学園デュエル・マスターズ WildCards【完結】 作:タク@DMP
※※※
「《チュパカル》を《
先攻2ターン目。
シー・ジーは早速、《チュパカル》を出して初動から突っ走ってきた。俺も《ジョジョジョ・ジョーカーズ》でサーチをしたものの、肝心の《ヤッタレマン》
しかも、下にある《CS-20》の効果で更にコストを下げている。
次のターンには1マナで《ガ・ニメデ》が飛んでくるだろう。
「だけど、それは使わせねえぞ! こっちは2マナで、J・O・Eを発動!」
「っ……使ってきたか。正史の切り札を」
ガコン、ガコン、とエンジン音が掛かると共に、空中へ打ち上げられるサイコロ。
その目から光線が撃ち放たれた。
そうだ。GR召喚は、序盤に行うとマナの枚数よりも大きなコストを持つクリーチャーが現れる事がある。
つまり──
「2コスト軽減して《サイコロプス》召喚! 効果で、マナの枚数よりもコストが大きい《
「ッ……!」
「出鼻は挫いたでありますよ! これでもうコスト軽減は出来ないでありますな!」
「ターンエンド時に《サイコロプス》は山札の下へ戻り、俺はカードを1枚引く」
これで、軽減に加えて《ガニメ・デ》での大量ドローは出来ない。
次のターン、3コストであいつが出来る事と言えば──
「3マナで《極幻智 ガニメ・デ》を
「大量ドローが出来なきゃ手札に自然のオーラを溜め込む事も出来ない。ワールドブレイクまでは持っていけないはずだ! こっちは、《おしゃかなクン》を召喚してターンエンド!」
「……口だけは立つな。偽善者にはお似合いだ」
「偽善者で結構。俺は、俺の為に戦ってる──今なら胸張ってそう言えるんだ!」
「だから何だというんだか──」
シー・ジーは4枚のマナをタップしていく。
何だ? 今までとは気色が違う。
俺の知らない別のオーラが来る。
「──《*/弐幻ポコピー/*》を《
「え、何だそいつは!?」
「《ポコピー》は自律増殖するオーラ。その効果で、山札から《*/弐幻ポコピー/*》を選択し、《アネモⅢ》に
何だこいつ。
さっきとは丸っきり戦略を変えてきている。
何体もオーラを重ねていた先程の対戦と打って変わって場数を増やしている、だと?
「マスター、何かがおかしいでありますよ! あいつ、オレガ・オーラを並べてるであります!」
「展開力で勝負するってのか……!? ヘッ、面白ェ! こっちも4マナで《怒ピッチャコーチ》を召喚だ!」
現れたのはバッティングマシーンのようなジョーカーズ。
そして、俺の超GRゾーンのカードが円を描き、ゲートを作り上げた。
「行くぞGR召喚! 出すのは──《パッパラパーリ
マナドライブ。マナゾーンに指定の文明があり、尚且つ指定の枚数を満たしている時に使える能力。
その効果で墓地の《ジョジョジョ・ジョーカーズ》がマナゾーンへ置かれる。
「んでもって、あんまり手札を増やしたくないからな。このままターンエンドだ!」
相手の場にはオーラが1枚しか重なっていないGRクリーチャーが2体しか居ない。
《ヴィトラガッタ》とかいう化け物が場に出て来るには、最低でももう1枚オーラが重なっていないといけない上に、シールドを全部ブレイクするには手札が足りないはずだ。
何より相手の手札は2枚しかない。
あの中にオーラを溜め込められているかと言えばそうではないはずだ。
侵略系のワンショットキルには手札が必要だってのに、あんなにオーラを分散させて何を考えてんだ?
「──さあ、揃ったぞ。お前達の敗北──それを証明するパーツが」
空間が凍り付いた。
あいつの手札に握られている悍ましいドラゴンのオーラが光り輝く。
とうとう来るってのか。
シー・ジーの──切札が!
「……最終シークエンスへ移行」
『
宙に浮かぶ夥しい数字の数々。
その列は全て、105910591059……と繰り返されている。
そして宙に刻まれるMASTERの紋章。
来る。
ドラゴンのオーラが──!!
『テン・ゴク・テン・ゴク・テン・ゴク──』
「──これは証明されるべき事象である。
遂に出て来やがったな──
機械のような姿をしていながら、まるで亡霊のように掴み処が無く点滅している龍のオーラだ。
「ドラゴンのデータ……オレガ・オーラって、マジで何なんだよ……!」
「オレガ・オーラは上質な兵器だ。我らトキワギ機関が世界を握る為のな──《アネモⅢ》で攻撃、パワード・W・ブレイク」
掻き消える龍のオーラ。
しかし、瞬きする間に既に俺の眼前へ現れていた。
機械龍の巨腕が、俺のシールドを2枚叩き割る──
「ッ……! このくらいなら──」
『
その時。
再び
そして次の瞬間──今度は《ガニメ・デ》の姿に砂嵐が掛かり、あの機械龍がまた腕を振り上げていた──
「なっ、何で!? 何でまた攻撃してんだ!?」
「
「なっ、嘘だろ!?」
「だが、それだけで終わる──その命題の答えは偽だ」
『
機械龍の像がブレる。
その胸に埋め込まれているディスクに、巨大な虫の怪物の像が取り込まれていくのがはっきりと見えた。
まさかあれって──
『
「証明完了──《
しまった。
オーラが乗り移るってことは、1枚しかオーラが重なってないGRクリーチャーに《ヴィトラガッタ》の侵略条件を達成させる事が出来るってこと。
つまり──最初の攻撃でワールドブレイクまで持っていけなくとも、多段攻撃で相手のシールドをゼロにしてしまえば、全体除去が発動してしまう。
「知れ。これが、データに刻まれし龍の鉄槌だ──パワード・T・ブレイク」
より重く。
より激しい一撃が俺のシールドを全て薙ぎ払った。
割られたシールドは3枚。
その余波は、到底受け止めきれず──俺の身体を再び吹き飛ばした。
「終わりだ、白銀耀。お前は仲間には永遠に会えない」
その声が響く。
終わり?
永遠に会えない?
そんなの、嫌に決まってるだろ。
嫌に決まって──
「がっ……!!」
意識を、失う、ところだった。
痛みが全身を揺さぶった。
降りかかるシールドの破片が背中に突き刺さる。
熱いものが、どくどくと溢れ出て顔を伝った。
ああ、また血だらけかよ、俺──!
「く、っそぉ……!!」
「だが、忘れる事で──その苦しみから解放される。忘れろ。忘れろ。忘れてしまえ。デュエマも、仲間も」
負けて、堪るか。
決めたんだ。
みんなが俺の事を忘れたって──俺だけは、憶えてるんだ。
デュエマの楽しさも、仲間との思い出も──!
「デュエマは俺と仲間を繋いでくれたものだ……! 絶対に、忘れねえよ……!」
「私にとってはデュエル・マスターズもオレガ・オーラもタダの兵器に過ぎない」
「違う……兵器じゃない、デュエマは人を傷つける道具じゃ……ねえぞッ!」
「デュエルで勝利し、相手に言う事を聞かせる……お前にとって、大好きなデュエマはその程度のモノでしかない。服従を強いる道具だ。だから手放したくない。違うか?」
違う。
違う違う違う。
俺にとってのデュエマは──
「そんなものは無い方が良いに決まっている。忘れてしまえ。それが──楽になる道だ」
「うるせーんだよ、タコハゲ野郎ッ!!」
甲高い声が飛んで来る。
頭を動かすことも出来なかったが、誰の声か一発で分かった。
「かぐらさか……せん、ぱい……!?」
立っている。
先輩が──空間の中に入って、俺の前に立っている。
何で?
何でだよ。
空間の中には誰も入って来れないはずなのに。
「白銀はな、誰よりも素直で、馬鹿みてーにお人好しな男だ! そんでもってまた、馬鹿みてーに好きな物に真っ直ぐだから……楽って理由でデュエマの事を忘れられるわけないだろ!」
「部外者のお前に何が分かる? 脆弱で臆病な一般人が口を出すな」
「今だって脚ガクガクで逃げ出しちまいたいくらいだ。だけど、白銀は……こんな場面、何回も切り抜けてきたんだろ? あたしが、あたしが人生のこの一回くらい出張ったって、バチは当たらないってもんだよな」
あの大胆不敵で、傲岸不遜で、唯我独尊な先輩が──震えてる。
カチ、カチ、と歯が当たる音が聞こえて来る。
きっと脚は震えてて、顔は見栄を張る為に無理矢理笑ってみせているのだろう。
先輩。
先輩、何でそこまでするんだ。
あんなに戦うのは嫌だって言ってたのに。
俺だって、先輩が危ない目に遇うのは──嫌なのに。
「難しい事なんて分からない。気が付けば足が動いてた。生憎、後輩の事を、後輩の好きなものを馬鹿にされるのはサイコーに虫唾が走るんだよなコレが!」
「それがこの男の真実だ。この男は自らの保身の為に──」
「そんな事言ったらさあ、あたしが今立ってるのもムカついた……それだけの理由さね」
「自分勝手な──私は、我々はトキワギ機関の為に──」
「自分の為に戦う、それが人間の究極的な生き方だよ。ンな当たり前の事が分かんないのか。そんなサイコーに当たり前の……何が悪いってんだよ!」
指を突き立て、先輩は言い放った。
「白銀耀はあたしの後輩だ! 世界が敵に回っても、あたしだけはコイツの味方だ! だって、そっちの方が……サイコーに楽しい選択ってもんだろ!」
「歴史のエラー……お前も諸共に消えろッ!!」
ああ先輩。
やっぱり俺──何時になっても、先輩にだけは敵わないや。
「シールド、トリガー……発動」
「《灰になるほど──ヒート》!!」
手札から飛び出す《怒ピッチャコーチ》。
そして開くGRの門。
助っ人に現れたのは、《ヤッタレロボ》だ。
「白銀──!?」
「《怒ピッチャコーチ》と《
よし。
辛うじてダイレクトアタックは防げた。
だけど、まだ《ヴィトラガッタ》の能力が残っている。
「防がれたか。だが、この程度は想定内──《ヴィトラガッタ》の効果で、お前の場のクリーチャーを全てマナ送りにすることは確定事項だ」
振り下ろされる鉄槌。
地響きと共に割れる足元。
深き地の底にクリーチャー達が吸い込まれていく──
「おい白銀どうすんだ──!?」
「先輩! しっかり手ェ握っててください!」
「え!? あ──ちょっと待て!?」
揺れる足元。
先輩を引っ張り、俺はカードを手繰る。
砂煙が巻き起こり──バトルゾーンには蔓が蔓延って見えなくなった。
「これで、全滅。この命題の答えは……」
「──全滅じゃねェよ」
間に、合った。
確かに残ってる。
たった1枚、バトルゾーンに残ったカードが!
「──何故だ。《ヤッタレロボ》が生き残って──」
「《おしゃかなクン》のウルトラ・セイバーだ。俺のジョーカーズが場を離れる時に破壊すれば、生き残る」
「ウルトラ・セイバー……そうか、全体除去を喰らっても発動すれば生き残らせたいクリーチャーを場に留められるのか!」
「だとしても。そんな雑魚1体で、私を倒せるとでも──」
「いーや十分だ。これだけでな!」
この1枚は大きい。
この状況をひっくり返すにはあまりにも大きすぎる。
「先輩、見ててください──これが俺の、
「ああ見せてくれよ。サイコーに震わせてくれるヤツをさ!」
《ヤッタレロボ》で俺のジョーカーズはコストを1軽減されている。
俺のマナは7枚。
一気に詰める! 俺の切札で!
「3マナで《ドンドド・ドラ息子》召喚! 効果で山札の上から4枚を表向きにして、ジョーカーズ・カードの《ルネッザーンス》を回収する!」
「そのカードは、手札にある火のジョーカーズにJ・O・Eを付与するカード……!?」
「ご名答! 加えて……《ヤッタレロボ》で1コスト軽減──」
飛び出す
そして空へ刻まれるMASTERの文字。
拳を握りしめる。7、6、5、とガコン、ガコン、と下がっていくカードのコストの数字。
「魂を燃やせ!!
やっぱりこのカードが最高に馴染む。高揚する胸を抑え、俺は盤上に切札を叩きつけた。
この捻じ曲がった時の中で、未来を撃ち抜け!
「これが俺の
飛んで来るボード。
そこに乗った炎のガンマン。
再会を喜ぶ間もなく──彼は二丁拳銃を地面目掛けてぶっ放す。
炎の渦が巻き起こり、弾丸と化したジョーカーズが姿を現した。
「マスター・W・メラビート、発動! 効果で、J・O・Eを持つ火のジョーカーズを2体場に出す! 俺が出すのは《ルネッザーンス》──そして、《無限剣 リオンザッシュ》だ!」
それは剣を掲げた炎の機士。
未来への突破口となる先導者だ!
「ははっ、やっべー……カッコ良いカードばっかじゃねーか、白銀……!」
「カッコ良いだけじゃないですよ先輩! 先ず《ジョニー》の効果で場にジョーカーズが5体以上あれば、登場時に相手のクリーチャーを全て破壊します!」
ボードが炎を纏い、オーラを纏ったクリーチャー達を一刀両断する。
これで、シー・ジーの場のクリーチャーは全滅だ!
「更に、《リオンザッシュ》の効果でGR召喚! 出て来い──《ダンガスティック
「よーやくっ、我の出番でありますなぁっ!!」
地面へ降り立つ鋼の獣。
これで盤面は完成した!
「《リオンザッシュ》で攻撃──W・ブレイクだッ!!」
「こんな、こんな事が……」
「更に、《ルネッザーンス》でW・ブレイク!」
「っ……私が、私の証明が間違っているとでも。ドラゴン・コードは、そう簡単には負けはしない!」
次々に割れていくシー・ジーのシールド。
よし、残り1枚だ!
「《メラビート・ザ・ジョニー》で最後のシールドをブレイク!」
「S・トリガー、《ニャミバウン》を
「土壇場でトリガーかよ、白銀どうすんだ!?」
「は、はは、スピードアタッカーの3体は攻撃し終わり、前のターンに場に出ていた《ヤッタレロボ》は消えた──これで、私の勝ちだ。証明完了──」
「《ダンガスティックB》で攻撃!!」
咆哮する鋼の獣。
それが、困惑するシー・ジー目掛けて飛び掛かる。
「今、何て──」
「《リオンザッシュ》が攻撃するとき、俺のクリーチャーを1体選んでスピードアタッカーを与える。後一手、足りなかったな」
「そんな馬鹿な事が──!」
こいつの剣は先導の剣。
仲間を引っ張る勇気の灯火だ!
「《
「ダンガスティック・キャノン……で、ありまぁぁぁすッッッ!!」
赤い熱線が地面を焼き焦がす。
双つの光はシー・ジー目掛けて放たれ、轟音と共に爆炎が巻き起こるのだった──