第54話
「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」
イングランドのとある山小屋。その中から盛大な悲鳴が大音量で鳴り響いた。
一体何があったというのか。
この小屋はアーシアたち非戦闘員の寮のようなものである。よって時折それを狙って侵入する悪魔などがやってくる時があるようだが……
「イダダダダダ!!痛いですアーシアさん!」
「当然です痛いようにしてるんですから!」
「ぎゃあああああ!!!」
……どうやら返り討ちになっているらしい。
貴族らしき悪魔にチョークスリーパーを食らわせるアーシア。悪魔の少年は苦しそうにしているが、同時にどこか恍惚とした様子だった。
「なんでいつもストーカーするんですか? やめってって言ってるのに分からないんですか? その頭には肉団子でも詰まってるんですか?」
「そ、そそそ! そんなこと言うなんて! ひどいじゃないか!
でも気持ち良い!愛する女の抱擁はどんな形でも嬉しい!」
「うふふ~。気持ち悪いです~」
ミシミシと嫌な音を立てるも、アーシアは無視して技を強くした。
「……またやってるの?」
アーシアの部屋に入って呆れるイッセー。
本来ならば勝手に入るのは失礼だが、ノックしても返事をしなかったのでそこはアーシアの落ち度である。
……まあ、本人は返事なんて出来る状況ではないのだが。
「あ、イッセーさんおはようございます」
「うんおはよう。貴族悪魔の坊ちゃんに関節技を笑顔でかけるアーシアさんおはよう」
笑顔で挨拶をするも、手は一切緩めないアーシアさん。むしろ笑顔と今やってることのギャップがありすぎて逆に怖い。
「今日は患者の事と今後の研究についての相談があるんだけどいいかな?」
「ちょっと待ってくださいね~。このボンボンがもう来れないように足折っておきますから」
「(……それちょっとで済まされることなのかな?)」
足に関節技をかけるアーシア。その痛みのあまり貴族のボンボンは気絶してしまった。
なんということだろうか、あの虫すら殺せないアーシアが笑顔で骨を折ろうとするとは。
もし彼女の過去を知っている者が、原作の彼女を知る者が見ればどう思うであろうか。
「ペッ」
「(……唾吐いた。貴族相手に唾吐きやがったこの聖女)」
気絶した貴族悪魔のボンボンに酷い仕打ちをするアーシア。それを見て若干イッセーは引いた。
‥…本当に、逞しくなったね彼女。
「じゃ、お話聞かてください」
「…‥あ、う‥…うん」
逞しくなったアーシアの成長を喜べばいいのか、それとも乱暴になってしまったアーシアの成長を嘆いたらいいのか。イッセーは反応に困りながらも相談を続けた。
「全く、なんでまた来るのかな‥…」
夏休みが終わり、新学期を迎えたイッセー。
リアス達が冥界から帰ってきた日から、アーシア宛てのプレゼントが多くなった。
そのプレゼントの送り主はアーシアに求婚した悪魔であり、リアスと同じように現魔王の兄を持つディオドラ・アスタロトと言う少年であった。
しかし彼はフラれてしまった。
だが彼は諦めずに高級ブランドの商品券、映画のチケット、高級料理店の招待状等等。その上こうして直接出向き、ストーカーまでするのだからタチが悪い。
アーシアは勿論、寮の皆は困っているのであった。
しかもこの男、妖精派のスポンサーの一人なのである。
ディオドラは魔弾の技術を学び、それを量産することで悪魔専用の銃会社を立ち上げた。
もちろんただの銃ではない。属性付与された銃弾や魔剣にも匹敵する強度、実弾と魔力弾の切り替えなど。様々な機能と多様性のある魔銃を開発し、悪魔堕天使問わず冥界中に提供した。
銃だけではない。堕天使や天使の聖なる力に抵抗力のある盾やコートなど、防御面でも悪魔陣営を支えてきた。
そうやって貯まった金を妖精派に提供しているのだ。書類を少しちょろまかして。
「まだです……僕は決して諦めません!」
……こんなんでも彼はすごい悪魔なのだ。たぶん。
「諦めませんよ!僕は決して諦めませんよアーシアさん!
僕は今まであらゆるものを手に入れた! けどその中で価値あるものなど一つもない、貴女と比べたら全てがガラクタに成り下がる!
ならば全てを犠牲にしても手に入れて……」
「落ち着け」
「はぐッ!?」
暴走するディオドラに首トンして黙らせた。
「………ゲッ!イッセー!?」
「何お化けを見たような目をしてるんだよ」
イッセーを見た瞬間、ディオドラは怯えた様子で数歩ほど下がった。
返信が遅れてすいませんでした!
書いたら一気に投稿して放ったらかしにするタイプなので、以後気をつけたいと思います。