学園デュエル・マスターズ WildCards【完結】   作:タク@DMP

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Ace17話:クォーツライト

 ※※※

 

 

 

「うっ、あう……!!」

 

 

 

 デュエルは終った。

 そこにあるのは勝者と敗者。 

 怪物の身体は砕かれ、めきめきと音を立てて歪んでいる。

 

「うっ、うっ、痛い……! 痛い痛い痛い苦しい悲しい辛い痛い……!」

 

 泣きながら彼女は、嗚咽を漏らす。

 見ると、身体中に裂傷が見えて、そこから光が漏れていた。

 水晶人形の癖に泣き真似までするのか、と桑原は最早呆れ顔を隠さない。

 が、容赦をするつもりはない。

 そう思った矢先だった。

 

「あなた達は……後悔する……! 私達に……マスターに、楯突いた事を……! この間にも、鍵は開いているのだから……! うっうっ……うえええ……! 」

 

 泣き叫びながら、彼女は崩れ落ちた。

 だが、そこから1枚のカードが海の先へ飛んで行く。

 

「しまった、肝心のエリアフォースカードを──」

『駄目だ、深追いはしない方が良い。今ので大分君もへばっているだろう?』

「くっそ……」

 

 逃がしたか、と桑原は落胆する。

 ともあれ、辺りを見回すともう何も居なかった。

 殿が引くと共にクリーチャー達も消失していったようだ。

 

「……ったく、訳の分からんヤローだったぜ」

 

 ──待ってろよ、姉貴……! ぜってーに、水晶が近づく前に俺らが終わらせてやるからな!

 窓から手を振る仲間達に、桑原も疲れ顔で手を振る。

 もうすぐで、海戸に着く。海の果てを見通すのだった。

 あの海の先に、何があるのか──

 

「なあ……僕のブラン」

 

 

 

 

 ああ、可愛そうなブラン。

 小さい頃から、あのいじめられっ子達に泣かされて。

 何時も僕のいる図書館にやってきて、本を一緒に読んでいたね。

 

「我、祈リノ下──」

 

 ああ、可哀そうなブラン。

 大きくなってからも、ああやって虐められていたんだね。

 人間のやる事は、悪逆非道。

 欲望に駆られているが故に、他人の幸福を奪う。

 人間は奪い、奪われることで社会を形成してきた。

 そう、幸福というものを。

 

「人類史最初ニシテ最後ノ龍──」

 

 だが、ダメだ。

 それでは、人類は何万年かけても幸福にはなりやしない。

 

「今ココニ顕現サセン」

 

 ならば、僕はそれを等しく救うとしよう。

 善も悪も、過去も現在も僕は問わない。

 僕は等しく、人類全てを裁きの天秤に掛けるとしよう。

 クォーツライトの教えに従うのであれば、僕は等しく救おう。

 クォーツライトの教えに逆らうのならば、僕は等しく罰を与えよう。

 

「クォーツライトノ銘ジシ汝ノ名ハ」

 

 僕が、此処で全てを終わらせる。

 そして、全てを始める。

 ああ、ブラン。僕の愛しいブラン。

 君には……本当に辛い思いをしただろうが、君は今救われたはずだ。

 

 

 

「──裁キノ龍、サッヴァーク」

 

 

 

 今まさに、僕の前でDGに祈りを捧げし裁キノ巫女。

 正義のアルカナと審判のアルカナを結びし少女。

 僕が君を選んだのは、そのためさ。

 これで、君はサッヴァークに統合される。辛かった思い出を忘れる事で、君は……真の意味で幸福に今、なれたんだ。

 そして遅れるようにして全人類は、サッヴァークに統合される。

 審判が、下されると共に──僕と、クォーツライトの一族の全てが報われるんだ。

 奴らに倒されて帰ってきたエリアフォースカードはDGの良い燃料になってくれるだろう。彼らの戦闘データを吸ってくれている。

 

「ロード様。もうじき、海戸に到着します」

「ご苦労。それと、既に鍵は開いたみたいだね。そろそろ洋上にそれは見えているだろう」

「一人で行かれるのですか?」

「ブランと行くとするよ。なあ?」

 

 彼女はそれに答えない。

 ただただ、裁きの龍への言葉を捧げるのみ。

 

 

 

「今日この日。全てが終わり、僕が全てを始めるんだ。素晴らしい記念日になるだろうね」

 

 

 

 ※※※

 

 

 

 ──画して。

 クリーチャーの包囲網は完全に打破する事が出来、俺達は無事に海戸洋上への航路を飛んでいた。

 

「女教皇の竜……か。運命の輪、節制に加え、これで3枚か」

「敵の手に渡っているカードはまだありそうですね」

「そんでもって、やっぱこの先には何かあるんだろうな……」

 

 俺とファウスト、そして紫月は顔を顰めた。

 あの場所に何があるというのか。

 拳を握り締めた。

 あのドラゴンとも、もう1度戦うことになるかもしれない。

 今度は絶対に負けて堪るもんか。

 

「おーいお前ら。桑原甲とゲイル・ヴェスパーの診断結果が出たぞ」

「よう、テメェら。心配かけたな」

 

 その時、ロビーに入ってくる声。

 現れたのは白衣に身を包んだトリス・メギス、そして桑原先輩。

 アルファリオンがやられたことで、彼女自身も魔力がかなり減っているらしいが、アルファリオン自体は直に復活するという。タフなのが、召喚獣の強みなんだろうな。本物のクリーチャーを呼び出しているわけだから。

 だが、それ以上に気になったのは、ゲイル・ヴェスパーの魔力が激減していたこと。そのため、帰ってくるなり桑原先輩は技術部にその補充と調査を頼んだという。

 

「先輩! 大丈夫ですか?」

「はっ、俺の方は無事だぜ。問題はゲイルの方だが」

「トリス・メギス。ゲイル・ヴェスパーはどうだったんだ?」

「近付いただけで魔力を減らされたってことになるな。外傷も何もないわけだしよ」

「何処までも危険ですね……」

 

 紫月が呟く。

 だけど、俺達はそれで撤退するわけにはいかない。

 今此処で何が起きようとしているのか分からない。

 でも、止めなければ俺達の日常は壊されたままだ。

 それも世界全てを含めた人々の”当たり前”が壊されるんだ。

 

「ところでよ、ファウストさんよ。DGって何か分かるか?」

「DG……だと?」

 

 ぴくり、とファウストの眉が動いた。

 

「何処でその名を?」

「敵さんがしきりに呟いてたのさ。何か知らねえかって思ってな」

 

 ガタッ、と彼女は立ち上がる。

 

「DG……そうか。成程、納得だ」

「いや一人で勝手に納得すんなよ!? 分からないじゃねえか!」

「ちゃんと教えてください」

「……DGは、人の手によって造られたドラゴンの事だ」

「!」

 

 人の手によって……造られた?

 DGってのはひょっとして、ドラゴンに因んで当てはめられたアルファベットなのかもしれない。

 

「かつて、DGを造り出したことで魔導司に追いやられた人間の一族がいた。彼らは魔導司と自らの境遇を憎み、歴史の裏で様々な工作を働いたと聞く」

「人間が作ったのか? 魔法使いじゃなくって?」

「ああ。その名は、クォーツライト家。だが、数年前にDG計画は頓挫し、一族郎党は殆ど死んだと聞いていたが……」

「海戸でもDGの研究はされていた」

 

 黒鳥さんが言った。

 

「最も実際に実体化させるとなると別問題だ。DGは膨大な魔力を使う機構と聞いていたが……」

「……だが合点が行ったぞ。奴らはその膨大な魔力を賄うためにエリアフォースカードを使っているんだ」

 

 ファウストの言葉で場に緊張が張り詰めた。

 エリアフォースカードでさえも、敵にとっては燃料代わりでしかない。

 そして、膨大な魔力を秘めた魔法道具を大量に取り込んだドラゴンが生まれたらこの世界はどうなってしまうのだろう?

 

「大変です、ファウスト様!!」

 

 その時。声が上がった。

 どうやら、ファウストの配下の魔導司がロビーに駆け込んできたようだった。

 

「どうした」

「島です!! 海戸近海洋上に、島を確認しました! 昨日までは出来ていなかったのに……!」

「何だと。衛星写真から映し出せ」

 

 島──!?

 俺達は、モニターに映った映像に食い入るようにして見ると、確かに洋上にぽつりと小さな島らしきものが見える。

 だが、それが異常だと気付いたのは、その島の周辺に肉視出来る程のオーラが現れていた事か。

 そして、日本地図と照らしあわされたその場所は、まさに今向かおうとしていた強力な魔力が集中している地点だったのである。

 

「一晩で、海底火山の噴火も無しに島が出来上がる、か」

「お伽話も大概ですね」

「ちょっと、2人とも何落ち着いてんの!? 島だよ、島!!」

「これが落ち着いているように見えるのですか、刀堂先輩」

「紫月ちゃん表情変わらないから分かりにくいんだけど!」

「海戸近海に島が沈んでいるなどという話は聞いた事が無い。魔力の集中と言い、やはりその影響下で現れたという事か?」

「いや、元々そうだったと考えるのが自然だ」

 

 言ったのは黒鳥さんだった。

 元々そうだった、ってどういうことだ?

 

「海戸とは、かつてとある財閥がとある目的のために作った人工島だ」

「目的?」

「ああ……強大な力を持つ何かが近海にあったのさ。それを利用しようとしたのだ」

「……!」

「のちに、それはクリーチャー事件の発端となる。海戸近海には、クリーチャーを何体召喚しても飽き足らない程の魔力の貯蔵庫があったのさ。だが、それはとっくに潰えたはずだ」

「ならば、何故そもそも海戸近海にそのような魔力の貯蔵庫があったのか、と考えるべきなのか」

 

 ファウストの言葉に彼は頷いた。

 

「──膨大な魔力。それは潰えたわけではない。休眠した火山のように、何年もの間に力を蓄え続けていたとすれば? そして、今まで僕たちの目に触れず、ずっと海底の更に底で眠っていたのがあの島だとすれば?」

「……にわかに信じがたいけど、あの島自体が魔力の貯蔵庫だって黒鳥さんは言いたいんですか?」

「今までの僕の経験上、そうとしか言いようがない。エリアフォースカードだけでは飽き足らず、更に魔力を求めたか、あるいは逆か……考えていても今は詮無き事だ」

 

 彼はそこで思考を放棄したようだった。

 そこから先は、自らの目で確かめるしかないのだろう。

 

「今は折角現地に向かっているのだ。直接出向くのが妥当だろう。幸い、もうじきこの飛行艇は、島に近付けるのだから……」

 

 そう言いかけた時だった。

 飛行艇が揺れる。

 

「どわあぁい!?」

 

 俺達の身体は放り出されたようになり、すぐさま中でぶつかり合う。

 どうやら、何かにぶつかったような感じだが、まさか空中衝突とかないよな?

 

「いつつ……頭いてえ」

「ねえ、みんな大丈夫……?」

「大丈夫じゃないでふ、舌かみまひた」

 

 起き上がった俺は、チカチカする頭で恨めしそうに操縦席の方を見た。が──

 次の瞬間、その操縦席から絶叫が飛ぶ。

 

「大変ですファウスト様!! 障壁に阻まれて、此処から先は進めません!!」

「何だと……此処に来て手詰まりだというのか」

「解析したところ、島をすっぽりと覆うようにしてドーム状に障壁が広がっているようです」

「そんなに大きな障壁破壊出来るのか?」

 

 ──起き上がったファウストも恨めしそうな顔をしていた。

 

「まるで、磁石の同じ極の如く弾かれているということか」

「おい、お前ら。それだけじゃないみたいだ。あの衛星写真のモニターを見てくれ!」

 

 そこに映っていたのは──島から少し離れた空に浮かぶ──建造物ゥ!?

 ちょっと待て。アレは何だ。この飛行艇なんか目じゃないくらいには大きいぞ。

 

「空中要塞、だな。当然普通の人間には見えないようにしてあるんだろうが」

「要塞ィ!? あんな大きなものが!?」

「凄い……! 要塞ってあんな感じなんだ」

「何を言う。それは軍事に無知な魔導司(トリス)が便利だから使っているのであって、要塞とはあんなものではない。何より要塞砲も何も搭載されていないじゃないか。ちなみに俺が一番好きなのは、大口径を地で行くセヴァストポリ防衛用の要塞砲台こと第30番砲台、ドイツ軍からの通称マキシム・ゴーリキ──」

「語ってんじゃねーよ、それどころじゃねえだろ!」

「後、今さらっとあたしの事を馬鹿にしただろヒイロこの野郎」

「何の事やら、レディを馬鹿にするわけがないだろう。そんな事より、あの空中を飛行する建造物から出てきている物の方が重要なのでは?」

「ヒイロ、ちょっと後で表出ろや」

 

 もう長いから空中要塞で良いよ……。

 後、身内同士での喧嘩は後にしてくれ本当に。

 それとも前からこんな感じのノリだったのだろうか。

 だけど、火廣金が指さした方を拡大すると、何かがそこから飛んでいくように見える。

 更に拡大すると──それは、ドラゴンであった。

 

「クリーチャー!? こっちに来るのか!?」

「いや、島の方へ着陸していっているように見えるが。今の画像を更に拡大するか」

 

 その姿を見た俺の背筋は凍った。

 ドラゴン──といっても、それは異形の姿であった。

 仮面で顔を覆い、表情は窺い知れない。

 そして鉱石のような肌に、四肢には水晶がまとわりついている。

 あの街を襲った水晶に、よく似ている。

 極めつけは、どう見ても飛行には適しないであろう翼であった。まるで、骨のようだ。

 あんなもので羽ばたいて飛べるわけがなく、まるで浮くようにふよふよと飛んでいたのだ。

 だが、もう1つ。気になる点があった。

 

「白銀先輩。人が乗っているようですよ。それも2人」

「ああ……」

 

 片方は男だ。

 それも、拡大すると俺達と同じくらいの年齢の少年。

 ただし、薄い色の金髪に碧眼とヨーロッパのコーカソイド系の美少年のようだった。

 だが、その服装は異様で、青い軍服に肩から垂らした飾緒のようなものが印象的だ。

 そしてもう片方には──少女が乗っていた。まるで、横たわるようにして。

 その長い髪で顔が隠れていて、よく分からないが……俺達は何となく、見覚えがあった。

 

「ブランみてーな女の子だな、それにしても……」

「はい。こっちも典型的なコーカソイドのようですが」

「変な服装だな、女の方も。なんか真っ白なワンピースって感じだが。あんなのまるで──死に装束じゃねえか」

 

 桑原先輩の一言は、とても不吉に聞こえた。

 

「どうしてそう思うんですか?」

「いや、海外にあんな死に装束があるわけじゃねえよ。だけどな……男の方があんなに絢爛としてるのに、女の方は酷くあっさりとしている上に寝てるじゃねえか? なんか……おかしいと思ってな」

 

 確かに。

 どうしてあんな恰好をしてるんだろうか。

 とても嫌な予感がするのだが。

 

「……ファウスト。あの男の顔に見覚えは無いか?」

「全く無い。魔導司で、あのような者は見た事が無い。魔法使いの犯罪者である可能性は高いが……なあトリス」

 

 そう言って、彼女は振り返る。

 その時──酷く、トリスはモニターを睨んでいた。

 

「……あいつは」

「? どうした、トリス」

「いや……何でもない。恐らく、人違いだろう」

 

 ファウストの心配を制するように彼女は首を振った。

 

「それよりも……見ろよ。あいつを」

 

 ドラゴンはしばらくすると停止する。

 どうやら、障壁にぶち当たったようだった。

 だが、少年はすぐさまそれを想定していたかのように、何かを掲げる。

 そして、掲げたそれから光が発されて──ドラゴンは再び、何も無かったかのように島へ降りていくのだった。

 

「……どうやって通ったんだ?」

「分からない」

 

 全員は途方に暮れる。

 あの少年とドラゴンが、どうやって障壁を突破したのか分からないのだ。

 俺達が手こまねいていたその時。

 

『マスター!! このチョートッQ、元気満タン、今すぐ出発進行可能であります!!』

 

 チョートッQ!

 終わったのか、調整が。

 同時に、雪崩よせるように他の守護獣もやってくる。

 

『完全復活だよ、我がマスター! 流石ボクだと褒めてほしいね!』

『ギャハハハハハ、同じく完全復活だ! もう傷も完治したぜ! さあ、命令を寄越しな!』

『力が漲りますねェ!! マスター、さあ誰を殺せば良いのでしょう!?』

 

 うん、こうして見るとやかましいな。凄く。

 だけどどうする? こいつらに任せてみるか?

 もしかしたらエリアフォースカードなら出来るかもしれないが……。

 

『マスター! お困りのようでありますな! 我々に任せるであります!』

「出来るのか? 障壁が出ていて困ってるんだが」

『いや、それは……実は──』

 

 新幹線頭が言いかけた矢先。

 皇帝(エンペラー)のカードが激しく輝く。

 

皇帝(エンペラー)が、反応してる?」

『どうも、我らに関係しているのは確かであります。まるで、我々を迎え入れるような……』

「……ふむ」

 

 ファウストは腕を組む。

 どうやら考え込んでいるようだ。

 

『ただ、1つだけ奇妙な事が』

「何なんだ、チョートッQ」

 

 彼は困ったような表情で言った。

 

 

 

『ブラン殿の所持していたエリアフォースカードの反応が、少し匂うでありますよ。皇帝(エンペラー)が示しているのであります』 

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