禍の団の二天龍たち   作:大枝豆もやし

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第66話

「ねえヴァーリ、君とんでもない爆弾置いてったよね?」

「ああ、おかげで天使陣営は倒壊寸前だ。今頃は暴徒と化した信徒たちの反乱や暴走を抑えることで手一杯になっているだろうな」

 

 イングランドにある訓練所。そこでイッセーとヴァーリはお互いに技をぶつけながら会話をしていた。

 赤い竜の顎を模した魔力砲が、鷲獅子(グリフォン)の翼を模した魔力刃が。互いの色に相手を染め上げながら相殺される。

 

「少しタイミング早すぎない?本来はもっと準備してから取り掛かる予定だって聞いたけど?」

「ああ本来はな。しかし事情が大きく変わったんだ」

「え?」

 

 手を止めて疑問符を浮かべるイッセー。

 

「実は英雄派だけでなく神話勢も全面的に協力してくれることになった」

「ホント!? じゃあ三大陣営なんて一溜りもないじゃないか!」

 

 悪魔は一部を除いて神には勝てない。故に魔王がいなければ、一柱の神だけで悪魔を滅ぼすのに事足りるのだ。

 しかし神々はそうしない。異教徒だと弾圧され、神器使いは不当に殺され、転生悪魔やはぐれ悪魔の被害によって信徒が減っているというのに。

 なぜかは知らない。というか知ってるなら教えてくれ。どうせご都合だとは思うけど。

 

 とまあ、そんな今まで動かなかった神々も動くようになってくれた。たとえ本人が動かずとも、軍隊を貸してくれるだけでも大分動きやすくなる。

 このように、着々と三大勢力を倒すための準備は整えられているのであった。

 

「それで、あいつらはまだなの?」

「あいつら?……ああ、曹操か。奴ならすぐ来る」

「……みたいだね」

 

 イッセーが訓練所の入り口に目を向ける。そこにはいつの間にか、二人の青少年が所在なさげに立っていた。

 そう、彼らは英雄派のリーダーである曹操と副リーダーのゲオルグだ。

 

「あ、曹操か。随分遅いな」

「本当はもっと前から来ていたのだが、二天龍の戦闘に巻き込まれたくなかったから避難してた」

「言うじゃないか」

 

 イッセーはハハハと、ヴァーリはフッと笑って流す。

 

「……俺たちの夢もだいぶ現実味を帯びるようになったな」

「ええ、去年まではただ暴れるだけでしたから」

 

 曹操とゲオルグは去年の事、イッセーたちに会った時を思い出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「しかしお前も大人しくなったな。ちょっと前まではウルトラマンアグルを十倍ほど過激にした上、話を一切聞かないエコテロ野郎がこんなに立派になるとは思ってなかったぞ」

「おもっきりブーメラン投げてるよ。そして大切断してるよ。君だって相手の事情も話も考慮せずに喧嘩ふっかけるDQN野郎だったじゃないか。むしろ動植物のために動いてる僕の方がマジじゃない?」

『『どっちもどっちだ』』

 

 大江山。かつて酒呑童子がいたとされる霊山。その山頂にある屋敷でイッセーたちは酒呑童子と酒盛りをしていた。

 

 イッセーたちは酒呑童子の協力を求めて彼女を復活させることを決意。首塚の封印を解いて遺骨を回収し、欲に塗れた貴族悪魔や上級悪魔と汚職に手を染めた教会上層部を生贄に、竜の力と魔力によって見事彼女を復活させた。

 しかし酒呑童子は協力を拒否。従えたくば力を示せと言った。なので戦闘を開始。お互い万全の調子ではなかったせいか、戦闘はかなり長引いた。

 結果、イッセーたちが勝利した。白龍皇と赤龍皇の力を合わせることで、鬼の王である酒呑童子に勝ったのだ。

 それで今はこうして親睦を深めるために酒盛りをしている。

 

 ちなみにこの酒の大半はイッセーが作ったものである。ザガンの力を借りて葡萄酒を中心に量産。本当はこの酒を対価に協力を求める気だったのだが……。まあ同盟は結べたし、こうして飲むことになったのだから無駄ではないであろう。

 

「まったく、未成年にお酒を勧めるってどうなのよ」

「そう言ってる割にはめっちゃ呑んでるではないか。何杯目だソレ」

「違います~。これは酒の魔神たちに捧げてるんです~」

 

 そういってガバガバと酒呑童子の酒である鬼殺しを飲むイッセー。

 

 彼の言葉には嘘はない。これはザガンに捧げているのだ。

 身体のない彼らには酒の味など分からない。なので力を借りる代わりにこうしてイッセーが己の体、もっと言えば酒を飲み楽しむための身体を貸しているのだ。

 

「葡萄酒もなかなかのモンやな。こんなに美味い酒が飲み放題なんか?」

「もちろん。サガンの力を以ってすれば水だろうかヘドロだろうが酒に早変わりだよ」

「そうなんか。それは確かに魅力的やな~」

「あと珍しいお酒も用意できるよ。ほら、19世紀に流行って今では飲めないアブサンってお酒も」

「あぶさん? よう分からんけどすごい酒なんか?」

「大事な同盟相手に何危険な酒を勧めてるんだ。確かアブサンには幻覚作用があり、悪魔の酒と呼ばれて禁止になったものだぞ」

「鬼なら大丈夫でしょ」

「いや、そうとは言えんぞ。確か酒呑さんは毒酒で殺されたと聞く。邪龍ヤマタノオロチも酒によって殺されたんだ。酒というものは怖い」

 

 そんな風に酒を楽しんでいると、酒呑童子の使用人らしき鬼が酒を盆に乗せて持ってきた。

 

「酒呑童子様、次の酒を持ってまいりました」

「ほうか。じゃあ頂こか」

 

 盆の上の酒に手を伸ばそうとする酒呑童子。しかし突然、ヴァーリがその手を掴んで止めた。

 

「おい使用人、この酒の毒見は済ませたのか?」

「え? ……い、いえ。そんな無礼は……」

「そうか。だったら……」

「……ん?」

 

 ヴァーリは酒瓶を持ち上げ……

 

 

 

 

「貴様が毒見してみろ!!」

 

 使用人の頭に振り下ろした。

 

 

 

 

「(や……ヤーサンじゃねえか)」

 

 イッセーはヴァーリの行為にドン引きした。

 酒の入った瓶で人の頭を殴るシーンなど、やくざ映画でしか見れないような暴力シーンだ。いつの間にあいつはヤクザ者なんかに転職したのだろうか。

 まあ、引いてるイッセーも……。

 

「ほら、僕の酒が飲めないの?」

「い、いえ。そういうわけでは……」

「そういうのいいから。ほら飲めや」

「おぼごごごごごごごぉ!!!」

 

 ……無理やり酒を飲ましてるのだが。

 新しい酒を持ってきた使用人の鼻をつまんで無理やり飲ませる。息が出来ずに苦しもうが関係ない。イッセーは次々と使用人共に飲ませた。

 

「ヴぁ……ヴァーリはん、イッセーはん? 一体どうしたんや? なんかごっつい一発芸かましとるけど……ウチそんなん望んどらんで」

 

 次と酒瓶で使用人をボコるヴァーリと酒を頭からぶっかけるイッセーを見てドン引きする酒呑童子さん。

 鬼である彼女がドン引きするとはなんと珍しい光景なのだろうか。そして、鬼を引かせる彼らはなんと残酷なのであろうか。

 片や人間と悪魔の血を引く少年、もう片方は悪魔と龍の力を借りる人間の少年。やはり人間こそが悪魔や鬼を凌ぐ悪であるということなのか。

 

 

 だが、酒をかけられた使用人の様子を見ることで、酒呑童子も何故彼らがこんな乱暴を働いたか気づいた。

 

「ぎゃああああああああああ!! 目が!目がァァァァァ!!」

「馬鹿なァァァァァァァァ! 我らの……我らの、けい…計画が!!」

 

 酒をかけられた者たちの頭部がシュウシュウと、まるで酸でもかけられたかのように焼かれていった。

 

「この酒毒入りだ。コイツら、酒呑さんを退治した時と同じ手を使おうとしている」

「同じ手を同じ相手に使えるわけないじゃん。大方英雄派の連中だろうね」

 

 イッセーたちの嫌がらせから免れた一部の使用人たち―――英雄派の戦闘員が武器を構える。

 それと同時だった、部屋の障子を蹴飛ばして数人ほどの少年少女が入ってきたのは。

 

「まさか既に俺たちの存在に気付いていたとは。流石二天龍といったところか」

「気づくに決まっているだろ。あんな隙だらけの尾行など」

 

 ヴァーリとイッセーはお互いの神器を展開、得意な術式をいつでも発動できるように構える。

 

「酒盛りはいったん中止。こっからは喧嘩祭りだ」

「みたいだね。まったく、どこから嗅ぎ付けたのやら」

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