学園デュエル・マスターズ WildCards【完結】   作:タク@DMP

114 / 316
Ace20話:正義のサバキ─裁きの紋章

 ※※※

 

 

 

 ──俺とロードのデュエル。

 しかし。今までのデュエルと違っていたのは、俺が対峙する相手はロードだけではなかったということだ。

 彼の背後には、鎖で繋がれた仮面の龍、サッヴァーク。

 そしてそこに一緒に繋がれているのはブランだった──!

 

「ブラン!?」

「助けてたいなら、僕を倒していけ。もっとも、それは不可能だけどねェ」

「……テメェ。俺をどこまで怒らせたら気が済むんだよ!!」

 

 2ターン目から、既に2枚のマナをチャージし、俺はクリーチャーを呼び出していく。

 いつもの動き、いつも通りだ。

 俺の持っている武器全部をあいつにぶつけて、勝つんだ!!

 

「《ヤッタレマン》召喚! ターンエンド!」

「僕のターン。2マナで《ハヤテノ裁徒》を召喚。ターンエンドだ」

「何だ、あいつ……!?」

 

 現れたのは、あのサッヴァークの仮面によく似た小さな結晶のクリーチャー。

 メタリカか……!?

 あのドラゴン、もしかしてメタリカに関係してるのか?

 どの道、相手が展開するならこっちは除去の準備をしないといけないが……。

 

「こいつらはサバキスト。サッヴァークの従順にして忠実なるしもべさ」

「サバキスト……!?」

『ひっどい名前でありますなあ! マスター』

 

 ジョーカーズも人の事を笑えないが、それでいいのか相棒よ。

 

「《ハヤテノ裁徒》は、呪文のコストを1軽減する。ターンエンドだ」

「ならこっちはマナを増やす! 《パーリ騎士》召喚!! 墓地から《ジョジョジョ・ジョーカーズ》をマナに!」

「ジョーカーズ、か。ふざけたカードを使うねえ。だけど、ルビルスとのデュエルを通して、君の戦法は全て見切っているも同然なのさ!!」

『ハッ、何が見切ったでありますかァ! そう言ったやつがジョーカーズにボッコボコにされたところを、我はこの目で何度も見たでありますよ!』

「どうだか」

 

 言った彼は3枚のマナを払う。

 それは、呪文だ。だが今までの物とは何かが違う。

 

「刻め、《剣参ノ裁キ》! 効果で山札の上から3枚を見て、メタリカか呪文を手札に加える。加えるのは、《サッヴァークDG》だ」

 

 あれは──! 遂に見えたぞ、サッヴァーク!

 見たところ、パワー5000でコスト6のクリーチャー。

 だが、確かにマスターカードの烙印が見えた。

 にしても少し非力過ぎる気がしないでもないが。

 

「そして──」

 

 次の瞬間、唱えられた《剣参ノ裁キ》はロードのシールドに刻まれるようにして置かれる。

 ヒビがシールドに入る。まるで紋章のように。

 なっ、何なんだあの呪文は。

 

「裁きの紋章。唱えた後にシールドに表向きになって置かれる。君がシールドを下手にブレイクすれば、また手札に加えられてしまうという算段だ」

「へっ、サーチ呪文くらいでふんぞり返ってんじゃねえよ! ……何か仕掛けられる前に、先手を打つ! 4マナで《ヘルコプ太》召喚! カードを3枚引いて、ターンエンドだ!」

 

 次のターンで、態勢を整えて、そして一気に攻め勝つ!

 盤面は並びだした。これを維持したい所だ。

 

「僕のターン。それじゃあ、そろそろ始めようかなあ。僕の裁きを」

「……?」

「並べた所までは評価してあげるよ。でも、その後の事を考えてなかったね。呪文、《戦慄のプレリュード》を2コストで唱える」

「なっ……!」

 

 タップされる1枚のマナ。

 木霊する戦慄の旋律。

 鳴り響く雷鳴。

 鎖を食いちぎる音が後ろから聞こえる。

 

「この素晴らしい世界に住まう人類種よ。僕は、君達を救う者だ──」

 

 仮面の下から轟く咆哮。

 翼が広げられ、踏みしめた地面に水晶が広がっていく。

 

 

 

「正義ノ裁キの名の下に──僕が君に銘じよう、《サッヴァークDG》ッ!」

 

 

 

 ※※※

 

 

 

「ぜ、全然上手くいかない!」

「つ、疲れました……とても硬い、そんな感触です」

 

 へばったように花梨と紫月は言った。

 結論から言えば、既にサッヴァークに取り込まれている正義のエリアフォースカードへのアクセスは容易ではなかった。

 この事態に、火廣金の顔も流石に難儀を示すものになっていった。

 

「……諦めるな。やるべきことをやるんだ」

「分かってる……けど、硬すぎるよ……!」

「あと少し、ですが……」

 

 空間の中に居る耀を見やる。

 もう、既にサッヴァークDGと相対しているのが見える。

 あの皇帝の力があれば、まだいけるかもしれないが、あと少しが足りないのだ。

 

「……チャンスはデュエルの途中である今この時だけ。しかし、肝心の皇帝があの中で使えないとなると……!」

 

 やはり、今は自分たちがやるしかないのか。

 紫月の顔は険しさを増した。

 

「お願いです……先輩。どうか、負けないで……私たちも、戦いますから」

『まだ出力を上げるのか!? 無茶だ!! 魔術師とお前は今や一心同体なんだぞ!?』

「それでも譲れないものがあるんです。自分を犠牲にしてでも、諦めたくない思い出がある……!」

『あーもう、そういうと思ったぜ。こうなったらとことんまで付き合ってやらあ、後悔すんじゃねーぞ! 亀の爺さんの弔い合戦だ!』

 

 それを見てか、花梨も再び膝を立てた。

 

「あたしも……負けてられない! 後輩に!」

「……刀堂先輩」

「紫月ちゃん。行くよ!」

「……はいっ」

「よし、魔力を補充する。もう1度だ。いや、何度でもだ。働きかければ……セキュリティをこじ開ける事が出来るかもしれない」

 

 3人は再び立つ。

 目の前で戦う耀に奮い起こされる。

 戦わねば。自分達も、出来る事をやらねば、と。

 だが、焦燥も募っていた。

 魔力は無限ではないのだ。

 

「──頼むぞ、部長……簡単に、負けてくれるなよ」

 

 

 

 ※※※

 

 

 

 獰猛に、しかし歪に、造られた龍は大地に降り立つ。

 そこから水晶が広がっていく。

 その様を見て、鮮明に思い出すのは──あの街中を侵食する水晶だ。

 やはり、このサッヴァークが原因だったのだろうか。あの水晶も──!

 

「その効果で、山札の上から3枚を表向きにする。そして、呪文、メタリカ、そしてドラゴンを全て手札に加える」

 

 手に入っていくのは3枚の呪文のようだった。

 手札を増やして、どうするつもりなんだ!?

 

「そして、ターンの終わりに《サッヴァークDG》の効果発動。手札から好きな裁きの紋章を唱えても良い。使うのは……これだ」

 

 刻まれる。

 無情なる正義の裁きが。

 鳴り響く。

 轟音の如き雷鳴が。

 煌く。

 紫電の如き稲光が。

 

 

 

「ああああああアアアアアアアaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!」

 

 

 

 そして、木霊する甲高い絶叫。

 鎖で縛られたブランの全身に紋章が刻まれていく。

 くそっ!! 

 何も、何も出来ねえのかよ、俺は!!

 

 

 

「──刻み込め、《断罪スル雷面ノ裁キ》!!」

 

 

 

 咆哮するサッヴァークの仮面が光り、全身に紫電が迸る。

 そして、地面を踏みしめる度に地面を穿つ雷鳴が突如何本も降り注いだ。

 それにあたった《ヤッタレマン》と《パーリ騎士》の身体が水晶に包まれていく。

 激しい稲光はこちらにまで降り注いだ。

 

「残念だったね。この呪文は、相手のシールド2枚と相手のクリーチャー2体を選ぶ事で、選んだクリーチャーをシールドの上に磔にするのさ!!」

「磔……!?」

 

 見ると、俺のシールドの上に重ねられる2体。

 シールドの上に表向きにして重ねる、裁きの紋章と同じってことか!

 俺の視線は再びブランの方を向いた。

 首はもたげられており、最早生気を感じない。

 生きているのか、死んでいるのかも分からない。

 

「──」

 

 一瞬だけ、もたげられた首が上がった。

 乱れた髪の間から、彼女の青い瞳が覗く。

 とても、とても不安そうな目だった。言葉こそ発しないが、目は口程に物を言うという。

 俺が初めて、あいつに出会った時と同じ目だった。

 

「ブラン……」

「終わりだ」

 

 しかし、それはすぐにカッと開かれてしまう。

 

「サッヴァークは目覚めて、世界は救われる。僕が、人類の歴史から人類を解き放つんだ!」

「……出来ねえよ。お前にはな」

 

 拳を握り締めた。

 あんなに、あんなに不安そうな顔をしたブランは何時ぶりだろうか。

 このクソ野郎が、ブランをどんな目に遭わせたのか、想像もつきやしない。

 裏切り。相棒の死。

 誰よりも、友情を欲した彼女がどんなに辛い思いをしたのか、想像もつきやしない。

 だから──俺は独善的にも、こう思うのだろう。

 許せないんだ。

 絶対に。

 

「──女の子一人を幸せに出来ないお前が、世界を救うなんて……出来やしねえよ」

「いや、可能だね。もう……サッヴァークは目覚めるんだ!」

 

 叫んだ彼の言葉と共に、ブランの身体に紫電が迸った。

 叫び。絶叫。俺の耳に突き刺さる。

 

「しっかりと目に焼き付けろ、サッヴァークが目覚めるその瞬間を。審判(ジャッジメント)正義(ジャスティス)。この2つを重ねた時、その硬い殻を突き破って、裁きの龍が姿を現す」

 

 サッヴァークの仮面に罅が入る。

 俺のシールド、そしてロードのシールドに刻まれたカードが光り輝き、龍の身体に閃光を迸らせる。

 

「クソがよ……今の今まで、自分のやったことに躊躇いも無けりゃ罪悪感もありゃしねえのかよ」

 

 いや、罪の意識が無いのは当然だ。

 こいつは、自分のやっていることは全て正義の名の下に許されると思っているのだ。

 そんなこと、俺は認めない。

 誰かが悲しむ正義なんて、誰かが当たり前を手放さなければいけない正義なんて──間違っている。

 

「全ての準備は整った。幽世の扉の魔力は満ち満ちた」

 

 見ると、サッヴァークの立っている場所から、紋章が広がっている。

 それも、島全部を覆いつくさんばかりの勢いでラインが広がっていく。

 

「それを全て、僕のサッヴァークに注ぎ込んでやる。目覚めろ、裁きの龍」

 

 地鳴りが響いた。

 魔法陣が地面に現れる。

 そこに描かれたのは、まるで扉のような紋様。

 その隙間から、魔力が漏れ出してサッヴァークとブランを包み込んだ。

 

「自分のターンの終わりに、すべてのシールドゾーンにある表向きのカードの合計が3枚以上なら、《サッヴァークDG》を破壊してもよい。そうしたら、光のドラゴンを1体、自分の手札からバトルゾーンに出す」

 

 激しい黄金の光。

 

「《サッヴァークDG》を破壊し、手札から出し、全てを終わらせるのはこのカードだ!」

 

 サッヴァークが腹に抱えていた水晶が禍々しくその身に罅を入れていく。

 完全なるドラゴンの誕生の時だ。

 仮面が──砕け散った。

 

 

 

「──裁きの刻は今、刻まれり。我が銘じし汝の名は──《煌龍(キラゼオス)サッヴァーク》ッ!」

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。