学園デュエル・マスターズ WildCards【完結】 作:タク@DMP
※※※
<《
最早黒鳥が打つ手なしと判断したのか。
ドギラゴンのオーラは遂に展開を開始した。
《ヤマイオン》の能力により、場のGRクリーチャーの数だけマナゾーンにカードが置かれる。
そして──マナゾーンから更にオーラが2体、場に現れて《ドギラゲンム》に吸収されていく。
<《無修羅デジルムカデ》、《ガッパゼオ》──
これでパワーは合計26000。
黒鳥のシールドを全て吹き飛ばせるラインだ。
蒼卍龍の大鎌が黒鳥のシールドを纏めて薙ぎ払う──
「グルァァァアアア、レェェェエエエエン!!」
全てのシールドがざく切りにされ、砕け散った。
その破片を浴びながら、レンは──その中にある光明を掴み取る。
「貴様が殴りに掛かってくれて助かったぞ……! 殴りに来なければ耐え忍ぶだけだったが……まあ良い!」
<
目の前に稲光が迸る。
開かれるは次元の門。
全身傷だらけのレンだが、もう怯みはしない。
そのカードを相手に突き付ける。
「S・トリガー、《ナウ・オア・ネバー》! コスト7以下のクリーチャーを場に出し、即手札に戻す呪文だ!」
シールドから手札に加えられたカードのうち1枚をバトルゾーンへ投げ入れた。
刻まれるのはⅩⅨ。
太陽を意味する数字だ。
「暁の果てに終焉は訪れる──貴様の名は、《黒神龍 エンド・オブ・ザ・ワールド》!!」
終焉の屍龍が降り立ち、大地を暗闇に染め上げる。
此処からはもう黒鳥の土壇場。
《エンド・オブ・ザ・ワールド》の効果で彼の山札は3枚を残して墓地へ全て叩き落とされる。
「これで全ての準備は出来たぞ──これが、僕の新しい美学だ!」
黒鳥は既にこの先の運命を知っている。
《エンド・オブ・ザ・ワールド》の効果で山札に残すカードは自分で操作が出来るのだ。
だから次に引くカードも既に分かっている。
「僕のターン、呪文《
黒鳥の背後に巨大な城塞な姿を現した。
命を全て吸い取り、自らの糧とする龍の封印されし居城・ドラグハート・フォートレス。
それが姿を現す。
「地獄への道は一本道で舗装されている──さあ、断罪を始めよう。《超魔界楼 ヘル・オア・ヘル》」
黒鳥の墓地には既に大量のカードが叩き落とされていた。
その数は優に20枚を超えており──
「《ヘル・オア・ヘル》の龍解条件は墓地にカードが20枚以上ある事。もう既に達成済みだがな」
《ヘルボロフ》が魔界の城塞に飛び乗る。
次々に吸い込まれていく死霊の魂。
それを養分として──反転する。
「高貴で美しき、死なずの死神よ。今こそ無限の魂を喰らおうぞ――」
暗闇に紅色の三日月が舞う。
不死身の死神が開眼するとき、それは死者を裁く大鎌と化す。
決して滅びはしない無限の悪魔龍。
それを体現するかの如く、メビウスの輪が浮かび上がった。
「龍解──《超・魔壊王 デスシラズ
※※※
「《デスシラズ
少年は思わず声を漏らす。
未来の自身が顕現させた切札を前に。
絶望的な状況を前に一歩も退かぬ、不死身にして不屈の死神を前に。
只々呆けたように口を開ける事しか出来なかった。
そして──堰を切るかのように、その言葉は飛び出す。
「美しい──」
月並みな言葉かもしれない。
しかし。
しばし、その言葉さえ忘れていた彼にとってはこれ以上ない賞賛だった。
「まだ、まだ前に進むことが出来るのか──僕も、僕の切札たちも──!」
※※※
「行くぞ。《デスシラズ
死神の深紅の大鎌がドギラゲンムの大鎌とぶつかり合う。
しかし──いとも簡単に、鎌諸共龍のまがい物の身体は両断されてしまった。
その身体に含まれていた大量のオーラ諸共地獄へ叩き落とされる。
「他愛もない──」
「グ、グルォォオオオオオオオオオ!!」
<《モンス・ピエール》、
「おっと、スレイヤーのブロッカーか。だが、もう無駄な事」
黒鳥のターン。
山札は残り1枚。
しかし──既に勝利は彼の手の中にあった。
「運命は全て僕が決める。書き換えさせやしない。僕も、貴様の運命も」
自らの切札に黒鳥は手を掛ける。
死神の大鎌が地面へ突き立てられ、無数の死霊が飛び出した──
「《デスシラズ
飛び出す無数の悪魔、そして悪魔龍達。
《ヘルボロフ》は《ホワイティ》を出した事によって《モンス・ピエール》を無力化し、《ルソー・モンテス》達は黒鳥の手札を犠牲にして相手の手札を次々に焼き払っていく。
そして、勝負を決したのは──
「《革命龍ガビュート》、そして《冥府の覇者ガジラビュート》の効果発動。相手のシールドを1枚選んで墓地に置く──合計で6体か。全て、シールドは墓地送りだ!」
革命の悪魔龍、そして剣を構えた悪魔がドギラゲンムのシールドを全て焼き払う。
これで相手の場はがら空きだ。
「《デスシラズ
<
解放の一撃が蒼き電影龍に叩き込まれた。
虚像はチップを砕かれた事で消えていく──
※※※
プチョヘンザのオーラは完全に消え去り、俺の手元に《
それはすぐに絵柄も数字も消えて白紙のカードと化してしまったが、何とか奪還することが出来た。
「あ、お、おのれぇ──! 白銀耀──!」
──直後。《ザハ・エルハ》に飛び乗って逃げるシー・ジーの姿が見える。
マジかよ。こいつまだピンピンしてるじゃねえか。
落ちていくところを拾って回収するところまで考えてはいたので、これは予想外だ。
「チョートッQ、追いかけるぞ!」
「どうするでありますか!?」
「とっ捕まえて二度と悪さが出来ねえようにするんだよ! 簀巻きにしてレジスタンスに引き渡せば良いだろ!」
「ついでに節制のカードも回収でありますな!」
流石に動きが鈍い。
クリーチャーを使役するだけの魔力が残っていないのかもしれない。
「くっ、畜生畜生畜生! どうしてこんなことに──!? これでは私は唯の逆賊、叛逆者……! 帰る場所等無いじゃないかァァァーッ!」
これなら簡単に追いつける。
そう思っていた時だった。
「か、はっ──?」
突如。
ザハ・エルハの身体が両断される。
それと共に──シー・ジーの身体も真っ二つに別れていた。
一瞬、何があったか分からない。
しかし──次の瞬間、羽根のオーラも、そしてシー・ジーも硝子のようにバラバラに砕け散った。
「え、え──何だ? 今の──?」
目を疑う。
思わずダンガンテイオーも、全速前進で今の場所へ突き進む。
だが、もう何も残っていない。
オーラも、そしてシー・ジーも何処にもいなかった。
逃げられた?
いや、でも違う気がする。
あの寒気のする感覚。
そして真っ二つになったシー・ジー。
これって──まさか。
いやな言葉が脳裏に過り、冷や汗が伝った。
「トキワギ機関の名に掛けて、逆賊等に生存権は無い」
ダンガンテイオーが近づいたその先に、それは浮いていた。
黒い外套に身を包んだ人物。
その手には巨大な鎌が握られている。
死神。
その形容が正しかった。
「シー・ジーをどうしたんだ……!」
「何故同胞を殺した敵に情けを掛ける。私ならばその場で始末する。今のように」
「っ……やっぱり」
「憤ってるのか? 不殺主義者を気取るなよ白銀耀。殺さねば殺される。それが戦場だ」
「……お前は何者なんだ」
「貴様等の味方ではないことは確かだな」
黒い外套の人物の声にはノイズが掛かっており、男か女かすら分からない。
だけど一つだけ言える。
この人物の抱える魔力は尋常ではない。
「マスター……! こいつ、
「何だと!?」
「安心しろ。この時代のものではない。これは、我らがトキワギ機関に捧げるカードだ」
「……ってことぁ、時間Gメンか」
「あんな合成人間共で構成された末端の組織と一緒にするな」
巨大な鎌を担ぎ、それは言った。
「私は
※※※
「そう、でしたか……
「【抹消者】とかいう肩書も気になる。時間Gメンも下っ端に過ぎなかったと言う事なのか?」
一連の出来事が終わった後、俺は一度タイムダイバーに戻ってアカリに報告していた。
聞き慣れない名前なのか、空亡と聞いても彼女はピンと来ないようだ。【抹消者】とやらが時間Gメンよりも上位の組織で、しかも表立って活動していないのは確かみたいだが……。
今は手掛かりが少なすぎる。相手は
後は、突如消えたらしいドギラゴンのオーラの様子を見に行ったブランと火廣金の連絡を待つだけ──のはずだった。
「大変デース!!」
そんな声が飛んで来る。
見るとそこに居たのはげんなりした表情の火廣金、驚きの表情を浮かべたブラン。
そして──黒鳥さんの姿があった。
ただしブランが驚くのも無理はない。
「えっ!?」
それはこの時代の彼ではなく、俺達のよく知る黒鳥さんだったのだ。
しかも、その手には何処で拾ってきたのか
「何で黒鳥さんがこんな所に居るんすか!?」
「今回に関しては僕の方が聞きたいんだがな!」
「ええ……どうなってるんデスか……」
いや、いやいやいや、どうしてこんなことに。
「こっちは無理矢理拉致されてきたのだ。不審者に」
「不審者って……」
「不審者は不審者だ。過去の自分を助けろだのと言われて連れて来られたのだ」
「一体誰に?」
「さあな。黒い外套に身を包んでいた所為で誰なのかさっぱり分からん」
黒い外套?
……まさか、あの空亡ってやつか?
いやでも、あいつはトキワギ機関で敵だろ?
何で間接的とはいえ俺達を助けるようなことをするんだ?
「お爺ちゃん。取り合えず出発しましょう! このダッシュポイント、大修復が始まって出られなくなりますよ!」
「そうだな……うん。まずは帰ろう。話はそこからだ」
何か色々起こり過ぎて頭が付いていけない。
ゲイルという犠牲を払いながらも俺達は2枚のエリアフォースカードを奪還する事には成功した。
だけど、空亡という新しい敵。
そして何故か過去に居た黒鳥さん。
何より、結局手掛かりが掴めないままの紫月。
……一体どうすりゃ良いんだ?
「あっ、そうデス! せめてヒナタさんとこっちの黒鳥さんに挨拶でも──」
「そんなもの彼らには必要はないだろう。どうせまた会える」
「そ、それもそうデスね……」
「白銀。聞きたい事は山程あるが……僕達は過去ではなくこれからを見据えるべきだ」
「というのは?」
黒鳥さんは難しそうに言った。
「あの外套の男が妙な事を言っていたのだ。暗野紫月をトキワギ機関が探している、とな」
え?
ちょっと待てよ、おかしくないか?
だってそんなの、本当に──紫月の失踪が時間Gメンとは関係ないみたいじゃないか!
※※※
「ヒナタ! ヒナタ! 無事なのか!?」
そんな声が聞こえて来る。
指が動く。
思った通りに。
全身を迸る痛み。
この身体には確かに血が通っている。
目の前に居たのは──好敵手の姿。
「レン……」
「すまない……僕には貴様を助けられなかった」
「ああ!? 何言ってんだ! 俺ァ生きてるぞ!」
「いや、それは確かなんだが……助太刀が入ってな」
「……」
「すまない! 僕を庇って貴様はこうなったのに……」
「……バーカ言ってんじゃねーよ」
コツン!
黒鳥の頭に軽く拳骨が落ちる。
「俺も無事! お前も無事だった! それだけで十分だろーが!」
「ヒナタ……」
「……でも不思議だな。俺……こういう暴走って初めてなんだけどさ、何かずっとお前のデュエマしてる夢見てたんだよな。何でだろ?」
「……」
去り際に
──脇道に逸れても良い。休んでも良い。僕はそうした。
──だが貴様は、あのデュエマ馬鹿を超えねばならんのだ。
目を伏せる。
鎧龍を離れるという選択肢。
それを選ぶ時が何時か来るのかもしれない。
永遠なんてものは信じたことは無い。戦いの中で何もかもを取りこぼして来た。
それでも──
「そんなにデュエマがしたいなら、幾らでも付き合ってやるぞ、このデュエマ馬鹿め!!」
「あだだだだだだ、耳引っ張んじゃねえよっ!? なあ!?」
──このデュエマ馬鹿となら、永遠に好敵手でいられる。
そんな気がした。
「来い、僕の美学を直々に見せてやる」
「あっ、その台詞久々に聞いた気がする!」
「そんなにか?」
「そんなにだよ。最近のレン、何時にもまして思いつめてたし」
「……悪かったな」
陽は沈もうとしていた。
空に浮かぶ一つの光。
それに軽く手を振り、黒鳥レンは永遠の好敵手と帰路に付いた。
※※※
「今回はマジで死ぬかと思いましたわファッキンですわよォォォーッ!!」
ガクガクと震える身体で杖を突きながらマリーナは学園の外れをよろよろと歩いていた。辛うじて
シー・ジーの部下も皆、シー・ジーが巨大な怪物となった所為で爆発に巻き込まれて全滅、オーラ兵器も全滅。もう作ることが出来ない。生き残ったのは自分だけだ。
となれば後は救援を待つしかないのである。
「う、うぐぐ、マジで屈辱ですわ……この事はお父様に報告しなければ──」
「見つけたぞマリーナ」
冷淡な声が聞こえて来る。
振り向くとそこには──黒い外套の人物、空亡が立っていた。
「お、おおお、空亡!! 今回は褒めて遣わしますわ!! このワタクシを助けに来てくれたのですわね!!」
「随分な姿だな、マリーナ」
「ええ。この事はしっかりお父様に報告しますわ。もうあんな合成人間に頼るのは無し。これからは貴方達【抹消者】に、白銀耀の始末を頼むとしますわ」
「そうだな。では、早速最初の任務に取り掛かる」
「あら。もう既に機関から連絡が?」
「ああ」
空亡は鎌を構える。
そして大上段に振り下ろした。
次の瞬間──マリーナの胸に深々と鎌が突き刺さっていた。
「え?」
「
「え、え? 何で?」
「この鎌で貴様の時間を消し飛ばす。そうだな──タイムマシンから脱出した時間を消そうか」
「い、嫌、やめ、
「借り物のエリアフォースカードで私の力が止められるものか」
「ヒッ──嫌! 嫌ですわ! まだ、ワタクシ死にたくありませんわ! 嫌、嫌嫌、嫌ァァァーぐぎゅ」
刹那。
マリーナの身体が眼球が、そして内臓が、風船のように膨れ上がる。
「機関の通達だ。最初に消えるのは貴様だとな、マリーナ」
硝子のように彼女の身体はバラバラに砕け散り、そして灰となって消えた。
そして、残る
それはすぐに消えてしまった。
「チッ、私のダミーと同じか。自分の娘に半身だけ預けていたな? 道理で守護獣が居ない訳だ」
まあいい、と彼は向き直る。
「戦争が今に始まるぞ。トキワギ機関が真に世界をモノにするための最終戦争だ。これで良いのだな?」
誰も返しはしない。
しかし、エリアフォースカード越しに肯定の意思は伝わって来た。
「──了解、
※※※
「……ふぁあ」
少女は目を覚ます。
何があったのか分からない。
此処が何処なのかも──分からない。
辺りを見回す。
下はフカフカのベッド。正直まだ寝ていたいが、何故か寝心地が悪い。
そして部屋は暗いが、金属光沢が所々反射している。薄目で見ると、装飾に覆われた絢爛とした部屋。
まるで──王族か、貴族の部屋だ。
「……え?」
自分の頬を抓る。痛い。
これは夢でも幻でもない。
そして手元にない
暗野紫月は全てを察した。
「私もしかしなくても、誘拐されたんですか──!?」