学園デュエル・マスターズ WildCards【完結】   作:タク@DMP

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Ace18話:祭壇

 

 ……え?

 俺は首を傾げた。

 ちょっと待て。それはおかしいだろう。だって、ブランは今イギリスに居るんじゃねえか。そのエリアフォースカードが、何で今近くにあるっていうんだ?

 チョートッQ曰く、近くではない。あの島に向かっているとのことらしいが……。

 

「シャークウガ。どういうことですか」

『……遠くから、だ。確証染みた事は言えねえんだが……さっき、その島にドラゴンが近づいてるって、マスターは俺達に話をしたよな?』

「はい」

『そのドラゴンから感じるんだよ。亀の爺さんに似た気配が』

 

 全員に衝撃が走った。

 待てよ。だから、それはおかしいだろ。

 亀の爺さんってワンダータートルだろ? 此処は日本だぞ。ブランと一緒にイギリスに居るはずなのに。

 

「……なあ、もしかしてさっきの女の子って」

「そんなはずはありません。だとしても、何故ブラン先輩がこんな所にいるのですか」

「……行って確かめるしかねえだろ」

 

 全員は頷いた。

 

「今回は、敵が空を高速で飛んでくるわけじゃねえから、ゲイル以外でも行ける」

「とうとうこの時が来たんだね……」

「はい。行くとしましょう。全てをこの目で確かめる為に。シャークウガ。やれますね?」

『ああ。魔力を使った泡で、移動可能だ』

『あ、私は飛べないのでカードのままで行きますね』

「貴様は役に立つのか立たないのかどっちなんだ」

 

 結果。

 俺と黒鳥さんがダンガンテイオーに乗って移動。阿修羅ムカデはカードのまま待機。

 そして、紫月はシャークウガの作った魔法の泡に入って侵入。

 桑原先輩は当然のようにゲイルに抱えて貰って突入するつもりらしい。

 

「耀!!」

 

 振り返る。

 強い眼差しが俺を捉えた。

 

「やっぱり、あたしも……行きたい」

 

 進み出たのは、花梨もだった。

 

「花梨……」

「足手纏いになるつもりはない。あたしだって、そのために頑張ってきたつもりだから」

「……だけど、どうするんだ? 守護獣も居ないのに」

 

 ──彼女は行きたいようだった。やはり、自分だけ後方にいるのは性に合わないのだろう。

 だが、それでも物理的な問題は尚も大きく立ちはだかる。

 彼女は困ったようだった。

 

「……あたしは──」

「俺も行こう、刀堂花梨」

「!」

 

 そこに手を差し伸べたのは、火廣金だった。

 だけど、それがどんなに危険な事か、彼も分かり切っているはずだ。

 だが、敢えて俺はもう突っ込みはしなかった。目を見れば、彼が尋常ではない覚悟をしているのは分かる。

 

「俺の”罰怒”ブランドが居れば、君も一緒に空を飛べる。その代わり、マギアノイドとの戦闘は君に任せる事になってしまえが」

「……うん! 大丈夫!」

 

 その様子を見ていたトリスが呆れた表情で火廣金の脇腹をつつく。

 

「止めたんだぞ? あたしはな。だけどこいつがどうしてもって言うからよ」

「……火廣金……どうしてそんなに?」

「あいつが、刀堂花梨にこっそりデュエルの教練をやっていたみたいだしな」

 

 そういうことだったのか。

 義理堅い火廣金の事だ。彼女の事が放っておけなかったのだろう。

 なんせ、1度彼女に助けられているのだから。

 

「済まないな、部長。だが……事態が事態。刀堂花梨が行くというなら、僕は彼女を連れていく義務がある」

「……いや、こっちこそもう止めるつもりはないぜ。そんでもってよ……ありがとう」

「礼を言われるほどの事はしていない。俺なりの、義理の返し方だ」

 

 こうして、全員の準備が整った。

 俺達は──ハッチを開けて、自らの守護獣を空に召喚し、次々にそれぞれの方法で空に出ていく。

 ファウストが、最後に静かに言った。

 

「……健闘を、祈る」

「ああ。此処までありがとな、ファウスト」

「……これが、私の出来る数少ない事だ。後は、君達の意思に負けたのだろうな。またしても」

「……行こう、白銀」

「はい、黒鳥さん」

 

 ダンガンテイオーのコックピットは胸部。

 そこに乗り込んだ俺と黒鳥さんは、ガラスから映る光景を目にしていた。

 

「そうだ白銀。貴様に託しておきたいものがある」

「? 何ですか、今更」

「……僕が、昔使っていたカードだ」

「え?」

 

 彼に手渡されたカード。

 それは、スリーブが痛んだ1枚のカードだった。

 俺も見慣れたカードの名。それを呼ぶ。

 

「《破界秘伝 ナッシング・ゼロ》?」

「……貴様に、僕のゼロの美学を託そう。そのカードが貴様を呼んでいるのだ」

「……呼んでいる?」

「僕も昔──無色のデッキを握っていた時があったのさ。僕の心はある時を機に黒く染まってしまった。貴様の心も……貴様次第で幾らでも染められるだろう。頼む。託されてはくれないか」

「何故、今になって?」

「……最初会った時から、貴様がとんでもない事に足を突っ込んでいた事に僕は気付いていた。気付いていながら……直接貴様等を助ける事が出来なかった。今だから、これを貴様に渡したい。僕が、過去に置いてきたものを、貴様の手で昇華させてほしい」

 

 何かを黒鳥さんは予感し、見通しているようだった。

 俺は、1枚を黒鳥さんの持っていたカードに入れ替える。

 俺の事、期待してくれてるんだ。

 

「……久々だ。こんな気持ちで、戦うのは……あのグラサン馬鹿と並び立った時以来だ」

「?」

「……何でもない。そろそろ動くようだが」

「あ……ダンガンテイオー。こっちはいつでも準備オッケーだ!」

『2人とも、衝撃に注意するであります! 出発進行であります!』

 

 ダンガンテイオーの足元から展開された線路が伸びていく。

 そのまま、激突するように彼は障壁へぶつかっていく──俺は皇帝(エンペラー)を、黒鳥さんはやっと手にした死神(デス)を掲げた。

 予想通りだった。

 エリアフォースカードの力を取り込んだ守護獣は、障壁を貫き──遂に、その中へと突貫したのである。

 俺達に続くように(ストレングス)の加護を受けたゲイル・ヴェスパー。そして、魔術師(マジシャン)の力を受けたシャークウガ。

 最後に、戦車(チャリオッツ)の力を借りた”罰怒”ブランドも障壁を突破したのだった──

 

 

 

 ※※※

 

 

 

 す、すげえ!

 やっぱりすごい速さ──ってか、やばい、ジェットコースターのように血が頭に登っていく!

 減速というものを知らないダンガンテイオーは、そのまま島の地面にまで線路を敷いていき、そこへ着地しようとする。

 モニターもご丁寧に設置してあり、彼の視界がこっちに映し出された。

 気分はさながら、いつかテレビアニメでやってた新幹線型ロボットに乗っている気分……いや、まさにそうなんだけど。

 

「……なぁ、ダンガンテイオー、これ止まれるんだよなぁぁぁぁ!?」

「大丈夫だろう、死にはしないはずだ」

「あんたは涼しい顔してるなぁ本当に! 羨ましいや!」

 

 がっちりと身体がシートベルトで固定されていた理由が分かった。

 朝食ったものが出てこなければ良いのだが……。

 最も、ジェットコースターと違って身体が外にあるわけじゃないからまだマシなのではあるが。

 そうこうしているうちに、ダンガンテイオーの機体は遂に島に降り立つ。

 ゆっくりと減速していき、そのまま停止した。

 俺と黒鳥さんも、開くハッチからコックピットを出る。

 降り立つと、この謎の島の全貌がよく見えた。

 どうも、こうして見るとかなり広いように思えた。辺り一面が平地というわけではない。

 地面も、土ではなく何かの金属で出来ているような感触だ。硬い。

 

「結構広いが……あのドラゴンの姿が見えないぞ?」

「それどころか、あの少年と少女の姿も見えないな。何処に……」

 

 

 

「此処から先には行かせない」

 

 

 

 俺達は身構えた。

 そこに居たのは、水晶の異形達。

 姿が次々に変わり、光のドラゴンへとなって襲い掛かる。

 

『どかないなら、轢いてでも先に進むでありますよ!』

 

 とはいえ、こんな所で時間を食ってる暇はない。

 エリアフォースカードを構えた矢先だった。

 上空から、クリーチャー達を狙って衝撃波が襲い掛かる。

 

「ちょっと待ちなァ! その勝負、この俺が受けて立つ」

 

 不敵な笑みを浮かべた桑原先輩。

 そして、腕組みをしたゲイル・ヴェスパーがドラゴン達の前に立ちはだかる。

 

「白銀! 黒鳥さん! 島の中央に向かってくれ!」

「中央!?」

『島の中央に、祭壇のような場所がある。どうもそこが怪しいみたいだ! まあ、暴れられるわけだし……今日の主役は譲ってあげるよ!』

 

 空間が広がった。

 黒鳥さんも、阿修羅ムカデを実体化させる。

 

「行くぞ白銀。此処は桑原一人で大丈夫だろう。もう、無力さに苦悩していたころの奴ではない」

「……はい!」

 

 本当の意味で頼もしくなった桑原先輩。あの人なら、きっと大丈夫だろう。

 ※※※

 

 

 

 走る俺と黒鳥さん。地面は土になった。一体、どんな地面の仕組みになってるんだろう。

 島の中央に階段のような場所があるっていうのか。

 どっちにせよ、そこにあのドラゴンが居るんだろうか。

 遺跡を進む。

 崩れ落ちたような壁。妙な文字の書かれた石碑。

 それらの意味は解せないが……。

 

「どうも古代文明の遺跡というに相応しい場所のようだが」

「そうみたいですね。なんか、重々しいというか歴史を感じます。でも、何でこんな遺跡が今まで沈んでいたのでしょうか?」

「意図的に隠さねばならない物でもあったのだろうか。それがこの先にあるのだろうが」

 

 そう言っている矢先だった。

 その壁がいきなり、崩れだす。

 俺達はすぐさまそこから跳ねて避けたが、じゃりや小石が飛び散った。

 凄まじい魔力を肌で感じた。

 空気の震え。これは──

 

「また、会ったな──人間よ」

「お前は……!」

 

 バルカディアNEX。

 運命の輪を取り込んだ水晶のドラゴンだ。

 

「……会いたかったぜ。こっちはお前をぶっ倒したくてうずうずしてたんだ」

『さっきのリターンマッチでありますよ!』

 

 

 

『ちょっと待ったァ!!』

 

 

 

 その時だった。

 迸る激流が地面に着地する(尚、水飛沫は俺達にしっかり掛かった)。

 そこに立っていたのは、紫月とシャークウガであった。

 

「っ……遅れて申し訳ありません」

「紫月!」

「先輩、師匠。紫月、確かに合流しました。此処は私が奴を倒しましょう。アレには借りがあるので」

 

 いきり立った様子で彼女が言った。

 シャークウガを傷つけられたのをやはり根に持っているのだろう。

 だが、

 

「……いや、紫月。丁度良かったと言わざるを得ない」

「え?」

 

 黒鳥さんの背後から阿修羅ムカデが現れる。

 ……黒鳥さん、まさかこいつと戦うつもりなのか?

 

「紫月。白銀と一緒に先へ行け」

「……! 何故ですか。私では実力不足だと言うのですか」

「逆だ。敵の中枢へ行け。任せると言っている」

「……成程」

「えと、つまりどういうことだ?」

「機械では僕の弟子の相手は全く務まらんということだ」

 

 言った黒鳥さんは進み出る。

 つまり、紫月を信頼している。先に行ってほしいってことなのか。

 

「白銀。或瀬ブランが所持しているはずのエリアフォースカードが何故、あのドラゴンから感知されたのか……僕には酷く嫌な予感がするのだ」

 

 確かに、それが最大の謎だ。

 俺は、思い返す。

 映像に映っていた、横たわった少女を。

 まさか。まさかとは思うが……いや、そんなはずはない。

 だけど、事件が起こってから1度もブランとは連絡が取れていないのだ。

 そんなはずはない、見間違いだとは思いたいのだが。

 

「何かが起こった時。彼女に一番近い、貴様らが行った方が良いだろう」

「師匠……分かりました。任せます」

 

 エリアフォースカードを掲げる黒鳥さん。

 空間が開き、怪物を巻き込んでいく。

 

 

 

「貴様、何者だ。唯の人間ではなさそうだが──」

「僕は──貴様に引導を渡す死神だ」

 

 

 

 ※※※

 

 

 

 やっと見えた。

 祭壇、って言われてた場所だ。

 ぶつぶつとシャークウガが「畜生、借りを返すのは俺のはずだったのに……」と言っていたが。

 

「にしても花梨と火廣金遅いな」

「……心配ですか?」

「心配に決まってるだろ! あいつら、どんな無茶をするか分からないし──」

 

 言いかけて俺は絶句した。

 祭壇と呼ばれていた場所から飛び出す一筋の光。

 それが天を貫いて柱のように上る。

 どうやら嫌な予感というのは終らないらしいが──駆け寄るしかない。

 俺達は走って、走って、走り続けた。

 紫月は慣れない事に息を切らせながら、俺は精一杯足を動かしながら。

 そして辿り着いたのは──異様な光景だった。

 光だ。

 さっきの光の根元に、ドラゴンが居る。そして、激しい咆哮で島を震わせていた。

 仮面の下からでも響く、悍ましい声だ。

 そして、その前で手を広げているのは……さっきドラゴンに乗っていた少年だ。

 視界を上にやる。激しい光の柱の中に、人影があった。

 少女だ。あの金髪碧眼の──だけど、今度は顔が見えていた。髪は引力に逆らって浮き上がっている。

 だが、俺の頬は引きつった。

 背中は凍り付き、足はたたらを踏む。

 それほどに俺は動揺していた。

 どくどくと鳴り響く心臓を握り締めた。

 俺は、彼女の名を、呼ばざるを得なかった。

 

 

 

「ブラン……!!」 

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