禍の団の二天龍たち   作:大枝豆もやし

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冥界合宿のヘルキャット
第44話


「実家に帰る?」

 

 いつも通り植物の世話をしていると、そんなことをいきなり言い出した。

 

「ええそうよ。だから貴方を招待したいのだけれど……」

「やだ。植物たちの世話を誰がすると思ってるの」

「知らないわよ!ここの植物は貴方が勝手に持ち出したものじゃない! そのうえ勝手にリフォームまでして!ここを自分の土地かなんかだと思ってるの!?」

 

 いいジャン別に。だってここ、あまりにも暗くて不健康な空間だったんだもん。だからこうして木の暖かみのある空間にリフォームしたんだ。

 穏やかな日の光に清浄な空気。あんなじめじめした空間よりも断然マシだと僕は思う。

 

「そうですね。この空間はとても落ち着きます」

「ええ。なんか浄化されそうですわ……」

「ふ…二人とも!?なんか浄化されて天に召されそうになってるわよ!?それ以前に悪魔が浄化されるってどういうことよ!?」

 

 いいことだ。劣等種族を卒業して真っ当な悪魔になるんだ。そしてさっさとこんな泥舟政府から降りるんだ。

 

「それで、なんで実家に帰るの?もしかして今まで犯してきた失態に遂に家が切れた?」

「なんで私が失態を犯した前提なのよ!!?」

 

 いやいや、今までのこと振り返ってみなよ。失態と無能の積み重ねじゃないか。

 

「うるさいよ。実家で一から学んで出直せこの無能姫。折角僕が色々と……」

「あ…貴方ね!あのいい加減な報告書出したの!!」

「報告書……? ああ、あの嘆願書ね。そうだよ、僕が君の私生活を観察してありのままを書いた。それが何か?」

 

 実権を得た僕は早速家にリアスの態度についてのレポートを提出した。

 これはマウント行為をして僕の方が優れていることをアピールするためでもあるが、一番の目的はリアスの無能さを周囲に正しく認識してもらうためだ。

 

 今まで彼女はまるで何かに守られているかのように、まるで世界が修正をかけるかのように無能さを隠されてきた。

 しかしここはご都合満載な世界ではないのだ。死ぬときは死ぬ現実の世界。だからこれを機に彼女には自分を改めてもらう必要がある。

 

「部長、僕もあれは仕方ないと思います」

「ええ。今まで何もしなかった私たちも同罪ですが、所長が正しいわ」

「一緒に頑張りましょう部長」

 

 ほら、眷属たちも僕の意見に賛成してくれている。この場は完全に僕の支配下だ。

 

「そんな……。ここには私の味方はいないのね…」

 

 残念ながら当然のことだ、無能姫。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ねえイッセー、なんで私たちは平民と同じ手順で冥界に行ってるのかしら?」

「僕が駅を解体しておいたからだよ。あと列車は冥界の鉄道会社に売って金にしたよ」

「そういうのを聞いてるんじゃないわよ!!」

 

 リアスは公共の場である列車の中で突如吠えた。

 まったく行儀悪いな。ここはグリーン車だぞ。

 

「なに怒ってるの?あんなのなくても正式ルートで冥界に行けるじゃん。てかあんなのに金の無駄だ」

「そういう問題じゃないわよ! 私は貴族なの!だからなめられないように……いた!?」

 

 僕はこの馬鹿の頭を小突いた。

 

「ふざけんな。そのつまらない見栄のために人間の土地を勝手に侵すな。どうしてもあの土地を使いたかったら買い取れ」

「そ…それは……ごめんなさい」

 

 何か言いたそうにしていたが睨んで黙らせる。

 二三か月ほどの付き合いだがこいつは単純なのである程度分かってきた。

 

「お前は人間の町を借りているという自覚がない。お前の権限はあくまで三大勢力に関してであり、町をいじったり人間をどうかする権利は本来ないんだ。お前のしてることは権利の乱用であり逸脱行為だ。普通なら権限はく奪ものだぞ」

「け、けど今までそんなことなかったわよ……」

「それはお前の上司が無能なだけだ。僕なら迷わずその上司ごと君をクビにする」

「………」

 

 本当に悪魔共は馬鹿ばかりだ。権利の乱用や逸脱はあたりまえ、それを咎めるという概念すら消え去っている。

 本当によく今までこんな劣等種族が生き残ってこれたな。

 

「不要な見栄なんていらないよ。人間の世界では暗殺とかを避けるためにやってるけど大丈夫だ。僕がなにがなんでも守って見せる」

「………え?」

 

 折角手に入れた駒だ。有効に使って見せる。彼女も人間を見下している節があるが、それでも他の貴族よりもマシだ。

 人間が死んでも知らん顔しているし、人間の存在を抹消するなんて冷酷な対応をするが、進んで人を殺さないだけまだ貴族共よりもマシだと思う。

 

 

 

 僕が思うに、彼女はただ頭が足りない幼稚な痴女というだけで、別に悪人ではないと思う。

 

 

 

 彼女は想像力が全くない上、傲慢すぎるのだ。もし少しでも想像力があるなら犠牲者の立場に立って物事を考えられるし、ライザーやコカピーの時だってもう少し計画を立てることが出来たはず。はぐれ対策だってもっと考えることが出来たはずだ。

 しかしそういったことが出来ない。頭が足りないから。そして頭が足りないことを認められない。プライドが高すぎるから。だから反省することなく同じ手段で痛い目を見る。

 

 彼女は本来上に立つべき悪魔ではないのだ。頭が足りないのに地位やら家柄のせいで根拠のないプライドがマイナスに働いている。

 だから責任は彼女をちゃんと導けなかった親や周囲の大人、そして監視体制を整えなかった悪魔社会に問題がある。だから彼女一人に責任を押し付けるのは酷であり間違っていると僕は思う。

 ほら、身分や肩書が不釣り合いに高すぎる人が小物に見えるって誰か言ってたじゃん。誰かは知らないけど。

 

「(ま、おかけで大分信頼値を稼ぐことが出来たなけど……)」

 

 しかしだからこそ利用しやすい。この馬鹿を使って僕は更なるステージに向かう。

 信頼を得て領地の実質的な管理を任された。眷属たちの悩み相談を通じて信頼だけでなく、別の繋がりも獲得出来た。結果、今では王であるリアスよりも信用されている。

 ならば次はその外を目指すのは当然の流れではないか。

 

「順調だ」

 

 そう、僕は目標に前進いている。こいつを使ってあの邪魔なサーゼクスを弱体化させれば、すべては完成する。

 

「(最後まで利用させてもらうよ、リアスちゃん)」

 

 

 そう、全ては僕の計画通り。このまま順調にいけば、僕はキズモノの成果ではなくちゃんとしたものを手に入れる事が出来るようになる。

 

『(そうやって油断するといつもみたいに足元掬われるぞ。学ばないどうこうはお前も人のこと言えないではないか)』

「(うるさい!少なくともこの馬鹿よりはマシだ!!)」

 

 大丈夫だ。今度は絶対に失敗しない。だから不安になっちゃダメだ僕!!

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