学園デュエル・マスターズ WildCards【完結】 作:タク@DMP
思わず目を見開いた。
俺の前に──ロードが立っていた。
「ロード!?」
「部長。僕に気を使って本当のことを言わないでくれてたんだろ? でも──言ったよね。覚悟はとっくに出来てたんだ」
「……俺は、サイテーの部長だ。覚悟が出来ずに、何もしなかった。だから結局お前を傷つけただけだった」
「なら今からでも出来る事があるよ」
「一体何が──」
「──今此処にいる僕を信じてほしい」
「え?」
「君の知っている”ロード・クォーツライト”と、今此処にいる”僕”は違うって、信じて欲しい」
彼はエリアフォースカードを握り締めた。
「クォーツライト家の人間は、僕に直接エリアフォースカードを繋ぐ事でDGと接続しようとした」
「っ……だ、だけど、その前に……この時代のクォーツライト家は滅んだんだろ!?」
「前提として普通の人間にはそもそもできない施術だったらしい。つまり、僕には元々それが可能な細工が生まれつき施されている」
「待て! 待てよ、何するつもりなんだよ!?」
「シリウス。出来るよね?」
「……」
一層、吸い込む力が強くなっていく。
観覧車のゴンドラが引っ張られ、植木が次々に引きはがされて飛んで来る。
掴まれる場所にしがみついているのが精いっぱいだ。
だけど、ロードのやろうとしていることはリスクが大きすぎる。
「これは自己犠牲なんかじゃない。僕が……運命に決着をつけるためにやるんだ」
「ふざけるな! お前のやろうとしていることは知ってる! 自殺するようなもんなんだぞ!? 俺は、お前の知ってる俺じゃないかもしれない、だけど──部長として、部員に死ねだなんて──」
その時だった。
観覧車のゴンドラが引っ張られ──時空の歪みと共に吹き飛んでくる。
俺の身体も浮き上がり──、飛び上がってしまった。
「しまっ──っ!!」
「マスタァァァーッ!!」
俺の身体は大穴の奥へと吸い込まれていく。
そして、吹き飛んだゴンドラから──見覚えのある少女と少年の碧い瞳が、こちらを不安そうに見つめているのが見えた──!
『
もう駄目だと思ったその時。
エリアフォースカードが眩く輝き──ロードの胸に挿しこまれた。
※※※
部長。僕は自分のやる事に何一つ後悔はしちゃいないんだ。
誰かに強要されたり押し付けられた役割なんかじゃない。
これは僕自身が決めた道だからね。
でも──やっぱり、心残りがあるかな。
もう少しだけ、”君”と一緒に冒険がしたかったんだ。
君の隣は……復讐と宿命に囚われていた僕が、唯一寄り道出来た場所だからさ。
「私も一緒ですよ、ロード様。悔やんでいたのは……私も同じです」
……ああ、シリウス。
一緒にいこう。
※※※
何が起こったのか分からない。
その一瞬で、辺りは光に包みこまれ、俺を吸い込もうとしていた力はいきなり止まってしまう。
地面に叩きつけられた俺は──背後に聳え立つ何かを見て言葉を失った。
「……?」
──龍の咢の如き下半身、阿修羅の如き六本腕を携えた胴。
金剛に輝く羅刹神の姿がそこにはあった。
そして、並び立つようにして──大いなる天の翼を携えた神が寄り添っていた。
「ロード……? シリウス……?」
「あの輝きは……ゼニスでありますか……!?」
ゴンドラも地面へ落ちていく。重力の法則も乱れているからか、宙に浮かんでいたものはゆっくりと落ちていく。
だが、安寧を許さない怪鳥が再び大穴を開いた。
再び吸引力が俺達を捉えようとするが──
ブランを、頼むよ
そんな声が聞こえた気がした次の瞬間だった。
全身を光に包んだ二体が全てを無に帰すドルスザク目掛けて飛んで行き──歪み捻じ曲がった空間諸共、撃ち砕く。
怪鳥の絶叫が響き渡った。
刺し違えるつもりなのか──崩れる空間に天使と悪魔は飲み込まれていく。
俺達に成す術は何も無かった。
収縮して消えていく大穴へ飲み込まれる二体へ手を伸ばすしかなかった。
「ロードォォォーッ!!」
その叫びは虚しくも届かない。
眩い極光は、ドルスザクの中へと消えた。
※※※
「オ、オーッホッホッホッホ!」
空間が崩れ去り、辺りには根こそぎ抉れた植木や飛び散った瓦礫が広がっていた。
その中央でマリーナ・ペトロパブロフスキーは高笑いする。
「何があったのかよく分からないけどラッキーですわ! 自爆特攻してまでこちらを止めてくるなんて、おハーブ生えましてよ! 何であれ、歴史のエラーは犬死ですわね! オーッホッホッホッホ!」
「──おい」
彼女は高笑いを止めた。
視線の先に──
「今、誰が犬死っつった?」
──俺が、立っていたからだろう。
「何ですの? 弔い合戦のつもりでして?」
「ロードが自分で選んだ道にとやかく言うつもりはねえ」
時間は出来た。
ロードの決死の特攻で、あのドルスザクのオーラは停止した。
その上、魔力も既に回復している。
今ならマリーナを叩く事が出来る。
「なら一体、貴方は何に怒ってるのですの? 庶民はキレやすいから困りますわね」
「──あいつの生き様を笑ったこと。ブランの命を弄んで歴史を変えたこと。そして何より──こんな結果に甘んじるしかねえ俺自身に、だ!!」
許せねえ。
やっぱり許せねえよ。
無力で、何も出来なかった俺自身が──一番許せねえ。
だからこれ以上、何も失わせるわけにはいかねえんだよ!!
「オーッホッホッホッホ、滑稽ですわね。そもそも、ワタクシのオーラ兵器0000号に勝てると思っていて?」
「勝てるさ」
目の前に、刻まれるⅪの数字。
そこには大穴に吸い込まれて消えたと思われていた
それは最早、朧げな姿ではあった。しかし、くるくると俺の周囲を舞うと──金の光となって
以前刻まれた火文明の紋章の右に、金色の紋様が刻まれていく。
「
──そうだ。
まだ、残っている。
「ドラゴン? ドラゴォン? オーッホッホッホッホ! ワタクシのオーラ兵器の方が強いに決まっていますわ! 今更何をしたって無駄でしてよ? 小さき庶民!」
いいや、無駄なんかじゃない。
ロードも、この力も、無駄では終わらせない。
託されたバトンは、俺がゴールへ届けてみせる。
何時までも──ダセぇままの俺じゃいられねえんだよ!
「チョートッQ、超超超可及的速やかに──」
「──ブラン殿の歴史を取り戻すでありますな!」
『Wild,DrawⅣ……
※※※
「1マナで、《メラメラ・ジョーカーズ》を使用! 効果で《行燈どろん》を捨てて2枚ドローだ!」
「私はマナを置いてターンを終了しますわ!」
──俺とマリーナ・ペトロパブロフスキーのデュエル。
先手を打った俺は、手札を交換。
そのまま次のターンに出すクリーチャーを呼び寄せた。
「俺は2マナで《ヤッタレマン》を召喚! ターンエンドだ!」
「ふっ、何をしようとも私のオーラ兵器には通用しないですわ! 2マナで《幽具 リンリ》を《シニガミ丙-二式》に
浮かび上がるのは公衆電話のようなオーラ。
そこにチップが埋め込まれ、はっきりとクリーチャーとして顕現した。
「魔導具みてーなオーラ……!」
「ふぅー、やっぱり立っていると疲れますわね」
直後。彼女はポケットから何やらスイッチを取り出す。
それを押すと何処からともなく機械に覆われた椅子が現れた。
椅子からは手が現れ、彼女の手札をひったくってしまう。
「……何やってんだお前?」
「だーかーらー、疲れたから座ってデュエルするんですのよ? 全自動でワタクシの命じたままに進行してくれる万能椅子ですわ。何ならマッサージ機能も付いていますわよ?」
「こ、この野郎……真面目にやる気あるのかよ!」
「真面目にやるつもりなんて最初からサラサラ無いですわよ。庶民の生き死に等、このワタクシにはどうってことはない問題ですもの!まあせいぜいワタクシの遊び相手になっていただけないかしら?」
完全に余裕ぶっているようだ。
そうこうしている間に、《リンリ》がジリジリとけたたましく鳴り叫ぶ。
すると、マリーナの山札から1枚が墓地に置かれた。
「ワタクシが何もしなくとも、勝手に墓地が増えてくれるのも良いですわねー」
「毎ターン1枚ずつ墓地が増えるのか……!」
「でも、オーラに墓地を使う戦略なんてあるのでありますか!?」
「闇文明ってことは、そうなんだろうな」
相手は未知のカードばかり使ってくるのだ。
墓地が貯まったら何をしてくるかは分からないが、短期決戦を目指さなければ危ないのは確かだ。
だけど、生憎まだワンショットキルに持っていけるだけのパーツがそろっていないのである。
「超GRゾーン、アンロック──展開していくぞ、3マナで《怒ピッチャコーチ》召喚! 効果で《バツトラの父》をGR召喚だ! ターンエンド!」
「……あら? もう終わりましたの? ふぁーあ、折角仮眠しようと思っていましたのに……」
「こ、こいつ……!」
「マスター、ステイ! ステイであります! 相手のペースに飲まれてたらキリがないでありますよ!」
割とガチで殺意が湧いてきた……!
滾る怒りと苛立ちを必死で抑え込む。
この女の余裕ぶった面の皮、絶対に引き剥がしてやる……!
「ワタクシのターン、3マナで《幽具 ギャン》を《ダラク丙-二式》に
機械の腕がカードを掴み、投げると今度はキャンドルのようなオーラが実体化した。
「《ダラク》がGR召喚されたとき、山札の一番上を見て墓地に置きますわ! 更に《ギャン》の効果で山札の上から3枚を墓地に置きますわ! 更に更に──《リンリ》の効果で山札の上から1枚を墓地に置きますわよ」
これで彼女のターンは終わり。
今の間に、相手の墓地はもう6枚だ。
速攻でケリを付けないと──!
「俺のターン! 4マナで《ドンドド・ドラ息子》を召喚して、山札の上から4枚を表向きにする!」
捲れたのは《メラビート・ザ・ジョニー》、《メラメラ・ジョーカーズ》、《SMAPON》、《ヤッタレマン》だ。
俺は迷わず、《メラビート・ザ・ジョニー》を手札に取る。
──手札には《サンダイオー》が既にある。攻勢の準備は整いつつあった。
「ターンエンドだ!」
「オーッホッホッホ! 叩き潰す気満々、と言ったところですわね。でも既に貴方の戦法は、ラーニング済みですわ。次のターンに《メラビート・ザ・ジョニー》を出して《サンダイオー》と《ジョジョジョ・マキシマム》のコンボで勝つ……それが狙いですわよね?」
「だったらどうしたってんだ。そのラーニングとやらの通りにテメェをぶっ倒せば良いだけだろーが!」
「そうはなりませんことよ」
「あぁ?」
「そんな戦略、簡単に破綻すると言っているのですわ! オーッホッホッホッホ!」
浮かび上がった影。
そこにぽっかりと大穴が開く。
「──その罪の代償、身体で払えないなら魂で払ってもらいますわ! 発動、
墓地のカードが魔力となって注ぎ込まれていく。
浮かんだ闇文明の紋章。
その数は合計で10。マナゾーンから次々にエネルギーが飛んでいくが、4枚だけでは足りない。
しかし──
「マナが足りないなら墓地を使えば良いじゃなぁーい! 墓地のオーラをつぎ込み、根源のドルスザクを降臨させますわ! その小さき目に焼き付けて傅きなさいな!」
『
宙に刻まれるMASTERの紋章。
来る。
あれが、マスター・ドルスザクのオーラ──!
「滅びの未来をごらんなさい!