学園デュエル・マスターズ WildCards【完結】   作:タク@DMP

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Ace11話:枷

 消滅していくカード。

 それと共に、周囲にあれだけ蔓延っていたクリーチャー達も次々に消えていく。

 やはり、あのネオエンドが司令塔だったのか──黒鳥は、そう思いながら、コンクリートの床に落ちた《ネオエンド》のカードを拾い上げる。

 だが、節制のエリアフォースカードもまた何処かへ飛んで行った。

 

「……肝心のカードを逃がしたか」

「黒鳥さん、大丈夫!?」

「……一先ずは安心だな。また、何時第二波が来るか分からんが」

 

 疲労がどっ、と来たのか彼はへたり込む。

 

『マスター……やりましたね』

「ああ。おめでとう、阿修羅ムカデ」

『ヒャハハハハ、何。私は貴方の命ずるままに殺しただけですよォ。しかし、あのカードをどうして魔導司が持っていたのか……』

「何、それは後だ」

 

 彼は振り返る。

 そこには、魔導司の少女の姿があった。

 

「トリス・メギス。ありがとう。貴様の助けが無ければ、僕は死んでいたかもしれないからな」

「はっ。これでも博打だったんだよ。やはり、死神の名を冠すエリアフォースカードというだけあって、どんなリスクがあるか分からなかったからな」

 

 彼女は溜息をついた。

 博打は当たったようで、一先ずは安堵しているのだろう。

 

「それに礼なら、あっちでクリーチャーの軍勢食い止めてた桑原甲にも言ってやれ」

「……それもそうだな」

「所で、今回のクリーチャーには何で魔法やクリーチャーの攻撃が効いたの?」

 

 黒鳥は、それが未だに晴れない疑問だった。

 ワイルドカード、トークン、守護獣はエリアフォースカード絡みの空間に引きずり込み、デュエルしなければ倒せない。

 それは、特殊な条件で実体化したクリーチャーの特異性質のようなものなのだ。

 にも関わらず、あの軍勢はクリーチャーの攻撃どころかトリス・メギスの攻撃で倒せるものまでいた。

 

「ってことは、ワイルドカードや守護獣ではない、ということになるよね?

「あたしの見解ではそうだ」

 

 彼女は眼鏡を掛け直す。決まりが悪いように。

 

「あれは全く別のルールで生まれたクリーチャー、もしくは──召喚された本物のクリーチャーということになるが。まだ、何も分からねえ!」

「分からなかろうが何だろうが別に良いだろーがよ!」

 

 全員の視線は、声の方向に向けられた。

 そこには、恐らく、今回最も多くのクリーチャーの相手を受けおったであろう桑原の姿があった。

 

「もうヘロヘロだぜ俺は……」

「……ああ、済まんかった。迷惑を掛けたな」

 

 へたり込む桑原。

 花梨も溜息をつく。

 

「確かに……あたしも疲れた……今日だけで何回デュエルしたんだろ」

「だが、まだ何も終わってはいない」

 

 黒鳥は水晶のそびえる街を見据えた。

 

「あの水晶の正体を……今一度確かめねば」

 

 彼は拳を握り締めた。

 全ての元凶たる水晶。あの中身が何なのか。

 救済とは何なのか。そして、彼らの言う裁きとは。

 狂信的なクリーチャーの言っている事など分かりたくもないが……あの中に間違いなく真実はある。

 だが、そう思った時。花梨が彼の顔をのぞき込んだ。

 

「黒鳥さんっ」

「……刀堂」

 

 彼女は笑みを浮かべる。

 

「良かった。黒鳥さんが無事で。これで本当に一緒に戦えますね!」

「……ああ」

 

 負い目はもう無い。

 また、自分は戦う事が出来る。

 もう戦えない後輩に代わって、新たな世代を牽引する義務があるのだから。

 

「あれ? 黒鳥さん?」

 

 その時。

 花梨は何かを見つけたような声を上げた。

 

「ねえ、その右手に付いてるの何?」

「何だと?」

「掌から何か見えてるんですけど……」

 

 彼は自らの右手を裏返す。

 その掌には──

 

 

 

「おい、来たぞ!」

 

 

 

 

 トリス・メギスの声で全員の視線は彼女に、そして次いで空に向けられた。

 

「なっ、あれは──」

 

 まるで突如現れたかの如く、それは空中に顕現する。

 得意げにトリス・メギスは言い放つ。

 

 

 

「これがアルカナ研究会の飛行艇──エアロマギアだ!」

 

 

 

 ※※※

 

 

 

 ──。

 目覚めると、そこは部屋だった。

 涙の乾いた目を擦る。もう、何も出て来はしなかった。

 辺りを見回す。暗さに目が慣れる。

 てっきり、独房のような酷い場所かと思った。

 しかし、ベッドは思いの外柔らかく、部屋もクリーム色の壁に囲まれ、リノリウムの床が敷かれた洋風の寝室のようだった。

 何が起こったのか。

 どうして自分が此処にやってきたのか、思い返す。

 

「……ワンダー、タートル……」

 

 そう呟いても、もう誰も答えなかった。 

 光を見失ったようだった。

 今まで、ずっと傍にいた存在がもう居ない。

 まだ、そんな実感は湧かない。まだ生きているかもしれない、とわずかに思っていた。

 部屋から光が差し込んだ。

 そして、扉が開く。

 そこには──男の影があった。

 

「或瀬ブラン。我が主がお呼びだ。来て貰おうか」

「……今更、何の用デスか」

 

 細身の男は、つかつかとベッドに歩み寄る。

 そして、その鋭い機械のような瞳でブランを睨んだ。

 見ただけで、只者ではないことが理解できた。物理的に叶う相手ではない。

 そもそも人間かどうかも怪しい、とブランは推測する。

 

「用? 我が主は貴様と食事がしたいと言っている」

「食事に毒でも盛るつもりデスか」

「まさか。そんな回りくどい方法で殺すくらいなら、とっくにあの時貴様は死んでいる」

「なら何デスか」

 

 語気はどんどん強くなっていく。

 

「……ふざけるな。命じゃないなら……私から、これ以上何を奪うつもりデスか!!」

「食事を与えてやると言っているのだ」

「”一昨日来やがれ”、デスよ」

「ふむ。日本語を覚えてから、口が悪くなったと伝えておくか。だが、貴様としても我が主──ロードがどうして今の計画に至ったのか、気にならない訳ではあるまい?」

「……」

 

 彼女は、口を食いしばる。

 知りたくもない、とは言い切れなかった。

 どうして彼があんなに変わってしまったのか。

 それは彼の口から聞かなければ一生納得できない気がした。

 

「……分かったデス」

 

 選択肢は、無い。

 不気味さは隠しきれない。

 ロードへの憎しみがない訳ではない。

 しかし。こうなった以上、知らないわけにはいかなかった。

 相棒はもういない。

 だが、今は探偵として、自分一人で何としても調べねばならない。

 ロードの、恐るべき計画を。

 ──誰か助けに、来てくれるデスかね……。

 心細い。助けが来てくれる保証はない。

 しかし──もう、希望はこれだけしかなかった。

 如何なる世界中の大きな組織や国の連合よりも信頼できるのは──仲間だけだった。

 ぎゅっ、と拳を握り締める。

 彼女は起き上がり、ベッドを降りた。

 そして、細身の男についていく事にしたのだった。

 目を瞑る。涙が滲みそうになったのを拭って、彼女は部屋を後にしたのだった──

 

 

 

 珍しく、今日は夢も見なかった。

 ……今日は?

 ちょっと待て。今も意識がちょっと混濁しているけど、俺どうなったんだ?

 確か、あのデカい奴にやられて、その後……

 

 

 

『マスター、マスター、起きるでありますよ!」

 

 

 

 声が聞こえる。

 これは――

 

 

 

「目が覚めたか」

 

 

 

 ずい、と覗き込んでくる顔。

 蒼い瞳だった。髪は人形のように澄んでいるが、それが後ろで括られている。

 ……誰だ? 何で俺はこんなところで、この女の子に看取られてんだ?

 ひょっとして此処はあの世か何か?

 現にこの女の子、妙に色が白いし、すっげー冷たい目でこっち見てるし……。

 後、ココ、ドコ?

 

『良かった……目が覚めたようで、何よりであります』

「チョートッQ……?」

 

 いつもの新幹線頭が見えた。

 良かった。お前は無事だったのか。

 

「俺は……」

「……意気阻喪、とでも言っておくか。話を纏めて考えれば、今の貴様の心情も理解できない事は無い」

 

 いや、そうじゃない。

 あんたは誰だ、此処は何処だ?

 色々ごっちゃになっていて口を開ける余裕も無いけど。

 

「記憶が混濁しているな? 一度整理しろ。安心するがいい。お前の思うような最悪の事態は避けられている」

『火廣金殿も、紫月殿も無事であります! 全員一先ずは助かったでありますよ』

「そう、なのか……?」

 

 ……仕方ない。記憶に抜けが無いか、いつもので確かめてみるか。

 ――俺は白銀耀。デュエマ部の部長を務める少し普通じゃない高校2年生――だったけど、実体化するクリーチャー、ワイルドカードの事件に巻き込まれたことで俺のさえない日常は非日常へ一変。

 その後、事件の中で多くの人を巻き込んでいき、最後には22枚のアルカナの力が封印されたエリアフォースカードの1枚、愚者による凶行を阻止した――

 よし、ちゃんと覚えてる。

 そんでもって、冬休みに部員の紫月と火廣金と一緒にデュエマの大会に来たら、決勝で黒鳥さんたちや花梨、桑原先輩に出会って――変な水晶みたいなのがショッピングモールを覆った。

 発生源を探っていると、俺はあの大男に出会って――

 

「あ、あ……そうか。俺あの時負けて――」

「何だ。喋れるのか。むしろ、あれだけのダメージを受けて何故無事なのか疑問だ。やはり、父の作ったエリアフォースカードというのは……」

「えっと――」

 

 俺は淀みながら言った。

 ちょっと待て。今ので大体察せたが、この黒髪の美少女は――

 

 

 

「……何だ。何を呆けている。この元・大魔導司、ファウストの事を忘れたとでも言うのか?」

 

 

 

 ……。 

 全っっっ然分からなかった……。

 こいつ、ローブ外すと凄い小奇麗だったんだな。

 確か、火廣金曰く自らの身体を自らで生成する人体錬成に至ったって――

 

「じゃなくて、俺死んでねえの!? 何で!? まさか此処は手術台でお前が人体錬成で俺の身体蘇生したとか!?」

「考えてから話せ。私の魔力はかの一件で底を尽きた以上――単独行動主義の末の自業自得とはいえ――、私がこの術を行使することは不可能。そして、人体錬成は倫理的な問題を我々の基準でも抱えており、自分のホムンクルス――即ち、自らの身体に使う分にしか使用できないという制約がある。自己責任の下でな」

「そ、それじゃあ、何でお前が居るんだ!? つか、此処は何処だよ!?」

「この飛行艇で上空から見回りをしていたのだよ。上からの命令でな。で、強い魔力反応があるから飛んできてみれば……この有様だ」

「ってことは、此処は……空の上!?」

 

 飛行艇。

 俺は慌てて丸窓をのぞき込むと、息を呑んだ。

 確かに、小さくなった街が遠巻きに見えた。

 しかし――それは、夥しい数の水晶に喰われていた。

 

「っ……どうなってんだよ」

「どうなってる? それは私が一番聞きたいな。人体錬成に至れた魔導司は居れど、その先の領域――賢者の石にたどり着けた魔導司等、私は知らない」

「賢者の石……!?」

「錬金術の基本法則たる等価交換――と言っても人間には難しいか」

「頭痛くなってきた……」

「つまるところ、何かを手に入れる代償に同等の何かを対価にするということだな。クリーチャーの召喚、呪文の詠唱には決められただけのマナが必要なのと同じだ」

「あ、ああ……」

「だが、賢者の石はその法則を無視する」

「何でも願いを叶えてくれるってことなのか!?」

「しかし――現代の魔法学に於いて、実質それは不可能であることが証明されている。だが、現にそれは実現してしまっている」

 

 彼女は口をきゅっ、と結ぶ。

 そして忌々しそうに言い放つ。

 

 

 

 

「――あれは、間違いなく魔術の法則を無視して創造されたクリーチャーだ」

 

 

 

 え?

 俺は慌てて窓に縋りつくようにして、街一面に広がる水晶を睨んだ。

 あれが、クリーチャーなのか!?

 

『正確に言えばクリーチャーの一部であります』

「冗談だろ!? 世界全部を、1体のクリーチャーが覆ってんのか!?」

 

 俺はこのとき、魂が抜けそうになった。

 巨大だ。ひたすらに巨大すぎるのだ、今回の敵は。

 今まで表ざたにしてこなかった事件が、たったの1日で世界を巻き込む程巨大なものに膨れ上がるなんて。

 そもそも、ぴんと来ない。そこまで大きな存在は――

 

「って、猶更だ!! 今すぐそいつをぶっ倒さねえと!!」

「無為無策とはこの事。一度落ち着け」

「そ、そうだけど! これ、飛行機なんだろ!? ほかの魔導司も乗ってるじゃねえか! 戦力的には――」

「駄目だ」

「えっ……!?」

 

 ファウストは苦々しそうに言った。

 

 

 

「奴らは魔導司の攻撃の一切を遮断し、そして魔導司を一方的に蹂躙する特異体質を持つ。魔法使いであることが、既にハンデだ」

 

 

 

 つまり奴らに魔法は効かないことになる……ってことか?

 そういえば、火廣金はあのドラゴンに近付いただけで身体が崩壊しかかっていた。

 

「同時に、弱い個体ならまだクリーチャーを扱えば倒せないことはないが、その一部にエリアフォースカードを取り込んだ上位個体が存在することが認められた」

『それが我々の交戦したクリーチャーでありますか……!』

「そうだ。そして同じ事件は他にも起こっている」

「まだあるのかよ……じゃあ、奴らの持ってるエリアフォースカードは1枚じゃないってことか」

「そうだ。数時間前、報告が入った。ある森の調査を行っていた魔導司の団が、水晶の怪物の群れに襲われて壊滅したとな」

 

 背筋が粟立つ。

 

「その森は通称、腐の森と呼ばれる樹海で、普段は結界に隠されて見えない。だが、その最奥に遺跡があることが分かって調査が始まった」

「今回やられたのは、警備をやっていた部隊なのか?」

「否、遺跡を調査していた本隊にも被害が出ている。そして、出土品は全てそれに盗まれたとのことだ」

『それと、聞きたくもないでありますが、一応殺された魔導司の状態を我から聞いておくであります。ショッキングやもしれないのでマスターはすっこんでるであります。また倒れられても困るでありますよ』

「る、るっせぇ! 馬鹿にするんじゃねえよ! 続けてくれ、ファウスト」

 

 彼女は一瞬躊躇ったようだった。

 しかし、意を決するように俺の眼を見て話す。

 

「聞けば、それは虐殺とも言える凄惨なものでな。魔導司の身体はいずれも溶解されて切断されていた。細切れに。いずれも、魔法も魔力も全て、触れられただけで崩壊し、無効化されたことが分析されている」

「……!」

「ただ、死体の一部、いや大部分がごっそりと持っていかれている。何に使ったのか、想像したくも無いが……」

 

 悍ましい現場。

 俺には想像できなかった。

 

「我々に、いや、特に私は無駄死が許されない――死ねないんだ。この手で……責任をもってこの問題に決着を付けねばならないのに……私は、何百年も生きたというのに、余りにも無力過ぎる」

 

 小さな手を彼女は握り締めた。

 弱く、か細く、脆すぎる。そんな自分の今の状態を誰よりも悔やんでいた。

 それが自らの失態が招いた事であると信じて疑わないのだ。

 だけど。

 

「そんな事無い。ファウストが飛行艇を持ってこなければ、俺達は水晶に飲み込まれてたかもしれないのに」

「……あれは、ティンダロスが――」

「それでもだ。此処の指揮を執ってたのはお前じゃないのか? 誰よりも、魔導司から慕われてたお前がさ」

「……」

「羨ましいよ。そんな人望も、俺は立派な魔法だと思うけどな。アルカクラウンでも、消す事が出来なかった魔法じゃないか」

「……フン、慰めのつもりか?」

 

 ぐにぃ、と頬が引っ張られる。

 

「人間の癖に、殊勝な事を言う。だが、確かに――私とした事が、こんな所で弱気になってはいられなかったな」

「……ふぁ、ふぁふぁ……」

 

 くくっ、と幼い顔に似合わない妖艶な笑みを浮かべると、彼女はマントを翻す。

 

「それと白銀耀。皇帝(エンペラー)のカードに感謝するんだな」

「は?」

『我にも分からないでありますが……皇帝(エンペラー)の力がマスターの身体に作用したのは確かであります。マスターがエリアフォースカードとの適合が進んでいるからなのか、皇帝(エンペラー)がマスターに心を開きつつあるのか……それでマスターの身体は急速に回復しているのであります』

「……こいつの、おかげなのか?」

 

 俺は傍に置かれていたデッキケースを手に取る。

 そこから、一番上に入れている皇帝(エンペラー)を取り出した。

 

「……お前が……助けてくれたのか」

 

 言葉は無い。 

 しかし、答えるかの如くそれは薄ぼんやりと輝く。

 何が起こったのかはさっぱりだけど……。

 いや、待て。俺は助かったなら、一先ずそれでいい。とりあえず、まだ心配要素はある。

 

「そういえば……シャークウガはどうなんだ?」

「……」

 

 ファウストは口を噤んだ。

 あまり、良くなさそうであることはそれで察せられた。

 

「シャークウガは多大なダメージを負っている。他のクリーチャーでも、同様のダメージを食らっただろうとのことだ」

 

 マギアノイドの恐ろしさを痛感する。 

 全ての魔法を無効化にする。

 それがどんなに恐ろしい事か、そして戦略的な兵器に成り得るかを示していた。

 

「紫月の持ってる魔術師(マジシャン)に何か変化は無かったのか?」

「今の所は……何もない」

 

 魔法を司るエリアフォースカード、魔術師(マジシャン)

 コイツの力で何とかならないのか、と思わなくも無かったけど……エリアフォースカードには個々の意思があるらしく、何を考えているかはそれぞれで、しかも俺達に直接その意思は分からない。

 

「白銀耀。我々としてはお前達を危険な目に遭わせるのが心苦しいが──」

 

 ファウストはか細い声だった。

 

「何をいまさら。俺達がこれをどうにかしなきゃ、誰にもどうにもできないんだろ?」

「ああ。世界中の如何なる軍事兵器も、世界中の如何なる魔導司も、クリーチャーやあの水晶には対抗しようとしている。だが、事態は一刻を争う。お前達にも協力を仰ぐしかないのが現状だ」

「……すげえプレッシャー」

「……すまない。そういうつもりではなかった。いや、当然か。私たちは……訓練もしていない只の人間だったお前達に、とんでもない無茶を押し付けているのだからな」

「……」

 

 だけど俺は知っている。

 今までの戦いで、無茶が無理ではないということを。

 俺達がやらなきゃ、皆お終いだ。

 

「でも、やられてばっかじゃいられねえ事は、分かってるんだ。街をあんなにされて、仲間を散々な目にあわされて、その癖見ない振りなんてできるもんか!」

「……が、お前たちが人間である事には変わりない。疲れているだろうし、今日はもう休め」

 

 休めと言われてもこのままでは収まりがつかない。

 俺はファウストに、この状況を打破する方法でも思いついているのかと聞きたくなった。

 

「なあ、ファウスト。何か打開策でもあるのか?」

「……そうだ。1つ、手掛かりになりそうな場所がある」

 

 彼女の手には、丸められた硬い紙が握られていた。

 それをほどくと、すぐさま何が描かれているのか分かった。

 

『日本地図、でありますな?』

「クリーチャーなのに分かるのか?」

『ジョーカーズでありますからな。現代知識には最も目敏いでありますよ』

「はぁ。だけど、この線は何だ?」

 

 日本地図。それも──緯線経線とは違う斜めの赤い線が幾多にも引かれたものだった。

 そして、その線が何本にも重なりあい、1つの点を形成した箇所が1つだけあった。

 

「この線は、魔力がある地点から迸っている事を示しているラインだ。まるで、オーロラのようにエネルギー波が帯となって世界中から集まっている。文字通りの異常事態だが」

「そんなことが……ん? それじゃあ、その中心点に何かあるってことか?」

「ああ。私達は、そう踏んでいる……何より、近海に何かが潜んでいる」

「クリーチャーってことか」

「または魔法生命体か。だが、近辺にクリーチャーが居る可能性も否定は出来ない」

「関東近海……待てよ、ここって……」

 

 東京湾近海に浮かぶ人工島。

 そして、多くの集落のみならずデュエリスト養成学校を有す場所。

 そんな有名な名前を俺が忘れる訳も無い。

 

 

 

「海戸ニュータウン──!?」

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