

 ここまでの道のりは本当に長かった。物資も人員も何もなかった二人がここに到達するまでの道は本当に険しく、そして厳しいものだった。

 しかしやっと達成した。あと少し、あと少しの一歩でこの計画は現実のものと化す。その一歩のために……

 

「じゃ、君たちを使わせてもらうか」

「「……」」

 

 哀れな生贄にイッセーは目を向けた。

 生贄の名前はミカエル。彼の力は封じられており、今では下級天使の力すら出せない状態であった。

 

「……君たちの目的は何だ?」

「そんなのどうでもいいでしょ。君は今から死ぬんだ」

「俺達は優位になったからといって説明するほど親切じゃない。そういうのはフラグになるしな」

 

 二人はそう言ってミカエルの足元に描かれた魔法陣に手を付ける。その時、イッセーの指に嵌められた指輪を見て、ミカエルは驚愕した。

 

「そ…それはソロモンの指輪!!?何故君が持っている!!?」

「骨董品屋で買った。動物の声が聞こえるって言われて興味を持ってね」

 

 ミカエルの重々しい質問とは対照的に軽い返答。

 

「お前本当にバカだな。動物の声聞くためにあの有名なソロモンの指輪を買った挙句、それで聞こえないから魔神召喚してその声聞こうとしたとか。……本物のバカだ」

「うるさいよ。そういう情報いらないから」

 

 笑うヴァーリを軽く睨み、彼は準備を再開した。

 

「……君は…自分が何をしてるか分かってるのか?」

「うん?」

「君はリアス君を裏切っている。信頼している人がいるのに、君は自分の正体を隠してその信頼を裏切っているんだ。彼女が君のことをしったら……」

 

 ミカエルは言葉を続けることができなかった。

 

「……お前が言えることか? 今まで散々信徒や同胞を裏切ってきたお前が」

 

 何故なら、イッセーに殴り飛ばされたからだ。

 彼はミカエルの胸倉を掴み、鋭く荒々しい視線を向ける。

 

「自分のこと棚に上げて偉そうに説法しやがって。今まで散々信徒を裏切った癖に、逆の立場になれば責めるのか?」

「し…仕方なかったんだ……」

「そうか。お前が信徒や人間を騙し、使い捨てにして、踏みにじることも仕方ないことなんだな?なら僕たちが反撃するのも仕方ないことだよね?」

「し…しかし!!中には何もしてない者たちも、健全な者もいるんだ!!それを君たちは巻き込んだ!!」

「だから耐えろと?こっちの被害は考慮せず、僕たちは虐げられる立場でずっといろと?

 ……ふざけるな。それはそっちの事情だろ。いもするかわからない善人を盾にして僕たちを虐げているだけではないか」

「その結果無関係な者を巻き込んでもいいというのか!!?」

「話をすり替えるな!!こっちの事情は無視か!!?」

 

 イッセーはミカエルに頭突きを食らわせた。

 低級天使以下の力に弱まった彼の耐久力ではイッセーの石頭に耐えられなかった。彼の頭は何度もぶち当たり、ミカエルの歯と顎を砕く。

 

「それで今度は自分たちはそうするしかなかった。悪いことしたのはごく一部だから他は関係ない。だから暴力行為はやめてくれと……それは卑劣な論点のすり替えだ。

 たとえそうであろうと僕たちが虐げられる現状には変わりないし、お前たちのやってきたことが免除されることもない。第一、その一部を巻き込んだ理由を作ったのもお前らではないか」

 

「一方的に悪と決めつけている? 話し合おうとせずにすぐに暴力に訴える?憎しみや怒りに飲まれて暴走している?………お前たちにそれを言う権利があるのか!!?

 こうなったのはお前たちが原因だ! お前たちがこちらの事情を考えなかったからこうするしかなかったんだ! お前たちがその憎しみや怒りの原因だろうが!!!

 自分たちのやってきたことを棚上げにして、関係ない者たちを盾にして、まったく関係も根拠もない自分たちの善性を持ち出しやがって!!!お前たちはそうやっていつも論点を!話をすり替える!!! 愚劣なんだよ!!!」

 

 イッセーは頭突きを繰り返しながらさらにヒートアップする。

 

「ざけんな!僕たちは君たちの奴隷じゃない!だというのに僕たちが奴隷であることを前提に、自分の事情を全部押し付けて、通らなかったら暴力を振るうくせに、僕たちが少し反抗したら被害者面しやがって!!」

 

「それで自分たちも守る気すらないきれいごとを垂れ流す!! まんま自分たちに返ってくるというのに自覚すらなく、さも自分たちが正義のフリをする!!

 自分はよくて他人はダメだとでも言いたいのか!!? ふざけるな!!!」

 

「それで僕たちが反論したらヒステリックに喚いて話を聞かず、悪者に仕立て上げて攻撃して、自分たちのしたことをなかったことにする!! お前たちはそうやって自分たちに都合の悪い事や犯してきた罪を有耶無耶にして隠している!!!」

 

「その上そんな暴挙に出てる分際ですべて解決したような素振りをして、正義は勝ったみたいな雰囲気出す!! これでどこが解決した!!?お前たちのどこに正義がある!!?ただ暴力で弱者の意見を踏みにじり、なかったことにしているだけではないか!!!」

 

「僕たちをテロリストだとか野蛮だとか呼んでるが、お前たちが一番の蛮族だ!!ブーメラン発言ばっかで、都合悪くなったら論点をすり替え、暴力で相手を踏みつぶし、悪いことは蓋してなかったことにする!!! これ以上の愚者を僕は知らないよ!!!!」

 

 感情論を吐露し続けながら頭突きをする。

 ある程度頭突きをし終えたイッセーは冷静さを少しだけ取り戻し、冷たい声で言った。

 

「お前らがこちらのことを考えず、一方的に事情を押し付けてきたんだ。だから僕もお前らのことなんて一切考えず、僕たちの事情を押し付ける。……まさか自分たちは良くて他はダメとか言わねえよな?」

「……」

 

 ミカエルは答えなかった。いや、答えることが出来なかった。

 歯を折られ、鼻の骨も折れたせいでしゃべれない。鼻血のせいで呼吸がうまく出来ないで、イッセーの言葉に耳を貸す余裕がなかった。

 

 何も答えないミカエルに更に腹を立てる。今度は拳を振り下ろそうとするも、ヴァーリがそれを止めた。

 

「やめろイッセー。感情のままにコイツを殴りたいのはお前だけじゃない。なのにお前だけ感情のまま行動すれば示しがつかんぞ」

「…………チッ!」

 

 イッセーはミカエルを無造作に放りだした。

 

「本当に君たち三大種族はブーメランを投げるのがうまい。論点のすり替えと棚上げ、あと臭い物の蓋をするのもね。君たちほどの名手を僕は知らないよ」




ふと思ったのだが、このイッセーが言ってることが全部原作イッセーのブーメランになってる気がする。……気のせいかな?

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