禍の団の二天龍たち   作:大枝豆もやし

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第58話

「なんなのよディオドラの奴!」

 

 翌日のオカルト部。リアスは机に雑誌を叩きつけて怒鳴った。

 それらの雑誌にはディオドラのインタビューが記載されており、その内容は商品の説明や成功した秘訣、貴族や会社の批判など多岐にわたる。

 その中でもリアスが注目したのは貴族についての批判。特にグレモリー家と自身に対する批判に憤慨した。

 彼女が先程まで読んでいた雑誌。そこにはリアスとソーナへの批判のコメントをしているものばかりだ。やれ『リアス・グレモリーは自身の能力を使いこなせない無能。彼女の功績は下僕と彼女に協力する人間のおかげ。部下の手柄を奪っている』だの『隠れた名勝負など真っ赤な嘘。ソーナ・シトリーの戦略は稚拙であり、それを評価する悪魔は目が節穴』だの。言いたい放題にリアスたちを貶していた。

 故にリアスは大激怒。ディドラの写真をビリビリに破り捨ててヒステリーを起こしていた。

 

「部長、面白いものがありましたよ」

「……一応きくけど何?」

「冥界のテレビで二人の悪口言われてましたよ」

 

 木場はそう言ってわざわざ見せなくてもいい映像を流した。

 

『つ、つまりディオドラ様はリアス様やソーナ様の活躍を嘘だとおっしゃるのですか?』

『ええ。実際にコカビエルを撃退したのは最凶の赤龍帝であり、彼女たちはなにもしてません。彼女たちの実力を見る限り、おそらく時間稼ぎすら出来てないでしょうね。

 つまり魔王は手柄を捏造したんですよ』

『し、しかしソーナ様は結界を張り、リアス様はコカビエルと勇敢に戦ったといいます!』

『あんなの嘘ですよ。本当に善戦出来るレベルなら助っ人なしでライザーを倒せましたし、本当に街を思っているのならばもっと早く行動してますよ。

 第一、コカビエルが暴れる前に彼女たちは堕天使の侵入や神父同士の戦闘などを知っていたのですよ。なのに対策も連絡もせず、球技大会の練習をしていたのですよ。……私には領主の責任を放り出して遊び呆けている小娘にしか見えません』

 

 

『彼女は既に堕天使に二度も領地を侵入されている。一回目は中級堕天使に侵入された挙句に神器狩りと妙な儀式をされ、二度目はコカビエルの気配をいくらでも感じ取れたというのに遊びほうけていた。二度も同じ過ちをこの短期間でやったのですよ?

 私なら恥ずかしくて表舞台に立てませんね。一体どうしたらこれほど失態を重ねられるかご教授願い…』

 

 プツンと、リアスはテレビの電源を落とした。

 

「ホンットに何なのよディオドラの奴!!? いいわ、そっちがその気ならグレモリー家の総力をあげて……いたッ!」

「やめろリアス」

 

 荒れ狂うリアスをイッセーが力ずくで止めた。

 

「違うと言うなら力で証明するしかない。ディオドラは理路整然と語り、証拠だって提示してるんだ。ここでマトモに討論すれば負けるし、権力と金で対抗しようにも地位としては互角。金に関しては稼いでいるあいつが上だ。むしろ逆に『グレモリーのバカ娘が事実を指摘されて焦っている』と捉えられてしまう」

「だったらどうすればいいのよ!?」

 

 

「決まってるでしょ。僕に全部任せたらいいんだよ」

 

 

「僕が今まで失敗したことある?僕がいて解決しなかったことってないでしょ?」

「……ええ」

「僕は君の味方だ。君を裏切ったことってないでしょ?」

「…ええ」

「じゃあさ、今回も解決出来るはずだよね?」

「ええ!」

「だったら僕に任せてよ。今回も解決してみせるから」

「ええもちろんよ!」

「じゃあ僕の言うとおりにしてくれるかな?僕の言うこと聞いてくれる限り、絶対に失敗しないから!」

「もちろんよイッセー!貴方の言うことはちゃんと従うわ!」

 

 リアスはそう言ってイッセーに抱きついた。彼女の豊満な身体がこの男に惜しげもなく押し付けられる。

 事実彼がいるおかげで今まで事件を解決してこれたのだから、今回もまた行けるはず。彼が居る限り私たちは無敵だ。

 ああ、なんて素晴らしい方を迎え入れたのだろうか。お母様がイッセーを婿にしようとしたときは気恥ずかしくてそっけない態度を取ってしまったけど、本来なら……。

 

「(……すっかりイッセーさんに調教されちゃいましたね)」

 

 そんなリアスを小猫は覚めた目で眺めていた。

 

 先ほどのやりとり、実は若干誘導されているが、そこは指摘しないのが本人のためだろう。

 しかし小猫は気づいていた。yesと言うように誘導されたことを。

 

 人は無意識にyesと言ってしまうと、本心だと信じてしまうことがある。イッセーはその現象を無意識にやったのだ。

 

「(しかし見事なものです。この短期間で部員全員を躾けて駒にしちゃいました。まるでエロゲーの調教師です)」

 

 自分の力を見せつけて敵わないと思わせつつ、言うとおりにすれば美味い汁が吸えると覚えさせる。所謂アメとムチだ。

 しかし彼は決してそれらを直接見せることはない。チラリと背中の影から見せるだけで、判断の自由は当人に委ねている。

 人は物で釣ろうとすると、プライドが邪魔して逆効果にある。リアスのようなタイプはその典型。もし直接そういった手を使おうものなら、逆にへその緒を曲げて何が何でも聞かなくなるであろう。

 だから直接従えるのではなく、誘導する。このやり方だからこそイッセーはリアスとうまくやれるのだ。

 ……まあ、ボロ出して危うくなったことは何度もあるが。

 

「(すっかりメス犬にされましたね、部長も朱乃先輩も。佑斗先輩は忠犬といったところでしょうか。…‥あまり人のことを強く言えませんが、人間に尻尾を振る悪魔って滑稽ですね)」

 

 髪を撫でられて尻尾を振る子犬のような様を見せるリアス。それにヤキモチを焼いて自分もなでるように頭を差し出した朱乃を見て小猫はため息をついた。

 

 ここは動物園。イッセーという調教師が鞭を振るって愉快な動物たちに芸を仕込み、調教師の好きな方面に誘導される動物たちの場である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ディオドラとの対戦日。会場でリアスとディオドラ眷属たちは並んでにらみ合っていた。

 リアスたちはいつも通り駒王学園の制服だが、ディオドラたちは違った。全員上下黒い革ジャンに黒いコート。靴は黒い安全靴でサングラスをかけている。ハリウッドとかで見たことある、お前らどこのエージェントだと聞きたくなるような恰好だ。

 しかも彼女たちは聖女と呼ばれていた女性たちである。……マジでなんて格好だ?

 

「取材では随分貶してくれたじゃない。それで、消し飛ばされる覚悟はあるんでしょうね?」

「消し飛ばす? 偶然破滅の力を継いだだけの貴女が?」

「「……」」

 

 二人共貼り付けた笑みを浮かべるが、目は一切笑ってない。一人はサングラスが邪魔で目が見えないのだが。

 

「…‥破滅の力ねぇ。君はライザー・フェニックスを嫌ってるけど、君も大概だね」

「……なんですって?」

 

 リアスはディオドラを睨む。しかし彼はそれに怯むどころか、逆に余裕の笑みを浮かべてリアスを見下した。

 

「だってそうじゃないか。ライザーは才能にあぐらをかいているって言ってたけど、君だってそうじゃないか。そんな素晴らしい力を持っているのに出来ることはただ魔力をばら撒くだけ。……なんか男版の君といった印象だね」

「………言ってくれるじゃない。グレモリー家の代名詞の力をそんな程度だって本気で思ってるの?」

「僕は家を馬鹿にしてるんじゃなくて君個人を貶してるんだけどね。どんなに優れても使うものが馬鹿なら意味ないよ」

 

 

「君たちに勝つことで僕は証明してみせる。真の力は血統でも神器でもない。強い武器と使いこなす技能だ」

 

 指で銃を撃つジェスチャーをするディオドラ。

 

「じゃ、行くとしようか。……君たちの活躍を期待してるよ。くれぐれも怪我しないように気をつけてね」

「「「はい、ディーくん!」」」

 

 ディオドラの眷属である元聖女たちは勇ましくも麗しい声で応える。

 しかしリアス達に対しては冷たい目を向けていた。自身の主に逆らう者を許さない狂信者の目。その視線にリアスたちは一瞬だけ身震いする。

 

 かつてディオドラの策略によって、或いは教会の勝手な都合によって魔女の烙印を押された元聖女たち。どちらも教会の闇を知り、その闇からディオドラによって救われた者たちだ。

 彼女たちは既に教会も天使も神も見限った。信仰するのは自身の主のみ。その障害は何だろうと潰す。

 原作ディオドラ、お前の夢叶ったぞ。このssでは望まない結果だが。

 

「……あの目、おそらく相当な訓練を積んできたのでしょう」

「そうだね。だけど僕たちも負けちゃいない!」

「ええ。私たちも厳しい訓練を生き残ったのですから」

「皆、準備はいいかしら?」

「「「「はい!」」」

 

 こうして若干剣呑な雰囲気ではあるが、いい感じにスタートした。

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