「熾天使の長ミカエルと四大魔王の一角サーゼクス・ルシファーが行方不明。現在捜索中だが手がかりはなく、中には逃げたのではないかという声も上がっているという。
堕天使陣営も白龍皇が脱退後、グリゴリの幹部数名が行方不明。白龍皇による襲撃を受けているとみて現在捜査中…か。離反したと素直に書けばいいものを」
イングランドのとある住居。ヴァーリは新聞を読みながら朝食をとっていた。
メニューはサンドイッチとサラダ、そしてコーヒー。すべてヴァーリの手作りだ。
対面に座るイッセーは用意された朝食を食べながら返事を返す
「けれどこれで三大勢力のトップは共に評判ガタ落ち。後は引き込んだ権力者にこの混乱に乗じて主導権を握らせる。そのあと彼らに政治を変えてもらえば戦争を避けることが出来る」
「……それがうまくいくと本気で思ってるのか?」
いつものごとく主張の違いで対立しそうになるが、今は仕事の話をしている。
この二人、プライベートではアレだが、場を弁えるほどの分別や冷静さはあるのだ。
「そういえば貴族の中でも有力な大王はどうした?襲撃しないのか?」
「とっくにしてるよ。現在のバアル家の支配者はとっくに捕えてバアル召喚の生贄にした。今のあいつは僕の味方。スパイみたいなもんさ」
「…………恐ろしい男だ」
貴族に手が届くようになって一番排除しようとした貴族。それは大王ことゼクラムだ。
魔王の母方の実家であり、大王派という派閥のトップである彼の発言権は、飾りとなり果てた魔王の権力を超えている。彼を手中にしたらほぼ貴族を抑えたといってもいいぐらいの権力者だ。
これで魔王よりも政治に優れ、業務を忠実に熟し、民を想ってくれるならばありがたい。しかし彼も貴族と同様に、いやその中でも特に性質の悪い貴族だ。
中でも有名なものは悪魔の駒について。彼と傘下の貴族たちは悪魔の駒を悪用することでレーティングゲームの上位者となり、様々な悪事を働いた。
そのうえ、悪魔の駒の秘密を知ったクレーリア・ベリアルを殺害した。貴重な純血悪魔を私利私欲のために殺害してしまったのだ。原作では発覚した後、有耶無耶になってしまったが、普通なら重い刑が下されてもいいはずだ。
いつまで初代悪魔だの血統だの考える気なのだろうか。それならクローンでも作っていろ。
「彼を殺さずこちら側に引き入れた今、貴族派を支配することが出来る。ただ、やり方を変えた大王から離反したり、隠れて悪事を働く貴族はごまんといる。それに僕たちの敵は貴族派だけでなく旧魔王派もいる。……本当に、悪魔の問題は多すぎる」
「………頭が痛いな」
ゼクラムは既にいない。今動いてるのはゼクラムの体を乗っ取った別世界のバアルだ。
伝承通り、偉大な王である彼は見事貴族を支配している。しかし所詮は欲望におぼれた悪魔。理性のストッパーが外れたケダモノを管理するのは不可能に近い。
好き勝手出来ないことに不満を覚えた者たちのいくらかは離反。大王派の中でも愚かにも暴走する貴族はいくらでもいる。王を抑えてもこのゲームは終わらないのだ。
「これはもう戦争なんてものじゃない、駆除だ。僕は一匹残らず悪徳貴族共を駆逐してやる」
「それは俺も同感だ。すべてがクロにならない限り、俺たちのオセロは終わらない」
二人は改めて決意を宣言する。全ては邪魔な三大勢力を駆逐し、新たなものへと作り変えるため。そのためには邪魔なものは対処する。
ただ、その方向が若干違う。その違いからいつも仲違いすることになるのだが、この場だけは一致したことでそうはならずに済んだ。
「それで、次世代魔王派の方はどう?」
「おかげさまで大人気だ。今では門を叩くものが殺到して受付や人事が倒れそうだ」
「……道理で最近仕事が多いようだよ」
イッセーは少し嫌そうに言うも、おかげさまで夢が近づいたのだあまり文句は言えない。
ルシファーの血族であり白龍皇ヴァーリの宣戦布告。次世代魔王に寝返った三大勢力の重鎮たち。そしてトップの失踪。宣伝としてはこれ以上ない効果を発揮してくれた。
「そうか、ならば今度は……」
この二人、目的や主張が食い違わない間だけは、限定的に仲がいいのだ。
思ったんだけど、あれだけ純血や貴族が大事なら貴族のクローン作ればいいと思う。
クローンは寿命が短いですが、転生なんてとんでも技術を開発するのだからならなんとかなりそうですし、元から寿命がない悪魔なら長生きしそう。というか悪魔なんて面白生き物にクローンの常識が通じるのか?
あとSEEDのコーディネーターみたいに遺伝子弄れば、元の悪魔より強くてより能力が強化された悪魔を作るのも可能だと思う。
なんか被人道的とか言われそうだけど、奴隷生産装置を作る悪魔どもには言われたくない。
……いや、さすがに転生悪魔制度の必要性を崩すのは考えすぎかな?