学園デュエル・マスターズ WildCards【完結】 作:タク@DMP
「
2018年現代では回収不能と言われた
問題は──それに秘められた力だ。今の火廣金の話が本当なら、
「火廣金、
「過言ではない。
「生命力の活性……成程、だからドルスザクが倒しても復活するのデスね!」
「その一方、
「? 何でだよ」
明るくて暖かいってのが一般的な太陽のイメージのはずだ。
何故疫病と厄災を司るのだろう。
「恐らくは神話の太陽神・アポロンの権能に由来すると思われる。陽光の神であると共にその弓矢は疫病をもたらして人に死を与える。実際の太陽も同じだ。陽光は恵みをもたらすが、日照りは干ばつをもたらして人々を苦しめるだろう」
「太陽の両方の側面に由来するってわけデスね……」
「故に太陽のアルカナは病魔と恵みの両方を司る力とされている。相反する両方の力を行使する以上……
「ってこたぁ、ドルスザクとも相性が良いってことだな……って、納得してる場合じゃねーぜ! コイツの話が本当ならよ、不死身の怪物に勝ち目なんかないんじゃねえか!?」
桑原先輩が頭を抱える。
そりゃそうだ、俺だって不老不死の相手を倒す方法なんて思いつかない。
あの怪物は別の時代から来たんだろうが、そもそも何処でエリアフォースカードを取り込んだんだ?
もし
「アカリ。あのエリアフォースカードはいつのカードだと思う? もし、あいつらが持ってる2079年のものなら……手が付けられないんじゃないか?」
「その通りです。”2079年の
「……マジかよ。不死身の怪物相手に真っ向勝負って、絶対無理ゲーだぜ」
「まあ、最悪の可能性も考えたのですが……恐らく、その必要はないみたいです」
アカリはデバイスを展開すると、壁に映写機のようにして画面を大きく映し出した。
そこには──点と点で繋がれた図。その中の一つが赤く、そして大きく光っていた。
「さっきも言った通り、ダッシュポイントが発生しているのは2014年の鎧龍です」
「何で分かるんだ?」
「大まかな年代ごとに時代を時系列順に並べたデータです。その中の一つに異常数値が確認されています。改変された可能性が高いです」
「分かるもんなんだな! 科学の力ってすげーっ! おい白銀ェ、テメェの孫って優秀過ぎねえ? 本当にテメェの孫か?」
「俺が出来が悪いみたいな言い方は流石に怒りますよ桑原先輩」
「歴史の異常はダッシュポイントを飛び飛びの時代に連鎖的に作るので特定が難しい時がありますが、タイムダイバーに掛かればどこが異常の原因か時間を掛ければ分かります。そこを潰せば、ダッシュポイントは全部消えます」
「凄いデス! これで勝ちの目が見えてきたデスね!」
それにしても鎧龍決闘学園で2014年って──まだ黒鳥さんたちが現役の頃じゃないか!
「鎧龍が世界のデュエリスト養成学校対抗の大会で優秀したって年だろ!? 黒鳥さんやノゾム兄も在籍してるわけだし、マジモンの黄金時代じゃないか!」
「ってことは中学校時代の黒鳥サンにも会えるデース!?」
「過去の人間に干渉したら後が大変ではないか?」
「何でデース? ヒイロ、絶対面白いデスよ!」
「俺はSFを履修しているからな。そんな事をして、また歴史が変わったらどうする」
「そ、それは……そうデシタね……」
「大丈夫ですよ。クリーチャーの力で歴史を捻じ曲げない限り、ダッシュポイントが修正されると共に全部元通りです」
「そういう事なら興味が無いわけではないが……」
「お前ら当初の目的見失ってないか!?」
「先が思いやられるなぁ、こりゃ」
呆れた様子で桑原先輩は苛立ち混じりに言った。
翠月さんの事も気にかかっているのだろう。
「これは希望的観測だが、紫月が消えた原因が2014年にあるかもしれねえんだ。早くあいつを見つけねえと、翠月も凹んだままだぜ」
「そっちの手掛かりも出来る限り集めないとデスね!」
「時間Gメンを絞れば何か情報が手に入るかもしれないが、簡単に口を割るとも思えねいな」
「何だって良い。今は藁にも縋る思いだ。血の繋がった姉弟と離れ離れになる辛さは……俺も分かってるからな」
桑原先輩……お姉さんが病気で入院したままだったからな。
肉親思いな所は暗野姉妹と共通するところがある。やはり心配なのだろう。
「勿論! ブランちゃんが、その辺りもバッチリ調査するデスよ!」
「テメェに任せて大丈夫なのかよ!」
「失礼デスね! 私はちゃんと、キメるところはバッチリキメる名探偵デスから!」
「ともあれ、先ずはあの怪物を止めるのが先決です。あれを放置していたら、現代に大きな影響が発生しますからね……」
タイムダイバーは2014年へ舵を切った。
俺達にとっても浅からぬ因縁を持つ地、海戸。
そして──黒鳥さんのルーツとも言える学園、鎧龍決闘学園に向かう為に。
※※※
──とはいえ、時の回廊を穏やかに進むタイムダイバーはしばらく平穏そのものだった。
最初は気張っていた俺達も、戦闘時でもないのに気を張り詰めているのが馬鹿らしくなり──そして、今や第二の部室と化したタイムダイバー内の部屋でくつろいでいたのだった。
「それにしても、タイムダイバーの中って快適デスよねー! こんな部屋が隠されていただなんて、四次元ポケットみたいデース!」
「そうだな……旧型のタイムマシンって、すっげぇ揺れて大変だったんだぞ」
「お爺ちゃんなんて吐いてましたしねー」
「アハハハハ、吐くなんてアカルは情けないデース!」
誰の所為だと思ってるんだアカリ。
俺の扱いが雑な所為だろ。
「おいアカリ、ちょっと爺ちゃんと話し合おうか」
「あ、あれ、もしかしてマジで怒ってたり……?」
「たりめーだ! あん時はマジで死ぬかと思ったんだぞ!」
「まあまあアカル、良いじゃないデスか。結果的に生きてたんだし」
結果的にはな!
だけど時を超える度にあんな死ぬ思いをするのはごめんだ。
タイムダイバーに乗れて本当に良かったと今は思ってる。
「オイコラァ!! テメェはやっぱりここでぶっ潰す!! 芸術的に!!」
「情け無用、戦闘開始」
「ねえ、あっち殺伐としてるけど大丈夫なんですか?」
「争いは同レベルのもの同士でしか発生しない、ほっとけ」
「そのうち対消滅するデス」
取っ組み合いながらデュエマを始めている火廣金と桑原先輩を俺は流し見した。
部室から持って来たジュースを飲みつつ、視線を目の前にやる。
にこにことしているブラン。そして、膝の上に乗せられているアカリ。
これは一体どういう組み合わせなんだ?
「いやー、アカリはCuteデスねー。アカルの孫とは思えないデース!」
「何なの? お前、さっきから俺に喧嘩売ってんの?」
「いやあ、可愛いだなんて……あたし、戦いのことばかりだから、そんな事全然ないかなって」
「何自信の無い事言ってるデスか! もうちょっとファッションに気を使えば、すっごく可愛くなるデスよ!」
「可愛い……あたしが……」
「そうデース! シヅクも、アカリも、私の可愛い妹分デス!」
「妹って、年下って決まったわけじゃねえだろ」
そう言えば俺、コイツの事まだよく分からない事があるんだよな。
年齢とかはその一つだ。せめて年上か年下かどうかは聞いておきたいんだけども。
「そう言えばアカリ、お前今何歳なんだ?」
「アカル、女の子に年齢聞くのはマナー違反デスよ」
「はぁーあ、これだからマスターは万年カードが恋人なのでありますよ」
「デリカシーゼーロ、デース!」
「聞かれて返答に詰まるような年齢には見えねえだろいい加減にしろ」
「あだだだ、カード引っ張るのやめるでありますよ!」
いきなり出てきて俺を煽る新幹線のカードにお灸をすえる。
こいつの所為でいつも話が途切れるじゃねえか、ふざけんなよ。
「それで実際アカリは何歳なんだ?」
「えと……今年で15歳です」
「2歳年下!? それなら猶更妹みたいなものじゃないデスか! うりうり」
「あうっ、顎の下撫でないでください……へ、変な声出ちゃいますから……」
こいつそういえば、この間花梨にも同じ事やってたな。
同性へのスキンシップが過剰というかなんというか……お国柄もあるんだろうが、あいつの素を考えると神楽坂先輩の影響としか考えられない。
「アカリ、嫌だったら嫌って言うんだぞ。後ブラン、勝手にお姉ちゃん面すんな」
「だってアカリ、可愛いデスもん。しかも、ヒイロからあんなふうに言われて可哀想デース。私は味方デスからねーっ」
「あたしも悪い気はしないかなって。あたし、捨て子でお姉ちゃんとかいなかったから新鮮で……」
「アカリ……うーっ、一人で頑張ってたんデスね! 此処では私がお姉ちゃんと思って良いデスから!」
「一人でって、お爺ちゃんやレジスタンスの皆とかも居ましたから」
「それでもデス! シヅクと言い、アカリと言い、色々抱え込み過ぎなんデスよ。耀とかに相談出来ない事、何でも言ってくだサイ!」
「それで紫月からうざがられてただろ」
「うざっ、ってそんな事ないデース!」
「……あの」
アカリがふと、おずおずと問うた。
「そういえば私、紫月さんのことあまり知らないんです」
「知らない? 未来の俺から何も聞いてないのか?」
「はい……むしろ紫月さんの事はトリス団長から聞いてて……トリス団長もあまり話したがらなかったんです」
「……何でだ? ブランや桑原先輩の事は知ってんだろ?」
「はい。でも、お爺ちゃんもトリス団長も紫月さんの事だけはついぞあたしに詳しく話してくれませんでした」
「……」
何でだ?
どうして紫月の情報だけをアカリに伏せたんだ?
どうせ俺の所に向かわせるなら、他の仲間と一緒にあいつの事も話せばいいのに。
「オルァァァーッ!! どうだ見たかゴルァァァ!!」
「おのれ《タマタンゴ》、こいつさえ居なければ今頃全勝だったのに……!」
……考えるのはやめよう。
横が騒がしいので悩もうにも悩むことすら出来ない。
本当、火廣金と桑原先輩って仲が悪いよな。何なんだろうな。
まだ険悪って程じゃないのが救いなんだけれども。
「お爺ちゃん、そろそろ着くと思います」
「ああ……そうだな」
「浮かない顔ですけど、やっぱり気になるんですか?」
「……ああ。だけど今は──目の前の事に集中しないとな」
そう、目の前の事。
まずは未だにいがみ合っているそこの二人からどうにかしなければなるまい。
……先が思いやられる。胃薬ってタイムダイバーに積んでたっけ?
※※※
──2014年、鎧龍決闘学園。
ガラス張りの校舎がニュータウンの中央に聳え立つ学び舎は、今日も何事も無く一日が過ぎようとしていた。
しかし、平穏とはえてしてあっけなく崩れ去るものである。
学生の束の間の昼休みに、それは音も立てずに現れた。
「おい、あれ見ろよ」
「何だ? 暗いな……雨か?」
サッカーボールを持ち出した男子生徒が空を目掛けて指差す。
そして次の瞬間──目を見開いた。
空から──無数の異形が降り注いでいた。
※※※
「……お爺ちゃんっ、大変です! 既に大量のオーラが確認されています!」
「ど、どうなってやがんだ……!?」
タイムダイバーは無事、2014年の鎧龍決闘学園に浮上した。
しかし──窓から見える景色は異様そのもの。
空から降り落ちる異形。
そして、逃げ惑う鎧龍決闘学園の生徒たちの姿。
ちょっと待て、流石に手が回るのが早すぎやしないか。
「こいつら全員、オレガ・オーラか!? 魔導具ではなく!?」
「間違いないです、そもそも魔導具なんてクリーチャーはこの時代にはまだ存在してないので」
「とにかく早く外に出──どわぁぁぁ!?」
次の瞬間、衝撃がタイムダイバーを襲った。
悲鳴を上げたのは当事者であるカンちゃんだった。
「ヒエェェェ、マスター助けてェ! 早速何かに攻撃されてるんだけど!」
「既に場所も割られてる……!?」
「もしかしてもしかしなくても、待ち伏せされたデース!?」
ハッチから慌てて這うようにして出た俺達。
見ると──巨大な亀の如きドルスザクオーラがこちら目掛けてのしのしと迫ってきていた。
火廣金が臨戦態勢を取る。
「とにかくこのままではタイムダイバーが危ないのではないか!」
「待ってください! 皆さんはエリアフォースカードを優先して! タイムダイバーは責任持ってあたしが守ります!」
「無茶デース!?」
「それにタイムダイバーを再度隠すことが出来るのも、あたしだけです!」
「……此処はアカリを信じよう。このままじゃ、この時代の生徒達が危ない」
「で、デモ──」
「ブランさん、安心してください。あたしは──レジスタンスの希望の星ですから!」
ドルスザクの前に立ち塞がったアカリはエリアフォースカードを掲げる。
此処はどうやら彼女に任せるしかないらしい。
「うう、危なくなったら逃げるデスよ! 逃げるが勝ちデース!」
「はいっ!」
空間を開いた彼女を背に、俺達は走り出した。
一抹の不安を覚えた俺だったが──かといって、此処に気を取られてばかりではいけない。
目の前には大量のオーラが空を覆っている。
このままでは学園に保管されているであろうエリアフォースカードが取られるのも時間の問題だ。
「早速沢山出てきてる! 助けねえと!」
「生徒達を襲ってクリーチャーに目を向けさせ、その間に手薄なエリアフォースカードを狙う……ってところか」
2014年の鎧龍決闘学園は、世界大会明けで平穏な日々が訪れていたはずだった。
しかし、時間Gメンの介入は既に行われているのだろう。
早速大変なことになっている。
「しかし、幼稚な戦略だ」
そう切って捨てるのは火廣金。
真っ先に”轟轟轟”ブランドが飛び出して、空目掛けて飛んで行った。
ロケットブースターで加速した拳で、空中に飛び回るクリーチャー達を一気に焼き尽くす。
「エリアフォースカードも気掛かりだが……魔導司としては人命優先。邪魔をするならば灰燼に帰すまでだ」
「おいコラ! 抜け駆けてんじゃねーぞ! ゲイル、俺たちも行くぜ!」
「戦闘員相手の大立ち回りこそヒーローの──」
「んな事良いからさっさと行けェ!!」
「はいはい、マスターはせっかちだねえ、嫌いじゃないけど!」
ゲイルがマフラーをはためかせると、それが刃となってオーラ達を切り裂いていく。
オーラは実体のない影のようだが、体の中心に埋めこまれているチップを破壊されると消えてしまう。
それを瞬時に見抜いたのか、ゲイルも”轟轟轟”ブランドも空から降り落ちてくるオーラを次々に殲滅していった。
一騎当千という言葉が相応しい戦いっぷりだ。
「こうしてみると、ゲイルと”轟轟轟”の戦闘力は半端じゃねえな……あれだけ戦ってもガス欠しないんだからよ」
「大した事は無い。これでも本業は魔導司だからな」
「
「いちいち俺と張り合わなければ死んでしまうのか、あんたって人は……これだから虫けらは」
「うっせぇ! テメェ、俺をいっつも見下してんだろ! ぜってー認めさせてやる」
「そういうところなんだよ、あんたが先輩らしくないのは!」
「あーあ、ちょっと褒めただけで喧嘩始めたデス」
「ほっとけほっとけ」
守護獣と召喚獣が空を駆け飛ぶ中、俺たちは校舎に向かって走っていく。
火廣金と桑原先輩に関しては取っ組み合いながらであったが、俺たちは静かに彼らから目を反らした。
しかし、倒せど倒せどクリーチャー達の数が減る気配は無かった。
やはり魔導具型オーラを生産しているドルスザクのオーラが居るのだろうか、辺りを見回したその時だった。
「グッギュバァァァァーッ!!」
突如、周囲が暗くなる。
上から咆哮が響き渡り──
「いっ、マジかよ!?」
すんでのところで俺達はその場を走って脱した。
空から落ちてきたのは──全身が刃に覆われたドルスザクのオーラだった。
巻き起こる黒い竜巻はゲイルの旋風を打ち消し、”轟轟轟”ブランドの態勢を大きく崩してしまう。
2体はそのままグラウンドに叩きつけられてしまった。