学園デュエル・マスターズ WildCards【完結】   作:タク@DMP

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GR40話:鎧龍頂上決戦──百卍龍の弓矢

 ※※※

 

 

 

「そ、そんな、ドギラゴンのオーラが墜落……!?」

『これ、変身者は無事なのかなマスター!?』

 

 コックピットで彼らの戦いを見届けていたアカリは頭を抱える。

 何一つ予定通りに進んでいない。

 それどころか事態は悪化していた。

 

「もしこのまま暴れ出したら大変なことに……傷ついた獣程危険って言いますし! というか、今空で暴れてるプチョヘンザのオーラの方がヤバいかも……!」

『あいつエリアフォースカード2枚持ってるよ!?』

「最悪です! 魔力の差も考えると、おじいちゃんでも勝てるかどうか怪しいですよ!」

『あと、マスター! 校庭に落ちたドギラゴンのオーラにクリーチャーが近づいてるんだけど!』

「え? ……これってまさか」

 

 アカリは真っ青になって部屋を見に行った。

 案の定──黒鳥が居るはずのベッドは空。

 となれば、あのクリーチャーはもしかしなくても──

 

「このお馬鹿!! 普通、誰か出ていったら気付くでしょ、自分の体なんだから!」

『ヒ、ヒエエエエ、そんな事言われてもーっ!』

「ど、どうしましょう、今の黒鳥さん一人であんな怪物に勝てるわけないのに……!」

 

 

 

 ※※※

 

 

 

「なあ、ヒナタよ」

 

 校庭に堕ちたドギラゴンは、背中から腹に掛けて弓矢が深々と突き刺さっていた。

 力無く声を上げる龍のオーラは力無く横たわっている。

 

「貴様は気に食わない奴だ……いつも僕の目の前にやってきて、太陽のように眩しく輝いて、僕のやる事成す事全てを上書きしていく。貴様は太陽。ノゾムは月。ならば……僕は何だ? 空に浮かぶ貴様等にすらなれやしないというなら、差し詰め僕は影だろう」

 

 入学式の日を思い出す。

 きっかけは些細な事だった。

 トラブルに巻き込まれ、お気に入りのデッキケースを汚されたレンはヒナタに因縁を付けてデュエルを挑み──そして盛大に負けた。

 

「貴様に敗けたあの日から、僕は永遠に日陰者、二番手だ」

 

 よろめく体でレンはライバルに呼びかける。

 返事は呻き声しか返って来なかった。

 

「おまけに貴様が無茶苦茶をする度に尻拭いをさせられる僕の立場を考えてみろ……ハハッ、確かに貧乏くじも良い所だ」

 

 がくり、と膝を突く。

 変わり果てた蒼き革命の龍を前に黒鳥は吐き捨てた。

 

 

 

「ザマァ見ろ……この大馬鹿野郎」

 

 

 

 それが精一杯の罵倒だった。

 悔しさに顔は歪んでいた。

 クリーチャーを使って此処まで駆け付けたのは良いが──最早、魔力は尽き果てていた。

 

「行動するときはちゃんと後先を考えろと言っただろう……貴様は僕を過信し過ぎだ……これでは助けてやろうにも、助けられんではないか……!!」

 

 蒼き龍の瞳が再び赤く光る。

 その口には大鎌が咥えられ、それは黒鳥目掛けて振り上げられた。

 

 

 

「デスゴロ──ッ!!」

 

 

 

 浮かび上がりかけたその像は途中で消えた。

 鎌を受け止める事すら叶わず、黒鳥の身体は吹き飛ばされ、地面に叩きつけられる。

 肺が押し潰されて呼吸が出来ない。

 そして、もう自分には何も残っていないことに気付いていた。

 

「だ、ダメだ……貴様には()()何も背負わせない……貴様には誰も手を掛けさせやしない……貴様は太陽だ、太陽でなければならない……! 貴様は皆の希望なんだ……!」

「グルルルゥゥゥゥ!!」

「だから、貴様は僕が止める、刺し違えてでも止める。汚れ役は、醜い囮は何時だって……僕だけで十分だ」

「ガァァァァァーッ!!」

「その……つもりだったのに、それさえも叶わないか……!」

 

 振り上げられた鎌。

 それが黒鳥を切り裂くべく脳天へ叩き落とされる──

 

 

 

「成程。我ながら美しい美学だな」

 

 

 

 死を覚悟して目を瞑ったその時。

 遅れてやってくる金属音。

 命を刈り取る大鎌と大鎌がぶつかり合う音だった。

 振るうのはデスゴロス。

 もう実体化出来ないはずの自らの切札だった。

 

「な、何で──デスゴロスが」

「だが美徳ではない。特に諦めは最低の悪徳だ。そんなものは僕の美学に反する。貴様もそう思わないか?」

「……き、貴様は」

「イレギュラーに対抗するにはイレギュラーしかあるまい。かく言う僕も混乱しているのでな──今は黙って事態を飲み込め」

 

 黒鳥は目を見開いた。

 漆黒のコートに身を包んだ青年。

 その声も、顔も、そして語り口も。

 何もかもが自分と酷似していて──黒鳥は言葉を失った。

 

()()()()()()()!?」

「そうだ。そして()()()()()。2018年からやってきた黒鳥レンだ」

 

 訳が分からない、と髪を掻き毟る。

 しかし、それでも命が助かったのは確かなようだった。

 

「一つだけ教えてくれ。どうして戦えるんだ? 今の僕には……後4年も戦い続けられる自信が無い」

「心配しなくても、貴様はそんなに長い間、命を賭けて戦い続けられない。貴様はいずれ、戦いから離れる」

「馬鹿な、僕が! ……じゃあ、どうして今も貴様は戦っている。説明が付かないじゃないか!」

「今の僕は守りたいものがあるだけじゃない。僕自身も──生きねばならぬ理由があるから戦っている」

 

 青年はエリアフォースカードを起動させた。

 

 

 

「見届けろ、かつての僕よ。これが──今から見せるのは、貴様が……黒鳥レンが積み重ねるものだッッッ!!」

 

解除開始(ディオーライズモード)太陽(サン)・エンゲージ!>

 

 

 

 ※※※

 

 

「《チュパカル》を《接続 CS-20》に投影(オーライズ)。ターンエンド」

「──《タイク・タイソンズ》を召喚、ターンエンド!」

 

 ──怪物と化したシー・ジーとのデュエル。

 序盤はいつもの初動の投げ合い。

 互いにコストを下げるクリーチャーとオーラが睨み合っている状態だ。

 落ち着け。

 落ち着け俺。

 この戦いは絶対に敗けられない。

 

「《ザハ・エルハ》を……《CS-20》に付け、更に《ガ・ニメデ》も付けて3枚ドロー……!」

「呪文、《超GRチャージャー》で《バツトラの父》をGR召喚! 更に《タイク・タイソンズ》で攻撃するとき、Jチェンジ発動! 《天体かんそ君》をバトルゾーンに出す!」

 

 組体操を組んで転がっていく人型達が望遠鏡のクリーチャーに交代する。

 自然のジョーカーズ、《天体かんそ君》は山札の上から3枚を見て、山札の上と下、そしてマナゾーンへカードを送り込む能力を持つのだ。

 そして──

 

「《タイク・タイソンズ》が場を離れたから山札の上からマナをチャージ! そして《天体かんそ君》の効果で山札の上から3枚を見て1枚を山札の上、1枚を山札の一番下、そしてもう1枚の《キング・ザ・スロットン7》をマナゾーンに置く!」

 

 ──《タイク・タイソンズ》の効果も合わせれば2枚マナを増やしたことになる。

 これで、俺のマナは既に6マナに達していた。

 次のターンには山札の上にセットした《ジョット・ガン・ジョラゴン》を出す事が出来る。

 だけど問題は──相手の手札が大量に増えている上に、結局オーラが重なったクリーチャーを処理出来てないってことだ。

 

「マスター、来るでありますよ! 前のように、フルパワーの《ヴィトラガッタ》が!」

「大丈夫だ! 今回は《バツトラの父》が居る! 一回目なら何とか受け止められる!」

「そう……本当に、思っているのか……?」

 

 プチョヘンザの姿をした怪物は嘲笑いながら弓矢を引き絞る。

 

「私のターン、《ΦΦΝ(ファイファン) ユリアンラウド》、そして《ウナバレズ》を更新(オーライド)。そして、《CS-20》で攻撃!」

 

 除去が飛んでこなかった……! これなら受けられる!

 俺が《バツトラの父》に手を掛けたその時だった。

 

「覚悟しろ……白銀耀……お前が私の顔に塗ったくってくれた泥、今度は全てお前がおっ被る時だァァァーッ!!」

(ストレングス)解禁(アンリーシュ)……百族龍(プチョヘンザ)、ローディング!!>

「オーラが2枚以上重なっている時に攻撃するとき、手札から《スピルバグス》2枚と《ヴィトラガッタ》2枚、そして──」

 

 引き絞られた弓矢が戦場に放たれた。

 そこから巨大な卍が広がっていき──邪悪な気に包まれた百族の長が姿を現す。

 

 

 

無限更新(オーバーライド)、《百卍龍(ひゃくばんりゅう) プチョゲンム》!!」

 

 

 

 《プチョゲンム》──それがこの紛い物の名。

 幻と夢に塗れた虚飾のオーラ。

 それは大量のオーラを吸収したことによって、巨大に膨れ上がってバトルゾーンを占拠していた。

 

「《プチョゲンム》の効果発動──パワー2000以下のクリーチャーを全てマナゾーンへ送る!」

 

 突如、俺の場のクリーチャーが降りかかって来た弓矢によって貫かれ、大地へ引きずり込まれていく。

 ってことは──この攻撃は完全にノーガードってことかよ!

 

 

 

「《CS-20》のパワーは──42000。貴様のシールドを全てブレイクする。最早証明など必要ない!」

 

 

 

 無数の弓矢が俺目掛けて飛んで来る。

 こんなの、シールドが何枚あっても足りないじゃないか!!

 

 

 

「貫き穿て──ゾディアーク・ホライゾンッッッ!!」

 

 

 

 シールドが纏めて束になって俺を守る。

 しかし──防ぎきれない。

 突き刺さった弓矢もまた一つの巨大な弓矢に纏まり──全部貫いてしまった。

 一気に降りかかる衝撃。

 シールドの破片が襲い掛かり、次々に突き刺さる。

 

「桑原甲に比べればお前の脅威はかなり高かったが……もうそれも過去のものだ」

 

 肉が裂かれ、血が噴き出す。

 

「桑原甲と同じように、お前も歴史の闇に葬ってやろう」

 

 だけど──この腹の煮えくり返りは誰にも止められねえよ!

 

「っるせぇっ!! 勝手に人を歴史の闇に葬るなッ!!」

 

 手札に来た《バイナラドア》を投げ付ける。

 飛び出した一つ目のドアが《プチョゲンム》を引きずり込もうとする──

 

「桑原先輩は、強い人なんだ──どんなに弱い弱いって言われて、相棒をやられても、あの人は無理して笑って俺達を送り出した! 俺は知っている、それがどんなに悲しい笑顔だって分かってる! でも、それがあの人の強さなんだよッ!!」

「だから何だ? 奴は私に敗けた! 敗者は弱者であり、賊軍に成り下がる! 歴史編纂の基本だ。それだけの話だろう!」

 

 ──吸い込めない。

 《プチョゲンム》の姿が忽然と消えてしまった。

 《バイナラドア》の除去が効いていない!?

 

「何でだ!?」

「《ウナバレズ》を付けているクリーチャーは選ばれない。そして、《ヴィトラガッタ》の効果で残りのクリーチャーも全てマナゾーンへ送るぞ!!」

 

 再び引き絞られる弩の弓矢。

 《バイナラドア》もマナゾーンへ吸い込まれてしまった。

 

「だけどマナが増えたおかげで、次のターンに《ジョラゴン》を叩きこめる!」

「それも出来ない。《ユリアンラウド》の効果発動。このオーラが付いたクリーチャーの攻撃の終わりに、それに付いている他のオーラ1枚につきGR召喚する」

 

 次の瞬間、空中に向かって無数の弓矢が放たれる。

 そこに大穴が幾つも開き──

 

 

 

「合計10回──GR召喚。そして、それぞれにオーラを付ける!」

 

 

 

 ──大量のチップが降り注いだ。

 その光景に俺は呆気に取られるしか無かった。

 

「……マジかよ」

 

 場には11体ものGRクリーチャーが占拠している。

 

「《バツトラの父》2体、《クリスマⅢ》2体、《マリゴルドⅢ》1体、《甲殻 TS-10》2体、《接続CS-10》、《ザーク卍ウィンガー》──更新(オーライド)!!」

 

 そして、それら全てにオーラが次々に憑依していく。

 元々パワーの高いオーラもあるからか、既に中型クリーチャー並みのパワーに達しているものも何体も居た。

 もうこのまま《ザハ・エルハ》のドロー効果で山札切れてくれないかな。任意だからそれすら叶わないのが悔しい所だ。

 

「《クリスマⅢ》のマナドライブ3発動! 登場時に破壊すれば、マナを1枚タップして追加する! 2体いるので2回発動だ」

「……今更マナを増やしてどうするんだ!?」

「《マリゴルドⅢ》のマナドライブ6が発動。マナゾーンからコスト5以下のオーラである《ケルベロック》を出し、《ザーク卍ウィンガー》に投影(オーライズ)!」

「またブロッカーが増えた……!」

「そうだ。今の私の場には《バツトラの父》2体に加え、マナドライブでブロッカーと化した《TS-10》2体。そして今の《ケルベロック》で5体の壁が出来ている」

 

 マズいぞ。

 幾らジョラゴンでも、このブロッカー軍団を突破するのは難しい。

 例え《マンハッタン》でシールドを全部吹き飛ばしたとしても、肝心のクリーチャーの攻撃が相手に通らなければゲームに勝てない!

 

 

 

「どうすりゃ良いんだ……こんなの……!」

 

 

 

 考えろ。

 考えるんだ。

 この盤面、どうすれば攻略出来る!?

 桑原先輩の仇を取らなきゃいけないのに──これじゃあそもそも攻撃が通らない──

 

 

 

『慌てるな、白銀耀。僕の知るヒーローは──こんな時にこそ、冷静に初心に立ち返るのさ』

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