学園デュエル・マスターズ WildCards【完結】   作:タク@DMP

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GR46話:制圧された街──闇医者再び

 ※※※

 

 

『マルヨンマルマル、第三階層ブラボー異常無し』

『チャールズ異常無し』

『ドナルド異常無し』

「エドワード──ん?」

 

 隠語で各ポイントを示し合わせながらの退屈な哨戒任務の途中、それは突如として現れた。

 全身が炎に包まれた男。

 それが街にふらりと現れたのだ。

 男達はそれに銃口を向ける。

 見た所、焼死体には見えない。なぜならそれは、明確に意識をもってこちらへ進んで来るのだから。

 

「貴様! 止まれ! 撃つぞ!」

「……撃てるものなら撃ってみろ、素人が」

「素人だと!? 俺はこの道10年のベテランだ──!」

 

 ──何だこいつ?! 何で全身が燃えているんだ!?

 

「撃てェェェーッ!!」

 

 が、しかし。 

 銃弾は炎の身体に吸い込まれてしまう。

 

「ヒッ、貴様……クリーチャーか!? 何でこんな所に!?」

「この街に魔法使いは老いぼれのレジスタンスのリーダーしかいないはず──!」

「クリーチャーでも魔法使いでも何でも良いだろう?」

 

 次の瞬間、炎男の周囲から無数の火の玉が浮かび上がる。

 それが男達の銃に触れると、一瞬で溶かしてしまった。

 

「ヒ、ヒイイイイ!?」

「ち、畜生! 何なんだお前はァ!?」

「来るものなら掛かって来い。一人一人、焼いてやる。魔導司が本気の戦闘形態で相手してやると言ってるのだ」

 

 ──さあて。向こうはどうだかな……!

 炎の男、火廣金は滾っていた。

 久々の戦闘。己の中に籠っていた熱を存分に振るうチャンスだ。

 

 

 

 ※※※

 

 

 

「オイオイ、ガキンチョ。こんな時に何出歩いてんだァ? 誰も街の中に出すなって命令なのによォ!!」

「ご、ごめんなさい、お母さんが病気で薬買わなきゃいけなくって──」

「こりゃあ、オペラ様の所に持って帰るか? 眼球と肺が不足してたみたいだし、丁度良いぜ」

「ヒィッ──」

 

 小さな少年に詰め寄る兵士二人。

 じりじりとにじり寄る彼らに、子供では成す術が無い。

 

 

 

「うぐっ!?」

 

 

 

 

 しかし。 

 片方の土手っ腹に特殊警棒が突き刺さる。

 呻き声を上げると、男は地面に倒れ落ちた。

 相方の懐に潜り込んだ何者かに掴み掛かる兵士だったが──口の中に警棒がねじ込まれ、地面に倒れ伏せる。

 

「えっごぉげはぁっ!?」

 

 そのまま再び喉に一突きを浴びせる。悶絶する男を後目に彼女は叫ぶ。

 

「君は逃げて!」

「う、うんっ!」

 

 子供は慌てて逃げていった。

 すぐさま騒ぎを聞きつけてやってきた兵士たちが銃口を向ける。

 警棒を掲げた少女──刀堂花梨はそれらを流し見すると──地面を蹴った。

 

「エリアフォースカード使いだ! 撃てッ!!」

「何でこんな所にウロついてんだよ、しかもガキだぞ!」

「ガキでもなんでも殺せ! 殺してオペラ様に臓器を献上するんだ!」

 

 銃弾は花梨目掛けて次々に飛んで行く。

 次々に吸い込まれていく弾丸。

 しかし──彼らは戦慄した。少女はそれでも突っ込んで来るのだ。

 

「は、はぁあ!? 何で倒れねえんだよ化物かぁ!?」

「たぁぁあーっ!!」

 

 そのまま兵士の鳩尾を突き、蟀谷を的確に薙ぎ払う花梨。

 最早銃器は無意味とナイフを取り出した彼らだったが、それすらも躱され、一人、また一人と警棒で脳天を叩かれて地面に伏せられる。

 

「ち、畜生、この女……弾丸も刃物も通らねえぞ!」

「通らねえっつーか、そもそも身のこなしが異常だ! 本当にガキか!?」

「組み伏せて無力化しろ! 全員で抑えつけるんだ!」

「あーあ、やっぱそうなるよね──!」

 

 まあでも、負ける気はしないけど、と花梨は内心呟く。

 刀堂花梨。

 彼女に長物を持たせたが最後。

 それに加え、戦車(チャリオッツ)の魔術で全身に障壁を貼っており、弾丸は彼女に無力。

 即ちこの戦場──花梨の独壇場だったのである。

 

 

 

 ※※※

 

 

 

 あちこちで騒ぎが起こってるけど、皆そっちに向かっているからか俺達は比較的スムーズに拠点であろう建物に辿り着くことが出来た。

 周囲に比べて一際異様な建築物。

 金銀宝石の装飾が施されたビル。「ハングドマン商会本社」とご丁寧にでかでかと書かれているのだった。

 あの中に──紫月が居る。

 

「門番は……いないようですね」

「このまま正面突入と行くか?」

「ミヅキ、大丈夫デス?」

「わわわわわ、わたしはへいきでででです」

「大丈夫そうじゃなさそうだな……世話が焼ける弟子だ」

「平気です! いっちゃってください!」

「了解! ジョルネード!」

 

 すぐさまジョルネードが飛び出し、扉に何発も穴を開ける。 

 そして──彼を盾に、全員は一斉にビルの中へ飛び込んだ。

 内部はホテルのようになっており、絢爛とした飾りで埋め尽くされている。

 荒れ果てている街の中とは正反対だ。

 だけど何故だろう。妙に静かだな。

 

「此処から先は二手に別れます。私とお爺ちゃん」

「僕と翠月、そして或瀬のチームだな」

 

 一先ず、俺とアカリが上の階層。

 逆に人数を多く裂いた黒鳥さんチームは下の階層を攻める事になった。

 それぞれ、コンバット慣れしているアカリとジョルネード、罠を探知でき防御力に長けたサッヴァークを連れたブランが居るので、施設内でも問題なく探索できる。

 

「白銀先輩っ……私、頑張りますから! しづを……頼みます!」

 

 そう言った翠月さんの声は震えていた。

 でも、目は完全に本気だった。多分、こうなると連れ帰ろうと思っても連れ帰れない。

 俺達は2階へ。

 一方の黒鳥さんたちは1階の部屋を攻めることになったのだった。

 

 

 

 ※※※

 

 

 

「嫌に静かだな……」

 

 黒鳥達は部屋を一つ一つ回っていた。

 だが、奇妙なことにビル内部を守っているであろう私兵達の姿が無い。

 最早察知されても問題はないので、出てくれば守護獣で応戦することが出来る。

 しかし──奇妙な不気味さを黒鳥は感じていた。

 

「此処に来るまでにエレベーターが3つ。いずれも作動していないな……」

「音が全くしないデス。多分、意図的に止めたんじゃないデショウか?」

「……うぅ」

 

 くいっ、と袖を引っ張られる感覚を覚えて黒鳥は振り返る。

 大きな瞳に涙を貯めた翠月が袖を握っていた。

 

「……ごめんなさい、師匠……」

「離れるなよ」

「はい……」

「怖いのはまだ大丈夫デス。怖い事を怖くないって見栄を張るのが一番怖いデスから」

「……私、足手纏いにならないように頑張ります」

 

 そう言った翠月の頭を黒鳥はポンポン、と撫でる。

 子ども扱いしないで、と翠月は彼に目で訴えるが──黒鳥の顔は相変わらず険しかった。

 

「無理はしないようにな。まずそうになったら、真っ先に逃げろ」

「逃げるなんて……」

「前にも言っただろう。生存こそが勝利に直結するのだ。生きてこその物種だ」

「つまり、黒鳥サンはミヅキの事、大切に思ってるってことデス!」

「変な言い方をするんじゃない」

 

 とはいえ、押しかけ捜査はあまり順調とは言えなかった。

 ……その後も何か所か部屋を調べたがいずれももぬけの殻。

 オウ禍武斗の力で無理矢理鍵を壊し、扉の中に入っていくが何もない。

 それどころか警備兵すら誰も入って来ない。

 ──魔術師(マジシャン)の気配は薄っすらとだが感じる。上の階か?

 

「ねえ、この壁から妙な音が聞こえるデスよ! 空洞になってるデス」

「何?」

 

 先に進んでいたブランが柱に耳をくっつけて言った。指でコンコン弾くと音が違うのだと言う。

 そこは通路の突き当たり。

 何もないただの壁だと思っていたが──中が空洞となると話は変わって来る。

 

「他にも通路の突き当たりの壁はあった……そこだけが違うのか?」

「ハイ!」

『どうもたまに生命反応が通過するのう……』

 

 ──生命反応?

 黒鳥は少し思案した。

 そして一つの仮説を探り当てる。

 

「何かあるんでしょうか、師匠」

「よし、或瀬。そこを動くな。僕もそっちに向か──」

 

 黒鳥がそう言いかけた時だった。

 ブランの足元に──黒い手が伸びた。

 彼女はそれに気付いていない。

 サッヴァークも反応出来ていない。

 黒鳥は慌てて一歩踏み出した──

 

 

 

「オウ禍武斗!!」

 

 

 

 その時。 

 オウ禍武斗の拳がマッハで黒鳥の頬を掠めた。

 それはブランの足元に突き刺さり──そして何かを廊下から引きずり出した。

 

「シュー……ジュツツツ……やってくれたネェ……私の手がペシャンコじゃあないかネ……」

 

 廊下から引きずり出たのは──大男。

 しかも、背中から腕を更に4本生やした異形だった。

 手のうちの一つは完全に握りつぶされて血が噴き出していたが、痛覚は無いのかケラケラ男は笑ってみせた。

 一瞬クリーチャーを疑った黒鳥だったが、すぐにそうではないと悟る。 

 人間だ。しかも、エリアフォースカード使いだ。

 

「でかした翠月──」

「キャアアア!?」

 

 黒鳥は振り向くと目を見開いた。

 悲鳴。そして、翠月の身体は浮き上がっている。

 そして、その胴体は巨大な何かに絡め取られているようだった。

 

「翠月ーッ!?」

「ご、ごめんなさい、師匠……!」

『主ッ!?』

 

 オウ禍武斗が組み掛かろうとする。

 しかし、大男は手で制した。

 

「おっと、動くなよ虫ケラ。動いたらお前の主人はバクリ、だヨォ。上手くいけば、そこの黒鳥レンと小娘の身体、両方頂けるチャンス、逃しはしないからネェ」

「き、貴様……! 人の身体を何だと……!」

「これで5:5ダヨォ……生き残りたいなら、勝ってみせな、侵入者ドモォ」

 

 ブランが鹿追帽子を深く被った。エリアフォースカードを掲げ、大男と相対する。

 一方の黒鳥も化物と向かい合った。

 距離的に、大男はブランに任せるしかない。

 

「黒鳥サンはミヅキを!」

「ああ、頼むッ……!」

「サア、天才外科医・ドクター・オペラの手術の時間だヨォ!!」

 

 その声と共にエリアフォースカードの音声が廊下に木霊する。

 

 

 

<Wild……DrawⅩⅢ……DEATH!! HYAHAHAHAHAHAHAHAHA!!>

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