学園デュエル・マスターズ WildCards【完結】   作:タク@DMP

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Ace24話:正義のサバキ─オメガ・マキシマム

 ※※※

 

 

 

 声が、聞こえる。

 

 私に、呼びかける声が。

 

 誰?

 

 誰なんだろう。

 

 だけど、この声、この感触。

 

 全てが懐かしくて──あたた、かい……?

 

 

 

 ※※※

 

 

 

「──終わったか。フフッ」

 

 ドラゴン・W・ブレイクが決まった。

 煌龍の一撃を食らい、白銀耀は呆気なくも倒れた。

 まあ、良い。

 ようやく、サッヴァークを支配から解き放ち、完全なる裁きの刻が刻まれる。

 お終いだ。

 全てが。

 そして始まるのだ。

 今までの努力は、無駄では──

 

「っ……」

 

 彼はそこで追憶を止めた。

 わざわざ思い出す事も無い。

 いずれ、自分も幸福になれる。

 この世界の人々と共に。

 やっと、これで、全てが救われるのだ。

 

 

 

 

「よう、クソッタレ」

 

 

 

 ロードは息を止めた。

 この声。

 そして、この覇気。

 やはり、まだ止まらない。

 この男は──諦めていないというのか。

 

 

 

「──今度こそ……返して貰うぜ。ブランをな!!」

 

 

 

 ※※※

 

 

 

 結局、凄い光と共に俺はこっちに意識を引き戻された。

 どこまで上手く行ったかは分からない。

 だけど、これで多少なりともブランの意識を解放できたのならば前進だ。

 しかし、あくまでもロードはそんなことに気付いていないのか、余裕綽々の笑みを浮かべたのだった。

 

「……はっ、今更何を。君が寝ている間に、サッヴァークの裁きは始まっていたのさ!!」

「ッ……!」

 

 彼は手を広げた。

 サッヴァークの身体を縛っていた鎖が次々に解き放たれていく。

 そして、空に光る無数の星。

 マスター・ドラゴンの断罪が、始まったというのか!?

 

 

 

「さあ、マスター・ドラゴン!! 判決を下せ!! 今こそ裁きの刻だ!!」

 

 

 

 叫ぶロード。

 それに呼応するようにサッヴァークはこちらを睨む。

 まずいぞ。幾らロードを倒しても、サッヴァークによる裁きが始まったら、大変だ。

 だけど、もし俺達がやったことが間違っていなかったのならば。

 これは賭けだ。サッヴァークの判決に全てを委ねるしかない!

 

 

 

 

『判決……ヲ、下ス』

 

 

 

 肌が焼け付くようだ。

 な、ど、どうなるんだ!?

 全人類の人格を統合するなんて、今この場で出来る事なのか!?

 

『覚悟を決めるしかない、でありますか! 信じ抜く、覚悟を』

「……ああ、俺は信じるぜ。最後までな。やれるだけの事はやったんだ」

 

 

 

「さあ、サッヴァーク!! 審判を下せェェェェーッ!!」

 

 

 

 

 咆哮する龍。

 肌が震えた。

 衝撃が、全身に伝わる。

 そして、龍が下した判決は──

 

 

 

 

『汝ノ正義……我ニ定義サレタ正義ニ……反ス』

「……は?」

 

 

 

 ロードは手札をぶちまけた。

 

「ど、どういうことだ、サッヴァーク?」

『汝ノ正義……我ノ正義ニ反ス、故ニ……判決下ス、価値無シ』

「ど、どど、どどどどどどどっ……」

 

 ?

 どういうことだ。サッヴァークは何もしないぞ。

 上手く行ったって事か!?

 

「ど、どど、d……Don’t be silly!! 言う事を聞け、サッヴァーク!!」

「おいおい、さっきテメェで言ったじゃないか」

 

 血走った眼でロードは俺を睨む。

 そこには先程の余裕も、何もない。

 最後の最後で全てを台無しにされたのだ。ショックは何倍にも跳ね返っているだろう。

 

「裁きを下すのはお前じゃない!! サッヴァークだ!!」

「Shut up!! 何を間違えた!? 僕の教育が間違っていたのか!? 守護獣を殺せば、エリアフォースカードは言う事を聞くんじゃなかったのかぁ!?」

『確かにお前の言う通りでありますよ。今の正義(ジャスティス)の所有権はお前にあるであります。が……』

 

 チョートッQが何時にも無く低い声で威嚇した。

 

『そんな暴挙、正義(ジャスティス)のエリアフォースカードが許すわけが無かったのでありますよ』

「Fuck off!! 出来損ないの、紛い者が!! まさかまだ生きていたのか!?  Bullshit!!」

『いや、これは……ワンダータートルが遺した最期の意地。そして……我々に託した最後のチャンスであります!!』

「俺達はそれを押した事で、眠っていたモンが目覚めた、ってことらしいな。ブランと一緒に居た事で培われた、正義が!!」

「ぐうううううううううう!!」

 

 サッヴァークがロードに向かって、剣を突き立てた。

 

『左様……ソシテ、ソレは上手く行ったという事だ。我に刻まれた正義は、彼らによって再び目覚めた。もうヌシの言葉など聞き入れるものか。ロード・クォーツァイト』

「Shut up!! Shut up!! Shut up!! Shut up!! Shut up!! 再教育だ!! 修正してやるぞ!! 何度でも、だ!!」

 

 直後。

 サッヴァークの身体が再び鎖に縛られていく。 

 まさか、またロードの言いなりになっちまうのか!?

 

『白銀耀……恐れるな!! この男を倒し、探偵を……救うのだ!!』

「!!」

 

 ……オーケー、サッヴァーク。

 やってやるぜ!!

 再び意識を乗っ取られてしまった煌龍。

 状況は悪いままだ。だけど──こっから逆転して見せる!!

 

「デュエル再開だ!! ロード!!」

「畜生……愚か者達が……クォーツライト家が何百年も積み上げてきたものが、おのれ……!!」

 

 啖呵を切ったのは良いが、絶望的な状況なのは間違いない。

 今のロードの場には、表向きのシールドを墓地に置いて味方全体に除去耐性を付与する上に、ブレイクしたシールドを吸収する《煌龍 サッヴァーク》。

 そして、タップされる度に互いのシールドをブレイクする上に、メタリカと裁きの紋章にS・トリガーを付与する《DG ~ヒトノ造リシモノ~》。

 最後に、呪文のコストを1軽減する《ハヤテノ裁徒》がいる。

 俺のシールドは残り2枚。あいつは、俺のS・トリガーによる反撃を除去耐性で無視して突撃し、勝つ事が出来る。

 だから、次のロードのターンを如何にして耐えるかが鍵だ!!

 

「俺のターン、ドロー!!」

 

 熱を持った皇帝のカード。

 それを握り締める。

 何故か、力が湧いてきた。この絶望的な状況をひっくり返すための、最後の人踏み込みを入れる覚悟が!!

 これがこのデュエルの、俺の最後の切札だ!!

 

『マスター!! 逆転のチャンスはあるであります!!』

「ああ。だけど、耐えるにしても《サッヴァーク》にシールドを吸収されたらまずいぞ!? 打点、足りるのか!?」

『思い出すでありますよ! 奴の手札の分かっているカードを!! それで、奴がシールドではない別の物を攻撃せざるを得ない状況を作れば良いであります!』

「……成程、分かったぜ!!」

 

 そうだ。

 除去しなくても、相手を無力化する方法は幾らでもある!!

 

「6マナで《あたりポンの助》を召喚!!」

「なっ!?」

 

 盛大な舞台、そして多くのはずれポンの助と共に現れたのは、殿様のようなクリーチャー《あたりポンの助》。

 これが逆転の鍵だ!!

 

「こいつの効果で、クリーチャーの名前を1つ選択する! 選択するのは、《DG ~ヒトノ造リシモノ~》だ!!」

「……な、何だそのふざけたクリーチャーは……!」

「ああ、ふざけてるぜ。無茶苦茶だ。なぜなら、コイツの効果で選ばれたクリーチャーの効果は無視されるんだからな!!」

「Don’t be silly……!!」

 

 これで、あいつはもう、自分からシールドの裁きの紋章を使う事は出来ない!

 それどころか、シールドのメタリカも裁きの紋章も、もう「S・トリガー」じゃない!

 

「そして、G・ゼロ発動!! コスト5以上のジョーカーズが場にある時、《シャダンQ》はタダで召喚できる!!」

 

 現れたのは遮断器のようなクリーチャー。

 こいつは効果で、相手のクリーチャーが自分を攻撃するときにタップすればその攻撃を中止する事が出来る!

 

「つまり、これで《ヒトノ造リシモノ》の効果は封じられ、ドラゴン・W・ブレイクも封じたってことだ!」

「……フフフッ」

「?」

「フハハハハハハハハハハハ!!」

 

 突如、彼は高笑いを始めた。

 

「馬鹿だねえ!! その程度で何を封じたって!? 君の希望如き、何度でも絶望の底にブチ堕としてやるよ!! アハハハハハハハ!!」

「……!」

「さっき僕が、何を手札に加えたか、覚えてないとは言わせないよ!」

 

 タップされる光の3枚のマナ。

 唱えられたのは──裁きの紋章だ。

 

「刻め、《隻眼ノ裁キ》! 効果で《あたりポンの助》をフリーズだ!」

「っ……まずい」

「そして、《サッヴァーク》で《あたりポンの助》を攻撃し、破壊!」

 

 《サッヴァーク》の剣が、《あたりポンの助》を貫き、爆散させる。

 これで、《DG》の効果も復活した、ってことか……!

 

「さあお終いだ! 《DG ~ヒトノ造リシモノ~》で攻撃する時、タップされたので互いのシールドをブレイク!」

「っ……やべえ」

 

 ロードのブレイクしたシールドは、さっきの《断罪スル雷面ノ裁キ》と《命翼ノ裁キ》が刻まれたシールド。

 成程な。フリーズじゃなくて、手札に戻るにしても確実に場数を減らしに来たか!

 

「このままで終わると思うなよ! 《シャダンQ》を《断罪スル雷面ノ裁キ》でシールドに送り、《命翼ノ裁キ》でシールドを増やす! 更にS・トリガーで、《コンゴウノ裁徒》を召喚だ!」

「げっ……!」

 

 現れたのは、鉱石の巨人。

 そのどてっ腹には、巨大な紋章が焼き付けられている。

 また新しいサバキストか!

 

「効果でシールドを更に1枚増やす。そして、お前がブレイクするシールドは、僕が選択するんだ!」

「マジかよ……!」

 

 つまり、こっちの攻撃は全て、裁きの紋章が刻まれたシールドに向かうってことか!

 何ともやりにくい能力だ……!

 

「そして! 《ヒトノ造リシモノ》でお前の最後のシールドをブレイクだ!!」

 

 光線が、俺のシールドを穿つ。

 これでラスト。

 だけど俺としては──勝機は最初から失っていなかった。

 

「好い加減にさあ、諦めなよォ! 仮に耐えられたとして、この布陣は崩せないんだからさあ!」

「ハッ、十分だ」

 

 諦めるつもりは最初からない。

 ブランは──俺の仲間だ!

 

『マスター! 大チャンスであります!!』

 

 砕けたシールドが──光に変わる。

 

「無駄じゃなかった……お前のドラゴン・W・ブレイク──それを防いだ時点で、俺の勝機は十分にあったんだからな……!!」

「ッ……!?」

 

 悪いが、こっから反撃させて貰うぜ!!

 

「除去できねえなら、止めれば良い! S・トリガー、《ジョバート・デ・ルーノ》!! その効果でお前の《ハヤテノ裁徒》をタップするぜ!」

「ぎっ……嘘だろ!?」

「嘘じゃねえよ。これが真実だ」

「だ、だけど!! 君の場には何もいない!! 次のターンで僕にトドメを刺すなんて不可能だ!!」

 

 確かに、あいつのシールドは4枚。

 おまけに、メタリカと裁きの紋章がS・トリガー化している事で、ただ攻撃するだけでは無限にシールドを回復されてしまう。

 だけど──あいつは見誤った。ジョーカーズの底力ってやつを!

 

「不可能とか可能とか関係ない。俺はテメェをぶん殴らなきゃいけねえ」

「なっ……!?」

「ブランを裏切り、数えきれない人の当たり前を奪い、そしてとうとう自分で造ったサッヴァークにも見放されたお前を……俺が殴らないで、誰が殴る?」

「っ……!?」

 

 静かに、俺は怒りを燃やす。

 そしてあの精神世界で味わった、ブランの苦しみの一端を。

 あんなもんじゃ、ねえんだろブラン。

 お前の受けた、地獄は!!

 

「──お前を目覚めさせて、ブランに謝らせる。あいつの心の傷はそれでも癒えねえだろうし、何にも元には戻らねえ。だけど──それ以外に、テメェの目を覚まさせる方法があるかよ!!」

「知ったような口を、利くな! そんな事は、僕を倒してから言うんだな!」

 

 ならば、直接叩きつける!

 カードを引き、躊躇い無くマナに置いた。

 これで、全てが足りた。

 このターンで全てを終わらせる。憎しみと、悲しみと、怒りを!!

 

「魂を燃やせ──J・O・E・3!!」

 

 ガコン、ガコン、ガコン!!

 全てのリミッターを解除。

 サーキットが敷かれていき、炎に包まれた!!

 

「チョートッQ……いや、ダンガンテイオー!!」

『……うむ。我の力、マックスパワーで開放する時が来たであります!!』

 

 熱を持った皇帝のカード。

 それを握り締める。

 何故か、力が湧いてきた。この絶望的な状況をひっくり返すための、最後の人踏み込みを入れる覚悟が!!

 これがこのデュエルの、俺の最後の切札だ!!

 

 

 

「これが俺の超怒級(チョードキュー)切札(ワイルドカード)!! 《王盟合体(オメガッタイ) サンダイオー》!!」

 

 

 

 飛び出したダンガンテイオー。

 サーキットに、分解された2機のロボットのパーツが浮遊して飛んでくる。 

 それを身に纏い、合体し、遂に──1つとなって大地に降り立つ。

 

 

 

『絆の勇者、サンダイオー……見参であります!!』

 

 

 

 これが……皇帝によって目覚めた新たな切札!

 ……行ける。一気に逆転できるぞ!

 

「《サンダイオー》の効果! それは、自分と場とマナにジョーカーズが合計で10枚以上ある時、相手のシールドをブレイクするときに墓地に叩き落とすというもの!」

「っ……それは残念だったね!! 君の場とマナ、数えてもジョーカーズは9体しかいない! しかも君は今、マナを使い切ったじゃないか!」

「おいロード。お前さっき、自分でシールドに封じ込めて、自分でブレイクしたクリーチャーが居たよな」

「……何?」

 

 自分で忘れたとは言わせねえぞ。

 こっちにはまだ、残っているんだ。

 

「そいつと同じカードがもう1枚、シールドに埋まっていたとしたら?」

「ま、まさか……!!」

「どっちにしたってこうなっていたって事だ! 俺があのターンを耐えた時点で、お前に勝機はねえ!!」

 

 マナが足りないならば、マナを使わずに出せば良い!

 一気にこれで頭数を揃える!!

 

「G・ゼロ発動!! 場にコスト5以上のジョーカーズが居るので、《シャダンQ》を2体、タダで召喚!!」

「だ、だけど!! 打点が足りない!! そいつは、W・ブレイカーじゃないか!!」

「じゃあ、打点を増やせば良い!!」

 

 もう1体の《シャダンQ》。

 こいつによって、全ては満たされた。

 勝利の条件が!

 かつては完全なる無色だったカード。

 黒鳥さんが使い、俺もまた使ったジョーカーズと無色の切札。

 今、その色は──俺の色に染まる。

 かつて黒鳥さんも、戦いの中で己の色にデッキを染めていったように!!

 

 

 

「G・ゼロ、呪文……《ジョジョジョ・マキシマム》!!」

 

 

 

 突如聞こえてくる口笛。

 そこにあったのは、ジョニーと愛馬・シルバーの姿。

 だが、シルバーの姿は変形し、巨大な主砲へと姿を変える。

 

「な、な、何だ……!?」

「見せてやる!! これがジョーカーズの必殺技だ!! 《ジョジョジョ・マキシマム》は俺の場とマナにジョーカーズが合計で11枚以上あればタダで唱えられる呪文」

「!?」

 

 その必殺技たる所以は──

 

「そして、俺のクリーチャーの数……合計4枚分、俺のクリーチャー1体のシールドのブレイクする数を増やす!!」

「な、何を言ってるんだ!? 何を言ってるのか、さっぱり分からないぞ……!?」

「じゃあ分かりやすく教えてやるぜ」

 

 拳を握り締めた。

 効果を使うのは、勿論シールドを直接墓地に叩き込む《サンダイオー》だ!!

 

「《サンダイオー》の攻撃で、お前の全ては燃え尽きる。シールドも、歪んだ正義も、そして野望も!! 全部だ!!」

 

 ロードは狼狽した。

 今の今までで一番に。

 

「そ、そんな馬鹿な……!!」

「《サンダイオー》で攻撃!! この攻撃はブロックも攻撃誘導も出来ない。絶対に防げない一撃だ。そして、お前のシールドを全てブレイクする!!」

 

 飛び立つ《サンダイオー》。

 その刀を振り上げ、ロードのシールドを目掛けて薙ぎ払う。

 一閃を防ぐ事が出来る者は誰一人として居ない。

 

 

 

『これが鎧袖一触の一撃必殺、オメガ・マキシマムでありますッッッ!!』

 

 

 

 刀に炎が灯った。

 一文字に、ロードのシールドが燃え尽きる。

 一瞬で、黒焦げになって、裁きの紋章も消滅していく。

 そして、歪んだ正義さえも。幻となって消える!!

 

「こ、こんな事があって良いはずがない……僕は悪くない……僕は悪くないぞォ!!」

「正義には大きさの分だけ責任が伴う」

「ッ……!!」

「さあ、償って貰うぜ。お前の罪って奴を!!」

 

 もう、ロードを守る者は何もない。

 がら空きになった空洞の正義を、終わらせる時だ。

 

 

 

 

「──《ジョバート・デ・ルーノ》でダイレクトアタック!!」

 

 

 

 ※※※

 

 

 

 ──事故で死んだと見せかけ、一族に連れられて世間から姿を消した僕は唯一人、DGを研究していた。

 クォーツライト家の正統なる後継者として。

 一族が残した数々の魔導書は僕に使命感を与えた。僕に、生きる目的を与えた。

 何処で歯車が狂ったか分からない。

 だけど、僕は──確かに審判のカード、即ち天からの啓示を受けたのだ。

 

 

 

 DGで、一族を皆殺しにした。

 

 

 

 奴らは、DGの事を何も分かっちゃいない。

 この力は、”世界を救う”ためにあるのに──自分たちの為にDGを利用しようとしたのだ。

 

 

 

 人類を解放するのは僕だ。

 

 

 

 その為ならば、何だって捨ててやる。

 

 

 

 僕が、僕こそが──正義なのだから。

 

 

 

 ※※※

 

 

 

 デュエルの直後。俺は息もつくことなく駆けだした。

 ──終わった。

 崩れ落ちていくサッヴァーク。

 そして、消えていく空の無数の光。

 これで、これで全部終わったのか。

 横たわって動かない、ロード。こいつの胸倉を掴んでぶん殴るのは後だ。

 俺は、その近くで倒れていたブランに駆け寄って抱きかかえた。

 

「ブラン!! ブラン!! 大丈夫か!? ブラン!!」

 

 返事はない。

 辛うじて脈はある。

 だけど、このまま放っておくことが出来ない状態だ。

 後ろを振り向いた。

 見ると、紫月達も倒れているようだった。完全に、あの精神世界で力を使い切っちまったようだ。

 ともあれ、これで全ての問題は片付いたのか?

 

 

 

「まだ……だぁ……!」

 

 

 

 掠れた声が聞こえた。

 這うようにしてロードが祭壇に向かって歩いている。

 魔力が溢れ出している祭壇の大穴に向かって。

 

「この世から欲望という欲望を、消してやる……それが、僕の悲願だ──全てを捨て去ってでも、叶えるべき、使命だ──!」

「全てを捨てて、その後何が残った?」

「──!」

「幸福の為だ、人類の為だ、って言ってるけどよ──結局お前は誰も幸せに出来てねぇだろうがよ!」

「う、うるさい……! 僕が、僕が審判だ、僕が、正義だ──ッ」

 

 

 そう彼が祭壇へ駆け込んだその時。

 ロードを喰らうようにして水晶が襲い掛かる。

 

 

 

「あぁっ──!?」

 

 

 

 言葉を発する間も無く、彼の身体は水晶に取り込まれる。

 

「ば、馬鹿な……断罪されたのは──僕の方だと言うのか……何故ェェェーッ!?」

 

 めきめきめき、と嫌な音を立てて彼の身体が水晶に飲み込まれていく。

 

『──文字通り、審判のカードに断罪されたでありますな。欲望を排すと言っておきながら、欲望の塊は奴自身だったでありますよ』

 

 

 

「う、ああ、ブラン……ブラン……!!」

 

 

 

 情けない声が響く。

 彼の身体はずぶずぶと幽世の門へ引きずり込まれていった。

 今まで彼が捨ててきた代償を払わされるかのように──

 

 

 

 

 

 

「──それでも」

 

 

 

 気が付けば足が動いていた。

 手を、伸ばしてロードの手首を掴む。

 彼の目が見開かれた。

 

「あ、ああ、何でっ……!!」 

「馬鹿野郎ッ!! テメェにまだ居なくなられたら、ブランに謝らせることが出来ねえだろーが!!」

「白銀っ……耀……」

「ダンガンテイオーッ!!」

『……仕方、ないでありますなッ!!』

 

 俺の叫びに、相棒も頷く。

 二人で、ロードをうねる結晶から引っ張り上げる。

 その身体が抜け、宙を舞い──地面に叩きつけられた。

 

「……お前の事は、すっげー気に食わねぇ。だけど、此処でお前を見捨てたら──俺もお前と同じだ」

 

 空から消えていく光。

 そして、陸を覆っていた水晶が次々に消えていく。

 幽世の門は全ての魔力を放出しきったのか、完全に沈黙した。

 静寂が辺りを包んだ。

 だけど、俺の中には重い重い碇が刺さったまま、消えはしなかった──

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