学園デュエル・マスターズ WildCards【完結】 作:タク@DMP
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「僕のターン、《ダーク・ライフ》を唱える。山札の上から2枚を見て1枚を墓地に、1枚をマナゾーンに置く! 《集器医ランプ》を墓地に!」
黒鳥と天使龍のデュエル。
2ターン目後攻。《ダーク・ライフ》を唱えて順調な滑り出しを決めた黒鳥。
一方の天使龍は今貯めた、光で構成された3枚のマナをタップした。
「断罪……断罪……愚かなる人の子よ……! 呪文、《エンジェル・フェザー》! その効果により、自分の山札の上から3枚を表向きにする。その中から光のコマンド1体と光の呪文1枚を手札に加える」
「《天門の精霊 ヘブンズ》に《ヘブンズ・ゲート》を手札に加えたか……分かりやすい奴め」
光の大型ブロッカーを2体踏み倒す呪文、《ヘブンズ・ゲート》。
それを軸にしたデッキが、所謂天門と呼ばれるデッキだ。展開した時の制圧力と防御力はトップクラス。
正攻法でこじ開ける事は不可能になる。
「手が付けられなくなる前に奴を倒さねばならないか」
『マスター。ご安心を。我が毒は如何なる猛者も殺す事が出来る。例えそれが神の加護を受けし天使だとしても、その神ごと殺してくれましょう!!』
「ならば良いのだがっ……! 僕のターン、《カラフル・ナスオ》を召喚!」
現れたのは民族衣装に身を纏った茄子のクリーチャー。
大地と墓場を操るその野菜に導かれ、魂が舞い踊る。
「山札の上から4枚をマナゾーンにタップして置く。その後、マナゾーンから4枚を墓地に置く!」
阿修羅ムカデはエリアフォースカードを得た事で、魔力が復活している。
その力は未知数。まだ、黒鳥にすら扱いきれるか分からない。
「貴方の傲慢が……貴方を滅ぼす。《天星の玉 ラ・クルスタ》を召喚。登場時に貴方のマナゾーンのカードは私よりも多ければ、マナゾーンのカードを2枚増やす」
「……しまった……!」
「残りの2マナで、《制御の翼 オリオティス》も召喚してターンエンド」
これで、天使龍のマナは6マナ。
次のターンに《ヘブンズ・ゲート》が打てる範囲内だ。
更に黒鳥としては踏み倒しの邪魔になるであろう《オリオティス》の排除をしなければならない。
「ちっ、止むを得ない……! 此処で墓地を溜めておきたかったが……5マナで《集器医 ランプ》を召喚! キズナ能力で、登場時に相手のクリーチャー1体のパワーをマイナス5000する。さあ、無様に骸を晒せ!」
地面から這い出したのは、巨大な医療器具を背負った闇医者。
両手のチェーンソーを勢いよく回転させると、《オリオティス》を一瞬でバラバラに解体してしまう。
「パワーが0になったクリーチャーは破壊される。《オリオティス》、撃破だ」
「ほう。やりますね、人の子よ。だが、無意味だ」
「無意味だと?」
「ええ。裁きの加護が私には与えられている。断罪の時間です」
「1つ、答えて貰おうか」
黒鳥は人差し指を突き立てると毅然とした態度で言い放った。
「貴様らの主とは何だ? あの水晶の事か?」
天使龍はしばらく何も言わなかった。
しかし。含み笑いが、その大口から漏れている。
それは次第に大きくなっていく。
「フ、フハハハハハハハハハ!! そんな小さな殻に収まる存在ではないよ!」
「何を言っている? 質問に答えろ」
「あの方は神さえも超越する! いや、元よりこの世界に神など無いのかもしれないな? さもなくば、今、貴様等はこうやって絶望の淵に立たされていないのだから」
「神だと? バカバカしい、ただの偶像に過ぎないものだ」
「違う! 救世主だよ。この世にあるすべての命を救済するため、命の罪を全てに代わって贖うのがあの方の使命! 我々は、その障害となるものを排除する……神の使い、天の使い、故に天使!!」
「おこがましいにも程があるぞ」
憤りを隠せない様子で黒鳥は唸った。
しかし、傲慢な態度で天使龍は叫び散らす。
「貴様等下等な生命に何が分かる!!」
龍はまくし立てた。
「黒鳥レン。貴様の深層心理を知れば見れば分かる。どす黒い闇が淵に沈殿している。さぞ苦しい人の生を送ってきたのだろう。だが、もう貴様は苦しむ必要は無い。生への執着を貴様から剥がす事で、貴様を真の救済へ導くことが出来る、そう、我々ならば!!」
「……」
「故に、貴様の命、今、神の元に返すとしよう!!」
次の瞬間、光が天使龍を包み込んだ。
「7マナで、《龍覇 セイントローズ》を場に出す! そして、その能力で《天獄の正義 ヘブンズ・ヘブン》を場に出す!」
「ドラグハート・フォートレスか……!」
現れたのは巨大なる聖堂。天翼を有す使者に導かれ、超次元からその強大なる姿を顕現させた。
目もくらむような極光が黒鳥を照らした。
「……正義、か……これが貴様らの正義ということか……!」
「《ヘブンズ・ヘブン》の能力でターンの終わりに、光のブロッカーを場に出す! 《天門の精霊 ヘブンズ》を場に出す! そして、その効果で──我が真の姿をお見せしよう!」
更に天界への門が開いた。
天使龍が自ら戦場にその姿を現した。
巨大なる聖堂が開く。
天獄の門へ通じる道から、翼がはためく。
『マスター! 感じますよ! エリアフォースカードのものですねぇ!』
「何だとッ……!?」
「我は節制……全てを調和させる、節制なり。《新・天命王 ネオエンド》!!」
天使龍の王が姿を現した。
暴風が吹き荒れて、黒鳥の服を巻き上げる。
カードごと吹き飛ばされてしまいそうになったのを踏み止まり、彼は目の前の敵を睨みつけた。
「道理で強い訳だ……! 天使龍の中でも最上格の大物……! 美しい……!」
「そうか。では、その美を抱えたまま、果てろ、黒鳥レン」
黒鳥は敵の場を見やった。
《ラ・クルスタ》に《ネオエンド》、《ヘブンズ》に光のドラグハートがあればブロッカー化する《セイントローズ》。
既に龍解条件は達成されてしまっている。放置していれば黒鳥は負ける。だが、厄介なのは除去耐性を持つ《ネオエンド》だ。あのクリーチャーは、先ほどの効果に加えて、自分のドラゴンが攻撃する時、相手のクリーチャーを1体選び、フリーズするという能力まで有している。
一度動かれれば、最早勝ち目は無い。
「このターンで決めるしかない、というわけか」
黒鳥は歯噛みした。
墓地に落ちているのは、《グスタフ・アルブサール》と《阿修羅ムカデ》、そして《集器医ランプ》のみ。
そもそも、ぽんと手渡されたも同然のこのデッキの使い方など、今はまだ分からないに等しい。
『我がマスター、まさか怯えているのではありませんよねェ?』
「……まさか」
彼は小さく首を横に振った。
「苦しい人の生、か。阿修羅ムカデよ。貴様にとって、この世はどうだ?」
『生き地獄でしたねェ。色々ありましたので……』
「そうだな。僕にとっても、この世は生き地獄だ。だが、死にたいと問われればそれも違う」
彼はカードを引いた。
前髪を払うと、彼は鋭い目で傲慢な天使龍を睨んだ。
「まして、それを誰かから憐憫される覚えも無い。救済などハナから僕は求めていない。僕の因縁は、僕の手で引導を渡す。それまで死ねない。死ぬわけにはいかない!!」
『地獄は楽しむくらいが丁度いい! 落ちてからは這い上がるのみですからねェ……!! 私はもとより、死に掛けの身をマスターに救われた身。地獄など、たっぷり味わった! この程度はどうってことは無いのでねェ!!』
黒鳥はエリアフォースカードを握り締めた。
そして、背後の阿修羅ムカデに問いかける。
「覚悟は出来ているか? 貴様に、僕の地獄を味わってもらう。一緒に付いてきてもらうぞ」
『ええ、楽しみにしていますとも』
「阿修羅ムカデよ。故に、僕らの地獄紀行の邪魔をする奴は……」
『ええ、我がマスター。故に、その妨げになるカスゴミは……』
2人の身体が、
「『迷惑千万、死んでもらうッ!!』」
黒鳥は6枚のマナを払う。
ネオエンドは、その鬼気迫る表情に何処か人の道を外した何かを感じ取っていた。
「なっ、何だ……!? いきなり!? 気でも狂ったか!?」
「知るか。貴様は何も出来ず、このまま僕に一歩も触れる事も出来ずに無様に、圧倒的な敗北を味わう事になるだろう──6マナで呪文、《呪術と脈動の刃》を唱える!!」
『その効果で、マナゾーンからS・トリガーを持つ呪文を1枚唱えますよォ!!』
次の瞬間、地面に大量の凶器が生えていく。
そして、幾つもの紫電が迸る。
そこから地獄へつながる戒めの門が開かれた。
「僕を戒めを今、解き放つ──《
「ッ……!! おのれ、《ヘブンズ・ヘブン》のロックをすり抜けるとは……!!」
「その程度、ロックとは生温いわ、愚か者が!! 地獄から蘇れ、猛毒の闇医者よ!! 《阿修羅ムカデ》──」
黒鳥が墓地から繰り出そうとした《阿修羅ムカデ》のカードは書き換えられていく。
「否、これは──この僕に、そしてこの僕の切札にも、まだ成長という名の伸びしろがあったとは……!」
戒めの門から、数多の凶器を束ねた闇医者が姿を現した──
「蠍の火に導かれし魂よ!
根絶やせ、
呪縛と戒めから解き放たれたのは、全ての命を壊す黒き蟲。
死と生の堺さえ超越した墓場の番人。
全ての魂を操り、そして手繰り寄せる。
生かすも殺すも、全て彼の意のままだ。
「……何時ぶりだろうな……この感覚は。もう何年も前に、忘れ去ったと思ったのに──」
『これが私の……真の姿……!』
「……阿修羅ムカデ。いや、阿修羅サソリムカデよ」
黒き蟲は頷き、その凶器を振り上げた。
「生きる事は地獄だ。しかし、死は救済ではない。それもまた、終わりなき無限の地獄の始まりだということを、奴に思い知らせてやろうではないか!!」
『御意ですねぇ!!』
「なっ、貴様! おのれ、闇文明め! 命を弄ぶ貴様らに慈悲も慈愛も無いわ! すぐにこの私が救済──」
「貴様には永遠の苦しみを与えてやろう。打ち首と獄門では、飽き足らん。地の果てまで引きずり回してくれる」
阿修羅サソリムカデの踏みしめた骸の大地から、黒い光が2つ、迸る。
「《阿修羅サソリムカデ》の登場時効果発動。自分の山札の上から2枚を墓地に置く。その後、墓地からマフィ・ギャングを2体まで場に出す。墓地に落ちたのは《復活の祈祷師 ザビ・ミラ》と《集器医ランプ》だ。そして現れろ、地獄の剣士・《グスタフ・アルブサール》と2体目の《阿修羅サソリムカデ》を場に出す!!」
現れたのは大剣を掲げ、冠を被った影の剣士。
その能力は、キズナプラスによって進化元を墓地に置く事で墓地から進化ではないクリーチャーを蘇生出来るというもの。
黒鳥は、その壮観な魂を手繰り寄せていく。
「お終いだ。これで全ての準備は整った。これで、どうやってこのデッキを動かすか。そして、貴様を殺すか完全に把握した」
「何ッ……!?」
「嘗めるなよ。僕は『
その時、地獄の門が開かれる。
おぞましい怨嗟の声が響き渡った。
「2体目の《阿修羅サソリムカデ》の効果発動。墓地から《集器医ランプ》を2体、場に出す。《ランプ》が場に出た時、キズナ能力で場のクリーチャー1体のキズナ効果を使う事が出来る。使うのは、《アルブサール》のキズナ効果だ」
「なっ……!? 墓地からクリーチャーが現れるというのか!? おのれ、どれほど生命を冒涜すれば気がすむのだ!!」
「貴様等にだけは言われたくないが……まあいい」
黒鳥は腕を組むと、そのまま糸を手繰るように魂を呼び寄せた。
「その効果で《復活の祈祷師 ザビ・ミラ》を場に出す!!」
現れたのは異界の悪魔だった。その大口は超次元へと繋がっている。
宙には、鯨座の星が不気味に輝いていた。
《ザビ・ミラ》は場に出た時に自分の他のクリーチャーを好きな数だけ破壊し、その数だけコスト6以下のサイキック・クリーチャーを1体、自分の超次元ゾーンからバトルゾーンに出すという能力を持つデーモン・コマンド。
黒鳥は、その効果で自分の場のクリーチャーを贄に捧げる。
鯨の如き大口が開いた。
それと共に、地獄の剣士が飲み込まれ、最後は大口から超次元の穴が開く。
「《サソリムカデ》2体、《ランプ》2体を破壊することで、コスト6以下のサイキック・クリーチャー、《ヴォルグ・サンダー》を場に出す!! それも、4体だ!!」
「4体、だとォ!?」
雷鳴と共に、4体の餓狼が姿を現す。
そして、稲光がネオエンドの知識を奪わんとばかりに撃ち落とされた。
何本も何本も、まるで剣が降り注ぐかの如くだった。
「《ヴォルグ・サンダー》の効果発動。相手か自分のどちらかを選び、山札からクリーチャーが2体出るまで墓地に置かせる。効果の対象は全て貴様だ。最低でも山札を8枚、削ってもらうぞ」
「なぁっ……!!」
雷撃で山札が消し飛び、消えていく。
一気に10数枚ものカードが墓地に送られたようだった。
「だが、この程度では……」
「まさか、もう終わったと勘違いしているのではないだろうな?」
「何!?」
ネオエンドは驚愕した。
見れば、墓地から屍のクリーチャーを操り人形の如く操っている阿修羅サソリムカデの姿が見える。
その時、彼は初めて恐怖というものを知った。
何と巨大で、不気味で、そして──醜悪な怪物なのだろうか!!
「2体目の《ランプ》の《グスタフ・アルブサール》を対象にしたキズナ効果がまだ終わっていない。その効果で《阿修羅サソリムカデ》と、それを進化元に《グスタフ・アルブサール》を場に出す!!」
「なっ……!」
「2体目の《サソリムカデ》の効果で山札から2枚を墓地に置き、《ランプ》を2体、再び場に出す。その効果で《グスタフ・アルブサール》の効果を2回使う。今ので墓地に落とされた2体目の《ザビ・ミラ》を場に出す」
1度目のキズナ効果で現れたのは、2体目の《ザビ・ミラ》だった。
蛇の悪魔は、《ヴォルグ・サンダー》4体と1体目の《ザビ・ミラ》を飲み込んでいく。
そして、再び超次元から雷鳴と共に《ヴォルグ・サンダー》が4体、稲光となって現れた。
「貴様の知識。削らせて貰おうか。少しずつな……!!」
「おのれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
絶叫が響き渡る。
電気椅子の拷問を上回る衝撃が天使龍の脳を焦がしていく。
山札は残り僅かだった。
「そして、2体目の《ランプ》の効果で、1体目の《ザビ・ミラ》を蘇生させる」
「ひっ……な、なんだ、死、死にたくない、何だ、この恐怖感は……私は、怖くなんか、無いぞ!! し、死にたく──」
「それが恐怖だ」
黒鳥は指を突き付けた。
「呪文もそこそこあるであろうそのデッキも──3度、フルの《ヴォルグ・サンダー》4体による山札削りには最早何もできまい。防御が硬いデッキが相手ならば、そもそも防御無視の一撃を何度も与えて突き崩せば良い」
「わ、ワたし……はぁ……!!」
「刀堂花梨──不思議な少女だ。まだ弱いが、心はとても強い。襟元を正された以上、僕もまた信念を貫くしかない」
『同じく。私もまた、この世界の地獄を味わい足りないのでねェ。それを奪うなら、殺します』
「僕達は、貴様等の勝手な視野狭窄な正義に付き合わされている暇はないんでな」
「死、死、死、死っ……!!」
「終わることなき、無間地獄へようこそ」
黒鳥は宣告した。風前の灯だった天使龍の知識は、迸る雷鳴と絶叫と共に、全て焼き切られるしかない。
天使龍の、死を──
「死ィィィィィィィィーッ!!」
絶叫が響き渡った。
底知れぬ深淵と恐怖への絶望。
それを黒鳥は、容赦なく突きつける。
終わりなき無限の地獄の果てを。
「《ザビ・ミラ》の効果で《ヴォルグ・サンダー》4体を破壊し、再びバトルゾーンへ──貴様の山札のカード、全てを墓地に置かせて貰う」
──山札が無くなれば、その瞬間敗北が確定する。
即ち、ライブラリアウトが成立した──