学園デュエル・マスターズ WildCards【完結】   作:タク@DMP

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GR51話:禁断の永久機関──災厄到来

 無重力、原始、そして不死。

 それは三つの力を併せ持った怪物だ。

 今、こいつマナと墓地から飛んで来たよな──気の所為だよな!?

 

「《デッドダムド》は手札、マナ、墓地、そしてバトルゾーンの何処からでも侵略できるでおじゃるよ! わらわは、墓地から1枚、マナから1枚を侵略したでおじゃる!」

「S級侵略全部混ぜっこぜじゃねえか! どっから侵略できるってことは、除去してもまた飛んで来るってことか!?」

「《デッドダムド》が場に出た時の能力で、相手のクリーチャーを破壊、手札に戻す、マナ送り、どれを選べるでおじゃる。《デッドダムド》を2回出したから、2回破壊効果を使うでおじゃる!」

 

 ふわり、と宙に浮かび上がった《デッドダムド》。

 そこから一気に急降下し──《ウォッシャ幾三》と《全能ゼンノー》を引きずりまわし、破砕してしまう。

 

「……そしてぇ、《ギャブル》の効果で相手の山札の上から6枚を表向きにして、その中から呪文を唱えるでおじゃる!」

「なぁっ!?」

「さあて、どーれーにーしーよーうーかーなぁぁぁん」

 

 表向きになった6枚。

 その中から呪文が放たれる。

 

「呪文、《マン・オブ・すて~る》でGR召喚でおじゃる! 効果で《カット丙-二式》を出して、手札を見てカードを捨てさせるでおじゃる!」

「しまっ──」

「おやぁ? 何だかよく分からないカードがあるでおじゃるなあ。《ジョット・ガン・ジョラゴン》? 面倒な予感しかしないから捨てさせるでおじゃる!」

 

 しまった。

 これで次の手は完全に閉ざされた。

 よりによって、此処で《ジョラゴン》を失うなんて──!

 

「そして水のコマンド3体が場に出たので封印が全て外れるでおじゃる!」

 

 巨大な箱型コンピューターに鍵が差し込まれ、ねじ込まれた。

 箱はバラバラに砕け散り──それらがパーツとなって組み替えられていく。

 

 

 

「《禁断機関VV-8》──禁断機動!」

 

 

 

 目覚めた機械の怪物は、まるで生き物のように叫びを上げた。

 両腕の先に付いていた車輪は巨大な手と化し、口が裂けていく。

 機械から生き物へ、生まれ変わっているようだ。

 

「エクストラターンを、取られた……!」

「もう1回、あいつのターンが来る……!」

「《デッドダムド》でシールドをW・ブレイクでおじゃる!」

 

 砕かれるシールド。

 マズい。このままだと──防ぎきれない!

 《VV-8》はパワー12345のT・ブレイカー。

 次のターンに俺のシールドを全て割るのは不可能じゃない!

 

「わらわのターン! 念には念を押すでおじゃるよ! 5マナで《Dの博才 サイバー・ダイスベガス》を展開! そして、《VV-8》でシールドをT・ブレイクでおじゃる!」

 

 巨大な手が俺のシールドに触れた途端、一気に黄色のラインが迸り、全て砕いてしまった。

 思わず俺は紫月を抱きしめて破片から彼女を庇う。

 

「っ……シールドゼロ……!」

「白銀先輩……!」

「……紫月。そんな不安な顔すんなよ」

「不安だなんて」

 

 彼女は俺の袖を握り締めると言った。

 

「私は、先輩を最初から信じてます。私の事は気にせず、カードを引いてください」

「紫月……でも──」

「だって先輩は、逆境になればなるほど強い人じゃないですか。だから──負けないで」

 

 ああ、励ますつもりが──俺の方が逆に勇気づけられてしまった。

 そういうところだぜ紫月。結局、助けたつもりがいっつも俺の方が助けられてしまってる。

 ……そうだな。こんな所で、カッコ悪い所見せられねえよ!

 

「S・トリガー、呪文《りんご娘はさんにんっ娘》を唱える! 効果でツインパクトの上面、《スゴ腕プロジューサー》を場に出す!」

「はぁーっ!?」

 

 現れたのはジューサーミキサーのようなクリーチャー。

 その蓋を開けると、中からクリーチャーが更に飛び出して来る。

 

「《ジューサー》が場に出た時、GR召喚する。来るのは、《パッパラパーリ騎士》だ! マナに《ジョラゴン》を置く!」

「残念だったでおじゃるなぁーっ! 《デッドダムド》で攻撃するとき、墓地から《デッドダムド》に再侵略するでおじゃる! さっき封印から落ちていて良かったでおじゃる! ふーしゅるるるるるー」

 

 ふわふわと浮かび上がる《ジューサー》。

 それを巨大な鉄拳が撃ち砕いてしまった。 

 これでブロッカーは居ない。ダイレクトアタックが通ってしまう──

 

「《ジューサー》の効果発動! 場を離れた時もGR召喚だ! 《バツトラの父》、来い!」

「っ!?」

 

 すんでの所でその攻撃は《バツトラ》によって防がれた。

 デッドダムドの拳は通らない。

 何とか──防げた。

 

「っ……マジで紙一重じゃねえか……!」

「チィッ、ターンエンドでおじゃる。折角エクストラターンを取ったのに勝てないなんて……何処までもしぶといなァ、テメェはァッ!! さっさとそいつを寄越せ!」

「それはこっちの科白だ! 紫月はお前には渡さねえ。どんな目的に使うのか知らねえけど」

「目的ィ!? 違うなぁーっ! そんな上玉、抱かねえと気が済まねえんだよ! ふーしゅるるるるるー、わらわはぁーっ、欲しいと思ったものはこの手で手に入れなきゃ気が済まねえんでおじゃるよぉーっ!!」

「……抱く?」

「そうでおじゃる! 金も欲しい! 名誉も欲しい! エネルギーもエリアフォースカードも全部欲しい! でも──勿論、カワイイ女の子も欲しいでおじゃる!」

 

 ぶくぶく、と音を立ててバックーニョの腹に顔が浮かび上がる。

 紫月が蒼褪めて俺に縋って来た。

 待てよ。なんだアレ──全部、女の顔じゃねえか。

 

「……何度見ても、気色が悪いですね」

「わらわのものにならないならぁぁぁー、こうやってぇぇぇ、食って一生一緒になるでおじゃるよぉ!! ふーしゅるるるるるー!!」

 

 コイツ。

 こいつは本当に、救いようがない。

 欲しいモノのためなら、手段を択ばないどころじゃない。

 手に入らないものを無理矢理食って貪るケダモノじゃねえか。

 

 

 

「うちの部員に、仲間に手ェ出すな、外道ッ!!」

 

 

 

 6枚のマナを捻り出す。

 必要悪とか、そんなレベルじゃない。

 こいつは怪物だ。

 欲望のままに全て食いつくす怪物だ。

 

「《ソーナンデス》召喚! マッハファイターだ、《デッドダムド》を殴れ!」

「ふしゅっ!?」

「紫月の相棒も、エリアフォースカードも返して貰うぞ。人のモンに勝手に手ェ出すな──(ジョーカーズ)チェンジ!」

 

 《ソーナンデス》がマナゾーンに居るマスター・ドラゴンと入れ替わる。

 来た。ここからが──本番だ!

 

「《ジョット・ガン・ジョラゴン》、装填完了!」

「おのれ、折角手札から落としたのに、もう沸いて出てきたでおじゃるかぁぁぁ!」

「《ソーナンデス》の効果発動! 手札からカードを捨てれば、マナからカードを回収出来る。効果で《ジョリー・ザ・ジョルネード》を捨てて《キング・ザ・スロットン7》を回収!」

 

 そして、ジョーカーズを手札から捨てたから──ジョラゴン・ビッグ1が発動する!

 

「《ジョルネード》の場に出た時の効果で3回GR召喚だ!」

<《ジョルネード》、ローディング>

 

 飛び出す3体のGRクリーチャー。

 《ゴッド・ガヨンダム》、《The・ジョラゴン・ガンマスター》、《マシンガントーク》だ。

 

「《ガヨンダム》の効果で《スロットン》を捨てて、《スロットン》の効果発動! 3枚捲って、その中から《オラマッハ・ザ・ジョニー》をバトルゾーンに出す!」

「ぐ、ぐぬぬっ……!!」

 

 現れたのは自然の《ジョニー》。

 これで追撃の準備も整った。

 最早負ける気はしない。

 

「更に《ジョラゴン》は《マシンガントーク》の効果でアンタップだ! 《デッドダムド》をバトルで破壊!」

 

 天井から降り注ぐ無数の弾丸。

 その前では重力を操る無敵の侵略者も逃れられはしない。

 そのまま蜂の巣となり、粉砕されてしまう。

 

「更に、《ジョラゴン》で攻撃──するとき、カードを1枚引いて1枚捨てる!」

「ま、まさか、今度は何を──」

「捨てるのは《アイアン・マンハッタン》! 相手のシールドを2枚選んで、残りを全てブレイクだ!」

 

 砕け散るバックーニョのシールド。

 しかし、悪夢はまだ終わらない。  

 そこからS・トリガーが放たれる。

 

「S・トリガー、《テック団の波壊Go》! 効果で《オラマッハ》を破壊──」

「させねえよ! 手札から《キング・ザ・スロットン》を捨てて、呪文を打ち消す!」

 

 撃ち放たれた弾丸は、一瞬で降りかかる波飛沫さえも打ち消してしまった。

 更に、《ジョラゴン》が居るのでコイツの効果は更に連鎖する!

 

「《スロットン》の効果で、《メイプル超もみ人》を場に出す! そして、《ジョラゴン》で残るシールドもブレイクだ!」

「ぐぬっ……! 《ダイスベガス》のDスイッチ発動でおじゃる!」

 

 一気に反転する賭博場のフィールド。

 それにより、バックーニョの手札から呪文が放たれた。

 

「《超次元ガロウズ・ホール》! 《オラマッハ・ザ・ジョニー》をバウンスするでおじゃる!」

「それは《りんご娘はさんにんっ娘》を捨てて防ぐ!」

「ぐ、ぐ、ぐぬう、な、何でわらわの防御札がぁぁぁ通らねえんだよォォォーッ!!」

 

 残るシールドも全て吹き飛ばす。

 これで終わりかと思われたが──

 

「S・トリガー、《波壊Go!》で《オラマッハ・ザ・ジョニー》を破壊でおじゃる!」

「っ!」

 

 もう、コスト7のカードは無い。

 だから止められなかった。

 弾切れだ。だけど──

 

「《The・ジョラゴン・ガンマスター》は場とマナにジョーカーズが5枚以上あれば、場に出てすぐ攻撃出来る!」

「っ……!」

 

 まだ、銃はもう一本残ってんだよ!

 降りかかる弾丸が、バックーニョを撃ち貫いた──!

 

 

 

「《The・ジョラゴン・ガンマスター》でダイレクトアタック!!」

 

 

 

 ※※※

 

 

 

「こ、んなぁ、馬鹿なことがぁぁぁ……」

 

 

 

 地面に這いつくばるバックーニョは、最早動ける様子ではない。

 今回は相手が魔導司なのもあって手加減は無しだ。

 それでも正直、まだ動けるのは恐ろしい生命力としか言いようがないが。

 

「……あっ、魔術師(マジシャン)のカード……」

 

 バックーニョのデッキケースから魔術師(マジシャン)が飛び出して紫月の手元に戻った。

 ずっとVV-8の中に内臓されていたのだろう。彼を倒したことでこのカードも解放されたんだな。

 

「……あれ?」

 

 その時だった。

 徐々に魔術師(マジシャン)のカードの色が失われていく。

 そして、また白紙に戻ってしまった。

 紫月が不安そうな顔をして、ある水槽を見やったその時。

 

 

 

「ウウウウ……ギャアアアアアアアアアーッ!!」

 

 

 

 硝子の割れる音。

 中からはいずり出て来る鮫の魚人。

 その目に最早理性は宿っていなかった。

 

「おい、待てよ。これってまさか」

「はい。シャークウガです……!」

 

 全身が機械に改造されたシャークウガは、バックーニョに近付いていく。

 恐ろしい魔力を放っており、こちらからは近付けない。

 

「ヒッ、ま、待て、来るな、来るなァァァァァーッ!? 何で、何で言う事を聞かないんだぁぁぁーっ!?」

 

 刹那。

 閃光がその場に迸る。

 俺達は目を瞑った。

 次の瞬間、絶叫が響き渡る。

 そして、それが聞こえなくなった時、ようやく目を開けた。

 

「……嘘だろ」

 

 ──その場に残っていたのはシャークウガと吊るされた男(ハングドマン)と思しきカード。

 

「ヒッ──」

 

 思わず紫月の目を手で覆う。

 その傍に横たわっていたのは黒く焦げた骨だった。

 あれだけ脂肪に覆われてたのに、焼かれるとたったのアレだけになっちまうのか。

 って感心してる場合じゃない。

 シャークウガに、何が起こってるんだ!?

 

「どうなってんだよチョートッQ!?」

「エリアフォースカードから完全に切り離されて改造されたでありますな……! シャークウガの中には今、別のカードが埋め込まれているでありますよ!」

「それってもしかして、吊るされた男(ハングドマン)死神(デス)とも違う、新しく持ち込まれたカードって奴か!?」

 

 そ、そんな──

 

「シャークウガ! 聞こえないんですか! 私です! 私が分からないんですか!」

「ウウウウウ……? アアアア……!!」

 

 次の瞬間、シャークウガが呻き声を上げて手を掲げる。

 その場に熱閃が幾つも放たれ、計器を破壊していく。

 駄目だ紫月。

 あいつ、敵と味方の区別も付いていない!

 

「ウウウアアアアアアアアーッ!!」

 

 そのまま彼はどろり、と液状になると天井に向かって姿を消してしまった。

 ど、何処へ向かおうとしてるんだあいつ……!?

 

「お爺ちゃん、逃げて! 今の攻撃で此処、崩れます!」

「シャークウガ……シャークウガが……!」

「紫月! 絶対に俺があいつを助ける! 今は逃げるんだ!」

「っ……!」

 

 俺は彼女の手を強く引っ張る。

 そして、ダンガンテイオーに飛び乗り──再び地上へ戻ることに何とか成功したのだった。

 しかし。シャークウガの居場所は掴めないままだ。

 そしてこの時は気付かなかった。

 何時も通りの発破のつもりで掛けたこの言葉が、更に不測の事態を起こす呪いになるだなんて──

 

 

 

 ※※※

 

 

 

 ──ロストシティ第三階層。

 花梨と火廣金は一旦落ち合っていた。

 一通り街をうろついているごろつき達は片付け、残るは紫月を救出しに行った耀達の帰還を待つのみだ。

 

「……心配だね、火廣金。紫月ちゃん、助かれば良いけど」

「……君は部長の方を心配しているんじゃないか?」

「はぁ? どういう意味」

「事ある毎に君は部長を気に掛けているだろう。今回もそうじゃないか?」

「ひっどい! 紫月ちゃんの事だって心配だよ!」

 

 どうだか、と火廣金は返す。

 かなり意地悪な問いかけだったには違いない。

 彼女が真意に気付いているかはさておき。

 そして──そんな質問をした自分に、また嫌悪感を感じてしまうのだった。

 

(……何やってるんだ俺は)

「ねえ、火廣金。アレなんだろ?」

 

 指差された方を向いた火廣金は目を見開いた。

 それは、確かに高速でこちらへ向かってくる。

 耀達がダンガンテイオーに乗って帰って来たのだろうか?

 いや──違う。 

 

 

 

「クリーチャー──!?」

 

 

 

 それは黒い太陽のようだった。

 そして今度は、黒い雨が街に降り注ぐ。

 次々にそれは建物を地面を撃ち抜き、穿ち、そして破壊していく。

 黒い大玉を掲げているのは──鮫の魚人だ。

 

「なっ……!?」

「きゃあああ!?」

 

 当然、火廣金も花梨もタダでは済まない。

 ”轟轟轟”ブランドを繰り出して応戦しようとした火廣金だったが──それもすぐ掻き消されてしまう。

 これは──エネルギー弾だ。

 細く小いが、闇のエネルギーを秘めた銃弾だ。 

 建物さえも破壊する貫通力と殺傷力で、容赦なく彼の身体に穴を開けていく──

 

 

 

 ──しばらくしただろうか。

 

 

 

 辛うじて障壁を駆使し、致命傷を逃れた火廣金だったが──

 

 

 

「っ……刀堂花梨!!」

 

 

 

 ──目の前には、花梨が赤い水たまりの上に横たわっていた。

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