学園デュエル・マスターズ WildCards【完結】   作:タク@DMP

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Ace9話:アルカナ研究会、空を飛ぶ

 ※※※

 

 

 

 目を擦る。

 意識を、失っていたのだろうか。

 

「な、何だ……何が起こりやがった……!!」

 

 桑原は、譫言のように繰り返す。

 思わず、口から笑みが零れそうだった。

 それは、狂おしい程に艶やかに咲き誇る水晶の華。

 ショッピングモールだった場所は、辺り一帯が透き通った侵略者に飲み込まれていた。

 

「真っ白だ……」

「気絶していたのか……僕たちは」

 

 そして、傍には寝かされている黒鳥と花梨の姿。

 手には確かにゲイル・ヴェスパーのカードもある。

 助かった、のだろう。全員。

 風が、冷たく頬を撫でる。

 あの惨状が見えているということは、自分たちは大分高い場所に連れてこられたようだ、と桑原は確信する。

 

「何呆けてやがる」

「わぶっ!!」

 

 そして、振り返ると──そこにあったのは、だぼだぼの白衣を纏った少女、そしてその背後に聳え立つ眩い翼を広げた天使。

 

「……トリス・メギスじゃねえか!?」

 

 ファウストに狂気的な忠誠を捧げる、少女──の姿をしたホムンクルスに魂を宿しているだけで、実年齢は大分高めだが敢えて此処では少女とする──トリス・メギス。

 かつて耀達と敵対し、得意の精神汚染魔法で敵のみならず味方も洗脳して嗾けた。桑原から言わせればド畜生、外道、悪意の権化とでも言える相手でもあり、出来れば出会いたくなかった相手ではある。特に、ティンダロスがまともなだけに、余計にそれが際立つ。後から紫月から聞いた、彼女の経歴を知れば同情できなくも無かったが、それでも彼女がやったことを桑原は許してはいない。

 他の面々がどう思っているかはともかく、だ。

 

「た、助けてくれてありがとう……」

「すまない、恩に着る。今回の件、アルカナ研究会も関わってるのか?」

「たまたまだ。日本に駐留している間に、これだ」

 

 率直に礼を言う花梨と黒鳥にトリスは、怪訝にそうに言った。

 

「原因はまだ分からねえけどな」

「そういえば貴様等、他の仲間は?」

「ああ。暗野紫月達については、既にティンダロスが救助済みだ。白銀耀と火廣金も一緒だ。どうやら、あの白銀耀が何者かに敗けたみてえだけどな」

「!!」

 

 その場に衝撃が走る。

 桑原と花梨は掴みかかるようにトリスに詰問した。

 

「おい!! 白銀は、俺の後輩たちは無事なのか!?」

「耀がそんなに簡単に負けるわけないよ!!」

「敗けたっつってんだろ!? ダメージからして間違いねえんだよ。何をトチ狂ったか命に別状はないみたいだが」

「よ、良かった……って、良くない!! 耀が、ジョーカーズが負けるってことは……」

「負けたもんは負けたんだよ。身体のダメージからして間違いねえ。相手がやり手なのは、間違いねえな」

「今は現実を直視するしかないだろう」

 

 黒鳥が落ち着き払って、花梨の肩に手を置いた。

 

「白銀は勝敗はどうあれ、無事だ。そして、火廣金に紫月も」

「あー、だけど無傷ってわけじゃねえよ。暗野紫月は守護獣がやられて、ヒイロも今メディカルチェックを受けている」

「しゅ、守護獣――シャークウガが、か!?」

「って、それじゃあ火廣金は大丈夫なの!? 本当に何があったの!?」

「だから、あたしに今聞かれても困るんだよ! 不確定な情報を喋らすな! ヒイロに関しては……体内の魔力が減ってるらしいんだ。原因がどうか分からねえから、今調べてるんだが」

「だ、そうだ。だから一回落ち着け貴様ら……」

「う、う……でも、こんな状態で落ち着いてられないよ」

「お前らはまず、今自分が無傷なのを喜べや」

 

 にしても、と呆れた様子で彼女は繋げる。

 

「……あたしがもうちょい来るのが遅けりゃ、お前達人間は、今頃水晶の中に呑まれてただろーによ。加えて、あたしもファウストの命令じゃなきゃ、お前達を助けるなんて絶対にしなかっただろうがね」

「この言いよう……相変わらずだな……」

「仕方ねえだろ。あたしは、ファウストが全てだ。間違っても、テメェら人間のためにやるんじゃないぞ。ファウストの害になるものを排除するために、テメェらを利用させて貰う」

「はぁーあ……こういうところ、紫月の奴にすっごく似てるぜ……」

 

 桑原は目を側める。 

 だが、聞こえてたのか、表情も変えずにトリス・メギスの手から鋭い光の刃が伸びた。

 そして、それを躊躇なく振り払う。

 

「おいコラ。動くんじゃねえぞ」

「ちょっ、テメ――!」

 

 しまった。案の定怒らせたか。

 確かに本心ではあったが、自分も少々大人げが無かったか。

 慌てて止めに入ろうとする黒鳥と花梨。

 目を思わず瞑った。

 が、次の瞬間――背後で「ギイィッ」と甲高い悲鳴が聞こえる。

 思わず振り返ると――そこには、真っ二つに両断された鉱石の異形の姿があった。

 

「もたもたしてる場合かよ。テメェらの事だ。どうせ、この異変を解決する為に動き回ってたんだろ」

「こ、このクリーチャーは……」

「良く見ろ。テメェらが寝てる間に、湧いてきやがった」

「!!」

 

 見ると、今度は次々に鉱石の姿をしたクリーチャーが姿を現す。

 いや、それだけではない。

 街を覆う水晶から、夥しい数のドラゴンが姿を現しているのだ。

 

「す、すまん、また助けられた……」

「礼は要らねえよ、桑原甲。今テメェらに死なれたら、困るんだよあたし達は」

「……俺達に死なれたら、困る? だと」

「それと、だ」

 

 ギラリ、と鋭い視線が桑原の胸を握りつぶした。

 凄まじい形相で口角を釣り上げたトリス・メギスは、

 

「暗野紫月には、いつかぜってー借りを返す……!! 次、あの少女と私を引き合いに出してみろ? その首がこれでぶっ飛ぶぜ、クックッ……!!」

 

 抑えきれないような笑みを零すのだった。

 

「う、うわあ、凄い笑顔……一体、どうしてそんな」

「あの小娘、あんとき勝手に人の頭に自白魔法掛けやがったんだよ。良い趣味してやがるぜ」

「し、紫月ちゃん、やり口が怖い……でも、それ完全に逆恨みっていうか」

「小娘、何か言ったか?」

「にゃあ!? い、いえ、何にも……」

 

 自分も見てくれは小娘じゃん、と言いかけた口を抑え、花梨はエリアフォースカードに手を掛ける。

 

「まあ、雑魚ならアルファリオンで散らす事が出来る」

「散らせるだけだろ? 結局はデュエルしなきゃいけないんじゃねーのか?」

「今までの奴等とこいつらはちょっと違うんだよ。ワイルドカードとは出自が違う」

「ふむ、そういう事なら」

 

 言った黒鳥の背後から、顕現する阿修羅ムカデ。

 甲高い笑い声をあげて凶器を大量に取り出す。

 その力に引き寄せられてか、鉱石のクリーチャー達が大量にたかってくるが――

 

「殲せ。阿修羅ムカデ」

『御意、ですねェ!!』

 

 乱雑で、振り回しただけとも言える斬撃。打撃。そして、刺突。

 しかし、それが一瞬で周囲のクリーチャーを薙ぎ払っていく。

 長い胴体を伸ばし、まさに鬼神の如く暴れまわっていく。

 

「っ……よし、ゲイル・ヴェスパー!! 黒鳥師匠とムカデ野郎を援護しやがれ!!」

『分かっているよ! ヒーローの出番だ!』

 

 今度は旋風。

 飛び掛かってきた龍のクリーチャーが、それに押し留められ、トドメと言わんばかりに閃光が待った。

 

『せめて、華やかに散り給え!』

 

 音も無く真っ二つに切り裂かれるクリーチャー。

 ゲイル・ヴェスパーのマフラーは羽根としての飛行能力のみならず、刃としての役目も備えているようだった。

 

『ははははははは、他愛も無い!』

「おい、油断すんじゃねえぞ」

 

 更に、飛んでくるクリーチャーをトリスのアルファリオンが雷で撃ち落としていく。

 たちまち、包囲されていたはずの彼らは窮地を脱するかのように思われる。

 しかし、水晶から湧き出たクリーチャーは未だに増え続けていた。

 留まる事も、途絶える事も知らずに。

 それでもなお、一騎当千の戦いを3体のクリーチャーは繰り広げていたのだった。

 

 

 

 ※※※

 

 

 

 阿修羅ムカデが屠り、ゲイル・ヴェスパーが吹き飛ばし、アルファリオンが撃ち落とす。

 守護獣を持たない花梨は、効率こそ最悪ではあるがエリアフォースカードによる1人1殺で屋上に上がってきたクリーチャーを倒していたが、その一騎当千の様を見て、言葉を失いつつあった。

 刹那。

 少女は見られている事に気付き、背筋が凍るのではない。

 背筋の硬直で見られている事に気付くのである。

 すぐさま本能的にその場を飛び退くと、そこに舞い降りたのは羽根を広げた巨龍。

 そして、足元を無数の光の弾がマシンガンのように穿っていく。

 

「眩しい……!」

 

 光の弾の雨を避けながら、激しい光を放つその龍を前に花梨は目を覆いながら走るしかなかった。

 太陽を背負っているかのような眩しさだ。

 巨槍を掲げる龍は咆哮する。

 花梨は突発的にエリアフォースカードを掲げてみせたが、

 

「グリュアアアアアアアアアア!!」

 

 次の瞬間、今度は龍の天使の如き羽根が刃となって降り注ぐ。 

 それどころか雷鳴が鳴り響き、槍から放たれる。

 ダメだ。近付けない。あまりにも攻撃が激しすぎる。

 このままでは黒焦げになるのは最早時間の問題であった。

 

「やべえっ……何だあのデカブツッ……!」

 

 桑原は急いでゲイル・ヴェスパーに助けへ向かわせようとする。

 しかし、それは叶わない。

 小型クリーチャー達が束になってゲイル・ヴェスパーを押さえつける。

 彼はそれに手間取って、なかなか動くことが出来ないのだ。

 

「そんな雑魚、一気に吹き飛ばせねえのか!?」

『くそっ、うっとおしい……! むっ……!?』

 

 雷鳴が迸る。  

 水晶から、更に軍勢が湧き出てくるのだ。

 トリス・メギスも応戦しているが、数が──そう思い、彼女の方に目をやった時、桑原は思わず叫んだ。

 

「って、あいつ何やってんだ!?」

 

 

 

 ※※※

 

 

 

「──刀堂!!」

 

 叫び声。

 花梨は腹を抱えられたまま視界が暗転した。

 とうとう死んだのかと一瞬思ったが、次の瞬間には再び元の景色が広がっていた。

 腕で抱えられている事に気付く。黒鳥だ。

 

「黒鳥さ――」

 

 言いかけて、花梨は気付く。

 黒鳥の顔が、青褪めている事に。

 

「っ……ちょっと!? 黒鳥さん!?」

「何だ? 大したことは無い。とにかく、あの怪物を倒すのが先決だろうよ」

「大したことあるよ! 黒鳥さん、顔は真っ青だし、息は絶え絶えだし、眼は焦点が合ってない! どうしたの!?」

『黙りなさい、小娘ェ……!』

 

 口調こそいつも通りを装ってはいたが、阿修羅ムカデも疲弊しきった様子である。

 

「逃げ道が無いなら、死力を尽くして戦うしかあるまい、違うか?」

『その通り。こんなところで死んでいる場合ですかァ……!!』

「そんな……!」

 

 さっきのクリーチャーが飛び掛かってくる。

 阿修羅ムカデは腕を全て絡みつけて、天使龍の動きを止める。

 しかし。力量差は確実に表れており、既に息切れしかかっていた。

 

「っ……! そうだ! あたしのエリアフォースカードを使ってよ! そうすれば、一時的でも魔力を供給できるはずだよ!? 前に耀、言ってたもん! 目覚める前なら、エリアフォースカードを貸し与える事も出来る、って」

「ぐぬぅ、試すか……しかし、一瞬でも貴様を危険に晒す可能性があるなら……!」

「お願い!!」

 

 花梨は黒鳥の手を握った。

 

「……これ以上、倒れる人は見たくない……! あたしは足手まといかもしれないけど、今やるべきことをやるだけ……!」

 

 彼女はエリアフォースカードを黒鳥に手渡した。

 しかし。

 次の瞬間、赤い紫電がカードから迸った。

 

「……なっ!!」

 

 黒鳥はカードを取りこぼす。

 

「何で……!? 何でなの!?」

戦車(チャリオッツ)は……一度目覚め、主を既に認めていると言っている……! おのれ、選り好みの激しい奴……! 紙切れの癖に……!』

戦車(チャリオッツ)!! お願いだから!! 力を貸して!! なら、今此処で目覚めて!! あたしに、力を貸してよ!!」

 

 しかし、戦車(チャリオッツ)は何も答えない。

 花梨のカードに握る手に力が籠る。

 歯を食いしばり、何も出来ないことに苛立ちが募った。

 

「肝心な時に……!!」

「良い、刀堂……」

 

 花梨の頭に手が置かれた。

 足が震えてはいるが、黒鳥は再び立ち上がろうとしていた。

 

「僕はいつも、大事な物を見過ごして、諦めて、最後には失ってきた。だから、最後の最期で、見限られるのだろう……天命に、さえも」

「黒鳥、さん……?」

 

 凄絶に口角を釣り上げて、彼は言い放つ。

 

「逃げろ。僕と阿修羅ムカデで奴を引き付ける。その間に、貴様は桑原と一緒にあいつの案内で離脱しろ」

「嫌だッ!!」

 

 黒鳥は言葉を失った。

 花梨の手は、膝をついた彼の胸倉を掴んでいた。

 

「次にそんな事言ったら、問答無用でぶった切るよ、黒鳥さんッ!」

「っ……!」

「お兄を、耀を、皆を、あんなに心配してて、あんなに気遣って、現に今も助けてくれた黒鳥さんを、あたしは見捨てられない!!」

「刀堂……!」

 

 花梨は、黒鳥の手を握り締める。

 

「だが、僕は……」

「足手まといのあたしが言うのも、筋違いかもしれないけど……! あたしは、黒鳥さんに、こんな所で死んでほしくない……! お兄が尊敬した人に、死んでほしくないよ……!」

「何を言う。僕は死にに行くつもりはないぞ」

「無自覚なら、もっとタチが悪いよ!!」

 

 ぎりっ、と黒鳥は歯を噛み締めた。

 こんな少女に心配されてしまうほど、今の自分の身体は衰えているというのか。

 しかし、彼はそれでも倒れる訳にはいかなかった。

 彼は負い目を感じていた。エリアフォースカードを持たない負い目を。

 最年長である自分が牽引しなければならないのに、力不足である事を。

 うっすらと近付く死の実感。それでもまだ、死ぬわけにはいかないのに──

 

 

 

『ギャアアッ!!』

 

 

 

 ガシャアアン!! 

 

 

 

 フェンスに叩きつけられる阿修羅ムカデ。

 同時に、黒鳥は吐血した。負傷した己のクリーチャーのダメージを肩代わりするように。コンクリートに血が撒き散らされる。

 天使龍は、いよいよ2人と1体に止めを刺すべく、詰め寄る。

 

「いよいよか……覚悟を決める時が来たようだ……!」

「大丈夫……エリアフォースカードで……今度こそあたしが……!」

 

 しかし、容赦なく稲光が再び迸る。 

 迫る死。

 万事休す。そう思われた時であった。

 

 

 

「テメェら、伏せろ!!」

 

 

 

 螺旋状の光がその場に迸った。

 そして、天使龍の身体をぐるぐると巻いていき、拘束する。

 天使龍をすり抜けるようにして走る人影。

 トリス・メギスが1枚のカードを掲げていた。

 

「DNA・スパーク……何とかこれで奴の動きは止められた!」

「すまない──」

 

 言った矢先、更に新手がフェンスを乗り越えて現れる。

 しかし、主力である巨大天使龍が動きを止めた事で、状況は好転しようとしていた。

 

「ちっ、猶予はもう無い。黒鳥レン、阿修羅ムカデ。提案がある。あたしは雑魚共を引き続き全部撃ち落とす」

「だが、僕は──」

「アルカナ研究会から、お前に渡すものがあるんだよ。本来は、ギリギリまで取っておけ、とのことだったが……」

「何だと?」

 

 頷いた彼女は、首にぶら下げていた鋼鉄のプロテクターを黒鳥に差し出す。

 それを開くと、中には確かに白紙のカードが入っていた。

 

「エリアフォースカード──!?」

『しかも、これは……!』

「はっ、あたしらもたまにはファインプレーするだろ? このエリアフォースカードの魔力の波形が、阿修羅ムカデと一致した。これで、お前もまともに戦える」

「でも、何で今まで出さなかったの!? それさえあれば黒鳥さんは全力で戦えたのに!」

「理由がある。が、最早説明してる時間は無い! 良いか、黒鳥レン。お前ほどの男がそう簡単に飲まれるとは考えにくい。だが、予め警告しておく」

 

 トリス・メギスは、念を押しながら彼にカードを突き付けた。

 

 

 

「こいつは、お前の思っている以上の業物だ。おぞましい程の魔力が秘められている。お前の命は、保証出来ない」

 

 

 

 そういうと、トリス・メギスは再び現れたクリーチャー達を迎え撃ちに行く。

 

「命の保証は無い? よく言うよ」

 

 彼は自嘲した。自らの運命を。

 しかし、呪う事はしない。今までも、これからも、きっとそうなのだと確信している。

 

「僕は常に……死ぬ気で戦っているからな」

 

 エリアフォースカードを握り締めた。

 身体中に魔力が溢れた。

 

「黒鳥さん!」

「済まなかったな、刀堂。僕としたことが、弱気になっていたようだ。ノゾムの妹である貴様を見込んで、頼みがある」

「え、えと、何かな? デュエマはお兄みたいには戦えないけど──」

「あの怪物と決着を付ける。奴が恐らく司令塔だ」

「!」

「守護獣の攻撃ではびくともしなかった相手だ。しかし、デュエルなら、そして僕のこのデッキなら、この怪物を確実に殺れる──背中を任せるぞ」

「……はいっ!」

 

 背中合わせで戦う事になった黒鳥と花梨。

 だが、エリアフォースカードを受け取った黒鳥は──そこから流れる魔力で既に活力を取り戻しつつあった。

 

『マスター! 間違いないですよォ! これは、私の主のエリアフォースカード! まさか、まさか、こんな形で元に戻るとは!』

「ああ。そのようだ」

 

 どんな力が秘められているかは分からない。

 しかし、もう彼は迷わなかった。

 

「トリス・メギスに、桑原。そして刀堂。貴様に……支えられているというのに、此処で簡単にくたばるわけには、いかなかったな」

 

 彼はエリアフォースカードを掲げる。

 そこに刻まれていく文字。

 阿修羅ムカデの身体も闇の力に覆われていくようだった。

 

『溢れる……流れる……迸るゥ……! 最高ですよォ!』

「行くぞ、阿修羅ムカデ。散々にやられたお礼参りと行こうではないか」

『了解ですねェ!!』

 

 狂喜と嬌声と共に、漆黒の空間が開く。

 しかし。

 

 

 

『HYAAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHA!!』

「ッ……!?」

 

 

 エリアフォースカードから流れたのは高笑い。

 そして、今までに聞いたことが無い不気味な声が響き渡る。

 

Wild(ワイルド)ォ……Draw(ドロー)……ⅩⅢ(サーティーン)……』

 

 蝕むような、心を握りつぶされるような声は花梨にも聞こえた。

 手にしている黒鳥の心境は彼女には推し量れない。

 いずれにせよ、最早正気では扱えないおぞましいものであることは確かだった。

 

「面白いッ……これが、エリアフォースカードの力か……! 良いぞ。死の美学を、奴に見せてやろうではないか!」

 

 

 

Death(デス)……!!』

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