学園デュエル・マスターズ WildCards【完結】   作:タク@DMP

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GR29話:消えた紫月──轟き怒る魔神

 ※※※

 

 

 

 外を羽ばたく巨大な翼。

 既に、空は禍々しい黒に染まりつつあった。 

 目の前にいるのは無月の大罪を背負ったドルスザク──の、はずだったが……。

 

「な、何デスかコレ……!」

「怪物……!?」

 

 前に見た時よりも、その姿はおどろおどろしく崩れ果てていた。

 肥大した翼は腕のように太く、鍵爪を携えている。

 極めつけはその頭部。

 家を飛び出してきた俺達を、巨大な一つの眼球が覗き込んでいた。

 怪物が咆哮する。 

 そして、突如──周囲の木々が、家が、まるで腐り落ちるようにして崩れていく。

 

「むっ!!」

 

 刹那、サッヴァークが巨大な球体の障壁を貼った。

 

「サッヴァーク、今の攻撃は何なんだ!?」

「分からぬ……! だが、無作為にあらゆるものを崩壊させておるわ!」

「ど、どうするんだよ!? そんな奴近付けねえぞ!?」

「一先ず、空に逃げ──」

 

 言うが早いか。

 怪物の巨大な腕が迫りくる。

 それがサッヴァークの障壁に一瞬で罅を入れてしまった──間もなく、砕け散る!

 

 

 

「部長ッ!!」

 

 

 

 その時。

 身体が浮いた。

 ずううん、と巨大な墜落音が響き、怪物の巨椀が地面へ振り下ろされたことを確認する。

 では、俺達を空中に連れ去ったのは──

 

「火廣金!?」

「それに”轟轟轟”ブランド!?」

「話は後だ! 嫌な予感して先に駆け付けた! サッヴァーク、彼らを頼む!」

「うむ。しかしヌシが挑むのか?」

「ヒイロ、此処は私に任せるデス!」

「いや、レディ。君はまだGRの力を手に入れていない。俺の見立てが正しければ、あの怪物がオレガ・オーラとやらなのだろう。ならばこちらもGRの力で挑むのが筋だ!」

「火廣金、お前……使えるのか!?」

「信じてやる。こんな荒唐無稽な話、これっきりにしてほしいがな!」

 

 サッヴァークの腕に飛び乗った俺達を後目に、”轟轟轟”ブランドと火廣金が怪物目掛けて飛んで行く。

 魔方陣が浮かび上がり──詠唱がはっきりと聞こえた。

 

 

 

「起動術式Ⅷ──戦車(チャリオッツ)!!」

 

 

 

 ※※※

 

 

 

 

 火廣金と怪物のデュエル。

 龍になり損なった怪鳥のようなクリーチャーは、涎を滴らせ、濁った咆哮を辺り一面に轟かせる。

 

「グッギュルルルルァァァァァァァーッ!!」

「何ともまあ悍ましい怪物だ……! 

 

 おまけに、確認されているどのドルスザクとも姿が違う。本当に未来のクリーチャーと言う奴か!

 火廣金は感心しつつも、不気味さを感じていた。

 気色が悪い。その一言に尽きる。

 

「俺のターン、2マナで《一番隊 チュチュリス》を召喚! ターンエンド!」

「グ、グギュルルルルァァァァーッ……!! 《リンリ》、投影(オーライズ)……《ダラク丙-二式》……!!」

 

 現れるのは《幽具 リンリ》。

 その能力で受話器型のオーラはターンの終わりに墓地を増やしてしまう。

 

「GRクリーチャーの上に重ねられた横向きのカード、あれがオレガ・オーラか……!」

「アニキィ、あんなカード見た事無いッスよ! やっぱりあのアカリって奴の言ってる事、本当だったッス!」

「ハッ、狼狽えるな。本当だったところで所詮オーラ等、クロスギアのまがい物だ。こっちは数で押す」

 

 アカリに貰った超GRゾーンのカード。

 それを宙に放る。

 束に掛けられた電子錠が音を立てて解き放たれた──

 

 

 

「超GRゾーン、アンロック──情け無用、戦闘開始ッ!」

 

 

 

 その声と共に白い裏面のカードが円を描いて大穴を造り出す。

 同時に火廣金は素早く3枚のマナをタップしてみせた。

 出すのは、超GRからクリーチャーを呼び出す種族、ワンダフォースのカードだ。

 前髪を掻き分けた彼は巨大な怪物に人差し指を突き立てる。

 狙いを定めるようにして──

 

「先ずは試し撃ちだ。《チュチュリス》でコストを軽減し、《HAJIKERO・バクチック》召喚!」

 

 現れたのは爆竹の如き容貌のクリーチャー。

 それに引き寄せられるようにしてGRゾーンからクリーチャーが飛び出した。

 

「《バクチック》が場に出た時にGR召喚する。《ロッキーロック》をGR召喚! さらにこいつはスピードアタッカーになっている!」

 

 ヒッヒャァァァーッ、と甲高い笑い声と共にカートゥーン調の猿人が飛び出した。

 その頭には爆弾が括りつけられており、慌ただしく駆け回っていた。

 

「そのままシールドをブレイク!」

「ギュリィッ……!! S・トリガー……《ケルベロック》、投影(オーライズ)……《シニガミ丁-二式》」

「そして、《バクチック》の効果でGR召喚したクリーチャーはターンの終わりに破壊される。《ロッキーロック》を破壊」

 

 爆弾が爆ぜ、粉微塵になる《ロッキーロック》の身体。

 しかし──粉塵が晴れると、その場にはクリーチャーの影が残っていた。

 

「最も、《ロッキーロック》は場を離れた時にタップ状態でGR召喚する。《ドドド・ドーピードープ》……こいつは少し甘くないぞ。パワー7000のW・ブレイカーだ」

「アニキ、思うにタダで出て来るパワー7000のW・ブレイカーってヤバくねッスか?」

「これでビジュアルさえもう少し格好が付けば完璧だったが、カードパワーは及第点をくれてやる。嫌いじゃない」

「オラァーッ! アニキのお墨付きも貰った超GRの力はサイキョーッス! コーサンするなら今のうちッスよ!」

 

 騒ぎ立てるホップ・チュリス。

 しかし──火廣金は嫌なものを感じ取っていた。

 まだ、油断するのは早い。確かに超GRの力はすさまじいものだ。

 だが、相手はあのドルスザクのオーラ。嫌な予感がした。

 

 

 

 

「し、ぢょょ、ぅ、セ、イ、ハ、みぇ、で……い、いぃぃぃぃギュルルルルァァァァ」

 

 

 

電龍(ドラゴン)……電龍(ドラゴン)……終焉電龍(ジ・エンドラゴン)

 

 

 

 

 空に刻まれていく星々。 

 それらが戦場に降り注ぎ──場にいた2体のクリーチャーを破壊した。

 そして黒い渦が皆諸共に巻き込み、黒い翼、無数の瞳、そして凶悪な鍵爪を携えて──電子の龍となって顕現する。

 

 

 

 

解禁(ぁん・リーしゅぅぅぅ)……《卍∞ ジ・エンデザーク ∞卍》ゥゥゥゥゥ」

 

 

 

 

 黒い風が戦場を吹き荒らす。

 その中に鎮座する最早龍とも鳥ともかけ離れた凶暴で醜悪な怪物。

 崩れかかった身体はボコボコと泡立っており、ところどころがポリゴン崩壊を起こしていた。

 その悍ましさに火廣金は口を噤む。

 ──これが……ドラゴンの、オレガ・オーラだと?

 

「冗談じゃ、ないッ……!!」

「ゴ、ギュルルルルァァァァァァァーッ!! 《ザーク卍ウィンガー》!!」

 

 咆哮が轟いた。

 怪物に取り込まれたのは大きな翼を生やしたチップ。

 場を離れる代わりにオーラ2枚を山札の下に置くことで生き残るGRクリーチャーだ。

 更に、《卍∞ ジ・エンデザーク ∞卍》を場に出す代償のために踏み壊された《シニガミ丁-二式》。その効果によって落とされたカードのうち1枚が浮かび上がる。

 オレガ・オーラが──怪物の口に取り込まれていった。

 

「うじゅるるるるるるる、《卍魔刃 キ・ルジャック》……!」

 

 取り込まれた壊刃のオーラ。

 その刃が次々に火廣金の場を蹂躙していく。

 《バクチック》も、《ドーピードープ》も諸共に破壊されてしまった。

 

「成程な、墓地を増やしながら相手のクリーチャーを排除していく……! これが闇のオーラとやらの戦い方か!」

「アニキ、確かあいつら、墓地が溜まったらヤバい奴らが出て来るんスよね!?」

「速攻で片付けたい。しかし、手札にある()()()()()は、場にクリーチャーが並んでなければ出せない」

「じゃあ、どうするんスか!? 他に有効そうなカードは無いんスよ!?」

 

 叩き潰すしかない。

 相手が大きく動き出す前に、速攻で片付ける。

 さもなくば、食われる。

 あの怪物に──

 

「部長は、こんなクリーチャーと戦っていたのか……!」

 

 彼を一瞬でも疑っていた自分が恥ずかしくなる。

 そうだ。あのアカリという少女が信じられなくとも、自分が信じられる上司(部長)──白銀耀を信じるしかないというのに。

 奮い立たせるように火廣金は目の前の醜悪な敵を睨む。

 

「無月の大罪ァァァァイ、投影(オーライズ)……《デ殺パイダー》──ッ!!」

「っ……!」

 

 今度は《チュチュリス》が破壊されてしまった。

 これで彼の場は全滅。

 更に手札は残り2枚。

 赤単の速攻デッキには絶体絶命とも言える状況だった。

 

「無月の大罪……!? オーラ版のB・A・Dみたいなものか! おのれ、ビートジョッキーの専売特許をよくも……!」

 

 ターン終了時に無月の大罪の代償で《デ殺パイダー》が破壊されたので相手の場数は増えなかったものの、GRクリーチャーの《補充 CL-20》が破壊されたので手札を引かれてしまった。

 手札も、場も、完全に差を付けられてしまった。

 

「ホップ、勝負を付ける。このターンで、だ」

「アニキ。大丈夫なんすか? あの未来のトリスから話聞いた時、大分動揺してたみたいッスけど……焦って、失敗とかしねえッスよね!?」

 

 ホップの言う通りであることは百も承知だった。

 火廣金はタイムダイバーの中で未来のトリスに全てを聞いた。

 ワイルドカードの大氾濫、アルカナ研究会の末路。

 そして自分の生死すら不明だという事実──それは、少なからず火廣金の冷静さを乱していた。

 それでも──

 

「兵士は、何時か死ぬ。死ぬつもりの覚悟を以て戦場へ赴くのだ」

「で、でも──」

「俺は死ぬ。命ある以上、何時かは死ぬ。ひょっとすれば、それはワイルドカードの大氾濫とやらの日かもしれないな」

 

 ホップが心配そうに彼の顔を覗き込む。

 しかし、杞憂であったことに気付いた。

 

 

 

「だが俺の命が尽きるのは今日でも、ましてこんな所でもない!」

 

 

 

 火廣金緋色は──諦めていない。

 

 

 

「この程度の敵、簡単に粉砕出来ずして何が灼炎将校(ジェネラル)だ。俺は──未来という最高に手強い敵を相手取らなければならないのだから!」

 

 

 

 山札に手を翳す。

 このカードが全てだ。

 それを──引き切った時。

 火廣金緋色は博打を打つ覚悟を決めた。

 

「俺のターン。B・A・D・Sでコストを軽減し、手札を捨てて《“必駆”蛮触礼亞》を唱える!」

「ア、アニキィィィーッ! 良いんスか!? 本当に!?」

「確かに何時ものデッキならば無謀な賭けだ。しかし、GRがある今……決して無謀な策ではない! 《龍星装者 ”B-我”ライザ》をバトルゾーンへ!」

 

 現れたのは全身を青い鎧に包んだ猿人。

 龍を呼ぶ侍龍の化石を身に着け、その刀を振るう──

 

「総員待機! フォーメーション、G・G・G(ゴゴゴ・ガンガン・ギャラクシー)だ! 手札が1枚以下の時、《ライザ》はスピードアタッカーとなる!」

 

 強大な怪物へ駆ける《ライザ》。

 このままでは無謀な単騎突撃だ。しかし──

 

「そして俺のクリーチャーが攻撃するとき、《ライザ》の効果で山札の上から1枚を表向きにし、攻撃したクリーチャーのコスト以下のクリーチャーを場に出す」

 

 ──《ライザ》は援軍を呼ぶ能力を持つ。その能力は自身だけではなく、味方全員に付与される。

 しかし、これも賭けに等しかった。それこそ《”末法”チュリス》でも引かない限り、呼び出すクリーチャーのコストは先細りしていき、失敗する確率も高くなるのだ。

 

「最もそれは、()()()()()()()()()の話だがな」

「ぐぎゅるるるぁぁぁ?」

「怪物。教えてやる。君の時代、どのようなデュエリストが居るのか知らんが……この俺、火廣金緋色に出会ったのが運の尽き。君には何もさせない」

 

 一閃が虚空を薙ぎ払う。

 そこから現れたのは──ドローンのようなクリーチャーだ。

 

「来い、《DROROOON(ドロロン)・バックラスター》! その能力でGR召喚する!」

 

 灼熱が周囲を包み込む。

 来る。

 自らの身体を流れる戦車(チャリオッツ)の魔力が迸っているのを彼は感じていた。

 背後から飛び出す《”轟轟轟”ブランド》。

 彼が超GRの大穴へ飛び込んでいく──

 

「轟き怒るは灼炎の魔神。全軍突撃の準備をせよ!」

 

 MASTER。

 その紋章が焼きつけられる時。

 火文明の王者が勝利の雄叫びを上げた──

 

 

 

限界破壊(リミットブレイク)──《”魔神轟怒(マジゴッド)”ブランド》!!」

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