学園デュエル・マスターズ WildCards【完結】   作:タク@DMP

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GR18話:アナザーロード──荒唐無稽

 ※※※

 

 

 

「……シリウス。さっきの話、どう思う?」

『荒唐無稽なファンタジーです。はっきり言って、信じる価値はありません』

「そうだね。気にすることは無いかも」

 

 何が歴史改変だバカバカしい。

 僕のやる事はあの日から決まっている。

 過るトラウマ。

 鮮やかな赤い血。

 全てが──始まったあの日見た光景は、嘘だなんて言わせない。

 

「でももし、ブランが生きている歴史が存在するなら……見てみたいけどね」

『はい。仰る通りです、ロード様。私達があの日──助けに来るのが、もっと速かったなら』

「君が助けに来てくれたおかげで、僕はたった一人生き残った。君には感謝してもしきれないさ、シリウス」

『有難いお言葉です』

 

 実直で馬鹿真面目なシリウスは僕に全幅の信頼を置いている。だから、彼女には(女性的な声だから勝手に判断しているだけだが)僕の皮肉が分からない。

 こんな苦しみを何年間も背負うなら……生きている方と死んだ方のどっちがマシだっただろうか。

 今まで実家から隔離されて育てられてきた僕だったが、変な実験で一族郎党肉親は皆滅んだらしい。それで僕も魔導司とやらの保護を受けて今まで生きてきた。実家から連れ去られていれば、僕も実験の犠牲になっていたという。今となっては全く実感もわかない。会ったこともないし。

 さて、親が居ないという下らない理由で学校でやっかみものだった僕にとっては、ハーフと言う理由で同じくやっかみものにされていたブランだけが心の支えだった。

 だけど──彼女は死んだ。そして僕だけ生き残った。

 

「彼女が死んでから……こんな世界に価値なんかないって何度も思ったさ」

『ロード様……』

 

 でも、その世界に少なからず価値を持たせてくれたのが……部長だった。

 彼が僕に話しかけなければ、今の僕は無かったかもしれない。

 1年の4月のあの日、図書室で一人だった僕に彼が話しかけなければ──きっと僕は世界に絶望したままだっただろう。

 

「……彼は変な奴だね。変な奴だからこそ……今朝の部長は、何かが違うって分かったんだ」

『ロード様……』

「何なんだろう、目……かな。僕が知っている部長と違って……あの部長は、危うげな目をしていた」

 

 しかも、あの目は僕を憎んでいるようだった。

 もし、彼が違う歴史を歩んだ僕を知っていると言うならば──僕は一体、何をしでかしたっていうんだ?

 

「……馬鹿らしいね。そんなもの、有り得るわけがないのに」

『はい。ロード様が正しい道を踏み外すなど……そんなことはありません』

 

 

 

「──当然のことだ。お前は歴史が生み出したエラー。既に修正された後なのだから」

 

 

 

 背筋に寒気が走る。

 屋上には僕しか居なかったはずだ。

 桑原先輩じゃない。とても不気味で、悍ましい気配がする。

 

「君は一体……?」

『ロード様、気を付けてください! この男、エリアフォースカードを今までにない方法で起動しています!』

「魔導司じゃないってことか」

 

 じゃあ猶更何者なんだ?

 機械に覆われた腕とスーツ。

 まるでこんなの、未来から来たみたいじゃないか。

 

「私はシー・ジー。時の流れを修正する時間Gメンと自らを定義しよう」

「時間Gメン……ハッ、今日は頭のおかしい奴がよく沸くね。そういうのは慣れっこなんだけどさ」

「信じて貰えなくて結構。或瀬ブランの歴史修正の過程で生まれた貴様を歴史上から削除する。これは確定事項だ」

「ブランの……歴史修正?」

 

 こいつもブランの名前を知っている。

 ……さっき部長たちが言っていたことが全て現実味を帯びてきた。

 馬鹿な。時を超えてブランの歴史を弄った? こいつらが?

 

「待て! 答えろ! お前達か! まさか、お前達の所為でブランが死んだっていうのか!」

「……そうだと答えたら、どうするつもりだ?」

『Gメン・執行開始(アレスターモード)──』

 

 次の瞬間、浮かび上がる像。

 巨大な羽根を広げた一つ目の怪物。

 周囲には紫電が迸り、ポリゴン状のドットがぶつぶつと浮かび上がっている。

 それら全てに見覚えがあった。

 

「っ……!!」

「まあいずれにせよ、お前には此処で消えて貰う……この命題の答えは真だ。或瀬ブランのように、歴史から抹殺する」

「──その名前を、汚らわしい口で呼ぶんじゃない」

 

 久々に心が燃え上がりそうだ。

 こんなに不愉快な気分は何時ぶりだろうか。

 

「──潰せ、《アケルナル》ッッッ!!」

『了解、ロード様──!』

 

 実体化したシリウスに星の力が注ぎ込まれ、双極の力が宿る。

 《星門の精霊アケルナル》。それが、長年の戦いで進化した《シリウス》の姿の名だ。

 その星の巨砲を──撃ち放つ。

 

 

 

「──なッ!?」

 

 

 

 

 ──しかし。

 翼の怪物はレーザーをが直撃したにもかかわらずびくともしていない。

 それどころか、極光は周囲に飛び散り、却って被害を拡大させてしまう。

 

「ど、どうなってるんだ──!」

「……虚像に向けてレーザーを撃ち放ったところで、無駄な事。この命題の答えは真だ」

「虚像──?」

「お前など、デュエルをするまでもない」

 

 翼の怪物の目玉からお返しと言わんばかりに何本もの光が伸びた。

 地面を抉り、窓ガラスを叩き割るレーザービームの応酬。

 それを食らったアケルナルの身体は砕け散ってしまう。

 

「申し訳ありません、ロード様……実体化が……!」

「くっそ……こうなったらデュエルで──」

 

 言いかけた途端、熱を帯びた光が僕の前に迫る。

 ああ、死ぬ。

 僕も行くのかな、ブラン。

 ……僕も、君の居る場所へ──

 

 

 

「どっりゃあぁああああああ!!」

 

 

 

 何かが。

 僕の前を横切った。

 目を瞑った時──僕は何かに抱きかかえられていた。

 

「大丈夫か、ロード!」

「……部長?」

 

 見上げる程に巨大なロボット。

 その肩に飛び乗った部長が、僕に向かって手を伸ばしていた。

 

 

 

 ※※※

 

 

 

「白銀、耀……!」

 

 憎悪に顔を歪ませたシー・ジーが俺を睨んだ。

 おー怖い怖い、大方先程の負けで大分精神的にキているみたいだ。

 

「部長……何なんだい、このクリーチャーは!? こんな、こんなデカブツを持ってたのか!?」

「あれ? もしかして、お前の知ってる俺ってサンダイオー使ってなかったのか?」

「ああくそ……信じたくないのに、信じなきゃいけない要素がどんどん溜まっていく……!」

 

 彼は頭を抱えて言った。

 そりゃそうか。こいつは、ロードとの戦いの中で目覚めた切札。

 ロードと戦っていないこっちの俺は、サンダイオーを覚醒出来ていないのだろう。

 

「部長。こいつは何なんだ? シー・ジーと名乗っているが……」

「時間Gメン……歴史を改変してデュエマを消そうとしてる。こいつがブランを歴史から消そうとしてるんだろうな」

「デュエマを消そうとしている? そんな下らない事のためにブランを殺したのかあいつは……!」

「だけど、歴史を元に戻せばブランは生き延びることが出来る。信じてくれるか?」

「信じるとか信じないじゃないさ。経験上、此処まで来たなら前に進むしかないだろう──ぐっ」

「大丈夫か!?」

「すまない──大分、疲れているようだ」

 

 ロードが頭を押さえている。

 どうやら魔力を大分消耗しているようだ。

 とにかくこの場はシー・ジーを倒すしかない。

 

「何度私の前に立ちはだかれば気が済む、白銀耀──!」

「何度でもだ! お前達が俺の前に立ちふさがる限りな!」

「本当にしつこい奴でありますよ! マスター、戦闘準備を!」

 

 エリアフォースカードを掲げる。

 これ以上、こいつらの歴史に干渉するんじゃねえ!

 

「サンダイオー、行くぞ!」

「了解であります!」

 

 

 

『Wild,DrawⅣ──EMPEROR(エンペラー)!!』

 

 

 

※※※

 

 

 

「──《チュパカル》を《アネモⅢ》に投影(オーライズ)

「《ヤッタレマン》を召喚。ターンエンド」

 

 俺とシー・ジーのデュエル。

 既に快調な動き出しを始めた相手は、《チュパカル》を繰り出してオーラのコストを軽減している。

 だけど、デュエルの展開以上に今の俺の胸の中は滾って仕方が無い。

 

「一つ聞きてえ事がある、時間Gメン」

「……何だ?」

「ブランを殺したのはお前らか」

「……」

 

 シー・ジーは答えない。

 成程、だんまりか。

 

「──お前らかって聞いたんだよ、答えろやボゲェッ!!」

「っ……だ、黙れ! 1コスト軽減、3マナをタップ──」

 

 ザ、ザザ、と砂嵐が鳴る。

 巨大な眼が、空中に浮かび上がった。

 

 

 

「これは虚空より出でし虚像と定義する。命題の答えは──《極幻空 ザハ・エルハ》!!」

 

 

 

 翼が広がり、屋上から広がる空全体を包み込む。

 強大な羽翼のオーラ、《ザハ・エルハ》。その能力の本質は、オーラが出る度にカードを1枚引く補給線ということだ。

 

「だがそれだけじゃない! 《ザハ・エルハ》を投影(オーライズ)するのは、《白皇世の意思 御嶺(みれい)》をバトルゾーンへ!」

「メタリカのGRクリーチャー……!?」

「マスター! こいつからは並々ならぬ力を感じるであります!」

 

 何なんだ、このGRクリーチャーの力は。

 ザハ・エルハが何時にも増して強大なのはこいつを取り込んでいるからか!?

 

「《御嶺(みれい)》はパワー25000のワールドブレイカー。しかも、GRゾーンにカードがある限り場を離れない。無敵のGRクリーチャーだ」

「そ、そんな事ってあるのかよ!?」

「だが、生憎GRゾーンのカードがある限り、《御嶺(みれい)》は攻撃出来ない。タダの木偶の坊だ」

「っ……い、命拾いしたのか……!?」

 

 だけど、逆に考えれば《御嶺(みれい)》がある限り《ザハ・エルハ》を退かす事が出来ない。

 そればかりか、《デジルムカデ》なんかを《御嶺(みれい)》に重ねられたら不死身のタップイン要員が出来上がる。

 ……でもそれだけだ。デッキのコンセプトが見えてこない。

 今回のシー・ジーは、完全にデッキが今までとは違う。何を考えているんだ?

 

 

 

 まあ、どうでもいいか、そんなことは。

 

 

 

「──答えねえなら、今回は火力全開で跡形もなくぶっ飛ばすぞ」

「ッ!!」

「《ヤッタレマン》でコストを軽減、3マナで《ドンドド・ドラ息子》召喚! 効果で《メラビート・ザ・ジョニー》を手札に加える」

「私の所為ではない──過去の人間を殺せば、大なり小なり歴史が歪む……だから止めたのに──!」

「要するに、やったのお前らってのは否定しねえんだな」

「っ……う、うるさいッ! 怒れば、それが何でも通ると思っているのか! 差し詰め、子供の我儘だな白銀耀……我々には、我々の都合というものがあるのに」

「”我々の都合”で仲間を消されたら堪ったもんじゃねえんだよ!」

「黙れと言っているだろうッ!!」

 

 シー・ジーの怒声がその場に響き渡った。

 こちらを睨んだその顔には──何処か、怯えが混じっていた。

 

「お前に何が分かる? 白銀耀。何も知らない癖に──」

 

 ? 何なんだ。

 今日のコイツ……よくよく考えてみたら、何か様子がおかしい。

 機械みたいだった今までとは明らかに何かが違う。

 何かを恐れるかのようにデュエルをしている。

 

「お前を、お前を此処で抹消してやる……じゃないと、あの方が──呪文、《スローリー・チェーン》!!」

「──その呪文は」

 

 《スローリー・チェーン》は、そのターン中相手クリーチャーの攻撃を止める光のS・トリガー呪文だ。

 しかも、発動すればシールドに埋まり、何度でも起動する凶悪なS・トリガー……ただし、その後自分のシールドを1枚墓地に置かねばならないが。

 

「……デュエマ部のお前ならば知っているはずだ。この呪文のデメリットまでな。だが──《ザハ・エルハ》が居る限り、自分のシールドがシールドゾーンから手札以外のゾーンに置かれる時、かわりにシールドゾーンに留まるからな」

「成程な。さしづめ、無限に《スローリー・チェーン》が発動できるってわけか」

「そうだ。お前の我儘等通りはしない。通させはしない。そして、お前の攻撃も二度と通らない。この命題の答えは真だ」

「ほーん──」

 

 成程な。

 つまるところ、文字通りの鉄壁。

 文字通りどんな攻撃も通りはしない。

 しかも《御嶺》に《ザハ・エルハ》が乗っている以上、退かす事も出来ないわけだ。

 

「──チョートッQ。《ザハ・エルハ》の効果は置換効果で間違いないか?」

「見た所、そうみたいでありますな……」

 

 チョートッQがこちらを見て頷く。

 嗚呼、分かってるよ相棒。お前が居る限り、絶対に敗けは有り得ない。

 

「じっくりと防御を固め、その後でお前はたっぷり嬲ってやろう。私のプライドに瑕を付けた事を丸ごと後悔させてやる」

「シー・ジー、良い事教えてやるよ。『見るべき場所を見やしねえから、本当に大事なモンを見落とす』んだぜ」

 

 そうだ。 

 お前ならきっとそう言うんだろ──ブラン。

 

「《ヤッタレマン》で1コスト軽減、《ドンドド・ドラ息子》で手札の火ジョーカーズは全部J・O・E効果を付与してあるから更に2コスト軽減──!」

 

 浮かび上がるMASTERの紋章。

 皇帝(エンペラー)のエリアフォースカードが熱を帯びる──

 

 

 

「これが俺の灼熱の切札(ザ・ヒートワイルド)、燃え上がれ《メラビート・ザ・ジョニー》!」

 

 

 

 灼熱のボードがバトルゾーンへ突き刺さる。

 そこに炎の渦と共に──紅蓮のガンマンが姿を現した。

 

「これが──僕の知らない、部長の切札」

 

 ロードが言葉に漏らす。

 だけど、これだけじゃない。

 俺の弾丸は、更に二発、残っている!

 

「《メラビート・ザ・ジョニー》を出したところで無駄な事だ。この間のようにはいかない」

「この間のようにはいかない? お前、何かちょっと勘違いしてねえか?」

 

 こないだの比じゃねえ。

 最大火力全開でこいつの防御とやらをぶち抜いてやる。

 

 

 

「マスター・W・メラビート──効果でJ・O・Eを持つ火のジョーカーズを2体までバトルゾーンへ! 1体は《無限剣リオンザッシュ》……そしてッ!」

 

 

 

 もう1体。

 空に敷かれる線路から駆け抜ける弾丸の帝王が飛び出し、そこに激震の王と天空の王のパーツが次々に重ねられていく──

 

 

 

「《ダンガンテイオー》、王盟合体(オメガコンビネーション)ッ!!」

「了解でありますッ!」

 

 

 

 ──三位一体。

 強大な切札となってそれは降り立った。

 

 

 

「これが俺の超怒級切札(チョードキューワイルドカード)!! 《王盟合体(オメガッタイ) サンダイオー》!!」

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