学園デュエル・マスターズ WildCards【完結】 作:タク@DMP
※※※
「こんな時に
「褒められる程度の事では無い」
結論から言えば──ドギラゴンのオーラは時間Gメンの制御さえも離れて暴れ回っている状態だ。
このまま逃げ出す事を危惧した彼らだったが、幾ら経っても怪物が鎧龍の上空から離れないのを見るや、この周囲が守護獣による結界に覆われている事を突き止めたのだった。
マリーナは椅子に腰かけると、ドローンで撮影されているドギラゴンのオーラの状況を見て溜息を吐く。
暴走は一向に止まる気配が無い。
「まあ、可笑しい事ではないですわ。愚民共からしてもみすみすエリアフォースカードは取り逃したくないはず……そうですわね。折角此処に
「そうだな。
「というわけだから、さっさとそれを寄越しなさい?」
「──そうだな」
シー・ジーがスーツの懐から何かを取り出す。
それはエリアフォースカードではなく──空白の横向きカード。
マリーナがヒナタ相手に使ったドラゴン・コードの素体だ。
人に使えば怪物を生み出すこの魔法道具をマリーナは部下に持たせていない──はずだった。
「……は? 何で、貴方がそれを──」
「ずっとこの時を待っていた。部下達にこれを解析させて、同じものを複製させるのを」
「ま、待ちなさい! 貴方、一体何を……!」
「待ちなさいだと? 誰がもうお前の言う事等聞いて堪るものか。部下達からもお前への不満は溜まっている。喜んで協力してくれたよ。随分と嫌われているようだな、年増女め」
「っ……ゆ、許し難い侮辱ですわ! 勝手に我が社の機密を盗んだ挙句、叛逆の道具にするなんて! 私は上級国民であるマッルィィィナ・ペトロパブロフスキーですわよ!」
「だから何だというのだ。金に胡坐を掻いて好き勝手している叛逆者は貴様等の方だろう、ペトロパブロフスキー重工。議会に数々の圧力をかけ、過剰な軍事費で機関の予算を食い潰し、己の気分一つで貴重な戦力を無駄にする。この命題の答えは真だろう、なあ?」
「そんな言いがかり、私が許すと思っていますのッッッ!!」
<G・メン、
実体化した蒼神龍が重力の法則を捻じ曲げようとする。
しかし──シー・ジーはもう微動だにしなかった。
「しょ、処罰! 処罰! 厳罰ですわ! こんな組織ぐるみの裏切り行為……お父様は勿論、機関が許すと思っているんですの!?」
「思っていないさ。だが、天体のカードをお前から奪うことが出来れば機関のパワーバランスは崩壊する。私が名実共に時間Gメン、いや軍のトップになるのだ」
血走った目で彼はマリーナを睨み付けた。
瞼に焼き付けられる数々の侮辱、数々の虐待行為。
最早我慢の限界だった。部下達に根回しし──今回の反乱を企てたのである。
だが、ここにきてシー・ジーは既に
「組織が裁けぬならば、私が裁く。真にトキワギ機関に忠誠を誓うこの私がな」
<……
「今こそ月も太陽も射落としてやろう──」
次の瞬間、タイムマシンから無数の光が漏れ出し──轟音と共に爆発四散する。
空中分解した機体であったが──そこに一つの影が浮かんでいた。
「──クッ、カハハハハハハハァァァァーッ!! やった!! やったぞ!! 成功だ!! 私は今、龍になったのだァァァーッ!!」
最早、それはシー・ジーではない。
電影龍とエリアフォースカード2枚の力に飲み込まれた龍の形をした異形。
止めどめない破壊衝動と最早使い物にならない理性。
月を堕とした彼が射かけるのは空。太陽の座す場所。
※※※
『オーラとはそもそもデータ化したクリーチャーです。人間がデータ化したということは、細胞の一つ一つがデータに置き換えられていると考えられます』
「ってことは……普通に倒しちゃダメなのか?」
「ワイルドカードが実体化している時とは別物でありますよ。今回はオーラが人間と完全に融合してしまっているであります」
『と言っても、私もオーラになった人間を見るのは初めてなんで何とも……だから怖いんです」
「失敗したら取り返しがつかないデース」
『暁ヒナタさんは黒鳥レンさんの歴史に大きく関わる人物。もしもの事があったら、大規模な歴史改変に繋がりかねません。慎重に行く必要があります』
「どうすれば安全にオーラ化を解除出来る?」
『そうですね……そもそもあのオーラはエリアフォースカードの力で動いているようなものなんで、それを安全に停止させる手段があれば……安全にオーラ化を解除する事が出来ると思うんですけど』
「待てよ。安全にエリアフォースカードを停止させる……出来るかもしれねえ!」
「ああ。”あの方法”を使ってみよう、部長」
「”あの方法”ってどの方法デスか……」
そんなやり取りの後。火廣金とブランに作戦の詳細を伝え、俺と火廣金はそれぞれの相棒に飛び乗って空へ向かった。
”轟轟轟”ブランドが邪魔をしてくるオーラ達を薙ぎ払い、俺がその後ろから突き進む。
そして、敵の残党は火廣金に任せ、俺はヒナタさんが見える高度に到達した。
こちらを見るなりドギラゴンの姿をした怪物はダンガンテイオー目掛けて飛び掛かって来る。
見境無く巨大な鎌を振り回して飛び込んできた。
よし、これであいつを空から引きずり下ろすことができる。
このままダンガンテイオーを追いかけさせて指定のポイントまで誘導するのみだ。
「完全に獲物を見つけた獣でありますよ! 暴走するオーラに意識を乗っ取られているのでありましょうな! 最初の時を思い出すでありますよ!」
「最初……ああ、花梨のドギラゴンか」
「何であのドラゴンは、こうも我々の前に何度も立ち塞がるんでありましょうな!」
「さあな!」
空中に線路を敷かれていき、その上を駆けるダンガンテイオー。
そしてその線路を破壊しながら突き進んで来るドギラゴンのオーラ。
しかし、こんな鬼ごっこは何時までも長くは続かない。
屋上が見えるポイントまでドギラゴンのオーラが到達した瞬間だった。
「そこ、デース!!」
ブランの掛け声と共にサッヴァークが突如ドギラゴンの前に姿を現す。
剣の形をしたエネルギーが龍の怪物の四肢を繋ぎ留め、そのまま空中に縛り付けてしまった。
暴れるドギラゴンだが、罠に捕らえられた獣のように咆哮することしかできない。
『こちら火廣金、敵オーラの殲滅に成功した』
『こっちもドギラゴンを捕まえたデース!』
「オーケー、後は……エリアフォースカードを使うだけだ!」
──以前、ロードとの戦いで使った手段。
エリアフォースカードの守りは硬く、必ず複数人の魔導司やエリアフォースカードが無ければ精神世界をこじ開ける事は出来ない。
しかし、そこに入り込んで暴走の原因を止めることが出来れば、ヒナタさんを傷つける事無くオーラ化を解除できるという寸法だ。
『しかも今回は
「ああ、一気に行くぞ!」
外へ飛び出した
「よしっ、このまま
その時。
何かがドギラゴン目掛けて飛んで来る。
見ると、龍の腹を巨大な弓矢のようなものが貫いていた。
「えっ……!? 何だコレ!?」
驚いてる間に今度はドギラゴンを拘束していた剣も破壊されてしまった。
そのまま力無く龍のオーラは地上へ落ちていく。
「マスター! 3時の方向に巨大なオーラの反応! しかもエリアフォースカードを2枚の反応でありますよ!」
「ま、まさか、その2枚って……!」
弓矢が飛んできた方向を見やる。
そこにあったのは──
「白銀ェェェ、耀ゥゥゥーッ!!」
こちら目掛けて弩を掲げ、弓を射かける獅子に跨った人型──《百族の王 プチョヘンザ》に酷似したドラゴンであった。
「プチョヘンザァ!? 今度はプチョヘンザかよ!」
「寄越せェ、エリアフォースカードを全部寄越せェェェーッ! もっと私に力を寄越すのだァァァーッ!!」
弓矢を次々に乱射するプチョヘンザのオーラ。
こちらも目が赤く光っており、暴走していることは目に見えて明らかだった。
「間違いないであります!
「桑原先輩のカード……だけど、
「フ、ハハハハハハハ、思えば全てお前の所為だ!! お前の所為で私は時間Gメン隊長としてのメンツが丸潰れだァァァーッ!!」
「……マジかよ」
「こっちは元々カードを持っていたからか、理性は吹き飛んでいても人格を保てているでありますな……」
ノイズ混じりではあったが、声色と今の科白から察するに……こいつ多分シー・ジーだ。
あのマリーナならやりかねないが、まさかシー・ジーまでオーラ化させちまうなんて。
「消す消す消す消す消すーッ!!」
無数の弓矢が空へ放たれる。
それがサッヴァーク、そして”轟轟轟”ブランド、そしてダンガンテイオー目掛けて飛んで行く。
『っきゃあああっ!?』
『まずい、被弾したッ……!』
「悪いのはお前だ! お前が全て悪い! 私は悪くない! 避けられないお前達が全て悪いのだ!」
弓矢が掠めたサッヴァークと”轟轟轟”ブランドがよろめく。
まずい、このままじゃ近付けない!
「火廣金! ”轟轟轟”の速度なら、あの弓矢を撃ち落とせるか!?」
『落とせるが……全部は無理だ! しかもこれ以上速度を上げたら、逆に奴に近付けなくなる! こちらが速過ぎて、制御出来ん。下手したら衝突するぞ!』
「いや、あいつには近づかなくて良い! ダンガンテイオーの周囲を飛び回って、飛んで来る弓矢だけ落とせるか!?」
『……成程な。それなら出来る。だが言っただろう、あの量だと全部は無理だぞ!』
「残りサッヴァークが撃ち落とす! そうだろブラン!」
『勿論デス! ……ってことはアカルが突撃するんデス!?』
「そうだ! 頼むぞ!」
『アカル、こういう時は思い切りが良すぎデスよーっ!』
距離を詰めるのは一瞬だった。
飛んで来る弓矢を剣で弾きながらダンガンテイオーはプチョヘンザのオーラ目掛けて線路を駆ける。
その前を切り拓くのは”轟轟轟”ブランド、そしてサッヴァークだ。
『やれやれ、マスター……こういう時は逆に冷静でありますな! 冷静過ぎて……逆に怖いでありますよ!』
「褒めてねーだろ、それ」
飛び掛かり──弩を剣で薙ぎ払うダンガンテイオー。
もうこれで、弓矢は放てない。サシで戦える。
やっと、近付けた。
桑原先輩を馬鹿にした奴に近付けた。
これで遠慮なくぶちのめせる。
「会いたかったぜ、シー・ジー。こんなに会いたかったのは初めてだ」
ああ。
こいつとも何度も何度も戦ってるけど──敗けて俺が傷つけられるのはまだ仕方ないって思えた。
こいつもきっと昔の火廣金みたいに任務で俺と戦ってるんだろうと納得させていた。
だけど、やっぱり許せなかった。何でだろうと考えた時、きっと──こいつらの狙いが俺じゃなくて仲間に向いているからだと気付いた。
放っておくだけでこいつらは俺の仲間達の歴史を書き換える。
でも、それだけじゃない。
「なあシー・ジー。俺がダメなら次はブランで、その次は黒鳥さんと桑原先輩か? いい加減にしろよ。人の大事なモンに次から次へと汚い手で勝手に触ってんじゃねえ」
「元はと言えばお前達が悪い。歯向かってきたお前達が悪いのだ」
「ンだと?」
「私は悪くない。何も悪くないのだ。お前が奴らをこの時代に連れてきたのが悪い、お前が私をあの時打ち負かしたのが悪い、全部全部お前が悪い、白銀耀!!」
──ああ。
言葉で分かり合える相手じゃないとは分かっていたけど。
暴走して理性も何もあったもんじゃないとは分かっていたけど。
これはダメだわ。
全然ダメだ。
ひょっとしたら俺は今までこいつにさえ、「火廣金みてーに分かり合えるかも」とか甘い事を無意識に考えていたのかもしれない。
だけど──
「これは免罪符だ。お前達が全て悪いのだから、私のやる事成す事は全て許される、私は正義でお前達は犯罪者! 私は何をしても許される! だから──消えろ、白銀耀ッッッ!!」
「お前さー……ほんっっっとうに、人の逆鱗を逆撫でするようなことしか言えねえのな──」
俺は吐き捨てる。
この最低最悪の怪物に。
「──とんだ
<Wild……DrawⅣ,EMPEROR!!>