禍の団の二天龍たち   作:大枝豆もやし

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第8話

「構えてイッセーくん!」

 

 木場裕斗は僕に剣を向けて言った。

 え~と、なんでこんな状況になったんだっけ?

 

「君は僕たちが倒せなかったゴーレムをあっさり倒した。だから君の力がどこまでなのか僕自身の手で試したい!」

 

 剣を向けながら言う木場裕斗。

 あいつ、ヴァーリと同じタイプか。自分の腕を試したい、強敵と戦って自分の腕を上げたい。そういう武人タイプなんだろう。

 まあ、コイツを武人と言っていいのかは疑問だけど。

 

「…僕は剣術については素人ですよ」

「謙遜はいけないよ。だって君は実際にあのゴーレムを倒したじゃないか」

「違いますよ。僕は能力頼りの情けない男です。あのゴーレムに勝ったのは小細工に逃げただけですよ」

 

 これは謙遜でも何でもない。事実だ。

 僕は剣術なんて学んでない。ただマルコシアスの力を借りただけ。その上剣術自体あのゴーレムの一件では使ってない。ただ鉄パイプを何本も突き刺しただけだ。あれで剣術で倒したというのはちょっと言えないな…。

 

「あのゴーレムを倒した方法はシンプル。まずはスピードで攪乱させ、スピードを活かして相手の体勢が整う前に一撃を叩き込む。それを繰り返し、攻撃されそうになったらまた逃げる。それだけです」

「・・・な、なかなかすごいね」

 

 そうか?僕は借りた力を有効活用しただけだよ。

 

「・・・けど、スピードだけじゃなくてパワーも強かったですよね。そのときはスピードが下がったような気がしますが」

「言われてみればそうですね。あの時電撃を放った時もスピードが下がった気がします。パワーはどうかわかりませんが」

「たしかに。僕が相手したゴーレムと戦っていたときは速かったけどパワーが落ちていたね。小猫ちゃんと戦っていたゴーレムは素手で倒していたのに、僕と戦っていたゴーレムには鉄パイプを何本も刺していたし」

 

 ふ~ん。それぐらいの観察眼はあるんだ。

 ま、気づいてくれたら説明する手間が省けていいんだけどね。どうせ今から嘘つくし。 

 

「僕の神器は三つの力が出来るんです。パワー、スピード、テクニック。この3つを使うことで僕は戦闘力を発揮するんですよ」

「それは便利ですね。一つの神器で三つも違う能力が使えるなんて」

「ええ。ひとつの神器で三つの特性が使えますが、一つずつしか使えないのが欠点です」

 

 嘘です。これは悪霊たちの力で神器の能力ではありません。あと、その気になれば同時に使うことも出来ます。

 

「まずはスピード。これはゲームでいうとスピード特化です。けど上がるのはスピードがメインなので、パワーは貴方たちに劣ります。ですからスピードを使ってる間は武器を使ってヒットアンドウェイのバトルスタイルをします」

「次にパワー。これは文字通りパワーが上がります。けどスピードはあまり上がらないので、防御しながらのカウンターをメインにします。ただ、この力を使うときは相手の懐に飛び込むことを意識していますが」

「最後にテクニック。これは魔法の操作を神器が代わりにやってくれます。これは主に魔法を使った遠距離攻撃をメインにします。今の僕は未熟なのでまだ雷しか使えませんが。あと電気の応用にも気を使います」

 

 よくもまあここまで嘘がつける。我ながら感心するよ。

 けど、すべてが嘘ではない。マルコシアスは実際にスピードを、ウヴァルはパワーを、フルフルは天候に関する魔法、特に雷が使えるようになる。そして、僕は使役している術に合わせてバトルスタイルを変えている。

 

 どんな生物にも自身の能力を一番発揮する戦い方がある。例えば虎は暗殺者タイプの戦い。

 草木で自分の姿を隠し、獲物に近づいて背後を取る。そして一瞬の隙をついて敵の喉笛を噛みちぎり、獲物を窒息させる。これが虎の狩りだ。

 

 要するにこうだ。どちらが強いのではない。どうやって活かすか。それが一番大事なのだ。

 

 獅子には獅子の、兎には兎の戦い方というものがある。使い方次第では兎だろうと獅子を狩ることが出来る。逆に自分の力を活かせない獅子は兎にも劣る。

 ただ力任せに暴れるのではない。自分の力をいかに活かすか。戦いだろうと商売だろうと、これが一番大事だ。

 

「とまあこんな感じです。僕は自分が今使っている能力をどう活かすかを考えた結果、自分より大きな敵を倒すことが出来たんです」

「なるほどね」

 

 木場裕斗は剣を構えながら言う。なんで?

 

「じゃあ、君の技量がどこまで行くか、そして僕が君の技量にどこまで挑めるか。ここで試したい!」

 

 ええ~。結局戦うのかよ。

 

「では行くよ!」

 

 早速剣をどっかかから出して切りかかる木場選手。

 なるほど。たしかに速い。洗練されたその斬撃、普通ならこの一撃で決着はついただろう。けど、相手が悪かったね。

 

『アクセル!(これでいいのか相棒?)』

「おっと!(ああ。打ち合わせ通りだよドライグ)」

 

 僕は剣をでんぐり返しでよける。

 不格好だけど、転がって避けるのはかなり有効な手段だ。

 

「おりゃ!」

 

 懐に入ったと同時に立ち上がり、その勢いをそのまま拳に乗せてアッパーを繰り出す。

 普通、剣士はたとえ懐に飛び込まれても強いものだ。だって剣には石突があるのだから、刃が届かなくてもそれで殴ればいい。

 けど・・・

 

「ぐは!」

 

 木場裕斗はそんな対処も出来ずにぶん殴られてくれた。ラッキー。

 

「おりゃおりゃおりゃ!」

 

 殴る殴る殴る。ひたすら速さに任せて僕は殴り続けた。

 マルコシアスの力はパワー補助がない。だから一発殴った程度では頑丈な体を持つ悪魔は倒れてくれないのだ。

 だから数で補う。敵のペースを乱し、攻撃し続けることで防御や回避の暇を与えない。このままスピードに任せて押し切ってやる。

 

 がむしゃらに剣を振る木場裕斗。けどそこに僕はいない。すでに移動済みだ。

 同じ位置から同じとこをひたすら殴るわけないだろ。そんなことをしてしまえばせっかくのスピードが宝の持ち腐れになってしまう。

 

「…」

 

 大体20回ぐらいだろうか。やっと木場裕斗は倒れてくれた。

 

「やったー。勝った」

 

 僕は棒読みで勝利宣言をした。…マジでつまらねえ。一応俺非戦闘員だぞ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あの後、僕は適当に話を終わらせて家に帰った。

 だってあいつの話すこと全部知ってることだし必要ないもん。

 

「しっかし、なんでイービルピースってチェスの駒を模してたのか気になってたけど…要は仮面ライダーのパクリみたいなもんか」

『…今更気づいたのか』

「うっさい。戦闘は僕の役目じゃないんだし」

 

 なんだよあの悪魔の駒の付加能力って。なんでスピードタイプとパワータイプとテクニックタイプに分かれて、上位互換の駒があるんだよ。仮面ライダーのパクリか。

 騎士はガルルセイバーで戦車はドッガハンマーで僧侶はバッシャーマグナム、そして女王はタツロットのつもり?全部タツロットにしろよ。

 そういえばキバの敵幹部ってチェスをモチーフにしてたな。まんまじゃん。

 

「お、早速報告か」

 

 ポストを確認すると早速頼んでおいた資料が届いていた。

 普通なら電子メールとかだけど、あいつら機械に弱いから。それにこういったものは逆に書類の方が怪しまれないんだよね。

 

 早速報告書に目を通す。…なるほど、どうやらあの子は教会でひと悶着あったようだね。

 孤児だった彼女は神器の力で傷ついた人々を治してきた。その功績を認められ、正式に天使側、つまり教会陣営に入った。

 人を癒すその力はまさしく神の力。この子は神に祝福されたと誰もが認め、教会では聖女の称号をもらい、聖女アーシアと持ち上げられた。

 

 しかし一度だけ、悪魔を治してしまうという失態を犯してしまった。教会は悪魔を治す力を汚れた力と判断して、魔女の烙印を押して追放したらしい。

 

「・・・なにこれ?教会ってここまで馬鹿なの?」

 

 この資料を見て最初に出たのはアーシアへの同情でも教会に対する怒りでもない。呆れの感情だ。

 無論アーシアにした仕打ちはとても許されるものではない。たかが悪魔を治しただけで追放なんて、今まで聖女として活動してきた功績者にしていい仕打ちではない。

 会社に例えるなら、一つの部署をたった一人で支えてくれた英雄をたいしたことない書類でミスしたことを理由に退職金もなくクビにしたようなものだ。

 ここまで教会が馬鹿だともう・・・。ため息しか出ない。

 ・・・ま、いつものことか。

 

「・・・どうせテメエらも俺たち人間を見下してんだろ?道具みてえによ」

 

 神の愛だの信仰だのほざいてるが、テメエらも欲望に溺れている悪魔や堕天使共と本質は同じだ。自分たち以外の種族を見下し、支配して搾取しようとしている。

 道具共は使えて当たり前。傷がついたり気に食わなかったらさっさと捨てて別のに取り換えるか。人間なんで所詮は消耗品だ。俺たちのために飼い潰れろ。・・・そんな風に思ってるんだろ?

 もし違うと言うなら聞きたい。一体どこが違うのだと。現に、功績者のアーシアをまるで使い捨てティッシュのようにあっさり捨てているではないか。

 

 穢れた力? …ならば今までその力に頼ったのは誰だ? 今までその力を崇めたのは誰だ? 今までその力が悪魔も癒せると見抜けなかった間抜けは誰だ?・・・お前ら教会共だろ。

 ふざけるなよ。今まで甘い汁を吸っておいて、少しでも苦い思いをしたらすぐに捨てるのか。・・・絶対に許さねえ。

 

「…アーシア。お前はなんとしてでも俺たちの陣営に入れて見せる。三種族のような下等生物なんかにお前の人生を好き勝手にさせてたまるか!」

 

 そう決意して次の資料に目を向ける。それを見た瞬間、その資料を床にたたきつけた。

 

「・・・やっぱそういうことかよ」

 

 その資料は思っていた通りの内容だった。やはりあの教会を拠点にしていたのはレイナーレたちであり、アーシアを利用する計画を立てていたのだ。

 神器は原則取り外し不可能だが、特別な儀式をすることで持ち主から抜く事が出来る。しかし、もしその儀式を行うと持ち主まで死んでしまう。だからこの術は禁忌とされていた。

 あの堕天使はそれを行う気だったらしい。

 

「クソ!やっぱ思ってた通りだ!僕が拷問していた方が早いじゃん!」

 

 神器を抜く儀式はどでもいいわけではない。相応の準備が必要だ。

 なぜ堕天使がわざわざ悪魔の縄張りで神器狩りなんて面倒なことをするのかと疑問に思っていたが、やはりこうことだったのか。

 アーシアの神器を奪う予定のレイナーレはすでに身柄を拘束している。けどだからといって儀式を行わない確証はない。他の誰かに変更もある。ならば傍観してても解決はしない。

 

「やれやれ。やっぱ僕がすることになるのか」

『ほう。やはり何か企んでいるのか?』

「人を悪党みたいに言わないでよ」

『悪党そのものだろ』

 

 失礼な。僕はただ計画を確実にするためにいろいろと考えてるだけだよ。それを悪党だなんて。本当にひどい龍だ。

 

「まあ見てな。すぐに準備を終わらせる。…頼むぞセーレ」

『承知』

 

 セーレの力を使って僕は転移した。

 準備する以上、今日は徹夜の上学校さぼりか。今年も皆勤賞逃しちゃったよ。

 




イッセーの怒ったときの相手の呼び方。

通常「君、貴方」
怒り「お前、あんた」
ブチ切れ「テメー、オメー」
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