学園デュエル・マスターズ WildCards【完結】   作:タク@DMP

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GR7話:海戸ロストシティ──恐怖の大魔王

「だけど……おイタは、もう終わりにしようネェ! S・トリガー、《撃髄医スパイナー》ダヨォ!」

「!? しまった、そっちかよ──! 俺のクリーチャーが!?」

「効果で、パワーマイナス3000を3回撃つヨォ! 《ヤッタレロボ》、《ジェイ-SHOCKER》、《ガンマスター》を破壊するからネェ!」

 

 放たれた電撃が3体をあっさりと破壊してしまった。

 不味い。このままだと、攻撃出来るのは《ジョルネード》だけだ。こいつだけじゃ、このターン、あいつを仕留めきれない!

 

「なら、せめて削り切ってやらァ! 《ジョルネード》でシールドをW・ブレイクだ!」

「無駄無駄ァ、終わりダヨォ。お前は此処で敗ける……良い実験台になってくれヨォ!」

「負けねえよ! そっちこそクリーチャーが居ないじゃねえか!」

「どうだか。墓地のクリーチャーの数だけ、コイツのコストは軽減されるからネェ……コスト1で召喚するヨォ!」

 

 

 空に刻まれるのはⅩⅢ。

 死を表す恐怖の数字。

 それは、墓地の魂を吸収し──肥大化した脚を現世に踏みしめた。

 

 

 

「恐怖の魔王がDAWN(ドーン)ダヨォ!! 《大魔王 ウラギリダムス》、実験開始ィッ!!」

 

 

 

 めき、めき、と音を立て、それは地獄の果てから現れる。

 巨大で、そして強大な二枚舌の大魔王。

 

 

 

「バァァァキャッキャッキャッキャッキャァァァーッッッ」

 

 

 

 そして、ノイズの混じった叫び声。

 髑髏の刻印が身体中に押され、王冠を被った悪魔の化け猫が俺の前に顕現した。

 

「な、何だっ……猫!? でけーし猫みてーだし、ベロは二枚あるし何なんだコレ!?」

「間違いない、死神(デス)の守護獣でありますよ!」

「その通り。私の切札なんだヨネェ!!」

 

 次の瞬間、巨大な二枚舌がジョルネードを絡め取る。

 そのまま引きずり込むかのように、大魔王の大口へガンマンは飲み込まれてしまった。

 

「蛙かよアイツ!? 《ジョルネード》が丸ごと喰われたァ!?」

「《ウラギリダムス》の効果発動ォ! 登場時に墓地のカードを5枚、このクリーチャーの下へ送れば相手のクリーチャーを1体破壊出来るんだヨネェ!」

「だ、だけど、こっちにはまだ我が居るでありますよ!」

「それも無駄な事なんだヨネェ。《ウラギリダムス》が居る時、私が負ける代わりに墓地のカードを5枚山札に戻せば、私は敗北を回避できるんダヨ! シュージュツツツッ!」

「《ダンガスティックB》だけじゃ、勝てないってことか……後少しだってのに!」

 

 敗北回避効果によってあと一歩が届かない。

 だんだん苦しくなってきたぞ。

 

「更にィ、2マナで呪文、《ほめほめ老句》を唱えるヨォ! 効果でカードを3枚引き、相手に2枚選ばせて捨てさせるヨォ!」

「っ……右の2枚を墓地へ──」

「そしてェ! 墓地のカードの枚数だけコストを軽減し、1マナで《ウラギリダムス》をもう1体召喚! 墓地のカード5枚を下に重ねて、《ダンガスティック(ビースト)》を破壊するヨォ!」

 

 もう1体、巨大な化け猫が姿を現した。

 死神の使いは、その舌で今度は鋼の獣を飲み込んでしまう。

 

「ギャーッ、マスター!!」

「しまっ──ッ!? チョートッQ!?」

「これで全滅。スピードアタッカー1体くらいじゃあ、私には勝てないヨォ。私はこれでターンエンド」

 

 ……状況を整理しよう。

 今、俺の場にクリーチャーはゼロ。

 対して、相手の場には《スパイナー》、そして敗北回避効果を持つ《大魔王ウラギリダムス》が2体居る。

 手札に《クロスファイア》みたいなスピードアタッカーが居る可能性もあるし、次のターンを渡せば、まず俺は負けるだろう。

 スーパー・S・トリガーなんて何度も起こらないラッキーだ。

 

「うぐぐ、面目ないであります……」

「くっそォ、あの《ウラギリダムス》ってクリーチャー、厄介過ぎるだろ! 最低でも後3回、殴らなきゃいけないのか……!」

「ど、どうするでありますか!」

「……どうしろって言われても」

 

 諦めるか。

 諦めて堪るか。

 目の前で困っている誰かを放ってはおけない。

 誰に何と言われても、それだけは曲げるつもりは無い。

 

「どうにかするんだよ! このくらいのピンチ、身体張るのに入らないからな!」

 

 やるしかない。 

 増えた手札だけが鍵で、デッキの中身もまだよく分かってないアドリブだ。

 だけど、一つだけ確信があるとするならば。

 ──もし、このデッキを組んだのが未来の俺なら──きっと入ってるはずだ。小型を並べる、ジョーカーズに相応しい切札が!

 

「2マナで《ヤッタレマン》召喚! 更に1マナでもう1体《ヤッタレマン》を召喚だ!」

「今更そんな小物を並べた所で、無駄なんだヨォ。お前の臓器が幾らで売れるか楽しみダネェ!」

「そういうのは、捕らぬ狸の皮算用ってんだぜ闇医者」

「滑稽なんだヨォ。だって、()()()()()()()()()奴を助けるお前がサァ。そこの小娘を助けるってなら、後悔してもらうヨォ?」

「──知ったこっちゃねえよ。勝手に、人の命の与奪を握るなッ!」

「そういう事を言ってるんじゃあないんだけどネェ。その自信に根拠はあるのやら」

 

 まあ良いか、と呟く闇医者。

 2体の敗北回避持ちを並べて勝利を確信しているのだろう。

 だけど突破させて貰う。

 

「そして1マナで《ウォッシャ幾三》を召喚! その効果で《ゴッド・ガヨンダム》を出して、カードを1枚捨てて2枚引く!」

 

 鉛筆型のロケットに飛び乗って超GRの大穴から現れたのは王冠を被った画用紙のクリーチャー。

 それによって、俺は最後の手札補充を行った──

 

「──やっぱりな」

「召喚酔いしたクリーチャーでどうやって勝つと言うのカネ?」

「悪い悪い、ただ……最高の切札が引けたってだけだ!」

 

 場のジョーカーズ4体が光り輝く。

 

「場にジョーカーズが4体居る時、コイツのコストはマイナス5される──」

「な、何だ、何を言っているのカネ!?」

「──お出ましだ、出て来い!」

 

 刻まれるのはⅣ。

 皇帝(エンペラー)を示す数字。

 それが煌めき、タロットカードから切札が現れた。

 

 

 

「これが俺の切札(ワイルドカード)、《ガンバトラーG7(グレイトセブン)》!」

 

 

 

 戦場へ撃ち込まれる弾痕。

 そして颯爽と現れる鋼の戦士。

 その身体は熱い銃で出来ていた。

 

「な、何だそいつ──!?」

「要は、3回ぶん殴れば俺の勝ちなんだろ? なら、お望み通り3回ぶん殴ってやるよ! 《ガンバトラー》の効果で、俺のジョーカーズは場に出たターン、相手プレイヤーを攻撃出来る」

「そ、そ、そんな切札を持っているなんて──!」

 

 俺の時代にもあるカードの《ガンバトラー》が入ってて助かった。

 だけど、俺ならデッキに入れると思ってたよ。

 たくさん並べるGRジョーカーズと《ガンバトラー》は相性が良いからな!

 

「さあ一発目! 《ヤッタレマン》でダイレクトアタック!」

「《ウラギリダムス》の効果で敗北を回避するヨォ! ま、まさか、場のクリーチャーが全員疑似スピードアタッカーになるなんて、聞いてないヨォ!?」

 

 《ヤッタレマン》の攻撃は《ウラギリダムス》によって防がれる。

 もう1体の《ヤッタレマン》の攻撃もまた、《ウラギリダムス》によって阻まれた。

 しかし──これでもう、ドクター・オペラを守るものは存在しない。

 

 

 

「弾切れになっちまったら、もう終いだぜ! 《ガンバトラー》でダイレクトアタック!!」

 

 

 

 鋼の機神が戦場を駆け抜ける。

 立ち塞がる2体の大魔王をすり抜け、狙うのは対戦相手のみ。

 闇医者に無数の弾丸が撃ち込まれた──

 

 

 

※※※

 

 

 

「チッ、お前ら……退却するヨォ!」

「し、しかし」

「五月蠅いネェ! ロボトミー手術がご希望カネ!」

「ヒッ、サーセンっっっ!」

 

 屈強な男達を連れ、ドクター・オペラは不機嫌そうな表情を隠せないまま去っていく。

 何とかデュエルは俺の勝利で終わった。

 そして、抵抗した割に彼らはあっさりと少女を手放す。

 だが、去り際に、こちらを見ると──またあの下卑た笑みを浮かべるのだった。

 

「チミィ……奉仕精神か何かは知らないけど、チミの信条にはなかなか医者に通じるモノを感じたヨォ」

「はっ、こっちは全然だけどな」

「また会おうネェ、お互い生きてればだけどネェ、シュージュツツツ」

 

 そう言って闇医者はその場から去っていく。

 

 

 

「あーあ、折角貴重な()()()だったのニィ。残念だヨォ」

 

 

 

 ……。

 最後まで胸糞の悪い奴だったが、なかなかの強敵だった。

 現に、勝ったはずなのに俺はあいつにダメージを殆ど与えられていないようだ。

 もしあそこで《ガンバトラー》が居なかったらと思うとゾッとする。負けたらどうなっていたのだろう。

 だけど、そんな事より今は──

 

「君! 大丈夫か!?」

「うっ……うん」

 

 痩せこけた少女は辛うじて頷いた。

 良かった。何とか助けられた。

 数か所、殴られた箇所があるが──どこかで手当て出来ないだろうか。

 

「アカリ、この辺で休めそうな場所はあるか?」

「どの道、お爺ちゃん疲れてるでしょうから、宿で休もうと思ってた所だったんです。そこでご飯と、傷の手当にしましょう」

「サンキュー、アカリ!」

「取り合えず宿でその子の身元を確認します。君、名前は?」

 

 問われた少女は小さな口で、「ユイ」と答える。

 そして、疲れたのかそのまま俺の胸の中で眠ってしまったのだった。

 

「……寝ちまった」

「疲れたのでしょう。無理も無いとは思いますが……でも分かってますか? こんな風に騒動に首を突っ込んでたら、命が幾つあっても足りません。見返りも無いのに、どうして危ない事に首を突っ込むんですか」

「分かってるよ。だけどな、この子の顔を見ろよ」

 

 やっと安心出来た。

 そんな安堵が現れた寝顔だ。

 

「……誰かを助けるってのはそういう事だ。見返りってのは、誰かの安らぎだとか笑顔で十分なんだよ」

「でも、気を付けてください。過去を変えるのにはお爺ちゃんが必要なんですから」

「わぁーってる。さっさと宿へ行こうぜ」

 

 それに、最初から見返りを求めたら、それは人助けとは言わない。

 俺は何時だってそうしてきた。

 そうだ。やっぱり、間違ってなんかいないじゃないか。

 例え自己満足でも誰かの笑顔を守れるなら、俺は──

 

 

 

 ※※※

 

 

 

 この地下都市における労働は工場、建築、インフラといった分野が殆どを占めるという。

 そういったものを全てマフィアが握っているらしい。

 連中には人の倫理というものは凡そ無いらしいが、働けば取り合えず金はくれるので労働者はそこで働くしかないのだという。

 太陽が見えないので、人々の時間間隔は狂っている。ただ、疲れれば宿に入る。腹が空けば飯を食う。

 そしてその合間に働くだけ働く……そんな生活らしい。

 

「結局、支配者が変わっただけで自由とは程遠いですがね、この街も」

「そうなるのかな……」

「他の街も色々見て来ましたけど、やはり人口が密集しているこの街には問題が山積みです。この子みたいに、大人の都合に振り回されて明日を失う子供も多いので」

 

 そう言って彼女は、自分のベッドに少女を寝かせた。

 俺は一人部屋、アカリは少女との二人部屋だ。

 宿の他の客は、ほとんどが先程の労働者ばかりで、皆揃って精気の無い顔をしていた。

 此処ならマフィアの連中も好んで近付きはしないらしいので、一先ずは安心らしい。

 

「取り合えず、疲れたでしょう。お爺ちゃん」

「ああ……この街、太陽が見えないから夜とかないんだろうけど、そろそろ眠くなってきたわ」

「そうじゃなくても、私が連れ出した所為で色々ありましたからね」

「いや、アカリは悪くねえよ」

 

 俺は手を振った。

 余裕が無い中でも、俺の事を助けに来てくれた彼女には感謝してもし切れない。

 

「本当にありがとう。俺を助けてくれたり、無茶に付き合ってくれたりな」

「全く……私のお爺ちゃんだから、ですよ。……起きたら、レジスタンスの拠点を目指しましょう。この子はそこで保護します」

「ああ、頼むよ」

「だけど驚きました。お爺ちゃん、見ず知らずの人も助けに行くなんて」

「見ず知らずの人でも、例え敵でも、誰かが困ってたらマスターは放っておけない。そういう人間でありますよ」

 

 チョートッQが飛び出してきて、胸を張る。

 

「そう、ですか。少しお爺ちゃんの事、甘く見てたのかもしれませんねっ」

「何だよそれ……」

「でも、無茶は大概にしてください。それだけ守って下されば」

 

 確かにそうだ。

 この時代のエリアフォースカード使いも、かなりの強敵だった。

 あのドクター・オペラ相手でさえ、切札を出しただけでは俺は勝てなかったのだから。

 

「それじゃあおやすみなさい、お爺ちゃん」

「ああ、おやすみ。アカリ」

 

 

 

 ※※※

 

 

 

 ぎしっ、と硬いベッドが軋む音と圧し掛かられる感覚で俺は目を覚ました。

 胴を起こそうとすると──目の前には誰かが乗っかっている。

 

「……誰だぁ?」

「あ、起きちゃった……」

 

 目を擦ると──そこに居たのは、ユイ。

 さっき助けた彼女が居た。……どうやって入ったんだろう、この部屋一応鍵かかってたはずなんだけど。

 それにしても格好は何時見ても酷いものだ。

 さっきの男達に乱暴にされたのか、元々だったのか、所々が裂けている。

 そこから、太陽に当たっていない薄白い肌が見えていた。

 

「ユイちゃん、だっけか。身体は大丈夫か?」

「うん……何とか」

「だけど休んでなきゃ駄目だぞ。疲れてるだろ?」

「でも、お兄さんにお礼がしたくて……」

 

 黒い瞳を潤ませて、彼女は言う。

 ……そんな風に言われたら、アカリの部屋に帰れとも言えないじゃないか。

 

「……ところで、何で乗っかってんだ?」

「?」

 

 彼女は不思議そうに首を傾げる。

 おいおい、俺が可笑しい事を言ったみたいじゃないか。

 

「だって、お礼……しなきゃだし」

「あー、良いんだよ俺は。見返りとか欲しくて人助けやってるわけじゃないし」

「でも……私、あの人達に連れてかれるところだった」

 

 ずいっ、と彼女は顔を寄せてくる。

 おい待て。何か妙な空気になってきたぞ。

 

「貴方は命の恩人……あんなふうに助けてくれる人、この街で初めて見たから、お礼をしたい。でも、私……何も持ってない」

「え? いやだからいいんだって、俺は君が助けられただけで十分だから」

「でも……私の気が収まらない。私には、これしかないから」

 

 するり、と襤褸切れのような布がはだけた。

 思わず俺は目を隠す。

 そう言えばあのマフィア共言ってたな、この子水商売に放り込んだとか何とか──

 

「わーっ!! 馬鹿馬鹿馬鹿! 自分の身体はもっと、大切……に……」

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