禍の団の二天龍たち   作:大枝豆もやし

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第62話

「はあッ!!」

 

 攻撃するのに邪魔な銃を弾こうと剣を振るう。狙うは銃を持つ手。この魔剣は悪魔にとって天敵である聖なる力を持つ。少し傷を付けるだけで腕を侵食する。真剣勝負は当たった時点で終いなのだ。

 

「ッ!!」

 

 だがそれは撃ち合いも同じ。弾が身体の何処かに当たった時点で終わりだ。

 ディオドラはもう片方の手で引き金を引く。吐き出されるのは金属ではなく炎によって形成された弾丸。当たっただけで体内を焼かれる魔弾。

 木場はその魔弾を剣で弾くことで防いだ。

 

 そこから始まる武器の弾き合い。片方が弾いて攻撃。それを弾いてまた攻撃。

 それは戦いではなく一つの演舞である。

 

「(なんて出鱈目な射撃だ!?これじゃあスピードが全然活かせない!

 どうする、魔剣を変えるか?……いや、武器を変える暇なんてない!

 僕はカーズ様みたいに機関銃砲の弾丸を全て切り捨てるような化物じゃない!)」

「(なんて無茶苦茶な斬撃波だ!?全然反撃できないじゃないか!

 どうする。弾丸を変えるか?……いや、装填する暇なんてない!

 そんなことしたらjガイルの旦那みたいに串刺しにされてしまう!)」

 

 二人は弾幕を張って相手をけん制しつつ、独特の歩法で敵の弾幕を掻い潜る。銃弾の雨が、光と闇の嵐が。彼らはギリギリの隙間を通り抜けながら攻撃を続ける。

 手を止めたら敗北。足を止めても負ける。武器を変えるなど以ての外だ。そんな隙を晒したら即死ぬ。

 どれか一つを完璧にするのではない。全て完璧にした者のみがこの決闘に生き残ることが出来るのだ。

 それまでは武器のチェンジも出来ない。木場は今握っている魔剣で、ディオドラは今装填している魔弾で戦うしかないのだ。

 

「ホーリーシャイン!」

「ファイアバースト!」

 

 弾幕から拡散攻撃に切り替える二人。

 聖なる光と拡散された炎がぶつかり合い、爆発を起こした。

 発生した爆炎と煙に紛れて木場はディオドラに接近。その剣を振り下ろすが……

 

 ディオドラは斬撃をバックステップで避けながら銃口を向け、追う木場を足止めするために牽制する。

 

 そして再び始まる演武。

 銃口を逸らして斬る。剣を弾いて撃つ。剣先が神殿の床を破壊した。

 剣を弾いて撃つ。銃口を逸らして斬る。流れ弾が神殿の柱を砕いた。

 銃弾を剣で弾く。その威力が剣越しに腕から伝わり、一瞬木場の腕を痺れさせた。

 斬撃を銃で受ける。その重さが銃越しに腕から伝わり、一瞬ディオドラの腕を軋ませる。

 

 相手の攻撃を避け、捌き、受ける。逆に反撃しても避けられ、捌かれ、受けられる。

 一体どれほどの攻防が繰り広げられただろうか。そろそろ二人の息が切れかけた時、二人の演舞は終章へと突入した。

 

「がっ!?」

「ぐっ!?」 

 

 十か百かそれとも千か。無数の攻撃を打ち合わせた二人は徐々に攻撃を食らうようになってきた。

 弾が木場の太ももを貫く。撃たれた箇所が火傷して焼かれる痛みが襲った。

 刃がディオドラの脇腹を通る。斬られた箇所が化膿して激痛が走った。

 

「この!」

「どけ!」

 

 木場の頭突きがディオドラの眉間に、ディオドラの膝蹴りが木場の鳩尾にぶち込まれる。

 ディオドラは鼻を折られて派手に鼻血を垂れ流し、木場は膝の一撃で逆流した胃液に喉を焼かれた。

 

 しかしそれでも二人は怯まない。戦闘は続行された。

 

「離れろ!」

「引っ付くな!」

 

 銃のグリップで木場の顔面を殴り、剣の柄尻でディオドラの顎をぶん殴る。木場は鼻血を吹きながら、ディオドラは歯ぐきから血を流しながら後退した。

 

「「うおおおおおおおお!!!」」

 

 二人の攻撃は同時だった。ディオドラの魔銃が火を噴き、木場の魔剣が突き出される。

 僅かではあるが、剣の方が早い。魔の剣先がディオドラの肩を貫こうとした瞬間……。

 

 

「…いッ!」

 

 ディドラはほんの少しだけ上体を逸らすことで刃を数ミリ単位で回避したのだ。衣服越しに皮膚を切り裂かれ若干出血したものの、傷口から光の毒が侵そうとするも痛みに耐える。

 彼は見事に避け切ったのだ。

 

「ぐあああああああああああ!!!」

 

 魔弾は木場の右前腕を貫いて中から蹂躙。右腕の血液を沸騰させるかのような大やけどを負わせた。

 こうなってしまえばもうこの試合で右手を使うことは不可能。その証拠に右腕の力が抜け、右手から剣が零れ落ちた。

 

 ディオドラは木場の右側に踏み込み、銃口を突き付ける。これでもうどちらが勝者か明白だ。

 

「……利き手を封じられた上に防御できない位置に回り込まれた。もう、敗北を認めるしかないじゃないか」

「では認めてくれますか、僕の銃が君の神器よりも強いと」

 

 木場は首を横に振る。

 

「……うん、君の銃は強いよ。君の勝ちだ」

 

 ディオドラは木場の頭を撃つポーズをとる。もし愛銃で行えばヘッドショットを決めていたであろう。

 それを見て木場は満足そうに棄権を宣言した。

 

 同時に姫島とディオドラの率いていた部隊が相打ちとなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『木場裕斗様、姫島朱乃様、リタイア』

「……ディオドラが近づいてきたか」

 

 朱乃のリタイアを聞いたと同時に、ディオドラの接近を察知するイッセー。その時だった、彼に向かって銃弾が飛んできたのは。

 サガンの腐食する能力で溶かして無効化させる。電撃を銃弾が飛んできた方角に飛ばそうとしたのだが……。

 

『ディオドラ様の兵士、リタイア』 

 

 攻撃が届く前にリタイア。同時に銃弾がイッセーの眼前を通り過ぎた。

 銃弾が飛んできた方角に目を向ける。そこにはいつのまにかディオドラが立っていた。

 

「やあイッセーくん。半分も君に倒されちゃったね」

「……こっちも貴重な戦力が半分もやられちゃったよ。残ってるのはもう僕とリアスだけだ」

「……お互いボロボロだね」 

 

 イッセーは護手を空手のように構え、ディオドラは二丁拳銃を構える。

 

「……ねえイッセーくん、君の縛衣って相手を縛るだけの技なんだよね」

「ん? あ、ああ。あの技は縄なしで相手を捕らえる技だからね」

 

 柔らかいがどこかに刺のある声で言うディオドラ。

 

「だったらさ、上着のコートだけで良かったんじゃない?だってほら、これだけで体を巻くには十分だ。

 それに、さっきのスピードなら毒を塗った針でも刺せば倒せるんじゃないのか? 君は用心深いからそれぐら用意してあるんだろ?」

「…………」

「何とか言ったらどうなんだ?」

 

 イッセーは答えない。ただ護手を突き出して構えるだけだった。

 

「君の戦い方を一言で言い表すなら狩りだ。ウェークポイントを狙って必要最小限の労力とリスクで敵をせん滅する。そこには一切遊びや無駄は存在しない。

 龍の力の影響で猛り狂ったり、怒りで暴走気味になることはあっても、君の性質が変わったことは一度もないはずだ。なのになぜ今回はこんな無駄なやり方をしたんだい?」

「そ、それは……」

 

 言いよどむイッセー。それを見て何を思ったのか、ディオドラのハイライトがボイコットを始めた。

 

「どこから撃ち抜いてもらいたい? やはり女の乳房にしか勃たない股間か?それとも煩悩塗れの脳みそか?」

「でぃ……でぃーくん?」

「黙れ性犯罪者。婦女子たちの衣服を脱がし、ドサクサに紛れて胸を触ろうとするなど言語道断。悪魔神サタン様に代行してこのディオドラ・アスタロトが貴様を裁く。エ゛ェェイ゛ィメン゛ッッ!」

 

 某化け物も異教徒も絶対殺すマンのように銃をクロスさせて十字架を作るディオドラ。

 ヤル気満々。なにがなんでも眷属の無念を晴らす。その相手がかつてのトラウマの相手でも!

 

「穢された我が眷属の仇、ここで討たせてもらう」

「(……あ、オワタ)」

 

 この瞬間、ご都合がディオドラに味方したのはいうまでもない。




自分の下僕があんな目に遭ったら切れるよね。なのに何故サイラオーグさんは笑っていられたのだろうか。女王マジ不憫。
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