禍の団の二天龍たち   作:大枝豆もやし

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第74話

 冥界悪魔領土。

 その防衛最前線には無数の転生悪魔が防衛戦を張っていたが、見事に蹴散らされていく。

 いや、蹴散らされるというより、自ら道を譲っていると言った方が適切だった。

 

 そう、転生悪魔や兵士悪魔達は最初から自分の主を守るつもりなど毛頭なかった。

 民を思う悪魔や、先見の明がある悪魔達はとっくにヴァーリの方に行っている。

 真の魔王に逆らう者たちは既得権益にしがみつき、自身以外を奴隷として扱う貴族悪魔のみだ。

 そんな者に従うような悪魔など誰もいない。

 今までの行いのツケ。ここで払う時が来た。

 

 自国の安全地帯では貴族の殆どが亡命の準備をしている。

 しかし、時間稼ぎに用意した兵士たちは仕事を放棄するどころか。喜んで主を差し出そうとしている。

 まあ、転移魔法が阻まれている為に悪魔は最初から逃げることが出来ないのだが。

 

 

 とある悪魔の領土は既に焼け野原に成っており、その場には黒焦げに成った悪魔の亡骸や…無惨な死体と成った悪魔の遺体が転がっている。

 

 炎が燃え盛り、嵐が吹き荒れ、雷が轟き。

 弾丸や猛毒の雨が降り注ぎ悪魔の国は滅びようとしていた。

 

 しかし、それでも生き残った者たちはいる。

 そんな彼らは何処にいるのだろうか……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 バアル領土。そこはルシファードの次に大きく、魔王に匹敵する権力を持ったバアル家の豪邸が立っている。

 しかし、そこもまた滅びようとしていた。

 

「ど…どういうですかバアル卿!?」

「ここにいれば安全と仰ったのは貴方でしょう!?」

 

 バアルの豪邸。そこには避難してきた貴族悪魔たちがいた。

 彼らは突如の襲撃に慌てたが、バアルの避難勧告によってここへ転移してきた

 

 

 最初は喜んだ。

 俺たちはまだ生きられる。今は逃げて後に復讐し、たんまりと賠償を請求しようと考えていた。

 豪華な物資を奪い、他陣営の美女美少女を凌辱し、首謀者を嬲り殺す。

 しかし、そんな考えはバアルの次の言葉で否定された。

 

「馬鹿だねえ君たち。そんな美味い話があるわけないだろ?」

「「「………は?」」」

 

 彼らは一瞬バアルの言ったことが理解出来なかった。

 

「お前たちは今日から実験台だ。人体実験ならぬ悪魔体実験として使う」

 

 なんだ、何を言っているんだこの物体は。

 頭が湧いたのか。まるで理解出来んぞ。

 一体……一体どういうことなんだ!?

 

「お前らも散々人間や若い悪魔を食い物にして愉しんできたろ? 今度は俺が楽しむ番だ」

「「「………!!?」」

 

 強烈な魔力の籠った声。

 バアルの声だ。

 その声を聴いて途端に理解した。

 自分たちはこの男に支配されていると。

 気づいた貴族悪魔達の行動は早かった。

 すぐさま媚びようとスイッチを入れ替える。

 この手の平返し、流石は貴族悪魔といったとこか。

 

「バアル様! 私には多大な財産が有ります! ですから…」

 

 言い終える前にバアルの眼力で黙らされた。

 攻撃はしてない。ただ圧倒的な魔力を向ける。それだけで名前だけの貴族を黙らせるのには十分だ。

 

「貴様らには命乞いする権利も、取引を持ち掛ける権利もない。貴様らが俺に差し出せるのは命だけだ」

 

 彼らは典型的なダメ貴族だった。

 金にも女にも権力にも。全てにがめつい欲深な悪魔たち。

 その癖、自分から行動して何かを得ようとはしない怠惰な悪魔でもあった。

 勉強や鍛錬なんて以ての外。楽していい女と金を手にしたい。そんなことばかり考えていた。

 その欲望のために人間を利用し、転生悪魔たちや新人悪魔を使い潰してきた。

 典型的な老害。そんな悪魔共に求めることなど何もない。

 

「本来ならここで全員ぶちのめしたいところだが、それでは配下に示しが付かない。……せめて実験体として役に立て」

「「「………ふ、ふざけるなぁぁァァァァァァ!!!」」」

 

 突如、悪魔達はキレて暴れだした。

 

「さっきから聞いておれば勝手なことばかりほざきおって! 何故わしらが貴様に殺されなくてはならん!?」

「ふざけやがって! 何の罪もない俺たちをいじめてそんなに楽しいか!? この悪党共が!!」

「第一われらは和平を成立させた功績者だぞ! お前ら弱小種族のために戦っているんだぞ! ソレをわかってるのか!?」

「そうだ! だからお前らは俺らに感謝しなくちゃいけねえんだよ!!」

「………お前らにだけは言われたくない」

 

 もう何度も言われ慣れている。

 何百回このブーメラン発言を食らったことか、何度和平のことを持ち出されたか、何度俺たちはお前らのためにやってるんだアピールをされたことか。

 もう数えるのも億劫である。

 

 

 これは今までお前らがしてきたことだ。

 神器使いを弾圧する堕天使。

 悪魔に関わったらすべて皆殺し、聖剣使い候補を造る天使。

 駒候補の誘拐なんて当たり前、転生悪魔の差別、はぐれ悪魔の被害の対応は語られず、好き勝手やってる悪魔。

 

 三種族は自分達の都合で人間を巻き込み、人間の命を弄んで奪う。そして自分たちが好き勝手やってきたツケで滅びかけると三種族の間だけで和平を結ぶ。

 もちろんその中には人間のことなんて入れず、勝手に人間の管理について取り決める。被害を受ける側の人間に対しては、何の対応してない。

 それどころか、人間への被害を無くそうという取り組みが和平の時にまったく話題に出ていない。

 

 それを規制するルールは和平には存在しない。

 これからも一般人は為す術もなく被害を受けるし、死んでも記憶を消されて存在自体をなかったことにされる。

 結局和平が結ばれても人間の扱いは変わらない。

 

 そももそも、和平自体が堕天使と天使と悪魔の三者間だけにしか成り立っていない。

 これからも神器持ちの人間は襲われるし、悪魔も人間を無理矢理転生悪魔にするのはやめないし 、転生悪魔の扱い改善もしない。

 離反したはぐれ悪魔は説得か討伐するだけで 三つのうちどれかの陣営に属してない人間は搾取され続けるのは変わってない。

 結局あの和平は『人間という家畜を仲良く分けましょう』……そういうことである。

 コイツらが搾取したせいで甚大な被害があるのに、そのクセ自分たちがさも人間たちを守るような言い方をする。

 むしろお互いにやりあった時代―――旧魔王時代の方がまだマシである。

 

 そんな奴らの掲げる平和や自由なんて誰が信じる?

 

 少なくとも自分は侵略者が勝手に決めたルールなんて従う気はないし、価値もないと思う。

 何故被害者である人間たちが我慢して和平を受け入れなければならない?

 正直自分には渦の団よりも三種族の方が野蛮で危険な集団だ。

 

「お前たちの発言は聞き飽きた」

 

 バールがそう言ったと同時、銃声がその場に響いた。

 パラララと、軽い音を立てて吐き出される弾丸。

 ソレはバールに襲い掛かろうとする貴族悪魔達に命中し、ものの数秒ほどで暴動を鎮圧した。

 

「だ…誰だ!?」

 

 銃声の正体に目を向ける貴族悪魔達。

 その人物は、貴族悪魔たちにとって意外な者たちであった。

 

「な、なんで君がここに………」

「お、お前は俺らの味方のはずだろ……?」

 

 

 

「ディオドラ・アスタロト!?」

 

 

 

「やあ皆さん、実は私ことディオドラは、前からこの悪魔社会が嫌いでこうして

「な…何故だ!? 君だって今まで聖女達や他の種族を手籠めにしてきたじゃないか!」

「そうだ、お前の方が俺らよりも」

「ふざけんなよ! 魔王の弟だから大目に見てきたが、お前は前々から気に入らな…っが!?」

 

 バアンと、銃声が響く。

 彼の実力を知っている以上、貴族悪魔は黙るしかなかった。

 

「確かに僕は聖女や他の種族の女子たちを手に入れるために強引な手を使いましたが、一度も貴方達みたいに切り捨てた事やぞんざいに扱った事はありませんよ」

 

 堕天使や天使は異種族でも力があればそれに相当する待遇を行う。

 血によって特殊な能力がないせいか、家柄や血族による差別が存在しない。

 だが、悪魔たちは貴族の純潔悪魔を至上とし、それ以外のものを利用して搾取する傾向がある

 

 味方である転生悪魔や平民悪魔までもその対象だ。

結果、はぐれが出る要因となっているのに、待遇を改めようとはしない。自分たちの命令を聞かないものは即処罰。

 

 自分たちの非など棚上げにして改善策を一切考えようとしない。そんなんではぐれが減るわけないだろ。

 

 誰が守ってくれない主に忠誠を誓える?誰が命令だけして待遇を一切考えようとしない主に忠誠を誓える?誰が道具扱いする忠誠を誓える?

 

 下僕たちが忠誠心を持ってないのが悪いのではない。

 忠誠を誓ってもらえない主が間抜けなのです。なのに何の行動もせず、下僕は主に仕えて当然だと思っている。

その時点でその主は主たる資格などない。

 

 悪魔の社会は主としての資格がない貴族が笑い、哀れなはぐれや転生悪魔が泣く社会。対して堕天使や天使の社会は協力者や下っ端も相応の待遇を保証された社会。

 それが今の悪魔社会だ。

 

「それに今の悪魔どもには美学がないんですよ。契約違反すぐするし」

 

 悪魔にとって契約は絶対のもの。たとえ相手が誰であろうと一度結んだ契約は全うする。それが悪魔の美学だ。

 しかし最近の悪魔はどうだ?

 契約を反故にする悪魔が多すぎる。

 

 悪魔は漢字通り悪の魔。

 法や倫理から外れる存在の以上、ある程度の悪徳は生態の一つと言えるかもしれない。

 

 しかし、だからこそ自身の定めたルールだけは守らなくてはならない。

 

 

 法や倫理を破る以上、通常のルール以上に己のルールを守らなくてはならない。

 もし、己の掲げるルールすら守れなくなったら悪魔はおしまいだ。

 そうなったら悪魔はただの力を持っているだけの無法者(チンピラ)集に成り下がる。

 ……というか、もうなってる。

 

「だから僕はさっさと抜けることにしたんですよ。……テメエらチンピラ集団からな!!」

「そ、そんな勝手な……うっ!」

 

 突然貴族悪魔達が口元を押さえて倒れだした。

 

「い、いったい何が……」

「毒だ。この場には微量な毒が充満してね、それに気づかれないために長話しをして気を逸らせたんだ」

 

 そんなことはない。

 本当は倒れた瞬間に乗りこむつもりが、先走ってしまっただけである。

 

「こ、この悪魔が……」

「君たちも悪魔じゃないか」

 

 もう何度も聞いたブーメラン発言に笑いながら、ディオドラは倒れる悪魔達を見て笑った。

 




 前々から自分は三大種族の中でも特に悪魔が最悪の種族だと考えてます。
 今更ですがざっと挙げてみます。

①純潔悪魔以外を見下し、他種族、特に人間を家畜か何かのように扱う
②他種族を強引に悪魔に変える。
③折角確保した転生悪魔たちをぞんざいに扱う
④碌な取り調べもせず、主が悪い可能性があってもはぐれは即殺す
⑤自分たちのせいで出た被害を洗脳などで隠ぺいする
⑥契約遵守を美徳とするのに都合が悪くなるとすぐ破る
⑦そのくせ人間を守ってるかのような言い方してごまかす。和平がその例。
⑧ソレで被害を受けると被害者面する

 なんていうか、他陣営にも自陣営にも優しくない種族ですね。

 けど、これだけじゃタダの「ゲスな敵キャラ」程度なんですよね。ここまでアンチされるのには上記の理由以外にも何かあるはず。そのことについて次々回出そうと思います。 

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