学園デュエル・マスターズ WildCards【完結】 作:タク@DMP
部屋に入ろうとした途端、少女と出くわした。
白銀朱莉。此処最近、沢山の問題を持って来た少女。
最初こそ疑っていたが、今は信用しても良い相手だと判断している。
だが、同時に──
「──俺と勝負しろ、白銀朱莉」
「……えーと、どういう風の吹き回しですか? あたし、今やっと翠月さんから解放されたところで……」
「ダメか」
「あー……もう! 分かりましたよ! やってやりましょう!」
──まだ、手の内の分かっていない相手だ。この際利害が絡まぬうちに暴いてしまうか。
こうして。
まだ熱が治まらぬ火廣金とアカリのデュエルが始まったのだった。
※※※
……何か知らん間にアカリと火廣金が対戦してるんだけど。
一体どうしたのコレ。
「俺のターン。《チュチュリス》を召喚して、《ブレイズ・クロー》でシールドを攻撃」
火廣金はやはり速攻。
1ターン目からクリーチャーの《ブレイズ・クロー》を出して怒涛の攻めを繰り出す。
きっとあいつ、手札のカードを全部ぶつけて削り切るつもりだな。
だけど──
「あたしは《トムのゼリー》で《ブレイズ・クロー》をブロックします。パワーは共に同じ、相打ちですね」
「チッ、まあ良いだろう」
──今回の出だしは火廣金が失敗。
結果的に手札を1枚失ってしまった。まあ、《ブレイズ・クロー》は必ず攻撃しなければならないから仕方ないんだけど。
「《トムのゼリー》が場を離れたのでカードを引きます。それでは私のターン、2マナで《ヤッタレマン》を召喚! ターンエンドです!」
「コスト軽減か。だが間に合わせはせんぞ」
火廣金はカードを引くと、すぐさま1マナをタップする。
「1マナで《ダチッコ・チュリス》召喚。更に3コスト軽減、1マナで《HAJIKERO・バクチック》を召喚」
「出た、火廣金の連鎖召喚……!」
「《バクチック》の効果で《グッドルッキン・ブラボー》をGR召喚! そして、1マナをタップ! マスターBAD発動だ!」
そうだ。このターンに召喚されたGRクリーチャーは合計で3体。
既にコストは6まで軽減されている。
つまり来る。火廣金の切札が!
「《”罰怒”ブランド》召喚! 効果で俺のクリーチャーは全てスピードアタッカーだ!」
「来ましたね──!」
「全軍突撃だ。《ブランド》でW・ブレイク! 更に《ダチッコ》、《グッドルッキン・ブラボー》もシールドブレイクだ!」
火廣金の軍勢がアカリのシールドを全て削り取った。
これでマナドライブが達成していれば《グッドルッキン・ブラボー》の二回連続攻撃でダイレクトアタックまで持っていけていた。
だけど、3ターン目に此処までの軍勢を展開できるのは凄いぞ火廣金……!
「だがこれでは終わらん! 《バクチック》で攻撃するとき、GR召喚する! 《ソニーソニック》を場に出す! 最後のシールドもブレイクだ!」
「S・トリガー! 《松苔ラックス》で《ソニーソニック》を攻撃できなくさせます!」
「ターン終了時に《ダチッコ》と《ソニーソニック》、《グッドルッキン・ブラボー》を破壊。ターンエンドだ」
辛うじてS・トリガーで止められたものの、アカリのシールドは既にゼロ。
しかも《ジョルネード》のマスター・J・トルネードの条件すら満たせていない。
「……やりますね。でも!」
彼女はカードを引く。
アカリはまだ不敵に笑っていた。
「1マナで《ザババン・ジョーカーズ》。効果でカードを1枚引いて、手札を1枚捨てます。それがジョーカーズならもう1枚ドローしますよ」
「む? 一体、何をするつもりだ」
「そして、この呪文を唱える時、私は手札を1枚捨てます!」
意趣返しと言わんばかりに彼女はその呪文を火廣金に突き付ける。
現に彼も、俺達も目を見開いた。
「マスター
「なっ……!? B・A・D・Sか……!?」
手札を捨てる事でコストを2軽減する呪文、B・A・D・S。
しかし、この挙動はそれとも違う。
「G・O・D・Sは唱える時に手札を1枚捨てれば、このターンに捨てた手札の枚数に付きコストを2軽減できるんです。だから4軽減で2マナで唱えられます! 効果で3回GR召喚です!」
嘘だろ。
《ジョルネード》以外にも3回GR召喚できるカードがあったのか。
飛び出てきたのは《ダテンクウェール》、《パッパラパーリ騎士》──そして。
「これがあたしの
現れたのは客船が巨大なロボットになったようなクリーチャーだった。
陸の《ダンガスティック》、空の《ダテンクウェール》に続く第三のGRロボットジョーカーズ。
それがアカリの切札だったのか!
「だが、それでは打点が足りないだろう!」
「此処で《パッパラパーリ》の効果でマナゾーンに《ザババン・ジョーカーズ》を置きます! そして、《ゴッド・ガヨンダム》の効果で手札のジョーカーズを捨てて2枚ドロー!」
「……その1マナで何が出来る!」
「あたしの場にあるジョーカーズが4体以上の時、《ガンバトラーG7》のコストは5軽減されます!」
「なっ……!」
「そして、《ガンバトラー》のパワー増加効果を《ダルタニック》に使います!」
これで、《ダルタニック》のパワーは元々の1000に加えて、+7000。
となるはずだったのだが──
「更に《ダルタニック》は手札の数だけパワーが増えるんです! パワーは驚きの12000!」
「こんなバカな事が……!」
「そして、《ダルタニックB》でシールドを攻撃! この子はパワード・ブレイカーだから、シールドを3枚ブレイクしますよ!」
「っ……! S・トリガー、《KMASE-BURN!》で《ゴルドンゴルドー》をGR召喚! マナドライブで《ゴルドンゴルドー》を破壊すればパワー6000以下のクリーチャーを1体破壊出来る!」
これで《ダテンクウェール》は破壊された。
しかし。それでもまだ《ガンバトラーG7》が残っている。
そのまま火廣金は成す術無く残るシールドを叩き割られ、
「《パッパラパーリ騎士》でダイレクトアタック、ですっ!」
「……俺の負けだ」
そんなわけで、速攻に対するカウンターが見事に決まる形で勝者はアカリとなったのだった。
※※※
「……やはり部長の孫だな」
「はぁ……ありがとうございます?」
そう言って火廣金はデッキケースにデッキを片付ける。
どうしたんだろう。今日の火廣金、妙に殺気立ってる気がする。
「それで? 俺に何の用だ?」
「いえ、そろそろ2079年に着くので連絡しようかなと思ってて。そしたらいきなり勝負吹っ掛けてきたのはそっちじゃないですかっ!」
「……そうか」
「そうか、じゃないです! もう、何なんですか本当に……」
「すまなかったなレディ」
「レディって、馬鹿にしてるんですか?」
「違う違う、火廣金は女の子をレディって呼ぶんだよ」
「ってことは……今までは女の子扱いしてなかったってことですか!?」
ぷんすか怒るアカリ。
一応それは怒るんだな、お前……。
「そう言う訳ではないが……一応、信用した証ということだ」
「何様のつもりですか! 今更そんな事言われても嬉しくないですからね!」
「まあまあお前達。そんなにいがみ合うなよ……」
何だかんだで火廣金もアカリを認めたってことなのかな。
「恐らく、もうじき最終ワープポイントを突破します」
「もうそんな時間か?」
「はい。花梨さんも呼んできてください」
そうか。
いよいよロストシティに着くんだな。
「なあ、火廣金。本当に……大丈夫なのか?」
「……問題ない。暗野を助け出すのだろう」
「ああ。勿論だ」
「……部長はブレないな」
なんだそりゃ。
褒めてるのか貶してるのかよく分からない評価だな。
「そりゃそうだろ。俺は部長だ。俺が迷ってたら他のやつまで迷っちまうだろ」
この戦いが始まってから何回も悩みや壁にぶち当たったし、俺だって自分の選択が全部正しかったとは思ってない。でも……紫月を助け出すのは、俺の中で満場一致で正しいって言える。
気持ちで負けてたらきっと、紫月を助け出すことは出来ない。
「君らしいな」
「……皆さん、これより、最終ワープポイントを突破します! 間もなく、2079年に到達します!」
アカリの声が溌剌と響く。
それぞれの思惑を抱えたまま、俺達はロストシティへ向かうのだった。
※※※
──2079年。
タイムダイバーはロストシティ第三層に浮上した。
どうやらレジスタンス基地に戻っている暇は無い、とトリスから急ぎの通達が来たらしい。
曰く、「街が大変なことになっている」とのことだったが……。
「何ですかこれ……!」
以前のロストシティは荒んではいたが、それでもまだ人通りはあった。
ホームレス、ストリートチルドレン、日雇い労働者、決して生活が良いとはいえない彼らでさえまだ往来を歩く余裕はあった。
しかし──今のロストシティにそんなものは感じられなかった。
静寂。
ただひたすらに統制された静寂のみが街を支配していた。
そして、街をうろつくのはサバイバルジャケットに身を包んだ男達。
それぞれが銃を両手に掲げて警戒しているようだった。
「……これは、まるで街が軍にでも制圧されたようだな」
『軍ってのは中らずと雖も遠からずだな』
黒鳥さんの科白に、トリスの音声が返って来る。
「トリス……!」
「これって、未来のトリスなんだよね?」
「実感が沸かないな……未来の知り合いと話すというのは」
『よう、デュエマ部。街の惨状を見てくれた通りだ。この兵士共が街を厳戒態勢にしててな。誰一人外に出る事は出来ないし、第三階層に誰も入れない』
「一体、何処の組織なんですか! トキワギ機関じゃなさそうですし……」
『……ハングドマン商会』
「!」
その名前には聞き覚えがあった。
街を牛耳っていたマフィアたちじゃないか。
「ハングドマン?」
「この街を管理している組織だ。ボスと幹部がエリアフォースカード使いらしい」
「でも彼らのおかげでインフラは何とか回ってるんです……一体どうして」
『実はな。あたし達もさっきようやく正確な場所が掴めたんだが……
ギリギリまで指示が出せなくてすまないな、とトリスは謝る。
でも、何で奴らはこんな事をしてるんだ?
『もし、本当に奴らの仕業なら過去から持って来たエリアフォースカードなんて、ロクな事に使わないだろうな』
「彼らが
『流石ヒイロだ。大方そう見て良い。邪魔されたくないってことは、疚しい事があるんだろ。そして、
「なあトリス、一つ教えてくれないか?」
『あんだ?』
「この時代の
『それは、この作戦を完遂したら教えてやる』
ああクソ、肝心なことは教えてくれないのか。
だけど確かに今考えるべきことではなかったのかもしれない。
『いずれにせよ、お前が見るべきは──
「……そうだな。トリス。ハングドマン商会から紫月を奪い返す」
「待ってください団長! 良いんですか!? そうなるとハングドマン商会とレジスタンスは本格的に事を構えることになります! 街に被害が出る恐れが……」
「アカリ、今更そんな事言ってる場合かよ!」
「あいつらは街のインフラを握ってるんです! それを人質に取られたら……!」
『それがな、アカリ。既に何度か強力な魔力の波形をこっちは観測している。明らかにヤバいモンを隠し持っているってか、目覚めさせようとしてるぜ』
「そ、そんな……」
『そうしたらこの街はどうなる? どの道終わりだ』
「……分かりました」
『白銀。お前はどうしたい。街を犠牲にしても、暗野紫月を助けるか?』
既に答えは決まっている。
「助けたい」
『それが他の何を犠牲する選択でも、か? 白銀耀』
「──俺はあいつを助ける為に此処に来た。今更引き下がれない」
ロードの事を思い出す。
完全に犠牲を出さない選択肢は存在しない。
それでも──
「せめて仲間だけは絶対に守る。全員で現代に帰る。そのつもりで此処にやってきた!」
『その言葉を待っていた。お前らが守るのはこの滅びの未来じゃねえ。お前らが歩む、お前らの未来だ』
──そうだ。絶対に全員で帰る。そして未来を変えてみせる。
守れないものがあるなら、せめてこれだけは必ず守ってみせる。そう決めたんだ。
「でもどうしまショウ。街の中には怖い人がいっぱい居マスよ?」
「タイムダイバーで出来るだけ接近しましょう」
『無理だ。奴らが街に張っている結界の所為で近付けない』
「それじゃあ……警戒網を攪乱して、そっちに目を向けさせる……とか?」
『確かに、あの結界は人間の動きまでは感知出来ないだろうな。その隙にもう一方のチームが本拠地を叩くことは出来る』
そもそも街中では守護獣で暴れ回ることは出来ないと思って良いだろう。
万が一建物を壊したりしたら大惨事だ。ただでさえ街中は狭い迷路のようになっているのだから、クリーチャーを出した時点で被害が出る可能性さえある。
「しかし敵は銃火器で武装している。対して君達は丸腰だ。戦闘では勝てない」
「それじゃあサッヴァークの迷宮化で無力化すれば良いんデスよ!」
『それも無理だ。奴らの結界は、迷宮化では上書きできない』
まずいな……今まで通用していた作戦が通用しない。
こんな時に紫月は居ないし……。
「戦力を二分した方が良いと思う。火廣金みたいに魔導司なら良いけど、俺達は基本的に非力だ。警戒網を攪乱させるチームと、本拠地に突入するチームに分けた方が良い」
「正直、あの程度の軍勢なら、俺一人でも十分だ」
「マジか!?」
「だが、俺一人ではあの数を引き付けることは出来ない。幾ら俺が暴れても、全員が持ち場を離れて俺の場所に行くとは考えられん」
「それなら雑魚散らしも二つに分けたら良いよ」
言い出したのは花梨だ。
だけどお前大丈夫なのか?
幾ら接近戦は無敵のお前でも銃弾が当たったら即死だぞ?
「そこは考えがあるから大丈夫」
「部長。
「本当に大丈夫か……?」
「じゃあ問題は、本拠点の突破だな……」
「……多分、それは正面突破しかないと思います。それこそ、敵の本拠地ならば存分に守護獣を暴れさせることが出来るので」
「敵の基地に辿り着くまでの道を火廣金と花梨が作る」
「残りの5人が敵の本拠地を叩く……これで良いか?」
「……あぅ」
声が後ろから漏れた。
振り返るとそこには──怯えた様子の翠月さんの姿があった。
「皆さん、大丈夫なんですか……? これ、ゲームとかじゃないんですよ……?」
「ミヅキ……震えてるデスよ」
「ごめんなさい……今まではクリーチャーが相手だったけど、武器を手に取ったあの男の人達を見てたら、急に怖気づいちゃって……」
「なら貴様は残るか」
黒鳥さんが言った。
「足手纏いになるよりはその方が良い」
「……でも、しづが苦しい思いをしているのに、私だけ行かない訳にはいかない。でも、足が震えるの……」
『そういう時に主を守る為に守護獣が居る』
「大丈夫です、翠月さん。本拠地までは私がリードします。だから──信じてくれませんか? 無理にとは言いませんけど」
「アカリさん……」
「結局俺達に出来るのは、何時も通りデュエマで勝つことだ。まあ、命の危険もあるけどな」
「……」
「でも、俺は絶対に紫月を助け出したい。それがエリアフォースカードに選ばれた俺に出来る事なら」
翠月さんは口をぎゅっと噤むと言った。
「……私もやります。力を持つ者として選ばれたから」