禍の団の二天龍たち   作:大枝豆もやし

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第63話

 イッセーが電気を閃光弾のように発光させて目を潰そうとする。

 あまりにも眩しい、モニター越しでも直視できない光。もしこれを直に喰らえば失明は免れない。サングラスごときでは防げない光だ。

 しかしディオドラは何でもなさそうに銃を構えて撃った。

 

「(……あのサングラス、溶接の時に使う保護具並みに遮光性が高い。しかも硬いし視界も制限しないタイプ。面倒なもの作ってくれたね)」

 

 朱乃対策なのだろうか、弾は金属製ではないらしい。今更マルコシアスの力を使っても防げそうにないので、電熱によって弾丸を溶かした。

 しかしタイミングが遅かった。電熱だけでは弾を溶かしきれず、むしろ溶かそうと高熱にしたおかげで若干火傷してしまった。

 

「磁気だけじゃなく電熱も使うのは予想していた。対策はちゃんとしているよ」

「……ということはまさか?」

 

 電撃を放つ。ディオドラはそれを受けるもビクともしなかった。

 

「……やっぱりそのコート、ただのコートじゃないんだね」

「もちろんだ。」

 

 ディオドラが着用している厨二感丸出しのコート。それは他社や他種族たちと共同開発して創り出された鎧である。

 使われている強化繊維は衝撃、切断、引っ張り、熱や電気、あらゆる耐性が世界最先端を誇る。その上靴まで一式持っても通常の服より軽い。

 さらに専用のブーツには跳躍アシスト加工が施されており、魔力を込めるとより高い跳躍力を実現、魔力がなくても高いジャンプ力を再現出来る仕組みになっている。軽さも相まって、より高く、そして速く行動出来る。

 

 服の塗料には特殊な揮発物質に反応して一時的に色を変化させることも可能。全五色の組み合わせで、どんな場所でも迷彩効果を発揮することができる。……残念ながらこれを使うと銃の性能をプレゼン出来ないので今回は使用しないことになっているが。

 

 背中、肩、腰など各部に衝撃吸収ポリマーが仕込まれ、フードを被り首を保護するエアを入れることで大抵のアクションにおいて身体を完全に守ってくれる。

 激しい戦闘などで耐えられない衝撃を受けたとしても、服の内部に張り巡らされたゲル状の骨組みが瞬時に固まり、身体を守った後は骨を折るような音を立てて崩れて再びゲル状に戻る、ダイラタンシー現象を利用した防御フレームが組まれていた。

 

 更に、妖精や魔術師達による加護も追加。これで耐魔力、耐呪、矢避け、身体強化、結界など。様々な術式が組み込まれている。

 

 その性能は木場との戦闘を見れば明らかである。これのおかげで魔剣や爆弾による攻撃を防いだのだ。

 

 

 その服はまさしくディオドラ社が誇る最高峰の兵器。これを量産出来れば勿論、一着あるだけでも戦況を大きく変えることができるのではないだろうか。

 正直言って銃よりもこちらの方がよほど素晴らしい。この説明を聞くだけでほしいと思う悪魔たちがいるはずなのだが……。

 

「そういうことだ。ま、流石に聖魔剣は防ぎきれなかったけどね」

「……そんなのあるなら最初に教えてよ。話聞くだけでほしくなる代物だよソレ」

「残念だけど笑われちゃったよ。悪魔なら魔力で、己の力で戦え。道具に頼るなって」

「……そうか」

 

 しかし悪魔たちはそんな素晴らしい装備を哂った。

 妖精の大半は天使寄りであり、悪魔とはあまり仲がよろしくない。円卓騎士団の聖剣が精霊によって創られたのを考えると分かりやすいであろう。

 とまあ、要するに。悪魔の分際で妖精の力を頼った愚か者の作った品など大したことないと烙印を押されたのだ。

 

「中には僕の武器を嗤う者もいますし。まあ需要はあるので大丈夫なのですが」

 

 本来悪魔は武器や武術などに無頓着であり、これは強い者になるほど顕著になる。故にバアルなどの有名な悪魔はディオドラの商品を欲しがらないのだ。……下々は知らんが。

 注目しているのはせいぜい神器ぐらいであろうか。彼らは神器や聖剣などの特殊な武器でない限り意味がないと考えている。

 

 その考え自体はディオドラも強く否定しない。実際悪魔は人間よりも遥かに強靭であり、ディオドラ自身も滅多なことでは死なない自信がある。

 ただの銃弾なら魔力の障壁で跳ね返すことが出来るし、罠だって魔力を使えばどうとでもなる。

 

 だが銃弾に聖なる力を込めればどうなるか。罠に付加魔法をかけたらどうなるか。おそらく下級悪魔ならば簡単に倒せるであろう。

 

 聖剣だって神器だって、所詮は特殊な力を持った刀剣や武器である。ならば、特殊な力を付与すれば銃だって神器や伝説の武器に匹敵する。そう、ほんの少し条件を付け足すだけで覆すことが出来るのだ。

 むしろ最新の技術を使うことで、剣や槍などよりも素晴らしい武器が出来るはず。古臭い鉄の棒をベースにする必要などないのだ。

 

 

 そして何よりも、彼の作る武器は材料さえあればいつでも作れる。

 生まれ持ってでしか手に入らない面倒な神器に、使い手を選ぶ贅沢な聖剣。その上どちらも数が少ない。

 しかし僕の作る武器は違う。後天的に手に入るし、聖剣のようにワガママでもない。ただ扱う技量さえあれば効力を発揮する。偶然宿っただけの強い力や、教会の都合のいい駒しか持てない聖剣とは違う。

 それを証明するため……。

 

「そういうわけで僕は君を倒して証明してみせる!そして僕の眷属を穢した罪をここで償え!」

 

 ディオドラは銃弾を放つ。木場の聖魔剣と撃ち合った魔弾と魔銃で。

 イッセーは銃弾を受け止める。赤龍帝の籠手を少し誤魔化した形で。

 

「ぐ……! ううぅ‥」

 

 龍の力を放出して擬似的な盾を作るも、それでも完全には受け止められなかった。弾き飛ばした銃弾の威力によって左手に若干痺れが残る。

 

「(……まずいなコレ。禁手化か使役魔術を使わないと僕負けるな)」

 

 イッセーは初めてレーティングゲームで敗北を覚悟した。

 物理的な攻撃はもちろん、電撃にも毒や酸にも耐性のある防具。木場の聖魔剣と互角に戦える魔弾と魔銃。

 こちらの攻撃は通じず、あっちの攻撃は一方的に通じてしまう。どんなクソゲーだ。

 

「いい、いいよイッセーくん!この調子で僕のプレゼンに協力してくれ! そして僕の眷属を穢した罪をここで償え!」

 

 続けて銃弾を放とうとするディオドラ。瞬間、空にヒビが入った。

 

「「!!」」

 

 異変に気づいた二人は咄嗟に飛び退き、ヒビに向かって自身の武器を向け、突如襲ってきた光―――魔力砲に攻撃した。

 ディオドラの銃弾とイッセーの放った火球が魔力砲と相殺してかき消される。

 

「……ほう、真のベルゼブブの血を引く私に臆さず武器を向けるか。なんと愚かなことか。

 初めしてだな偽りの魔王の弟よ。私の名はシャルバ・ベルゼブブ。真の魔王たるベルゼブブの血を引く正当なる継承者だ」

 

 割れ目から現れた男―――シャルバがゆっくりとイッセーを見下しながら自己紹介する。まるで主人公が名乗りをあげるかのように、昔の武将が「やあやあ我こそは…」と名乗りをあげるかのように。

 

「貴方がシャルバですか。……今日はどういったご要件で?」

「今宵は魔王を騙る愚か者たちの妹と弟が集まっていると聞く。これ以上ないチャンスだろ?」

「……なるほど。僕たちを殺す、或いは人質にする気ですか」

 

 ディオドラとイッセーは「コイツ馬鹿か?」と内心思うも、顔に出さず警戒を続ける。

 確かにここを魔王サマが直々に攻めるなど愚かとしか思わないだろう。てかそんなことして何になるんだ。もっと敵キャラ使うタイミング考えろよ。

 

 しかし、赤龍帝(イッセー)に対する嫌がらせとしては十分に効果があった。

 何せ今のイッセーは神器を全て使える状態ではない。おそらく映像は既に遮断されているだろうが、万が一でも自身の能力を見られる可能性がある。自身が赤龍帝だとばれる可能性があるのだ。

 故にイッセーは力を使えない。そういった意味ではシャルバはなかなかいい手を打った。もっとも、本人はイッセー=赤龍帝とは気づいてないのだが。

 

「……イッセー、ここは僕が囮になる。君はリアスを引っ張りだして魔王を連れて行ってくれ」

「馬鹿言うな。それは僕が適任だろ」

「普段通りの力が使えるならね。けど今の君は赤龍帝じゃないんだろ?」

「……」

 

 ディオドラの言葉にイッセーは苦虫を潰したような顔で首を縦に振った。

 

「どうしたのイッセー!? 何かすごい魔力が……シャルバ!!?なぜここに!?」

 

 リアスが異変に気づいて駆けつける。これが決定打となった。

 

「………チッ!! ここは任せるぞ!絶対に生きて帰れ!!」

「よし、任されたよ!」

 

 ディオドラが銃を構えて撃とうとする。瞬間、シャルバとはまた別の地点から空が割れた。

 

「今度はなんだ!?」

 

 

 

 

 

 

「なんだ、面白そうなことをしてるじゃないか」

 

 

 

 空が割れ、内部から青を帯びた銀色の光が降り注ぐ。まるで光の橋が天上と下界を繋げるかのように。

 地上への橋を天使が降りる。銀色の傲慢で強欲な、神にも並ぶとされた最強であり最高である天使が……。

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