学園デュエル・マスターズ WildCards【完結】 作:タク@DMP
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──桑原と女教皇の竜のデュエル。
「3マナで《フェアリー・ミラクル》を唱えます……うう、マナに5色のカードが揃ってないので1枚しかマナブーストできません、ターンエンドです」
「ブーストカードは引けなかったが……2マナで《デスマッチ・ビートル》を召喚。ターンエンドだ。
自然単色対五色デッキか、頭で桑原は相手のデッキを考えていく。
今は失敗したが、そもそもデッキの構成が5色でなければ《フェアリー・ミラクル》は搭載されるようなカードではない。
だが、桑原も負けてはいられない。自然はマナブーストにかけてはどの文明をも上回る。先攻後攻の差を詰める勢いでブーストを掛けていく。
「マナをチャージして、ターンエンドです」
「3マナで《ボント・プラントボ》! 効果で、山札の上から1枚をマナゾーンに置き、それがパワー12000以上のクリーチャーならばもう1枚をマナに置くぜ! これで俺のマナの枚数は6枚。ターンエンドだ!」
追いついた。
桑原は一先ずはノルマは達成出来たと安堵する。
次のターンで相手は6マナ。このまま追い越してしまいたい所だ。
「へっ、戦い方は同じだが……マスターとやらに貰っただろうそのボンボン5色が俺のグランセクトに勝てると思うなって話だぜ!」
「……女教皇は知識を司るエリアフォースカード。ただただ、マナを加速するだけのヤバンな戦法と一緒にされては困ります」
「ンだとォ!?」
『ははははははは、一杯食わされたねマスター! まあヤバンなのは間違ってないかもだけどさあ!』
「テメェが言うか、テメェが!」
「……か、覚悟は良いですか? 私の切札、早速行きます」
タップされていく6枚のマナ。
浮かび上がるのは水文明の紋章だった。
そして、ローマ数字のⅡ。即ち、女教皇のタロットを示す数字が表れる時。
圧倒的な知識の差を、思い知らされる。
空気が凍てついた。
「っ……!」
『やっぱりだ、マスター! あのお嬢ちゃん、体内、いや機体って言うべきかな?』
「どっちでもいい! 人形に嬢ちゃんもクソもありゃしねーぜ!」
『そうはいかない、人形でもレディには……』
「馬鹿! 前を見ろ前!」
言っている傍から、それは雲から浮上する。
それは氷獄の記憶。凍り冱てる龍の記憶。裁きの十字架の名の下に、女教皇のカードが行使される。
「それは、訪れるべき
がばあっ、と大顎を開けた牙に覆われた口。
その周囲を覆う4門の主砲。
骨を継ぎ接ぎにしたような歪な船体。
魚人の種族によって蘇った氷獄の伝説。
「すみません……何度もしつこいですが、私……戦うの得意ではないのです」
「あ?」
「……一度こうなってしまっては、手加減出来ないので……!!」
絶叫が戦場に轟く。
見たことも無いクリーチャーを前に桑原は耳からつんざく轟音に貫かれて、足が凍る。
「ンだよコイツ……!?」
『悪趣味な……伝説のドラゴンの骨を継ぎ接ぎして作ったらしい、ムートピアの戦艦か。もし、オリジナルの僕がこれを見ていたら激昂していただろうね』
「黒鳥さんなら芸術的だって言ってたかもな。俺には分かんねえけど。まあ、それよかあの嬢ちゃん、もう勝った気でいやがるぜ」
無理矢理、彼は足を踏み込めた。
「上等!! 存分に撃ってきやがれ!! 俺は此処に居るぞ!!」
「……《ゴクガ・ロイザー》の効果で、カードを2枚引きます。ターン終了です」
「……あり?」
彼は顔を顰めた。
「んだよ、もう終わりか。手札を引いて終わっちまったぞ?」
『いや、あれで終わりとは思えない』
「どっちみち、1ターンの猶予が生まれた! あいつを今のうちに消す!」
桑原は5枚のマナをタップした。
「呪文、《古龍遺跡 エウル=ブッカ》! こいつは相手のタップしていないクリーチャーをマナに送る……効果で《ゴクガ・ロイザー》をマナに送るぜ!」
空に顕現する古龍の遺跡。
そこから、無数の弦が現れて《ゴクガ・ロイザー》を沈めにかかる。
しかし。
「……?」
彼は目を疑った。
放たれた弦は全て弾かれてしまう。
《ゴクガ・ロイザー》は無傷。全く効果がないようだ。
それどころか、副砲の斉射で《エウル=ブッカ》は瞬く間に打ち砕かれてしまった。
「……戦艦ってばいたるぱーとを抜かないと破壊できないって。でも、ばいたるぱーとが分厚くてなかなか貫通出来ないから戦艦は戦艦だって言ってました」
「……どういうことだ?」
『つまり戦艦には弱点がある。だけど、弱点を守る箇所がとても頑丈に守られていてなかなか破壊出来ないのが戦艦が戦艦たる所以ってことさ……って火廣金緋色が前に言ってた気がする』
「受け売りかよ!!」
「はい。貴方の言った通り、《ゴクガ・ロイザー》は登場した時点ではカードを2枚引くだけのパワー4000のブロッカーにすぎません。でも、一番の弱点であるラグを”呪文によっては選ばれない”という効果で無効化しているのです」
「それを早く言えよ……!」
「うう、怖い顔してもダメですよぉ……敵の弱点になるようなことを喋ってはいけないってマスターも言ってましたし」
除去範囲が広いから、とこの呪文を選んだのが仇になったか、と桑原は頭を抱える。
しかし、時すでに遅く《ゴクガ・ロイザー》の主砲の装填時間は終ろうとしていた。
「仕方ねえ、残った2マナでもう1体《デスマッチ》を召喚してターンエンドだ!」
「え、えと、それでは……私のターンですね」
大丈夫だ、踏み倒しならば《デスマッチ》がいるから簡単にはさせない、と桑原は心を落ち着かせる。
しかし。
それさえも打ち砕くように氷獄の戦艦はその主砲を容赦なく桑原に向けたのだった。
「では、放ちましょう。私の弾丸を」
「!?」
彼女が掲げたのは、中央で分割されたカードだった。
その正体が分からず、桑原は狼狽する。
まるで、クリーチャーカードと呪文カードが同居しているような異質なカードを、人が変わったような顔で彼女は唱える。
「
次の瞬間、分割されたカードの下側が競り上がっていく。
それは完成された。完全なる呪文として。
それは神々しい閃光、一本の極光。
瞬く間もなく巨大な《デスマッチ・ビートル》の身体を走っていく。
光は結晶となり、巨躯を一瞬のうちに、水晶の中へ埋めてしまった。
「なっ……馬鹿な!?」
「《ヘブン・デ・エンドレーサ》は、相手のクリーチャーを1体選び、裏向きにして、新しいシールドとして持ち主のシールドゾーンに置く呪文です」
「っ……マジかよ」
桑原は呻いた。
自分の知る強力な殿堂入り呪文、《魂と記憶の盾》を上回る性能だ。
しかし、地獄はこれだけでは終わらない。
「天命は二度悟る……思い知ってください、遠き果て、
「……え?」
直後。もう1度極光は放たれた。
間もなく、二体目の《デスマッチ・ビートル》の身体も結晶漬けになっていく。
「っ……ちょっと待て!? 2体!? 相手を2体シールドに送る呪文だったのか!?」
『違うぞマスター! 今のは、あの戦艦から放たれた主砲だ!』
「そうです……だから言ったのです。手加減は出来ない、って。《ゴクガ・ロイザー》が場にある時、私が唱えた呪文は墓地からもう1度唱えられます」
「マジかよ……!? 冗談じゃねえぞ!?」
彼は自分の手札を思わず見た。
対処できるカードが無い。
こうなったら、もうこちらも可能な限りの速度で加速するしかない。
相手の手札は3枚。マナには7枚のカード。次で8枚になる。何が来るか予想もしたくはないが、もう彼は止まれなかった。
「俺のターン、6マナで《コレンココ・タンク》召喚!! 効果で、山札の上から3枚を表向きにし、パワー12000以上のカードを手札に加える! 俺が加えるのは、《古代楽園 モアイランド》だ!」
「……うう、怖いのが手札に行っちゃいました……」
「ターンエンド。もう引き下がらねえよ! 矢でも鉄砲でも持って来やがれってんだ!」
「……良いでしょう。では、お望み通り……氷の下で後悔してもらいます」
彼女は再び6枚のマナをタップする。
そして、今度は火文明の紋章が浮かび上がった。
「呪文、《龍秘陣 ジャックポット・エントリー》!」
「!!」
「効果で、マナに溜まったドラゴンの数だけ山札の上を確認します。確認するのは8枚……!」
まずい、と桑原の額に汗が走った。
彼女がまず選んだのは──今度は闇文明。
しかし、またあの上下に分割されたカードだった。
「
「なっ、今度はクリーチャーかよ!?」
「……その効果で、墓地からコスト7以下の進化ではないクリーチャーを場に出します」
「何だと……! 墓地に落ちたクリーチャーって、まさか……」
彼女は頷いた。
「それは来るべき女教皇の啓示、唄いましょう我らの繁栄を、裁きましょう咎人の罪業を──!」
空が割れた。
そこから、ステンドグラスの如く色鮮やかな光を浴びて、降り立つアルカナの守護獣。
人に造られし偽りの主に頭を垂れる従順なる天命の使徒。
「
競り上がっていく獣の面。
さっきは呪文として、だが今は完全にクリーチャーのカードとして、それは顕現した。
天使龍の骨を纏ったゴーレム。それも、何のクリーチャーなのか一目で桑原は理解する。
昨日目にしたばかりの強敵との再戦も同様だ。
「これが貴方の罪を裁くべき切札。教皇の断罪と、女帝の断罪が揃いし時、貴方の道は閉ざされたも同じです……というわけで、すみませんが諦めて下さい。お終いです」
「──マジかよ、今度はクリーチャーになって出て来やがった!」
「はい、これがツインパクトカード……私達の至った双極の境地です。《天命》は、その効果で相手の光以外のカードのコストを1上昇させ、自分の光のカードのコストを1減少させます。これで、次のターンに《モアイランド》は出せません……どころか──」
彼女の指揮の通りに、冷酷に《ゴクガ・ロイザー》の砲が開いた。
「2発目、《龍秘陣ジャックポット・エントリー》、です。その効果で山札から8枚を見て、そこから《龍素記号Sr スペルサイクリカ》をバトルゾーンに出します」
「マジかよ……!!」
あのクリーチャーは、桑原も知っていた。
墓地からコスト7以下の呪文を唱えるどころか、唱えた呪文を手札に加える恐怖のカードだ。
来るのだ。3度目が。
「ゲイル。これは俺の予想だが……恐らく、《ジャックポット・エントリー》デッキなら間違いなくあのカードが搭載されてるはずだ」
『大体察したよ。恐らく確定事項だ』
「ああ。賭けるしかねえ。大博打だ。今この状況に対応できるカードはねえからな」
「残念ですが、その希望は打ち砕きます……だって、もう山札は一周以上しています。それに、私だってマギアノイドですから……貴方が何をされたら痛いのかくらい分かります」
「……そうかい。それは残念だぜ」
桑原は皮肉気に口角を上げた。
「ではお望み通り、その効果でもう1度《ジャックポット・エントリー》を唱えます。その効果で場に出すのは──《ボルバルザーク・エクス》です」
「ッ……!!」
「効果で、マナのカードを全てアンタップします。そして、私の手札にはまだ、《ジャックポット・エントリー》があります」
4度目。
いや、次は再び2度くるので5度目も同じ。
場に並びたてるドラゴン達。それを前に桑原は成す術が無い。
「6マナで《龍秘陣 ジャックポット・エントリー》を唱えます。その効果で、山札の上から8枚を見て、《永遠のリュウセイ・カイザー》を場に」
「……やべえ」
これで、相手の場のクリーチャーは全てスピードアタッカーとなる。
そして、桑原のクリーチャーは全てタップして場に出る事になる。
だが、それだけでは終わらない。
「もう1度、《ジャックポット・エントリー》を唱えます。その効果で──」
混ざり合う。
野望の黒、混沌の赤、奸智の青。
それら全てが別次元からの門を開く。
「おやすみなさい、そしてさようなら、不幸な人間さん。そしてこんにちは──《ニコル・ボーラス》」
ニコル・ボーラス。それは別次元に伝わる史上最悪の悪龍。
黄金の身体が、窮屈だと言わんばかりに翼を広げた。
邪悪なる光が、その場を埋め尽くす。
そして、その破壊の炎が口から放たれた。
桑原の知識を焼くために。
「出やがったな、史上最悪のド畜生ドラゴンめ……!!」
「《ニコル・ボーラス》の登場時能力発動。貴方の手札を7枚、墓地に送ります」
破壊されるカード達。
それとともに桑原の身体が炎に包まれた。
「これで終わりです。私のクリーチャーは全てスピードアタッカー、そして貴方の今の手札はゼロ。ここでシールドが0になったとしても、7枚のうち2枚はこの場では役に立たない《デスマッチ・ビートル》。クリーチャーは全てタップインされる上に、コストが1上がっています。さようなら、人間さん──」
「──ああ、さようならだぜ機械の嬢ちゃん」
炎が晴れた。
桑原の身体の前には──1枚のカード。
それが、守るようにして浮かび上がっていた。
「──別れを告げるのは、この俺の方みてーだ」
「!!」
「手札から捨てられた時、《キキリカミ・パンツァー》の効果発動! 墓地からバトルゾーンに出すぜ!」
次の瞬間、頭上から現れる巨大な影。
それは、グランセクトの昆虫戦車だった。
「っ……!」
「お前、最初に言ったな? 自分のゴシュジンサマが物事を見くびって困るって。なら喜べよ。人間にはこんな言葉があるのさ──ペットと飼い主は似るってな!!」
「あ、あうあうあう……!」
「とゆーわけで。テメェが余計な事をしてくれたおかげだ。《キキリカミ》の効果で上から3枚を表向きにし、パワー12000以上のクリーチャーを全て手札へ!」
「あ、ああ、そんな……! 私としたことがとんだ利敵行為を……いやでも、それでも手札が増えたくらいで……次のターンに確実に仕留めれば……」
「俺が加えるのは、《界王類七動目 ジュランネル》《デデカブラ》、そして《天風のゲイル・ヴェスパー》だ!」
「あわわわ……大丈夫、まだ召喚酔いがあるから、仮にしのがれても返せます、そもそも自然単色のデッキがこの軍勢を処理できるわけがありません、せめて攻撃して頭数は減らさないと……」
彼女は慌てた様子で、《ニコル・ボーラス》に手を掛けた。
「《ニコル・ボーラス》で攻撃。その時の効果で、相手のクリーチャーを1体破壊します……! 《キキリカミ・パンツァー》を破壊! そして、シールドを2枚ブレイクします……!」
暗黒の炎が、桑原のシールド諸共《キキリカミ・パンツァー》を貫いた。
ブレイクされたのは《デスマッチ・ビートル》のシールド。
残るのは5枚だ。
「まだです、《リュウセイ・カイザー》でシールドをW・ブレイク!」
今度は爆風が襲い掛かる。
炎で服が焦げ、顔には煤が付く。
シールドの破片が砕けて身体を裂いていく。
肉が割れて血が飛び散った。
「トリガー無し……こんな時に限って……!」
「《天命》でシールドをW・ブレイク!」
降りかかる光の矢。
それがシールドを砕いていく。
残るシールドは1枚だけだ。