学園デュエル・マスターズ WildCards【完結】   作:タク@DMP

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GR42話:夢幻の蒼卍龍/無限の魔壊王

 ※※※

 

 

 

<《ΙΧΙ(イオカイオ)ヤマイオン》、投影(オーライズ)

 

 

 

 最早黒鳥が打つ手なしと判断したのか。

 ドギラゴンのオーラは遂に展開を開始した。

 《ヤマイオン》の能力により、場のGRクリーチャーの数だけマナゾーンにカードが置かれる。

 そして──マナゾーンから更にオーラが2体、場に現れて《ドギラゲンム》に吸収されていく。

 

<《無修羅デジルムカデ》、《ガッパゼオ》──更新(オーライド)!!>

 

 これでパワーは合計26000。

 黒鳥のシールドを全て吹き飛ばせるラインだ。

 蒼卍龍の大鎌が黒鳥のシールドを纏めて薙ぎ払う──

 

 

 

 

「グルァァァアアア、レェェェエエエエン!!」

 

 

 

 全てのシールドがざく切りにされ、砕け散った。

 その破片を浴びながら、レンは──その中にある光明を掴み取る。

 

「貴様が殴りに掛かってくれて助かったぞ……! 殴りに来なければ耐え忍ぶだけだったが……まあ良い!」

 

双極変換(ツインパクトチェンジ)詠唱(ソーサリー)!>

 

 目の前に稲光が迸る。

 開かれるは次元の門。

 全身傷だらけのレンだが、もう怯みはしない。

 そのカードを相手に突き付ける。

 

 

 

「S・トリガー、《ナウ・オア・ネバー》! コスト7以下のクリーチャーを場に出し、即手札に戻す呪文だ!」

 

 

 

 シールドから手札に加えられたカードのうち1枚をバトルゾーンへ投げ入れた。

 刻まれるのはⅩⅨ。

 太陽を意味する数字だ。

 

 

 

「暁の果てに終焉は訪れる──貴様の名は、《黒神龍 エンド・オブ・ザ・ワールド》!!」

 

 

 

 終焉の屍龍が降り立ち、大地を暗闇に染め上げる。

 此処からはもう黒鳥の土壇場。

 《エンド・オブ・ザ・ワールド》の効果で彼の山札は3枚を残して墓地へ全て叩き落とされる。

 

「これで全ての準備は出来たぞ──これが、僕の新しい美学だ!」

 

 黒鳥は既にこの先の運命を知っている。

 《エンド・オブ・ザ・ワールド》の効果で山札に残すカードは自分で操作が出来るのだ。

 だから次に引くカードも既に分かっている。

 

「僕のターン、呪文《法と契約の秤(モンテスケールサイン)》! 効果で墓地から《極・龍覇 ヘルボロフ》を場に出す。そして、その効果でコスト5以下のドラグハートを場に出す」

 

 黒鳥の背後に巨大な城塞な姿を現した。

 命を全て吸い取り、自らの糧とする龍の封印されし居城・ドラグハート・フォートレス。

 それが姿を現す。

 

 

 

「地獄への道は一本道で舗装されている──さあ、断罪を始めよう。《超魔界楼 ヘル・オア・ヘル》」

 

 

 

 黒鳥の墓地には既に大量のカードが叩き落とされていた。

 その数は優に20枚を超えており──

 

「《ヘル・オア・ヘル》の龍解条件は墓地にカードが20枚以上ある事。もう既に達成済みだがな」

 

 《ヘルボロフ》が魔界の城塞に飛び乗る。

 次々に吸い込まれていく死霊の魂。

 それを養分として──反転する。

 

「高貴で美しき、死なずの死神よ。今こそ無限の魂を喰らおうぞ――」

 

 暗闇に紅色の三日月が舞う。

 不死身の死神が開眼するとき、それは死者を裁く大鎌と化す。

 決して滅びはしない無限の悪魔龍。

 それを体現するかの如く、メビウスの輪が浮かび上がった。

 

 

 

「龍解──《超・魔壊王 デスシラズ(インフィニティ)》!!」

 

 

 

 ※※※

 

 

 

「《デスシラズ(インフィニティ)》──」

 

 少年は思わず声を漏らす。

 未来の自身が顕現させた切札を前に。

 絶望的な状況を前に一歩も退かぬ、不死身にして不屈の死神を前に。

 只々呆けたように口を開ける事しか出来なかった。

 そして──堰を切るかのように、その言葉は飛び出す。

 

 

 

「美しい──」

 

 

 

 月並みな言葉かもしれない。

 しかし。

 しばし、その言葉さえ忘れていた彼にとってはこれ以上ない賞賛だった。

 

 

 

「まだ、まだ前に進むことが出来るのか──僕も、僕の切札たちも──!」

 

 

 

 ※※※

 

 

 

「行くぞ。《デスシラズ(インフィニティ)》の龍解時効果発動! 相手のクリーチャーを全て破壊する!」

 

 

 

 死神の深紅の大鎌がドギラゲンムの大鎌とぶつかり合う。

 しかし──いとも簡単に、鎌諸共龍のまがい物の身体は両断されてしまった。

 その身体に含まれていた大量のオーラ諸共地獄へ叩き落とされる。

 

「他愛もない──」

「グ、グルォォオオオオオオオオオ!!」

 

<《モンス・ピエール》、投影(オーライド)──>

 

「おっと、スレイヤーのブロッカーか。だが、もう無駄な事」

 

 黒鳥のターン。

 山札は残り1枚。

 しかし──既に勝利は彼の手の中にあった。

 

「運命は全て僕が決める。書き換えさせやしない。僕も、貴様の運命も」

 

 自らの切札に黒鳥は手を掛ける。

 死神の大鎌が地面へ突き立てられ、無数の死霊が飛び出した──

 

 

 

「《デスシラズ(インフィニティ)》で攻撃──するとき、墓地から進化ではない闇のクリーチャーを全て場に出す!」

 

 

 

 飛び出す無数の悪魔、そして悪魔龍達。

 《ヘルボロフ》は《ホワイティ》を出した事によって《モンス・ピエール》を無力化し、《ルソー・モンテス》達は黒鳥の手札を犠牲にして相手の手札を次々に焼き払っていく。

 そして、勝負を決したのは──

 

「《革命龍ガビュート》、そして《冥府の覇者ガジラビュート》の効果発動。相手のシールドを1枚選んで墓地に置く──合計で6体か。全て、シールドは墓地送りだ!」

 

 革命の悪魔龍、そして剣を構えた悪魔がドギラゲンムのシールドを全て焼き払う。

 これで相手の場はがら空きだ。

 

 

 

「《デスシラズ(インフィニティ)》でダイレクトアタック!!」

 

解除(ディオーライズ)

 

 

 

 解放の一撃が蒼き電影龍に叩き込まれた。

 虚像はチップを砕かれた事で消えていく──

 

 

 

 

 ※※※

 

 

 

 プチョヘンザのオーラは完全に消え去り、俺の手元に《(ストレングス)》のカードが飛んで来る。

 それはすぐに絵柄も数字も消えて白紙のカードと化してしまったが、何とか奪還することが出来た。

 

 

 

「あ、お、おのれぇ──! 白銀耀──!」

 

 

 

 ──直後。《ザハ・エルハ》に飛び乗って逃げるシー・ジーの姿が見える。

 マジかよ。こいつまだピンピンしてるじゃねえか。

 落ちていくところを拾って回収するところまで考えてはいたので、これは予想外だ。

 

「チョートッQ、追いかけるぞ!」

「どうするでありますか!?」

「とっ捕まえて二度と悪さが出来ねえようにするんだよ! 簀巻きにしてレジスタンスに引き渡せば良いだろ!」

「ついでに節制のカードも回収でありますな!」

 

 流石に動きが鈍い。

 クリーチャーを使役するだけの魔力が残っていないのかもしれない。

 

「くっ、畜生畜生畜生! どうしてこんなことに──!? これでは私は唯の逆賊、叛逆者……! 帰る場所等無いじゃないかァァァーッ!」

 

 これなら簡単に追いつける。

 そう思っていた時だった。

 

 

 

「か、はっ──?」

 

 

 

 突如。

 ザハ・エルハの身体が両断される。

 それと共に──シー・ジーの身体も真っ二つに別れていた。

 一瞬、何があったか分からない。

 しかし──次の瞬間、羽根のオーラも、そしてシー・ジーも硝子のようにバラバラに砕け散った。

 

「え、え──何だ? 今の──?」

 

 目を疑う。

 思わずダンガンテイオーも、全速前進で今の場所へ突き進む。

 だが、もう何も残っていない。

 オーラも、そしてシー・ジーも何処にもいなかった。

 逃げられた?

 いや、でも違う気がする。

 あの寒気のする感覚。

 そして真っ二つになったシー・ジー。

 これって──まさか。

 いやな言葉が脳裏に過り、冷や汗が伝った。

 

 

 

 

「トキワギ機関の名に掛けて、逆賊等に生存権は無い」

 

 

 

 ダンガンテイオーが近づいたその先に、それは浮いていた。

 黒い外套に身を包んだ人物。

 その手には巨大な鎌が握られている。

 死神。

 その形容が正しかった。

 

「シー・ジーをどうしたんだ……!」

「何故同胞を殺した敵に情けを掛ける。私ならばその場で始末する。今のように」

「っ……やっぱり」

「憤ってるのか? 不殺主義者を気取るなよ白銀耀。殺さねば殺される。それが戦場だ」

「……お前は何者なんだ」

「貴様等の味方ではないことは確かだな」

 

 黒い外套の人物の声にはノイズが掛かっており、男か女かすら分からない。

 だけど一つだけ言える。

 この人物の抱える魔力は尋常ではない。

 

「マスター……! こいつ、太陽(サン)のエリアフォースカードを持ってるでありますよ……!」

「何だと!?」

「安心しろ。この時代のものではない。これは、我らがトキワギ機関に捧げるカードだ」

「……ってことぁ、時間Gメンか」

「あんな合成人間共で構成された末端の組織と一緒にするな」

 

 巨大な鎌を担ぎ、それは言った。

 

 

 

「私は空亡(ソラナキ)。【抹消者】の空亡(ソラナキ)。次に会う時は──貴様等の敵だ」

 

 

 

 ※※※

 

 

 

「そう、でしたか……空亡(ソラナキ)。名前は聞いた事ありませんが、トキワギ機関の太陽(サン)のカードの使い手はそいつで間違いないみたいですね」

「【抹消者】とかいう肩書も気になる。時間Gメンも下っ端に過ぎなかったと言う事なのか?」

 

 一連の出来事が終わった後、俺は一度タイムダイバーに戻ってアカリに報告していた。

 聞き慣れない名前なのか、空亡と聞いても彼女はピンと来ないようだ。【抹消者】とやらが時間Gメンよりも上位の組織で、しかも表立って活動していないのは確かみたいだが……。

 今は手掛かりが少なすぎる。相手は太陽(サン)のカードの使い手だ。

 後は、突如消えたらしいドギラゴンのオーラの様子を見に行ったブランと火廣金の連絡を待つだけ──のはずだった。

 

 

 

「大変デース!!」

 

 

 

 そんな声が飛んで来る。

 見るとそこに居たのはげんなりした表情の火廣金、驚きの表情を浮かべたブラン。

 そして──黒鳥さんの姿があった。

 ただしブランが驚くのも無理はない。

 

 

 

「えっ!?」

 

 

 

 それはこの時代の彼ではなく、俺達のよく知る黒鳥さんだったのだ。

 しかも、その手には何処で拾ってきたのか太陽(サン)のカードが握られている。

 

「何で黒鳥さんがこんな所に居るんすか!?」

「今回に関しては僕の方が聞きたいんだがな!」

「ええ……どうなってるんデスか……」

 

 いや、いやいやいや、どうしてこんなことに。

 

「こっちは無理矢理拉致されてきたのだ。不審者に」

「不審者って……」

「不審者は不審者だ。過去の自分を助けろだのと言われて連れて来られたのだ」

「一体誰に?」

「さあな。黒い外套に身を包んでいた所為で誰なのかさっぱり分からん」

 

 黒い外套?

 ……まさか、あの空亡ってやつか?

 いやでも、あいつはトキワギ機関で敵だろ?

 何で間接的とはいえ俺達を助けるようなことをするんだ?

 

「お爺ちゃん。取り合えず出発しましょう! このダッシュポイント、大修復が始まって出られなくなりますよ!」

「そうだな……うん。まずは帰ろう。話はそこからだ」

 

 何か色々起こり過ぎて頭が付いていけない。

 ゲイルという犠牲を払いながらも俺達は2枚のエリアフォースカードを奪還する事には成功した。

 だけど、空亡という新しい敵。

 そして何故か過去に居た黒鳥さん。

 何より、結局手掛かりが掴めないままの紫月。

 ……一体どうすりゃ良いんだ?

 

「あっ、そうデス! せめてヒナタさんとこっちの黒鳥さんに挨拶でも──」

「そんなもの彼らには必要はないだろう。どうせまた会える」

「そ、それもそうデスね……」

「白銀。聞きたい事は山程あるが……僕達は過去ではなくこれからを見据えるべきだ」

「というのは?」

 

 黒鳥さんは難しそうに言った。

 

 

 

「あの外套の男が妙な事を言っていたのだ。暗野紫月をトキワギ機関が探している、とな」

 

 

 

 え?

 ちょっと待てよ、おかしくないか?

 だってそんなの、本当に──紫月の失踪が時間Gメンとは関係ないみたいじゃないか!

 

 

 

 ※※※

 

 

 

「ヒナタ! ヒナタ! 無事なのか!?」

 

 そんな声が聞こえて来る。

 指が動く。 

 思った通りに。

 全身を迸る痛み。

 この身体には確かに血が通っている。

 目の前に居たのは──好敵手の姿。

 

「レン……」

「すまない……僕には貴様を助けられなかった」

「ああ!? 何言ってんだ! 俺ァ生きてるぞ!」

「いや、それは確かなんだが……助太刀が入ってな」

「……」

「すまない! 僕を庇って貴様はこうなったのに……」

「……バーカ言ってんじゃねーよ」

 

 コツン!

 

 黒鳥の頭に軽く拳骨が落ちる。

 

「俺も無事! お前も無事だった! それだけで十分だろーが!」

「ヒナタ……」

「……でも不思議だな。俺……こういう暴走って初めてなんだけどさ、何かずっとお前のデュエマしてる夢見てたんだよな。何でだろ?」

「……」

 

 去り際に()()()()から掛けられた言葉を思い出す。

 

 

 

 ──脇道に逸れても良い。休んでも良い。僕はそうした。

 

 ──だが貴様は、あのデュエマ馬鹿を超えねばならんのだ。()()()()()。何が起きても美学を忘れるな。

 

 

 

 目を伏せる。

 鎧龍を離れるという選択肢。

 それを選ぶ時が何時か来るのかもしれない。

 永遠なんてものは信じたことは無い。戦いの中で何もかもを取りこぼして来た。

 それでも──

 

 

 

「そんなにデュエマがしたいなら、幾らでも付き合ってやるぞ、このデュエマ馬鹿め!!」

「あだだだだだだ、耳引っ張んじゃねえよっ!? なあ!?」

 

 

 

 ──このデュエマ馬鹿となら、永遠に好敵手でいられる。

 そんな気がした。

 

「来い、僕の美学を直々に見せてやる」

「あっ、その台詞久々に聞いた気がする!」

「そんなにか?」

「そんなにだよ。最近のレン、何時にもまして思いつめてたし」

「……悪かったな」

 

 陽は沈もうとしていた。

 空に浮かぶ一つの光。

 それに軽く手を振り、黒鳥レンは永遠の好敵手と帰路に付いた。

 

 

 

 ※※※

 

 

 

「今回はマジで死ぬかと思いましたわファッキンですわよォォォーッ!!」

 

 

 

 ガクガクと震える身体で杖を突きながらマリーナは学園の外れをよろよろと歩いていた。辛うじて(ザ・ムーン)の力でクリーチャーを実体化させ、タイムマシンから逃れたマリーナだったが爆風からは逃れられなかった。

 シー・ジーの部下も皆、シー・ジーが巨大な怪物となった所為で爆発に巻き込まれて全滅、オーラ兵器も全滅。もう作ることが出来ない。生き残ったのは自分だけだ。

 となれば後は救援を待つしかないのである。

 

「う、うぐぐ、マジで屈辱ですわ……この事はお父様に報告しなければ──」

 

 

 

「見つけたぞマリーナ」

 

 

 

 冷淡な声が聞こえて来る。

 振り向くとそこには──黒い外套の人物、空亡が立っていた。

 

「お、おおお、空亡!! 今回は褒めて遣わしますわ!! このワタクシを助けに来てくれたのですわね!!」

「随分な姿だな、マリーナ」

「ええ。この事はしっかりお父様に報告しますわ。もうあんな合成人間に頼るのは無し。これからは貴方達【抹消者】に、白銀耀の始末を頼むとしますわ」

「そうだな。では、早速最初の任務に取り掛かる」

「あら。もう既に機関から連絡が?」

「ああ」

 

 空亡は鎌を構える。

 そして大上段に振り下ろした。

 次の瞬間──マリーナの胸に深々と鎌が突き刺さっていた。

 

「え?」

()()()()()()()

「え、え? 何で?」

「この鎌で貴様の時間を消し飛ばす。そうだな──タイムマシンから脱出した時間を消そうか」

「い、嫌、やめ、(ザ・ムーン)──」

「借り物のエリアフォースカードで私の力が止められるものか」

「ヒッ──嫌! 嫌ですわ! まだ、ワタクシ死にたくありませんわ! 嫌、嫌嫌、嫌ァァァーぐぎゅ」

 

 

 刹那。

 マリーナの身体が眼球が、そして内臓が、風船のように膨れ上がる。

 

 

 

「機関の通達だ。最初に消えるのは貴様だとな、マリーナ」

 

 

 

 硝子のように彼女の身体はバラバラに砕け散り、そして灰となって消えた。

 そして、残る(ザ・ムーン)のカードを空亡は手に取る。

 それはすぐに消えてしまった。

 

「チッ、私のダミーと同じか。自分の娘に半身だけ預けていたな? 道理で守護獣が居ない訳だ」

 

 まあいい、と彼は向き直る。

 

「戦争が今に始まるぞ。トキワギ機関が真に世界をモノにするための最終戦争だ。これで良いのだな?」

 

 誰も返しはしない。

 しかし、エリアフォースカード越しに肯定の意思は伝わって来た。

 

 

 

「──了解、世界(ザ・ワールド)

 

 

 

 ※※※

 

 

 

「……ふぁあ」

 

 

 

 少女は目を覚ます。

 何があったのか分からない。

 此処が何処なのかも──分からない。

 辺りを見回す。

 下はフカフカのベッド。正直まだ寝ていたいが、何故か寝心地が悪い。

 そして部屋は暗いが、金属光沢が所々反射している。薄目で見ると、装飾に覆われた絢爛とした部屋。

 まるで──王族か、貴族の部屋だ。

 

「……え?」

 

 自分の頬を抓る。痛い。

 これは夢でも幻でもない。

 そして手元にない魔術師(マジシャン)のカードとシャークウガ。

 暗野紫月は全てを察した。

 

 

 

「私もしかしなくても、誘拐されたんですか──!?」

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