学園デュエル・マスターズ WildCards【完結】   作:タク@DMP

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GR32話:鎧龍へ──疑念

 呻き声を上げるゲイル、火廣金の取り出したカードの中へ戻るブランド。

 今までの雑魚たちとは当然比べ物にならない強さだ。

 

「《卍魔刃 キ・ルジャック》……時間Gメンが使ってたドルスザクのオーラだ……!」

「魔力量が膨大過ぎる──! 流石にデュエルで決着を付けなければ不味い……!」

「へっ、それならむしろ俺のホームグラウンドだ! 返り討ちにしてやる!」

 

 俺がエリアフォースカードを掲げて臨戦態勢を取ろうとしたその時。

 更に黒い渦が2つ、全員を取り囲むようにして現れた。

 

「なあっ……!? まだ出て来るのかよ!」

「まさか、これって──!」

 

 黒い渦は徐々に異形としての姿を象っていく。

 キ・ルジャックがもう2体、その場に現れた。

 そして──3つの影が重なり、俺たちを吹き付ける風が更に強くなる。

 エリアフォースカードの輝きが消え失せた。空間を展開できない──!?

 

「チョートッQ、どうなってんだ!?」

「魔力負けでありますよ! あのオーラ、あまりにも強大になりすぎてこちらの空間を掻き消しているであります!」

「魔力負けとかそんなのあるなんて初耳デース!?」

 

 駄目だ。力押しは無理、しかも空間も開くことが出来ない。

 これだけの人数が居るのに、オーラに対して誰一人対抗出来ないのだ。

 キ・ルジャックの周囲に巨大な刃が飛んで舞う。

 それが俺たちを目掛けてぐるりと弧を描き──振り下ろされた。

 

 

 

「──醜いな」

 

 

 

 轟轟と音を立てる竜巻の中で──そんな声が聞こえた気がした。

 直後、俺たち目掛けて放たれた刃の軌道が逸れる。

 まるで、何かに歪められたかのようだった。

 目を開けると、そこには──威風堂々と怪物に相対する黒髪の美少年。

 

 

 

「決闘空間……解放」

 

 

 

 そんな言葉と共に、周囲の空気が一気に変わる。

 キ・ルジャックの攻撃はそれによって中止させられた。

 魔導司? エリアフォースカードの使い手?

 いや、そのどちらにも当てはまらない。なぜなら、アルカナの力を感知できるエリアフォースカードがうんともすんとも言わないのだ。

 間もなく、少年とキ・ルジャックの姿が見えなくなる。

 空間の中に1人と1体は飲み込まれてしまったようだった。

 

「い、一体何が起きてるんデス……!?」

 

 ブランが呆けたように言った。

 にわかに信じがたい。エリアフォースカードの使い手でもなければ、魔導司でもない少年がクリーチャーと戦っているなんて。

 しかもあの後姿、俺には確かに見覚えがある。

 凛々しい佇まい、何処か影のある背中。そして──凍てつくような声。

 しばらくして、空間が崩れ落ちる。

 そこから現れた少年の名を、俺は知っていた。

 

 

 

「黒鳥さん……!!」

 

 

 

 

 間違いない。

 確かに俺の知っている黒鳥さんよりも若い。

 だけど、確かに黒鳥さんで間違いない。顔の輪郭も、瞳も、全部彼と同じだ。

 髪が短くて顔がやつれてこそないが、確かに彼そのものだった。

 だが当然、この時代に生きる彼は俺の事を知っているはずもない。

 風が止んだ事でようやく立ち上がることの出来た俺に向かって黒鳥さんは怪訝な目を向けた。

 

「何だ貴様達は……見ない顔だが、クリーチャーの見物か?」

「あ、いや、俺たちは……」

「しかもこんなに……他の奴らは逃げていたのに貴様らはわざわざこんな所に残っていたのか。余程命が惜しくないと思われる。いや──」

 

 ギラリ、と彼は火廣金と桑原先輩を睨みつけた。

 

「クリーチャーを使役していたな? チビの貴様と焦げた髪の貴様だ。まさかこの事態、貴様らが引き起こしたのではあるまいな」

「チビって……」

「焦げた髪……」

「事実だろう。さあどうなんだ?」

「俺たちは味方です!」

 

 俺は必死に訴えかける。

 此処で敵認定されるのは不味い。

 何でか知らないけど黒鳥さんは実体化したクリーチャーと戦う力を持っている。

 プレイヤーとしても手強い彼を敵に回したくはない。

 

「そもそも僕の知らない所でクリーチャーの力が扱える時点で怪しい」

「ヒイロみたいな理屈で難癖付け始めたデース!」

「君は俺をそんな風に思ってたのか!?」

「そもそも制服からして他所の学校の人間だろう。即答出来ないということは、心の中に疚しいものがある証拠じゃないか? なぁ、どうなんだ?」

「え、ええと、それは……」

 

 どうしよう、なんて説明しよう。

 こんな場面で未来から来たとか言ったら、それこそ戦闘になりそうな権幕だ。

 あれ? おかしいな、この人中学生だよな? まだ俺達より年下だよな? 何で気圧されてるんだ俺達。黒鳥さんの纏っている妙な気迫って、この頃からあったわけ?

 神楽坂先輩の時は良かったけど、今回の相手は……あの黒鳥さんだ。しかもすっげぇ機嫌悪そうだし。説得するのも難儀しそうだぞ。

 

 

 

「おいおいレン。いきなり疑ってかかったらカワイソーだろ?」

 

 

 

 その時。

 調子の軽い声が聞こえて来る。

 陽光に照らされたサングラスに、茶色の癖っ毛。

 そして不敵な笑みを浮かべ──彼は臆することなく黒鳥さんの前に立つ。

 

「っ……危ないから下がってろと言っただろう」

「まあまあ、そう怒りなさんな。つーか、危ないから下がってろって過保護か?」

「そういうわけじゃない。貴様、今の自分の状況が分かっているのか」

「よぉ、あんたら。見た所、此処の生徒っぽいけど……レンとノゾム以外でクリーチャーの力使える奴は久々に見たわ」

「ヒナタ! 人の話を聞け!」

 

 ……ヒナタ?

 何だろう、どっかで聞いたことのある名前だ。

 ぶつぶつと「ヒナタってヒナタって……」と桑原先輩が何やら呟いている。

 

「どしたんすか、先輩?」

「あのな白銀よ、鎧龍でヒナタっつったらピンと来なきゃダメだろ」

「界隈では有名な人デスよ!?」

「……俺も噂には聞いたことがある」

「え? マジ? 火廣金も知ってるって、マジで俺が疎いだけ?」

「はぁーあ、これだから白銀は芸術じゃねーんだよなぁ。仮にもデュエマプレイヤーだろーがよ!」

 

 何だその返事。芸術じゃないって何なんだ、意味が分からない上にすっげぇムカつく。

  

 

 

「あれは暁ヒナタ──『鎧龍の太陽』にして、伝説の闇の貴公子・黒鳥レンが公式戦で唯一勝ち越し出来なかった男だぜ」

 

 

 

 ──えっ?

 そう言えば黒鳥さんが前に言っていた。

 どんな逆境でも諦めない太陽のような男が居た、と。

 もしかして、このサングラスの少年が──!?

 

「とにかく、あんた達悪い人じゃなさそうだしな! 訳があるなら聞くぜ!」

 

 サムズアップ、そして白い歯が太陽に照り返されて光る。 

 何なんだこの中学生、一々眩しいぞ。

 

「ハァ!? 貴様何を根拠に……」

「俺見てたんだよ、あの怪物相手に戦ってたんだからな」

「しかし、それでも味方とは限らないぞ! 敵が同じでも、利害を違えたらどうなるか今までの経験から学んでないのか貴様は? ええ?」

 

 ……なんか、言い争い始めちゃったぞ。どうしよう。

 これ、どうやって収拾付けたら良いんだ?

 

 

 

「暁ヒナタさん……黒鳥さん……私達が未来から来た、って信じますか?」

「……はぁ?」

 

 

 

 俺達の視線は、声の聞こえた方に向いた。

 そこには──恐らくタイムダイバーを隠しおおせたと思われるアカリが立っていた。

 てか、出てきていきなり何言い出しちゃってんのこの子!!

 事態が余計ややこしくなるからやめて!!

 

「……貴様、何者だ?」

「私は白銀アカリ。今言った通り、2079年の未来から来ました。今この鎧龍を襲っているクリーチャーは、未来から来た悪党が送り込んだ刺客です」

「何だそれは、御伽噺やメルヘェンじゃあないんだぞ。なんだ? まさか他の連中も未来から来たとか言うんじゃあるまいな」

「俺達は2018年からなんすけど……」

「何だと言うのだ! 貴様等はこの僕をおちょくってるのか!? 今時中学生でも信じんぞ!」

「いやいや、それが居るんデスよ……ああいう実体化するクリーチャーを追ってるんデス! こっちの情報を渡すので、協力お願い出来マスか?」

「結構だ。貴様等のようなイカれた連中の協力など要らん」

「未来から来た!? 何それすっげーカッケーじゃん! 俺協力するわ!」

「ウッソだろ貴様……!?」

 

 完全にげんなりした様子の黒鳥さん。

 一方の暁さんはと言えば、目を輝かせてブランの話を聞いていた。

 仕方ない、食いついてくれたし俺からも説明しとくか。

 

「えーと俺達、訳あってさっきのクリーチャー達をばら撒いてる奴らを止めに来たんだ。どうやら、この学園に保管されている宝物を狙ってるらしいんだけど」

「宝物? 鎧龍に保管されている危ないものなど幾らでもあるが……貴様等、自分達がそれを掠め取ろうとしてるんじゃあるまいな」

「レン。お前うるさい」

「貴様……!」

「イライラしてるのは分かるけど、先ずは信じてみなきゃ始まんねーぜ? 俺は面白そうだから、乗ってみる」

「あのなヒナタ。貴様、今自分がどういう状況なのか分かって──」

「分かってるからこそだ。今は……手段を選んでる場合じゃないみたいだからな」

「戦うのは──僕一人だけで十分だ」

 

 吐き捨てた黒鳥さんはくるり、と背を向けるとそのまま立ち去ってしまう。

 ……大丈夫なのかなアレ。

 

「ほっとけよ、レンの分からず屋なんかさ。最近色々あって当たり散らさなきゃ気が済まねーんだろーな……まあ、大体は俺の所為なんだけど」

「何かあったんデス?」

「……色々だ!」

 

 火廣金が小声で「俺は分かるぞ……数時間前の自分をもう一度見ているようだ」と言っていた。

 こいつやっぱり根に持ってるな?

 

「白銀。俺ァ黒鳥さんを追うわ」

 

 ぽん、と手に肩が置かれる。

 桑原先輩の親指は黒鳥さんの遠い背中を指していた。

 

「桑原先輩、1人で大丈夫なんすか?」

「1人の方が良い。何人も居たら警戒されるぜ。それに……ほっとけねえんだよなァ。未来の俺にとっては恩人で、翠月の師匠な訳だし……」

「じゃあ……頼みます」

「おう」

 

 言った桑原先輩は、一人黒鳥さんの後を追って走っていった。

 大丈夫なのかなあ、黒鳥さんは取り付く島も無いって感じだったんだけど。

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