学園デュエル・マスターズ WildCards【完結】   作:タク@DMP

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GR10話:受け継がれる部長魂─AD2016

 ※※※

 

 

 

 せんすいカンちゃんのタイムダイバーが船渠から沈んでいき──その奥にある次元の穴へ飛び込む。

 そこから先は静かだった。俺は濡れた服を奥の部屋で乾かす。

 操縦席の奥から入れる部屋はあの旧型タイムマシンよりは綺麗になっており、一通りのものは揃えられていた。

 しばらく、疲れのままにソファに突っ伏して意識を失っていたが、しばらくして目を覚ます。

 アカリもアカリで休憩しているようだったが、こちらに気付くと微笑んだ。

 

「あ、お爺ちゃん。起きたんですね?」

「ああ……ところで大丈夫なのかコレ? さっきみたいに揺れたら大変な事になると思うんだけど」

「その心配はありません! この内部は、言わば潜水艦内に出来た異次元空間みたいなものなんですよ。外が幾ら揺れても、致命的なダメージでも喰らわない限りは大丈夫です!」

「そうなのか」

「今、現在進行形でワープに入ってるんですけど全然揺れないでしょ?」

「そうだったのか!?」

 

 さっきゲロゲロ吐きまくった身としては、有難い限りだ。

 若干心配が残ってはいるが、アカリがそう言うなら大丈夫なのだろう。

 正直、これ以上心労を増やしてたら本当に眠れなくなりそうだ。

 

「……なあ、何で2016年なんだろうな。デュエマに関するデカい事件が特に起こったわけではないと思うんだが」

「そうだとしても、ダッシュポイントは出来る事があるんです」

 

 2017年のダッシュポイントは、俺が特異点だったから発生した歪みらしい。

 逆に多くのダッシュポイントと同様に2016年のダッシュポイントは、何故出現したのかは不明だという。

 

「さあどうでしょう。いずれにせよ言えるのは一つ。此処で奴らの修整を阻止すれば、彼らは大規模な時間改変を2016年及び2017年では行えなくなります」

「そりゃどうしてだ? 思うにイタチごっこになるような気がするんだけど」

「無理矢理変えられた時間が定着する前に正しい流れに戻すと、時間の流れは二度と改変出来なくなるんです。時間が正しい流れに戻ろうとする力が強くなり、ダッシュポイントが消失します」

「そういう事か……あれ? だけど2016年の異常が解決したら、俺も2017年に帰れなくなるんじゃねえか?」

「ご心配なく。タイムマシンはその時代の人間やモノを乗せていても、それを縁としてその時代に行く事が出来るんです。私達が2017年を中継して時間を行き来している限り、お爺ちゃんは何時でも元の時代に帰ることが出来ます」

 

 難しくて分かんねえが、つまり俺がタイムマシンに乗っていれば2017年には行ける、ということらしい。

 

「元々タイムマシン自体が時間の歪み、矛盾をただす為の装置なので。違う時間の人間がその時代を離れていれば、元の時代に帰れるようになっているのは当然の事です」

 

 つまり、それを悪用するトキワギ機関の企みは必ず阻止しなければならないということか。

 時間の歪みを正すために時間を移動するタイムマシン……か。

 しかし、誰がどうやってこんな凄いものを作ったんだろうな。

 

「そして──着きましたよ。2016年に」

 

 

 窓を覗くと──そこは、見覚えのある建物、そして制服の少年少女達の姿が歩いていた。

 

「どうやら、時間の歪みはこの周辺から発生しているようです」

「──この周辺も何も──鶺鴒学園高校じゃねえか!?」

 

 成程、此処なら何とか制服で紛れ込むことが出来るので怪しさはないかもしれない。

 校舎裏に着陸したタイムダイバーから降りた俺は、辺りを見回す。

 確かに鶺鴒学園高校だ。間違いない。

 

「懐かしいですか? と言っても1年前ならまだそんなに変わって無いかもですけど」

「1年前ってか、今日は一体何月何日なんだ?」

 

 

 

「いや、いやいやいや待ってくださいよ部長! 俺に、俺に部長なんて無理ですって!」

 

 

 

 心臓が飛び出すかと思った。

 近くの窓から響いて来た声。

 そう言えば此処は部室棟の1階。

 かつて、デュエマ部の部室だった場所──

 

「……ねえ、今の声すっごい聞き覚えがあるんですけど」

「確かに、すっごい聞き覚えがあるでありますな……」

「奇遇だな……俺もだ」

 

 俺だ。

 俺が居る。

 

「マスターが、もう一人……本当に過去に来てしまったでありますよ!」

「信じられねえ……」

「ねえ、誰かと話してますよ?」

 

 

 

「え? 部長? 何それ、美味しいの? 今日からオマエが部長でしょ」

「先輩まだ引退してないじゃないですか! 何で!?」

 

 

 

「ねえ、あの女の人って誰ですか?」

 

 アカリの質問に──しばらく俺は答えられなかった。

 1年前の、あの日の記憶が鮮明によみがえって来る。

 夢じゃない。

 確かに俺は今、過去に居る。

 

「──部長。デュエマ部の部長だ」

「え? でも、デュエマ部の部長はお爺ちゃんじゃ──」

「あれは先代だよ」

 

 あのツインテールに、大胆不敵で恐れを知らない表情。

 間違いない。見間違えるわけが無い。

 

 

 

「あれは先代部長の……神楽坂先輩だ」

 

 

 

 ※※※

 

 

 

 今日は6月20日。

 もうすぐ先輩達が部活を引退するという時に──神楽坂先輩、いや部長は突如俺に告げた。

 傍若無人で唯我独尊を行く性格だった先輩は、

 

 

 

「部長命令だ! 君が次期部長になりたまえ!」

「……は?」

 

 

 

 まだ入部してから2か月も経ってない俺にそんな事を言ってきたんだ。

 この部は、2年生が居ない。今まで3年生しか居なかった。

 だから、自動的に俺かブランのどっちかが部長をやることになる。

 

「俺、まだ1年ですよ!? この学校の事もよく分かって無いし、そもそも1年は俺とブランしか居ないし……」

「だって2年生居ないから仕方ないじゃんかさ」

「何で2年生の先輩が居ないんですか? デュエマは人気カードゲームですよ!? それこそ世界クラスの──」

「まあとにかく、お前が好きなようにやったらいいんじゃね? 部員、お前とブランしか居ないしさ」

 

 ──会話を聞いていて、あの時そのままのやり取りに胸が詰まった。

 俺の好きなようにやってくれ、と言われたあの時。

 不安で胸がいっぱいになったあの時の事を。

 

「ま、無責任かもしれないけど、否応なしにその時は来るんだよなー、しゃーなし」

「……俺、出来るか分からねえっすよ。先輩みたいに、デュエマ部を楽しい場所に出来るか」

「あたしは買ってるんだけどねえ? 白銀の真面目な所とかさ」

「でも何で俺なんですか? 同じ時期に入った1年なら或瀬だって──」

「その或瀬がお前を推したんだわさ」

「……」

「ま、一人で何でも抱え込もうとすんなよ。便宜上お前が部長になるってだけだしー、実際、デュエマ部ヤバくなるんだぜ。お前達二人しかいないし、大変だぞー」

「あああ、どうすりゃいいんだ!?」

「生徒会に関しては今年の間は大丈夫だ。丁度、生徒会長が二股掛けてる証拠の写真をあたしが握ってるから、向こうは手出しして来れないんだなコレが!」

「あんたはあんたでなんちゅうモン握ってんだ!!」

 

 そうそう、こんなやり取りもあった。

 ちなみにこの手口は、ブランに引き継がれる事になる。

 

「お爺ちゃん。時間Gメンが何処に陣取っているか分かりました!」

「あ、ああ!」

「やはり、この近くに潜伏しているようです。どうしてなのかは分かりませんが……」

 

 そうなれば、出くわす可能性もあるって事か。

 どっちにせよ探しに行かなきゃあいつらの企みは阻止できない。

 俺は部長から名残惜しそうに目を離し、グラウンドの向こうへふと目を向けた時だった。

 

 

 

「侵入者を発見……包囲網から漏れたのか?」

 

 

 

 フェンスの上に座った誰かが言った。

 ぶつり、と何かが途切れた音と共に周囲の時間が完全に停止する。

 

「──てめぇは……シー・ジー!」

「未確認データ更新。……白銀耀。やはりこの時代にやってきたか」

 

 ちょっと待て。

 何でこいつ、俺の事知ってんだ!?

 

「どうなってんだよアカリ、あいつらはまだ時間改変をする前だろ!?」

「いえ、あれは世界(ザ・ワールド)の能力。縦の時間軸に居る同一存在の記憶を共有し、自動的に更新するんです!」

「そういう事だ。その様子だと、2079年に帰還したと見えるが、どうやってこっちに来た?」

「……さあな。だけど、デュエマは消させねえぜ」

「そういきり立つな、白銀耀。お前がどう足掻こうが、既に時間改変は始まっている」

「どういうことですか!?」

 

 アカリが問いかける間もなく──地面に何かが落ちてくる。

 趣味の悪い一つ目の怪物の置物。

 今ならわかる。こいつ、オレガ・オーラの《チュパカル》の姿に瓜二つだ。

 

「ッ!」

 

 直後、アカリがジョルネードを実体化させる。

 その弾丸がチュパカルの置物を撃ち抜いて破壊した。

 

「爺ちゃん、この像に気を付けて! こいつの放つ洗脳周波でシー・ジーはこの時代からデュエマを消し去るつもりなんです!」

「じゃあ、街中にあった像は──こいつらが仕掛けたってことかよ!」

「一つずつ破壊しても無駄だ。世界中にこいつをばら撒く。お前たちが一つ一つを破壊している間に洗脳は終わる」

 

 何てこった。

 世界中がデュエマの事を忘れてしまったのは、こいつらが原因だったってことか!?

 

「後は……特異点を消去すれば、自動的に白銀朱莉も消去される。従って、レジスタンスからはデュエル・マスターズの完全消去が定義される」

「やっぱり、お前らだけがクリーチャーの力を使えるようにするのが目的か……!」

「レジスタンスは侵略者であり、略奪者だ。彼らをエリアフォースカード諸共消去するには、これが一番効率的なのでな。後は、貴様を消去する事で我々の計画成功が証明される」

 

 降り立ったシー・ジーがデバイスを掲げる。

 そこには、節制(テンパランス)のエリアフォースカードが埋め込まれていた──

 

「悪いけど、今度も負けないぜ。俺はお前に一回勝ってるんだからな!」

「その対策は既にラーニング済みだ」

 

 デッキを掲げて相対する。

 こいつは此処で倒すしかない。

 2016年でデュエマを消させるわけには──いかないんだ!

 

 

 

「──時間Gメンの権限を以て、実力を行使する。デッキを再構築」

『G・メン執行開始(アレスターモード)節制(テンパランス)、ローディング』

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