学園デュエル・マスターズ WildCards【完結】   作:タク@DMP

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GR61話:奪還作戦──反撃開始

 サイボーグに覆われた体。

 怪しく輝く瞳。

 不敵に笑みを浮かべる口。

 しかし──姿を変えようとも、深海の覇王であることは変わりない。

 刻まれるはⅠ。無限の可能性を秘めた魔術師の数字。

 大胆に、そして豪快に。

 世界を新しく塗り替えるべく、戦場へ降り立った。

 

「成程な──サイボーグになったおかげで、今の俺様はムートピアであり、そしてサイバー・コマンド! 《トワイライトΣ》の効果で出せるってわけか!」

「あの教皇には感謝してもしきれませんね。これを見越していたなんて──では、いきますよ!」

「おうよ!」

 

 杖を振り回すシャークウガ。

 その先端から水泡が浮かび上がる。

 

「《シャークウガ》の能力発動! 登場時に、場にある他のカードを2枚まで選んで手札へ戻します! 《マグナム》と《トワイライト》の進化元である《パクリオ》を手札に!」

 

 バトルゾーンの《マグナム》は泡に包まれ、そのまま消えてしまった。

 更に《トワイライトΣ》の身体から《パクリオ》が抽出され、紫月の手札へ還されていく。

 

「キャハァッ……!? 自分ノ、カードヲ、戻シタァ……!?」

「《トワイライトΣ》で《バルチュリス》を攻撃! そして破壊します!」

 

 黄昏のサイバー・コマンド、《トワイライト》の放つ超電撃が《バルチュリス》を一瞬で黒焦げにしてしまった。

 これで相手の場にクリーチャーはいない。

 

「ターンエンドです」

「キャハハハハッ……タノシイ! タノシイ! 悪意ニマミレタクリーチャーヲ……ツカイコナシテルナンテ!」

「へっ、何が悪意だ! そんなもんに俺様は負けねえよ! マスターが進む道を照らす限り、俺はそれを目指して突き進む!」

「キャハハハハーッ! 《マグナム》召喚!」

 

 再び現れる《マグナム》。

 確かにどんなにバウンスをしても、またクリーチャーは戻ってきてしまう。

 このままではイタチごっこだ。

 しかし。

 

「シールドが無い今、その《マグナム》もタダのクリーチャー……守りを固めましょう。《マリン・フラワー》召喚。そして、《ジェリー・ローニン》を召喚。その効果で山札の上を見て、それがサイバーに手札に加えます」

 

 捲れたのは《スクリプト》。

 コスト8の大型サイバー・コマンドだ。

 

「そして4マナで《パクリオ》召喚! 貴方の手札を見ます!」

「キャハハハハーッ!」

 

 再び襲い掛かろうとする異形の記憶。

 しかし──それはすんでのところで防がれる。

 

「キャハァッ……!?」

「わりぃな。テメェの放つ靄は、俺様がシャットダウンした。元々この身体はテメェの悪意で作られたようなモンだからな! 克服しちまえば、こっちのもんだぜ!」

「ありがとうございます、シャークウガ!」

「いいってことよ! 奴を封じ込めるぞ!」

「《パクリオ》の効果発動! 手札を見て──《シン・ガイギンガ》をシールドゾーンへ!」

「キャ、ハハァッ……!?」

 

 封じ込められていく黒い靄の切札。

 それは、最早出す前にシールドゾーンへ埋められていく。

 

「オ、オモシロクナイ……オモシロクナイオモシロクナイッッッ!!」

「残念でしたね。現実は面白くない事も辛い事も楽しくない事も沢山あります」

 

 ──それでも──毎日が楽しいのは、先輩達が居たから。私の狭かった世界を、広い海へ連れ出してくれた人がいるから。

 

「《水晶の記憶 ゼノシャーク》召喚……! ナンデェ、ナンデ……! トオラナイ……!」

 

 攻撃しようにも攻撃も出来ない。

 《シャークウガ》はパワー6000のブロッカーだ。

 《単騎》では超えることが出来ない。

 

「私のターン。《マリン・フラワー》2体を召喚、そして《ジェリー・ローニン》を《トワイライトΣ》に進化!」

 

 浮かび上がるバトルゾーンのサイバー達。

 それが、一気に紫月の手札へ集められていく。

 

「戻すのは《シャークウガ》、《パクリオ》、《マリン・フラワー》! 合計3体を手札に戻し、《シャークウガ》、《パクリオ》、そして《スクリプト》をバトルゾーンへ!」

「ヒッ……!?」

「《シャークウガ》の効果で《マグナム》と《ゼノシャーク》を手札へ戻します。そして、《パクリオ》で《マグナム》をシールドへ封じ込めます!」

「タ、タノシクナイ、タノシクナイ……! ホントウニ、キモチガワルイ……人間……ソウヤッテ、アタシヲガンジガラメニシヨウトスル……!」

「どの口が言うのやら……《スクリプト》の効果発動。この子はかなり凄いですよ。手札に戻したクリーチャーよりもコストが小さいクリーチャーをバトルゾーンに出せるんです」

「マジ!? ってこたぁ、本当に好き勝手し放題じゃね!?」

「《シャークウガ》を手札に戻し、手札から2枚目の《パクリオ》をバトルゾーンへ!」

 

 閉じ込められているということは、それ相応の理由があるという事。

 まるで、子供のように駄々をこね、暴れ回り守護獣やエリアフォースカードを狂わせる存在。

 もしもこれが、一つになったら、と思うと紫月はゾッとした。

 

「《熱湯グレンニャー》……! 《エメラル》……! コロシテヤル……コロシテヤルゾ、人間ッッッ!!」

「このままじゃキリがねえよ! 殴って勝つのかマスター!」

「S・トリガーを持ってるカードも埋めてしまいました! 今更殴って勝つのはリスクが大きすぎます!」

「じゃあどうやって……!」

「シャークウガ、気付いた事があるんです。貴方の効果を使えばトワイライトのループは大幅に簡略化されるんです」

 

 《トワイライトΣ》の能力は、戻したサイバーの数だけ手札からサイバーを出せるという能力。

 つまり、この能力でサイバーを好きな数だけ出し入れできれば、サイバーを使ったどのようなコンボも達成できる。

 その気になれば山札のクリーチャーを全て出し切る事も出来るだろう。

 だが、そのためには《トワイライトΣ》も手札に戻して使い回さなければならない。

 

「だけど《トワイライトΣ》は当然、()()()()()()()()()()は出来ません! だから、《シャークウガ》の効果で《トワイライトΣ》()()を手札に戻す必要があるんです!」

「そうか! そんでさっきの《スクリプト》を俺に使えば、《トワイライトΣ》をもう1回場に出せるじゃねえか! ん? でも、それじゃあ《スクリプト》で俺を戻してるから1体ずつクリーチャーが減っちまうんじゃねえか!?」

「そこは既に解決済みです。問題は……ループのフィニッシャー……それがまだ引けて無いんです」

「マジかよ!?」

「《シャークウガ》、《トワイライトΣ》、《パクリオ》、《スクリプト》……これだけでは、相手の手札をシールドに封じ込めるだけです……!」

 

 手札にはそれらしきカードは見当たらない。

 もう時間が無い。

 外では耀が戦っている。

 このままでは、彼に皇帝(エンペラー)のカードを返すことが出来ない。

 しかし、黒い靄を封じ込める為にはこのデッキで勝つしかない。

 

「引くしかありません。水の本領は……ドローにありますから」

「そうだな。未来を手繰り寄せる力、それがドローだ!」

 

 マナにカードを置く。

 そして、この1枚で未来を手繰り寄せる。

 

「2マナをタップ──《マリン・フラワー》から進化です」

 

 足元の海に巨大な影が浮かび上がる。

 

 

 

「──それは揺蕩う大洋の知識。未来を手繰りなさい、《アストラル・リーフ》!」

 

 

 

 超巨大な波の怪物が姿を現す。

 バトルゾーンにはいくつもの水の手が伸び、紫月に手札を供給していく。

 登場時に3枚のカードを引くという能力は、現代に於いても最強のドローソースだ。

 ──《サイバー・G・ホーガン》、《アストラル・リーフ》……そして《サイバー》……これです!

 その知識を元に、紫月のパズルは組み上がった。

 

「いきますよ! 《アストラル・リーフ》を進化! 《トワイライトΣ》! 効果で《シャークウガ》、《パクリオ》2体、《マリン・フラワー》を手札に戻します!」

 

 大渦が巻き起こり、稲光と共に次々にサイバーが降り立った。

 

「《パクリオ》、《スクリプト》、《サイバー・I・チョイス》──そして!」

 

 浮かび上がる魔術師のアルカナ。

 それが輝き、世界を作り替える──

 

 

 

「私と共に、新たなる世界へ──《サイバー・N・ワールド》!」

 

 

 

 純白の装甲に身を包み、巨大な手を広げた電子の巨人。

 それがバトルゾーンへ現れる。

 

「イマサラァ、ナニヲスルツモリダァァァーッ!」

「これで、全ての準備は揃いました。パズルを紐解く時! 《サイバー・I・チョイス》の効果で《シャークウガ》をバトルゾーンに出します!」

「ッ!? ソイツハS・トリガージャ、ナイダロォ!?」

「いいえ。《サイバー・I・チョイス》は、S・トリガーを持つカードを1枚、コストを支払わずに使ってもよいという効果を持ちます。ツインパクトの呪文面がS・トリガーを持っていれば、それを使う事が出来るんです」

「ナァッ!?」

「おっしゃぁ! 出番ねぇかとヒヤヒヤしたぜ!」

「私が貴方を忘れる訳ないでしょう……そして《シャークウガ》の効果で《トワイライトΣ》のカードを手札に加えます! 更に《スクリプト》の効果で《シャークウガ》を手札に戻し、それよりもコストが小さい《トワイライトΣ》を《アストラル・リーフ》から進化!」

 

 こうすることで、紫月はバトルゾーンのクリーチャーの数を減らさずに、ずっと《トワイライトΣ》を出し入れすることが出来る。

 

「そして後は《I・チョイス》、《パクリオ》、《スクリプト》、《N・ワールド》の4体を手札に戻し……以下、同じ手順を無限に繰り返すことが出来ます」

「ッ……!? ナ、ナニイッテ──」

「ところで忘れてませんか?」

 

 シャークウガの力により、カードが無限に循環し続ける中、紫月はバトルゾーンと手札を行き来する2枚のカードを取り上げた。

 

「私まだ、《パクリオ》と《N・ワールド》の効果を()()()使()()()()()()()()

「デュエマじゃあ、クリーチャーが同時に出た時の処理は好きな順に解決していいんだっけか? となるとよォーッ、この無限ループが終わった後に、一気にこいつらの効果を解決しても良いんだってよォ」

 

 同時に発動した登場時効果は、使わなかったものがどんどん溜まっていく。つまり、此処までのループで紫月は《パクリオ》と《N・ワールド》の登場時効果を30回以上貯めているのだ。

 

「何、難しい事はありません。《サイバー・N・ワールド》の効果発動」

 

 その瞬間、ループは途切れた。

 そして、紫月と黒い靄の山札が手札と墓地のカードを吸い込んでしまう。

 

「手札と墓地をシャッフルし、カードを5枚引く……これが《サイバー・N・ワールド》の効果です」

「バ、バカナヤツ……敵ニ塩ヲ送ルナンテ──」

「おや、ルーパーの間では常識なんですがね──相手に手札を引かせる時は、死刑宣告だと」

「エ──」

「敵に塩を送るのは私の性に合いません。相手を塩漬けにするくらいじゃないと。《パクリオ》の効果を解決。相手の手札を1枚、シールドに埋めます。そしてもう1回、《N・ワールド》の効果を解決──これが後、30回以上残っていますよ」

 

 以下。

 《N・ワールド》の効果によって手札を5枚引き直し、《パクリオ》で手札をシールドへ埋める事の繰り返し。

 この無限ループの中で、紫月の山札は当然だが一切減らない。

 しかし相手は、《パクリオ》の効果が発動した分だけ山札が減り続ける。

 何故ならば、《N・ワールド》の効果でシールドのカードは回収できないからだ。

 

「つまりよぉ、テメェの山札は全部シールドに封印ってことだ!」

「ではおやすみなさい。精々、星空の良い夢を」

 

 脳。

 記憶。

 それに等しい意味を持つ山札が次々に結晶のシールドと化していく。

 怪物は耐えられなかった。

 自分が断片的に封じ込められていく感覚に。

 何分の1に分割されて封印されていた自分が、更に細かく分割されていく苦痛に、耐えられなかった。

 

 

 

「ア、ギ、アアアアアアアアアアアアアアアアアアーッ!?」

 

 

 

 黒い靄がシールドとなって埋め込まれていく。

 しばらくすると──そこには何十枚ものシールドだけがあり、黒い靄は消え去っていた。

 

「……やれやれ、こんなデッキを使わせるなんて教皇(ハイエロファント)も趣味が悪いです」

「いや、ぶっちゃけループしたかったんだろ? マスター」

「気持ち良かったです」

「ほらぁーっ! そういうとこだぞーっ!」

「でも、これが水文明の戦い方なので。……ようやく、シャークウガと水文明らしいデッキで戦えてよかったと思ってますよ」

「ヘッ……そーだな」

 

 パン、と二人はハイタッチする。

 そして──目の前には神殿の扉が開かれていた。

 

「──我が友よ」

 

 教皇の声が何処からともなく静かな空間に聞こえて来る。

 別れの時間がすぐそこに迫っていた。

 

教皇(ハイエロファント)、色々お世話になりました」

「また会いに来るぜ! 寂しいからって、暴走すんなよ!」

「……名残惜しいが、時間が無いか。礼はしてもし足りないが……」

「良いんですよ。あいつ、いけ好かなかったので」

「スカッとしたな!」

「……貴方達は本当に面白い……ずっと、覚えておくとしよう」

 

 紫月とシャークウガは顔を見合わせて笑い合う。

 自分達も忘れない。

 孤独で、そして人の心が分かるエリアフォースカードの事を。

 

「そうだ。水文明の力……お前の愛する者に分け与える事も出来るぞ、暗野紫月」

「本当ですか!?」

魔術師(マジシャン)にもマスターも余力はねえだろうし、最後の希望は……やっぱ白銀耀か」

「……愛と信じる事。それを忘れない事だ」

「ええ。覚えておきます。貴方の事も一緒に」

 

 教皇(ハイエロファント)は最後に一度、穏やかな声で囁いた。

 

 

 

 

「……ありがとう。友達よ」

 

 

 

 

 その声と共に、二人の視界は白く包まれた──

 

 

 

 ※※※

 

 

 

「んっ……」

 

 気が付くと、紫月は巨大なテントの中に居た。

 何時の間にか安全な所に避難させられていたのだろうか。

 視界には、白衣を纏ったロボット。

 魔力を持っている辺り、クリーチャーだろうか。ジョーカーズに似たようなクリーチャーがいたことを思い出す。

 シャークウガの視線はと言えば、そのロボットの手元に向かっていた。

 

「なあ、マスター。ジョーカーズにミイラ男っていたっけか?」 

「いる訳無いじゃないですかシャークウガ、何処を見て──」

 

 そして──ミイラ男、もとい白銀耀の姿があった。

 

 

 

「先輩!? 何があったんですか!?」

「か、帰って来たのか、助けてくれ、紫月……!」

 

 

 

 紫月が慌てて駆け寄ると、ロボットの医者が「アンセイ! アンセイ! 全治1か月! 全治1か月!」と抜かしている。

 

「全身大怪我!?」

「コイツ、ヤブ医者だ! 包帯が要らねえ所にまで包帯を巻いてやがる!」

「あー、そうだな。ぶち抜かれたのは腹だけか」

「いや、大事でしょう。大丈夫なんですか、先輩!?」

「それどころじゃないであります! 外で今、アカリ殿が敵と戦っているでありますよ!」

「敵!?」

 

 思わずテントの中から外を覗く。

 そこには──空間から弾き出されたアカリの姿があった。

 

 

 

 ※※※

 

 

 

 メカドクターGrの治療は的確かつ迅速なものであった。

 電気メスでの止血、輸血、弓矢の摘出、縫合。

 此処までは良かったのだが、俺がいざアカリを助けに行こうとすると全力で止められ、包帯でぐるぐる巻きにされた次第である。

 「それは先輩が無茶するのが悪いかと」とは紫月の弁であった。

  何とか包帯から解放された俺はテントから外の様子を覗き見る。

 

「大変です、負けてしまってますよ!?」

「マジかよ……!」

「アンセイ! アンセイ! 包帯! グルグル! ギプス、グルグル! シューチューチリョー!」

「お前マジでうるせーんだよ! 噛むぞコラ!」

「黙ってるでありますよ!」

「先輩。流石に魔術師(マジシャン)は戦う余力が残っていません」

「改造で大分魔力持ってかれたからな……精神世界で戦えてたのはバックアップがあってこそだ」

 

 シャークウガがバツが悪そうに言った。

 そういえば精神世界で何があったのか気になるな。

 見た所、二人とも無事に戻って来れたみたいだ。

 ……シャークウガの姿はそのままだけど。

 

「あ、シャークウガの姿については問題ないです」

「ぶっちゃけ改造された後の方が俺つええ気がするから問題ねえな! ダンディさは前の方が」

「フカヒレ」

「はい」

「どっちにせよ、戦えるのは俺だけってことだな」

「……いいえ、私も一緒です。シャークウガ、出来ますか?」

「おうよ!」

 

 魔術師(マジシャン)のカードから、皇帝(エンペラー)へ青い光が移っていった。

 そして──皇帝(エンペラー)に、水文明のマークが刻まれる。

 

「文明の力が、増えたであります!?」

「こんな事、出来たのかよ!?」

「今はこれが精一杯です。でも、私の力……先輩に渡します」

「ああ。確かに受け取った!」

 

 これで火文明の力、自然文明の力、そして水文明の力が揃った事になるのか。

 ということは、デッキのカードにも変化があるかもしれない。

 そう思って、デッキケースを取り出したその時だった。

 そこから1枚のカードが飛び出す──

 

 

 

「あっ!? 嘘だろ!?」

「あれって、《ダンガスティックB》のカードでありますよ!!」

「追いかけましょう、先輩!」

 

 

 

 ※※※

 

 

 

「あーあ、弱かったねえ。萎えちゃったよイカルス」

「本当に弱かったねーっ、イカルス。可哀想だよね!」

 

 

 

 倒れ伏せるアカリ。

 駄目だ。

 もう、自分だけでは耀も紫月も庇い切ることが出来ない。

 無力感に苛まれながら地面を握る。

 

「あっ、ぎぃ、あぁああ……!」

 

 激しい苦痛が襲い掛かる。

 ダメージは蓄積しつつあった。

 目の前の天使擬きたちを睨みながら、銃口を向けようとしたが、

 

「やめなよ、そういうの」

「いっ──」

 

 ドシュ。

 鈍い音と共に、掌には弓矢が突き刺さっていた。

 痛みで気が狂いそうになりながら、アカリはどうすれば良いかを考えようとした。

 しかし、何も思いつかない──

 

「もう飽きたよ。全員殺して、エリアフォースカードを回収する」

「そしたら、トキワギ機関にも勝てるよねーっ」

 

 ──あたしは、何をしに来たんですか……! こんなやつらにコケにされて……!

 悔しさで涙が滲み出る。

 何がレジスタンスの希望の星だ、と吐き捨てた。

 あまりにも今の自分は……無力すぎる。

 ──こんな時、あたしは……どうすれば──!!

 

 

 

「そうは……させねぇよ……!」

 

 

 

 呻くような声。

 そこには──白銀耀が立っていた。

 そして、その傍には暗野紫月が肩を支えていた。

 

 

 

 ※※※

 

 

 

「アンセイ! アンセイ! マダ手当、オワッテマセン!」

「うっせーこのヤブ医者! 無理矢理包帯だらけにしようしやがって、いだだだだだ」

 

 メカドクターGr.を怒鳴りつけた耀は紫月に背中を預けるようにしてエリアフォースカードを掲げる。

 目標は唯一つ。

 あのいけ好かない天使擬きたちだ。

 

「それよか、《ダンガスティック》のカードは何処だ!? あいついねえとデッキ足りねえんだけど!」

「アレ、我の本体でありますよ!?」

 

 獅子と天馬の怪物が吼えた。

 そこから強大なエネルギー弾が放たれて、地面を抉っていく。

 まずい。このままじゃ、アカリが──

 

「くそっ、こうなったら俺様が──」

「シャークウガ、今の貴方の身体では無茶です!」

 

 いや、来る。

 何か来る。

 何かが変わったような風が吹いた。

 1枚のカードが、庇うようにして俺の前へ──来た。

 

「っ《ダンガスティック》のカード!?」

 

 いや、それだけじゃない。

 倒れているアカリのデッキケースからも、2枚。  

 カードが飛び出している。

 

「《ダテンクウェール》……《ダルタニック》……何処に行くの……!?」

 

 3枚のカードが、盾になるようにして重なった。

 そして──エネルギー弾を全て、弾き返してしまう。

 

「何が……起こってんだ……!?」

「3枚の、ロボットのジョーカーズカード……先輩、これってまさか!」

「……チョートッQ」

「応、であります!」

 

 飛び出すチョートッQ。

 その身体に、3枚のカードも引き付け合い、重なっていく。

 それらは俺の手元に戻っていく。

 見た事の無い1枚のカードとなって。

 

「っ……合体した……! 《サンダイオー》みたいに……!」

「水文明の力が……加わったってことですか……!」

「マスター! 我らの力、存分に振るうでありますよ!」

 

 ……よし、やってやろうじゃねえか。

 今度こそ──逆転のチャンスだ!

 

「合体とかズルいーっ! 何が起こってるか分かんないんだけど!」

「おっとイカルス、合体なら俺達だってしてるだろう? 一心同体の神々の方が優れているさ!」

 

<Wild……DrawⅥ、LOVERS!!>

 

 空間が開かれていく。

 だけど負けない。

 お前達が二人なら、俺達は……皆で戦ってるんだ!

 

「アカリ、ちょっと待ってろ。今、こいつら倒して助けに行くからよ」

「……お爺ちゃん」

「チョートッQ! 紫月! シャークウガ! 行くぞ!」

 

 エリアフォースカードを掲げる。

 火。自然。そして水。

 3つの文明の力が合わさったこのカードで──今此処に居ない仲間の分の思いも背負って勝つ!

 

 

 

皇帝(エンペラー)、起動!」

<Wild……DrawⅣ、EMPEROR!!>

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