学園デュエル・マスターズ WildCards【完結】   作:タク@DMP

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GR26話:消えた紫月──歴史異常

「──《ジョット・ガン・ジョラゴン》!?」

「ああ。《サッヴァーク》は分かるよな?」

「はい……話には聞いてます」

「あれと同じ、俺達の時代で登場した真龍(マスター・ドラゴン)のカードだ」

 

 タイムダイバーの中で、《ジョラゴン》のカードを見せるとアカリは驚いたように目を見開いた。

 《Theジョラゴン・ガンマスター》とは違い、MASTEの紋章の中央にDのマークが刻まれている。 

 正真正銘、純然たるドラゴンであるという証なのだろう。

 

「これがお爺ちゃんの時代の《ジョラゴン》……テキストにとんでもないことが書かれてますね……」

「このカード、2079年には無いのか? 俺達の時代にはあるんだけど」

「既に失われてしまったカードの1枚と聞きました。《ガンマスター》は《ジョラゴン》のデータをGRクリーチャーとして再現したものなので、私も実物を見るのは初めてです」

「ほえーえ、じゃあやっぱり、マスタードラゴンのマークは真龍の証なんだな」

「はい、そうなります」

「思わぬ形で強力なカードを手に入れたでありますな、マスター」

「ああ。今まで使い慣れたメラビートジョーカーズを使ってたからな。買ってすらなかったんだよコイツ、いざ組むと……色々高いし」

「でも敵は今後もお爺ちゃんのデッキを対策してくるはずです。今回のデュエルでは出なかったようですが、タップイン持ちの《デジルムカデ》なんてメラビートの天敵でしょう」

「分かってるよ、あれが出てたらいよいよ勝てなかった」

「無月の大罪だけに、完璧な”詰み”でありましたな」

「分解するぞ大ボケ新幹線」

 

 となれば、ずっと同じデッキを使い続けているのはいずれ限界が訪れる。

 メラビートジョーカーズは確かに強い。だけど、《ドラ息子》を除去されたりハンデスのような妨害を喰らえば簡単に戦略が破綻してしまう。

 意図しない形となったが、俺自身も前に進む覚悟が出来たのかもしれない。

 

「きっと、ロードさんもお爺ちゃんを応援してくれてますよ」

「だと良いけどなあ」

 

 俺は《ジョラゴン》のカードをデッキの中に入れる。

 現代に戻ったら、歴史がまた書き換えられる前にカードを調達しなければならない。

 《ジョット・ガン・ジョラゴン》は今までのデッキでは、そのスペックを最大限に生かすのは難しい。

 手札から捨てたジョーカーズの能力を使えるということは、無限の拡張性を持つということ。

 火文明だけの力を借りていては、100%の力を引き出す事は出来ない。

 更に、今の構築ではGRクリーチャーがただの数合わせでしかない。それでは勿体ないように感じたのだ。

 

「加えて、《バレット・ザ・シルバー》のカードも一緒に変化してやがる。《バーンメア・ザ・シルバー》……《ジョラゴン》から雑に投げて強いカードだったな」

 

 ジョラゴンで殴るついでに2回GR召喚……これはなかなか強いんじゃないか?

 捲りたいカードは幾らでもあるしな。《ガヨンダム》で手札を捨てて連鎖も出来るし、《マシンガントーク》でもう1回攻撃も出来る。

 

「何より《ガンマスター》は実質スピードアタッカーだし、手札を捨てる超天フィーバーとジョラゴン・ビッグ1の組み合わせは言うまでもありません!」

「最高か? 何もかもが噛み合ってるな」

「はい! 《ガンマスター》は、《ジョット・ガン・ジョラゴン》と組み合わせる事で100%の力を得られると聞いていたので、片割れ同士がこれで揃ったってことです!」

「本当にとんでもないカードでありますな……《メラビート》が一点突破に特化しているなら、《ジョット・ガン・ジョラゴン》は無限の可能性を秘めたカード。守護獣として、どんなデッキになるか楽しみであります!」

「ああ。久々にカードを見てワクワクしてきたよ」

 

 頼むぜ、俺の新しい切札。

 

 

 

「──決めた。ロードの分まで、もっと強くなるために──俺、《ジョラゴン》のデッキを組む!」

 

 

 

 デッキの構築を考えなきゃ。

 家にカードをピックアップして──

 

「よし、アカリ。早速だけどなんか紙切れ無いか? リストだけでも作っておこうかなって」

「……あのですね、お爺ちゃん。そろそろ休んでください!」

「えっ?」

「お爺ちゃん、身体はボロボロなんですよ? もし現代に帰った途端に倒れられでもしたら、私も困ります!」

「あ、あー……うん、確かに。いやでも、デッキの案忘れちゃいけねえし」

「そんな状態で考えたデッキが強いわけないでしょ! ボロボロの制服を着替えて寝てください!」

「ハイ、スイマセン……」

「完全に祖父を介護する孫みたいになってるでありますな」

「チョートッQお前覚えとけよ」

 

 まあでもアカリの言う事はごもっともだ。

 デュエルに勝ったのでダメージこそ軽減されてはいるが、これまでの戦いで俺の疲労はピークに達していた。

 それでもジョラゴンのカードを見るとワクワクが抑えられなかった当たり、やっぱり俺は根っからのカードゲーマー、いやデュエマ馬鹿なのだろう。

 

 

 

「……あいつらと、早くデュエマしたいんだけどな」

 

 

 

 ブラン。

 紫月。

 火廣金。 

 部室にお前達が居る毎日が、今は一番恋しい。

 

 

 

 ※※※

 

 

 

「──よし」

 

 

 

 ──デュエマ部部室は凄惨を極めていた。

 狭い部屋の中を占領するようにして特大ジオラマが陣取っており、そこには規則正しく灰色のプラスチック製軍艦が立ち並んでいた。

 それを見下ろすようにして、火廣金緋色は汗を拭う。

 部屋の中はシンナーの匂いで充満しており、彼がとっくに換気というものを忘れている事を示していた。

 大変健康によろしくない状況ではあるが、当の火廣金というとご満悦なのか──

 

 

 

「くっ、くかははははははははは、遂に完成したぞッッッ!! この俺特製の超・超・超・特大軍港ジオラマ! なんか部室が凄く狭い気がするが大した問題じゃあないだろう!」

 

 

 

 ──この通り、血走った目で高笑いを上げているのだった。

 彼のテンションがおかしいのは今に始まった事ではないが、徹夜で完成させたジオラマを前に今日はそれが余計に隠せないらしい。

 この笑い声は学園の六奇怪の三~クソ同好会の部室から聞こえる狂喜~として伝えられることになる。

 

「アニキ……ついに、やったっスね……」

「ああ……涙が出そうだ」

「俺はシンナーで涙が出そうッス」

「それもそうだな。換気を完全に忘れていた」

「アニキ、マジで勘弁してほしいっス」

 

 窓を開けるなり、火廣金はふと思案した。

 そう、ご存知の通り我らがデュエマ部部長は最大の壁だった。

 彼は部室を占拠するプラモデルの数々に良い顔をしていない彼だったが、それでも尚火廣金はめげずに部室の占領をじわじわと続けていた。

 そして昨晩。火廣金は模型部の展示に出展するジオラマをうっかり部室で作ってしまったのである。

 ちょっとだけ、ちょっとだけ、と部分部分を進めているうちに結局完成させてしまったのだ。

 

「……このジオラマ自体、バラして運べるようになっている。だが、部長が部室を見に来たら怒られるのは確実……その前に運び出す」

「よーし、それじゃあクリーチャー総出でジオラマを担ぎ出すっス!」

「ああ。早速取り掛かろう」

 

 そうだ。俺が作り上げてきたものは全部無駄じゃなかった。

 これからも俺が手を止めない限り、プラモ道は続く。

 何処かで聞いたような決意を胸に抱き、火廣金はジオラマに手を伸ばした──

 

 

 

「Oh,my……Gooooooooooooooooooooooood!!」

「!?」

 

 

 

 その時である。

 開いた窓から──何かがジオラマに飛び込んできた。

 戦艦と戦車のプラモデルを巻き込み、飛び込んできた”何か”は床へ転げ落ちる。

 同時にプラモデルは次々に床へ叩き落とされ、あるものは潰され、”各個撃破”されていった。

 呆然と立ち尽くす火廣金。

 ガラクタから起き上がったのは金髪碧眼の美少女。鹿追帽子にコート姿と見た目はほんのりホームズ風味を醸し出しているが、中身はポンコツアホームズ。

 彼女は或瀬ブラン。部のムードメーカーであり、そしてトラブルメーカーであった。

 

「う~……酷い目に遇ったデース……」

「探偵よ、大丈夫か……?」

「サッヴァーク……多分、大丈夫だと思いマース」

 

 と頭を抱えながら彼女は辺りを見回す。

 思わず絶句した。

 ──デュエマ部部室は凄惨を極めていた。

 

 

 

 ※※※

 

 

 

「何コレ」

 

 

 

 ぐちゃぐちゃの部室。 

 灰と化した火廣金。

 腰を抑えるブラン。

 何かがおかしい部室に俺は困惑せざるを得なかった。

 

「あっ、アカル……good morning……」

「白銀耀か……一先ず湿布を探偵に用意してやってくれ」

「……何コレ」

 

 どうしよう。

 やっとの再会なのに全く嬉しくないのは何故なんだ。

 部室の惨状をどうにかしなければいけないが先行して、時間Gメンや歴史改変の事とかすっ飛んでしまった。

 

「頼まれてたクラスメイトの猫探しをしてたら木から落ちちゃって……色々あって部室の窓からダイブしたらこんな事になっちゃったデース!」

 

 どういう状況だよ。

 

「俺の……ジオラマが……」

「それでヒイロのジオラマがこの有様で」

「……ジオラマ? これがジオラマァ!? 何で部室丸々塞いでんの!? 部室丸々要塞じゃん! さっき見た奴よりデカくなってんじゃねえか!!」

「さっき?」

「あ、いや、何でもねぇ」

 

 怒る気力も湧かなかった。 

 これは何かの罰ゲームなのだろうか?

 火廣金は改変された歴史のそれよりもはるかに大きなジオラマを作っているし、ブランは……ブランは……。

 

「どうしたデス? アカル」

「……生きてる」

 

 そうだ。

 ブランがちゃんとそこにいる。

 

「ブラァァァン!!」

「え?」

「生きてる!! 生きてるんだな!! 良かった!!」

「????」

 

 感極まり、ブランに抱き着く。

 良かった。良かった。本物のブランだ。

 生きている。

 

「な、何でいきなりHugしてくるデース!?」

「……ハッ、おい部長! 婦女子に過剰なボディタッチは厳禁だぞ!」

「そうっス、ド助平野郎ッス!!」

 

 復活した火廣金に注意されて我に返る。

 

「アカル……そろそろ離してほしいデース……私も、恥ずかしい……」

「ああ悪い! その、色々あってな」

 

 困惑する様子のブラン。不思議そうな火廣金。

 無理も無いか。彼らは今までに起こった出来事を知らない。

 俺が旅立ったのは2月29日の朝。そこから、ずっと今まで時間は動いていなかったのだから。

 

「もう、いきなり何だったんデスか?」

「あはは、ちょっと、色々命懸けでやってて」

「そういえば部長。制服がボロボロだな。……クリーチャーにでも襲われたのか?」

「クリーチャーならまだ良かったんだけどな」

「何かあったなら私達にも言ってくれればよかったじゃないデスか! 助けに行ったデスよ!」

「お前は猫と戦ってたんじゃねえか」

「俺はジオラマと戦っていたぞ」

「聞いてねえよ。……しかし本当に元に戻ったみたいだな」

 

 デュエマ部の看板があり、部室もあり、ブランや火廣金もちゃんと居る。

 紫月はまだ居ないけど、朝だし教室にいるのだろう。

 この状況では、何か歴史が改変されているとは思えない。

 

「元に戻った? 一体どうしたんデスか?」

「うーん、そうだな」

 

 まだ時間Gメンが何もしていないうちに、今起こっている事態について説明したいんだけどな。

 アカリが戻って来るまで待つべきか? いやでも、完全に不審がられてるしな……。

 

「えーと、どっから説明するべきか」

 

 

 

 

「テメェラァァァーッ!!」

 

 

 

 突如。部室の扉が勢いよく開く。

 後ろから突進してきた何かに俺は突き飛ばされ──頭からジオラマに突っ込んだ。

 

 

 

「ジオラマァァァァ!!」

 

 

 

 オイコラ。俺の心配は無しか火廣金。

 

 

 

「やっべぇ!! 勢いでなんかぶっ飛ばした気がする!!」

 

 

 

 ”なんか”扱いですか、そうですか。

 でも良いんだ俺は……お前らがちゃんと部室に居るだけで満足なんだ。

 ……やっぱちょっと納得いかねえ!!

 

「おい、白銀。大丈夫か? 大丈夫そうだな。ったく、どうしてそんなガラクタに頭突っ込んでんだ? ハハハ、みっともねぇぞオイ」

「あんたが俺をぶっ飛ばしたんだよ!」

 

 ぐらぐら揺れる視界を無理矢理扉へ持っていく。

 見覚えのあるチビ先輩。

 桑原甲がそこに立っていた。

 

「ダメだ、終わった……俺のジオラマがビッグバンフレアしてクラッシュ覇道(ヘッド)した……」

「兄貴ィィィーッ!!」

「アカル! ヒイロが燃え尽きてるデス!」

「うーむ文字通り灰になっておるわい。これ、しばらく元に戻らんぞ」

「そこのプラモ馬鹿一代は捨て置け! それで桑原先輩、どうしたんすか?」

「あ? ああそうだ! 大変な事になってんだよ!」

 

 桑原先輩が慌てて言い放った次の言葉は──

 

 

 

「──紫月が居なくなっちまったんだ!」

 

 

 

 ──更なる事態の混迷の始まりだった。

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