学園デュエル・マスターズ WildCards【完結】   作:タク@DMP

180 / 316
GR53話:弾丸VS戦車再び──激突する信念

 ※※※

 

 

 

「シャークウガは地下街を突破。現在は地上で暴れ回っているようです」

「廃墟でひたすら喚くようにか……虚しいな」

「シャークウガが何時ロストシティに戻って来るか分かりません。魔力を放出しきったら、今度は魔力源の多いこちらに戻ってくるはずです」

「魔力源? エリアフォースカードか」

「そうです」

「……だがそれはチャンスだ。叩くなら、奴が魔力を放出しきったタイミングか」

 

 管制室でアカリはシャークウガの行方を解説する。

 死傷者、合計1000人を突破。

 彼は上へ上へと暴れながら階層を突き破り、とうとう地上へ飛び出した。

 それは有り余った魔力を放出するための行動ではないか、とトリスは分析する。

 

「最早本人もどうして暴れているのか自分でも分かっていないだろうな」

「団長。火廣金さんの容態は?」

「流石再生力は強い。身体中穴だらけだが、もう塞がりつつある。ヒイロのやつならきっと、誰に止められても、あいつを終わらせに行くだろう」

「あの、団長。一つ質問して良いですか?」

「何だ」

「火廣金さんは、やはり異様に冷静さを欠いているように見えます。本当に花梨さんが負傷したからなんでしょうか?」

「……そうだなあ。あいつもやっぱり苦しんでんだろ。幾つもの矛盾に」

「……矛盾、ですか」

「無理も無いだろうがな。ああも人間の中で揉まれれば色々あるだろ。それを乗り越えるのはアイツ次第だけどな」

 

 

 

 

 ※※※

 

 

 

 どうすれば良いのか分からなかった。

 ぼかされていた紫月の行方は、俺が手に掛けたというものだった。

 ワイルドカードの氾濫は、俺が想像していた以上に苛烈なものであることは間違いない。

 だけど、大事な仲間がクリーチャーになった時……俺はそいつを手に掛けられるだろうか?

 きっと出来ない。

 花梨の事も心配だ。怪我の様子は恐らく深刻に違いないだろう。

 正直、こっちだけでも気が重たい。

 あいつは強いから、きっと大丈夫とは思いたいけど……。

 問題は火廣金だ。きっと、花梨を助けられなかったから、かなり躍起になってる。責任感が元々強いから、それで自分を追い込んでるんだろう。人の事は大分言えないけど。

 それでも……シャークウガを殺すのには賛成できない。あいつだって、俺達の仲間なんだ。出来れば助けたいって思うだろ。

 

「あーくそ、俺って本当ダメだな……」

 

 皆が皆が大事なのは分かってる。

 それなのに……脳裏にはずっと、紫月の話が焼き付いていた。

 「皇帝(エンペラー)とチョートッQに魔力を充填するから、その間にデッキを見直せ」とトリスに促された俺は、管制室を出た矢先──紫月とばったり出会った。

 

「……もしかして、聞いてた?」

「……はい。あのおばあちゃんの話は全部」

「なあ紫月。そのおばあちゃんさ、トリスなんだぜ。60年後の」

「……やっぱり時越えとは理解し難いですね……でも、何故トリスがこんな所に?」

「レジスタンスの団長やってるんだと」

 

 聞かれてしまっていたか。

 俺は頭を抱える。 

 彼女にどんな顔をすれば良いのか分からない。

 

「先輩。部屋、来てください。立ち話も疲れるでしょう?」

「……」

 

 ぎゅっ、と彼女は俺の袖を掴む。

 とても不安そうだが、無理して彼女は笑ってみせているようだった。

 

 

 

 

 ※※※

 

 

 

「こうして話すのは久々ですね。エアロマギアの中以来でしょうか」

 

 レジスタンス拠点の空き部屋に通された俺はベッドに座る。

 ……何だか落ち着かない気分だ。

 一先ず、今まで俺が経験してきたこと。

 ワイルドカードの氾濫や時間Gメンの事、そしてお前を追ってこの時代にやってきたことを話していたけど……調子がいつものようにいかない。

 シャークウガの事が気掛かりってのもある。

 だけどそれ以上に──彼女の隣であることも安心感が勝っていたのだろう。

 敵意。悪意。憎悪。

 そんなものを向けられることが多かったからだろうか。

 いや、それだけじゃないんだ。きっと。

 

「……大変でしたね、先輩」

「お前もな。一人は辛かっただろ?」

「先輩が助けに来ると思ってたから、何てことありませんでしたよ」

 

 またそうやって見栄を張る。

 

「それより、先輩は兼ねてより変なのに絡まれると思っていましたが……もう何というんでしょう……」

 

 滅茶苦茶だよな、こんなの。

 今度は未来や過去を行ったり来たりなんだからな。

 だけどその甲斐あってお前をもう一度見つけられたんだ。

 

「でも、まだ何も終わっちゃいない。シャークウガを助けなきゃいけないからな」

「……シャークウガ、大丈夫でしょうか。きっと……暴れていて辛いでしょうし、皆からは目の仇にされていると思います」

「誰が敵になっても、俺は絶対にあいつを見捨てたりなんかしない。ぶん殴ってでも正気に戻す」

 

 確証は無かった。

 それでも、俺が否定してしまえば──全部駄目になってしまうような気がした。

 シャークウガを助けるって言いだしたのは俺なんだ。俺が取り下げる事なんて絶対あっちゃいけないんだ。

 

「火廣金先輩が言ってました。今回は君の味方になれない。彼は自分が責任もって処理する、って」

「あいつ……!」

 

 怒りが湧いてくる。

 こんな時に、どうして紫月を不安にするようなこと言うんだよ……!

 

「でも、あの人も考えも分かるんです。きっと、刀堂先輩が大怪我して……街の人も傷つけて……辛かったんだと思います」

「お前はそれで良いのかよ?」

「……」

「それでシャークウガが殺されて良い訳がねぇだろ。お前はどうしたいんだ」

「……私だってシャークウガを助けたいです。でも、戦えないんです。エリアフォースカードから魔力を感じないんです」

 

 彼女はエリアフォースカードを手に取る。

 灰化したそれは使用不可能。改造というイレギュラーな要因で守護獣が暴走しているためらしい。

 

「お前は何も気を揉まなくて良い。俺がどうにかする」

「良くないです!」

 

 彼女は声を荒げた。

 そして、涙が滲む目で言った。

 

「シャークウガは、私の相棒ですから」

「……紫月」

「自分の無力さで、自分の大事な誰かの命を誰かに左右させる……こんな虚しい事がありますか。今の私は……何も出来ない。そればかりか、白銀先輩に辛い思いばかりさせてるんです」

 

 違うんだ紫月。

 俺は……お前にそんな顔をさせるために助けに来たんじゃないんだ。

 

「エリアフォースカードが暴走して、守護獣が暴走して、肝心の私は何も出来ない。これじゃあ、師匠の時と同じです。私は──シャークウガを手放したくないのに」

「紫月。お前は何も出来ないなんてことない。お前が此処にいる……それだけで俺の力になるんだ」

「……私も同じです。白銀先輩がいることが、私の希望なんです。でも……それに縋り続けてる自分が情けないんです」

「俺も一緒だよ。この時代の俺は、クリーチャーになったお前を助けられなかった。俺もそうなるんじゃないかと思うと怖いんだ」

 

 そうだ。

 俺はそれが一番怖い。

 脇目も振らずに突き進んでいたら、何時の間にか大事なものを取りこぼしてしまわないか不安なんだ。

 

「そして、戦えなくなるくらい……こっちの俺も、お前の事が大事だったんだろうな」

「ええ、分かってます。こんなに優しい先輩は他に居ませんから」

 

 彼女は俺の胸に身体を預けてきた。

 

「……でも、仮に私がそうなった時は……どうしようもなくなったら、介錯は白銀先輩が良いです。私が言うんですから、間違いないですよ」

「俺はそうならないように頑張るだけだ」

「……そうですよね。でも……きっと、そうなっても良いやって思えるんです」

「紫月……」

「相手が白銀先輩だからですよ。他の人にこんな事言いません」

「俺も逆の立場なら、お前が良いかなあ。火廣金も、さっさと終わらせてくれそうだけど……お前だったら、痛くしないでくれそうだし。ループデッキとかで」

「人のデッキを何だと思ってるんですか」

 

 呆れたような溜息が返って来る。

 

「でも絶対、そうなるのは嫌です。だから、いっそのこと……ずっと一緒に居れば、どっちかがクリーチャーになるってことは無いんじゃないか、なーんて」

 

 言った後──紫月は口を押えた。

 そして、顔を真っ赤にして俺の胸に顔を埋める。

 まるで小動物みたいだ。

 それが、とても愛おしくて──手放したくなくて。

 俺は、思わず艶のある黒髪に手をかざす。

 

「ん……何するんですか」

「嫌だったか?」

「……恥ずかしいだけです。でも、女の子がなでなでくらいで機嫌を直すと思ったら大間違いです」

 

 今のはお前の自爆だろーが、とは流石に口には出さなかった。

 

「悪くない気分ですけど」

 

 俺も……安心できる。 

 お前と一緒に居るこの時間が──愛おしいんだ。

 

「先輩。夢なんて、所詮夢です。それに……歴史も少し変わってるんでしょう? だとしたら、今いる白銀先輩はきっと──他の何でもない私の知ってる白銀先輩です」

「本当にそうなら良いけどな。歴史がもし決まってるものなら……変えようがない事だってあるんじゃないかって思っちまうんだ」

「人生はお先真っ白。だから面白いって言ったのは先輩じゃないですか」

「……」

「誰かに生き方を決められるなんて、先輩らしくないです」

 

 そうか。

 そうだったな。

 覚えている。ちゃんと覚えているさ。

 あの時の俺は未来に進む夢が何にも決まって無くって、これからどうするのかフワフワだった。

 きっとこれからも、人生何が起こるか分からない。

 この時代の俺がどうだったとしても、夢の中の俺がどうだったとしても、今此処にいる俺には関係の無い事だ。

 

「他のどの白銀先輩でもありません。私が一緒に居たいのは、今目の前にいる白銀先輩だけです。先輩一人でも私一人でも、きっと無理ですから」

「……そうだな」

 

 夢なんて関係ない。

 ここまでの歴史なんて関係ない。

 過去は変えられないけど、俺達のこれからなら幾らでも変えられる。

 

「なあ、紫月。俺、怖かったんだ……自分に何の取り得も無いって知ってるから、部長の役職もエリアフォースカードの事も急に転がり込んで来たことだからどうしようって思う事ばっかりだったんだ」

 

 それは──今回はたまたまだ、次も上手く行くとは限らない。

 空白の未来への畏れだ。

 

「失敗したらどうしようって思ったことなんて何回だってある。全部辞めたいって思った事だってある。だけどさ、きっと──大事な誰かを想う気持ちの裏返しだったのかもな」

「……私もその中の一人、ですか?」

 

 ……。

 俺の中では、ちょっと違うかもしれない。

 仲間。友達。

 確かに性別種族問わずこの1年で沢山増えた。

 だけど──こんなに誰かを強く意識したのは初めてなんだ。

 

「なあ紫月。俺達、似た者同士だよな」

「……そうでしょうか?」

「ああ。互いに譲れない守りたい人がいる。その為に戦ってるのに、何時の間にか敵だらけだ」

「……奇遇ですね。私もそんな事ばかりです。私もこんな性格だからか、敵を作ってばっかりでしたから」

「それと──根っからのデュエマ馬鹿ってところ」

「……私達、両方共……デュエマが専門ですからね」

 

 そうだ。やっぱり俺達は似た者同士なんだろう。

 最初は運命の出会いと言えるほど劇的なものではなかったかもしれない。

 だけど──出会うべくして出会ったのだろう、きっと。

 そう思わせる程に俺達は似ている。

 

「俺達二人だったら、きっと……この逆境も乗り越えられる気がするんだ。一人じゃ無理でも、カードみたいに重ね合わせればきっと強くなれるって俺は思ってる。きっとこれは理屈じゃないんだよ」

 

 だから、後ろに居るのが彼女ならばきっと──何も恐れる事は無いのだろう。

 

 

 

「紫月。俺を信じて着いてきてくれるか?」

「馬鹿ですね。最初っからそのつもりですよ」

 

 

 

 

 ※※※

 

 

 

 ──シャークウガが地上で魔力を放出して今も暴れているのだという。

 だけど、もうすぐで全ての力を使い果たす。そして、魔力を補充する為にロストシティへ降りて来るというのがトリス達の予想だ。

 でもそんな事はさせない。

 シャークウガにこれ以上、望まない破壊はさせない!

 俺達はロストシティの階層を駆けあがり、そして今まさにエレベーターや梯子を駆使して地上を目指していた。

 あいつが地下へ再び現れる前に食い止めるんだ。

 

皇帝(エンペラー)にはエリアフォースカードに干渉する力がある。守護獣がエリアフォースカードの一部っていうなら……逆説的に守護獣にも干渉出来るはずだ」

「我もその仮説に賭けるしかないと踏んだであります。現に先程も、エリアフォースカードの感情だけではなく紫月殿の声、そしてシャークウガの声が聞こえてきたでありますからな」

「そこを魔術師(マジシャン)のカードで捕縛する、ですか」

「ああ、どの道お前は必要なんだよ!」

 

 俺の後ろを走る彼女は街を見回す。

 そして感嘆の息を漏らした。

 

「この街は、こんな風になっていたのですね」

 

 天井へ伸びる幾つものビル。

 上の階層へ続く梯子を上っていくと、猶更それが分かる。

 とても不安定で、歪に伸びた形の建物は無惨に無数の穴が開いていた。

 それでも──そこには人々の生活と安息が確かに存在する。

 それをこれ以上かき乱す事は出来ない。

 

「シャークウガを止めないと……此処に住んでいる人達も」

「分かってるだろ。両方助けるんだ」

 

 後は地上へ続く隠しエレベーターを通るだけ。

 そこに駆け込もうとした矢先──無数の炎の弾が地面を穿った。

 

「っ……これって!」

 

 シャークウガではない。

 巨大な重機を背負った猿人が俺達の前に立ち塞がる。

 ダンガンテイオーも実体化し、抑え掛かるが──あまりの馬力に歯が立たないのだろう。

 そのまま投げ飛ばされてしまった。

 

「っ……”魔神轟怒”ブランド……火廣金か!」

「やはりのこのことやってきたな。部長──そして暗野紫月」

 

 火廣金は剥き出しの敵意をもって俺達の前に現れた。

 こいつは──自分から嫌われ役を買って出てるんだ。

 それだけの覚悟を感じる。

 

「何でこんな事するんだよ! 俺達で協力すれば、シャークウガを助けられるかもしれないだろ!」

 

 ブランドの肩に飛び乗っている魔導司はチッチッと指を振り、否定の意を示す。

 

「魔導司書として──人間の世界の秩序を乱すクリーチャーは処分する。君達こそ邪魔をするな!」

「火廣金先輩。それでもシャークウガは私の相棒です。簡単に殺させません」

「その甘さが破滅を招く。魔導司は……憎まれ役を買ってでも、確実に全員を救える道を貫かねばならない!」

 

 火廣金は本気だ。

 どうやってでも俺を止めるつもりなんだ。

 シャークウガが魔力を使い果たすチャンスが訪れるまで、猶予は後少ししかない。

 

「……一つ問おう、部長。何故戦えない暗野紫月を連れて来た。戦略的意味等無いに等しいだろう」

「あるさ! 必要だと判断したから連れて来た!」

「犠牲者をまた一人、追加で増やすつもりか? 君の過ちで!」

「そうならないようにするのが……部長の役目だ!」

「君一人だけで何が出来る」

「一人じゃねえよ! 紫月が、チョートッQが付いている!」

 

 投げ飛ばされたダンガンテイオーの身体が瞬時に組み変わる。

 鋼の獣・ダンガスティックBとなって、”魔神轟怒”の重機を噛み砕いた。

 

「……殺してでも止めるぞ、()()耀()

 

 火廣金の瞳が真っ赤に燃え盛る。

 言葉の交わし合いは最早無意味。

 

「情け無用……戦闘開始!」

<戦闘術式Ⅷ──戦車(チャリオッツ)!>

 

 デュエマ部同士なら──これで決着を付けるしかない。

 何時ぶりかの火廣金との本気のデュエルだ。

 

 

 

「行くぞ、皇帝(エンペラー)!!」

<Wild……DrawⅣ……EMPEROR!!>

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。