学園デュエル・マスターズ WildCards【完結】 作:タク@DMP
全身重機を背負った猿の王。
それが地中から豪快に飛び出す。
その姿を見て──火廣金は何処か安堵の笑みを漏らし、そして次の瞬間には鋭い光を瞳に走らせた。
「行くぞ。《ライザ》でW・ブレイク!」
「ギュリリリィ──《モンス・ピエール》ゥゥゥゥゥ!」
現れたのはスレイヤーとブロッカーを併せ持つオーラ。
しかし、その程度では最早火廣金は止まりはしない。
「《バックラスター》で攻撃──するとき、《ライザ》の効果で《GIRIGIRI・チクタック》をバトルゾーンへ! その効果で、相手のシールドが4枚以下の時GR召喚する。《ソニーソニック》をGR召喚だ!」
その攻撃は通すのか、シールドが更にブレイクされる。
しかし、相手も往生際悪くS・トリガーを繰り出してきた。
「ト、リガァァァ、《轢罪 エクスマ疫ナ》ァァァァ!!」
「ッ!」
次の瞬間、周囲に瘴気が広がり渡った。
それと同時に《ソニーソニック》と《チクタック》が破壊されてしまう。
「っ……《”魔神轟怒”ブランド》で攻撃するとき、《ライザ》の効果発動!」
山札の上を表向きにした。
此処で援軍が呼べなければ、もう勝機は無い。
唯さえ、相手にはまだブロッカーが居るのだから。
しかし。
「しまった──《”末法”チュリス》……!?」
「コスト6!? 出せねえッスよ!」
ハズレ。
連鎖はそこで途切れた。
《モンス・ピエール》が《ブランド》目掛けて大量の銃弾を飛ばし、その身体に穴を穿っていく。
もう、後続のクリーチャーは居ない。なぜなら焼き払われてしまったから。
「アニキィ! もうダメッス! やっぱり、無謀な賭けだったんスよ!」
「……それはどうかな」
「えっ!?」
「……言っただろう。運命を超えるには、この程度の逆境乗り越えずしてどうする、と。なあ、そうだろう──我が切札、《ブランド》よ!」
まだ、死んでいない。
《ブランド》の目の光は──再び輝く。
火廣金の前に魔方陣が浮かび上がった。
「次発装填……再突入。《”魔神轟怒”ブランド》、超天フィーバー発動」
直後。
《ライザ》と《バックラスター》が再び起き上がる。
「アニキ、これって──!」
「《ブランド》の超天フィーバー。それは、このターン中火のクリーチャーを5体以上場に出していれば、最初の攻撃時に自分のクリーチャーを全員アンタップする事だ!」
「ぎゅりぃぃぃっ!?」
唯では死なない。
犬死はしない。
それが──軍人の吟司というもの。
《ブランド》が爆発四散しても尚、その屍を乗り越えて《”B-我”ライザ》が再び斬りかかる。
「効果発動! 山札の上から1枚を表向きにして、それがコスト8以下のクリーチャーなら出せる──!」
「ぐ、ぐぎゅるるるるる」
表向きになったカード。
それを繰り出す時、火廣金の口元は薄っすらと笑っていた。
「来い、《ホップ・チュリス》!」
「っしゃぁぁぁーっ! 何かすっげー、危ない橋渡ってた気がするッスけど、此処まで来たら突っ込むだけッス!」
「最後まで気を緩めるな。《ライザ》で最後のシールドをブレイク」
トリガーは無い。
醜く叫び続ける崩壊した怪物に、トドメの一撃を火廣金は突き立てた。
「《ホップ・チュリス》で、ダイレクトアタック!!」
※※※
崩壊していくドルスザクの怪物。
そこから颯爽と火廣金が”轟轟轟”ブランドと一緒に飛んで戻って来る。
「これで、一見落着……なんデスかね?」
「なあ、もう終わったのか? 早くねえ?」
「この俺を誰だと思っている。……まあ超GRとやらの有用性だけは認めざるを得ないようだがな」
それ以外はまだ胡散臭いがな、と彼は付け加える。
どうやら、新カードの力にご満悦らしい。
事実──彼は、俺が苦戦したドルスザクのオーラ相手に然程苦戦した様子を見せなかった。
超GR……ジョーカーズ以外の種族にもとんでもない可能性を引き出すようだ。
「それで? あの怪物は一体何処から来たんだ」
「分からねえよ。そういや、いつもは時間Gメンが居るんだけど」
「ねえ、アカル。何であのバケモノ、消えてないんデス……?」
そう言えば。
火廣金に粉砕されてぐちゃぐちゃに飛び散っていた怪物だったが、まだ消えていない。
……まさか。
「ぐぎゅるるるるるるぁぁぁぁぁーっ!!」
身の毛がよだった。
まるで時計の針が巻き戻るかのようにして、怪物は再び元の姿へ再生してしまった。
それどころか、またあの咆哮で周囲の物を見境なく腐り落としている──!
「気を付けろ! まだあいつ、生きておるぞ!」
「嘘だろ!?」
「……馬鹿な、手応えは確かにあった! ワイルドカードなら今ので沈んでいるはず──待てよ」
「気付いたか魔導司。儂も探すのに少し時間がかかったが……もし事実ならかなり厄介じゃぞ」
「だが有り得ない! どうして
「ヒイロ、どうしたんデスか!?」
「……非常にマズいのは確かでありますな」
チョートッQが顔を顰めている。
一体何に気付いたんだろう。勿体ぶらずにさっさと教えて欲しいんだけど。
「ともかく離脱する! あの怪物、俺の予想通りなら何度倒してもイタチごっこだ!」
「はぁ!? 一体どういうことだよ!?」
その時。
怪物が一際大きな咆哮を上げたかと思えば──空一帯も、そして俺達も瘴気に包まれる。
同時に──サッヴァーク、そして”轟轟轟”ブランドの姿が消えてしまった。
「なっ……!?」
「落ち──!?」
支えるものが無くなった俺達は、重力に従って落ちるしかない。
すぐさま地面、即ち怪物の大口目掛けて叩き落とされることになった。
何があった!?
まさかあの咆哮、クリーチャーを弱らせてしまうのか──!?
「紐無しバンジーなんてゴメンデース!!」
「すまん……力が出ぬ……!」
「チョートッQ、どうにか出来ねえのかよ!?」
「我も出てこれないであります……」
駄目だ。
万事休す。
落下スピードを止める手立てなんて──
「お爺ちゃん!」
その時。
アカリの声が聞こえて来る。
一体何処だ!?
と地面を見やった時、そこには空に浮かぶせんすいカンちゃんのハッチからアカリが飛び出している──いや、でも無理だろ!
頭から落ちてるのに、あんなところに着地なんて出来ねえよ!
「こういう時こそヒーローの出番なんじゃないかなあ!!」
無理ゲーを強いられると思われたのも束の間。
俺達の身体はふんわりと煽られ、そして優しく船体に着地したのだった。
風のクッションだ。俺達の落下衝撃を和らげてくれたのだろう。
そしてこんな事が出来るのは──
「ゲイル、助かったよ! お前はやっぱりヒーローだ!」
「ハハハ! 礼には及ばなさいさ。この程度、造作ないからね!」
ゲイル・ヴェスパー。
桑原先輩の守護獣である彼が操縦席越しに風を操ったのだろう。
流石、”天風”の異名を持つグランセクト。こんな形で命を助けられるとは。
「と、取り合えず中に入りマショ!? つるつるしてて滑り落ちそうデス!」
「皆さん、一人ずつハッチの中に入ってください! ね!」
画して──俺達は何とかカンちゃんの中に入り込み、九死に一生を得たのだった。
※※※
「危なかったな、白銀。ゲイルっつーか、せんすいカンちゃんが来るのがもう少し遅かったらと思うと」
「助かりました桑原先輩……」
「もう紐無しバンジーは勘弁デース……」
「でも、早すぎてもあの怪物の瘴気にやられてたと思います」
『ボク、あいつの周りすっごくイヤー……何かすっごく気持ち悪かった』
クリーチャーを弱体化させ、実体化させなくしてしまう瘴気。
ドルスザクのオーラが桁違いに強いのは分かっていたが、あれほどまでとは。
前に見た時と姿が違うし、やはりパワーアップしているのだろう。
「お爺ちゃん。あの怪物は恐らく、過去の時代で発生したと思われます」
「時間Gメンがまーた歴史改変したってことだな」
「しかし……今回は、その時間Gメンの姿が見当たりません」
「クリーチャーが居るなら、使い手も居るはず……何で居なかったんデショウね?」
「オーラとやらが勝手に暴れでもしない限り、制御する人間がいるはずだ。しかし、もしかすると制御出来なくなったのかもしれないな」
火廣金は深刻な様子で目を伏せる。
「どうしてそう思う?」
「あの怪物が倒しても復活する理由……心当たりがあるんだよ」
「そういえばそんな事言ってたデス。一体どうしてなんデスか?」
「……これは、あの怪物が過去からやってきたという前提の推測だ」
「その前提は正しいと思います。現に、ダッシュポイントは発生しているので」
「そうか。ダッシュポイントとやらは何年に発生しているんだ?」
「2014年の海戸ニュータウンです」
そりゃまた近くの時代に発生したもんだ。
しかも、俺達にとって決して無縁ではない場所。
「なら確定だな」
「おいおい魔導司サンよ、勝手に一人で納得してんじゃねーぜ」
「うるさいですね。あんたにだけ教えないぞ」
「もーう、喧嘩は止すデース!」
「火廣金。良いから教えてくれ。サッヴァークもチョートッQもダウンしちまって、口が利けないんだから」
「……分かった」
彼はコホン、と軽く咳払いすると言った。
その口から飛び出たのは──
「あのドルスザクのオーラは……他でもない