学園デュエル・マスターズ WildCards【完結】   作:タク@DMP

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GR63話:無限合体──三位一体

「──神化完遂……《第七神帝 サハスラーラ》ッ!!」

 

 

 

 その声と共に、身の毛がよだつような声が足元から聞こえて来る。

 地面は黒く染まり、目の前には天馬を喰らう無数の龍の姿があった。

 龍達が髪の毛の如く絡まり合うと、その中央に巨大な顔が形成されていく。

 

「ゴッドを進化元にする進化クリーチャー……それが、一つになった神帝、《サハスラーラ》です……!」

 

 直視する事すら憚られる恐怖の異形。

 神の帝、その名は神帝。

 いや、神さえも超越する創造主、それが「クリエイター」と呼ばれる種族だ。

 

「こいつにまで考えが及ばなかった……! デッキに入ってる闇のカードの役割なんて、ハンデスの為くらいだって思ってたのが甘かった……!」

「いやあ、実際手札を破壊する為ではあるんだけどね?」

「貴方達のーっ、残り2枚しかない手札を破壊する為にねーっ!」

 

 巨大な触手が俺の手札に伸び、絡め取るなり両方共墓地へ引きずり込んでしまった。

 これで手札もゼロ。

 よりによって、さっき引いた《スロットン》が落とされてしまった……!

 

「そして、《サハスラーラ》の効果でクリーチャーを2枚、墓地から回収するよ。これでターンエンド」

「なっ……攻撃しないのか!?」

「俺達は安全に決着を付けたいんだ。分かるだろ?」

「次のターンに《バイナラドア》が引けるかなー? 引けないかなーっ?」

「《ドンジャングル》でも構わないよ。まあ、パワー21000の《サハスラーラ》には勝てないけどねぇ」

「くうっ……!」

 

 カードを引く。 

 ……駄目だ。《サハスラーラ》をどうにかできるカードじゃない。

 手札は無いけど──まだ、マナなら幾らでもある……!

 

 

「言ってろ! 俺は最後まで勝ちを捨てねえよ! 4マナで《水筒の術》を唱える! 効果で《バツトラの父》と《ゴッド・ガヨンダム》をバトルゾーンへ!」

「今更並べるのなんてやめよーよ!」

「惨めったらしくて見てられないな」

 

 ──ダメだ。

 《ガヨンダム》が出てきても、そもそも手札が無いからカードを引くことすら叶わない。

 このままじゃ……本当にまずいかもしれない……!

 だけど──

 

「……先輩」

 

 後輩が後ろから袖を引っ張る。

 ──ああ、分かってるよ、紫月。

 正念場は此処からだ。

 

「先輩は……まだ、諦めてないですよね?」

「……その顔は……最初っからそう思ってたって顔だな?」

「その通りです。先輩は、どんな逆境からでも逆転してしまえる人ですから」

 

 そうだ。

 こんな所からでも逆転出来るのは……白銀耀、俺くらいなもんだろーがよ!

 《サハスラーラ》、この状況ならあいつだけでも正直まだどうにかなる範疇だ。

 問題は──奴らの仕掛けてくる追撃。

 思い当たるのは、既に手札に揃っている2枚のカード──!

 

「オレ達のターン! 《ペガサス》、《レオパルド》を召喚……G・リンクだ!」

 

 選ばれない神。

 《サハスラーラ》を仮に除去できたとしても、こいつらを両方共捌くのは難しい。

 どうするかが問題だが……!

 

「《レオパルド》の効果で何回収する?」

「うーん、正直もう何をやっても勝ててしまうからな……《プチョヘンザ》でも回収しておくか」

「えー? 良いけど……」

「もう勝ったつもりかよ、天使様よ」

「どうせ貴方達みたいな、カードしか能の無い上にたまたまエリアフォースカードに選ばれたような凡人がアタシ達合成人間に勝てる訳が無かったんだよーっ!」

「……合成人間?」

「そうだよーっ、ペトロパブロフスキー重工に作られた、試験管ベビー……それがアタシ達なんだからねーっ!」

 

 マジかよ。

 こいつら、人造人間ってやつだったのか?

 

「おい、口が軽すぎだぞ。イカルス」

「別にいいじゃーん、こいつらどうせ死ぬんだよ? 子供も作れないで可哀想!」

「まあ、こんな連中の劣等遺伝子から生まれる子供の方が可哀想だ。それを先に救済してやるんだから、オレ達は何て慈悲深いんだろうな!」

「遺伝子遺伝子うるさいですね。人の力も、可能性も、生まれだけでは決まりませんよ」

「決まるさ。人種、何なら同じ集団の中でさえ人間は個体差があるだろ? 生まれつきの病気、遺伝子障害、その他諸々。旧人類の自由交配は余りにも非・合理的だ」

「非・合理的?」

「要らないんだよ。不必要な機能を廃した後には快楽という名の娯楽が残る。それだけで十分だ」

「優秀な遺伝子だけを配合して組み合わせれば、理想の新人類種が出来上がるんだからさーっ!」

「……野菜の品種改良みてーなノリだなコラ」

 

 気に食わねえ。

 こいつら揃いも揃って神様にでもなったつもりか。

 成程、この時代のディストピアはこうやって出来上がっていったのか。

 一部の人間の思い上がりと、管理欲によって──!

 

「……控えめに言って要らないんだよな。お前達みたいな劣等遺伝子ってやつ」

「平凡で、普通で、何にも取り得がない、退屈な旧人類。あるとすれば、カードの腕前とたまたまエリアフォースカードに気に入られたってだけだよねーっ」

「弱い人間は要らない。遺伝子的に強い人間だけが次の世界のステージへ進める。オレ達は、そういう()()()()()を選別するわけ」

「白銀朱莉は、まあまあ良い遺伝子だったよーっ」

「天体のアルカナを扱えるなんて常人じゃない。彼女を素体にすれば、もっと良い遺伝子が採取できそうだ。例えば──オレの遺伝子と交配したりとかね」

 

 こいつら。

 本当に何なんだろうな。

 人の事を……遺伝子や能力でしか見ていない。

 アカリが凄いのは、勿論あいつ自身の能力だってあるかもしれない。

 だけど──何も分かってない癖に。

 

 

 

「ざっ、けんなよ……!」

 

 

 

 俺と会うまで、ずっとレジスタンスで唯一人のエリアフォースカード使いとして戦い続けたアカリの事を何も分かってない癖に。

 何より、未来の俺が育てたあいつを……道具のように見られるのが気に食わない!

 

「──俺の孫の名前を汚い口で呼ぶなッ!!」

「血縁も無いくせに? 随分と憤るんだねえ」

「それでも……未来の俺が繋いだ命には違いねえだろ!」

「意味分かんないなーっ、血縁以外に命を繋ぐ方法なんてないでしょー? ほんっとうに頭が可哀想だよねーっ!」

「そんなのは、強い子孫を残せない弱い人間の考え方だ」

「違う!」

 

 反駁しなきゃいけない。

 こいつらに、否定なんかさせない。

 

「お前らが見ようとしないだけだ! お前らの知らない所で、お前らの言う弱い人間は確かに命を繋いで、確かに此処まで生き延びてきたんだ!」

 

 ロストシティ。

 それは、いずれ俺達が歴史を変えれば消えてしまうかもしれない場所。

 そして破滅の先の未来の指し示す場所。

 だけど俺は知っている。そんな場所でも人々は必死に生き、野望に燃え、泥水啜ってでも「生き残ろうとしていた」!

 良し悪しは関係ない。この荒廃した未来でも、彼らは力強く生きていた!

 

「きっと、貴方達の言う上っ面の強さだけに意味はありません。配られたカードを眺めているだけではゲームも、人生も動かせないので」

「そうだ! 必死に前に進んで、時代を前に進める為に俺達は今生きてるんだ。テメェらの勝手な理屈で──今生きてる命を馬鹿にしてんじゃねえよ!」

「雑草が喋るな。いい加減に鬱陶しい──」

「やっちゃいなよ、《サハスラーラ》!!」

 

 強烈なレーザー光線が俺のシールドを2枚、叩き割る。

 それと一緒に《バツトラの父》も焼き切られた。

 

「《サハスラーラ》は相手のクリーチャー1体のパワーを攻撃時にマイナス8000するよ」

「しかも、《サハスラーラ》は止まらない! 無限に攻撃し続けるよーっ!」

 

 砕かれるシールド。

 だけど──まだ、終わっちゃいない。

 終わらせるわけにはいかない。

 どうにかして、あの二柱を同時に止める方法があるはずだ。

 それに賭けるしかない!

 

「S・トリガー、《りんご娘はさんにんっ子》! 効果で《スゴ腕プロジューサー》を場に出す! 効果で《Theジョラゴン・ガンマスター》を場に出す!」

「邪魔なんだよ! 目障りだ! 《サハスラーラ》で攻撃するとき、《ジューサー》のパワーをマイナスして破壊!」

「アンタップして、もう1回攻撃するからねーっ!」

 

 レーザー砲が俺のシールドを2枚、《ジューサー》諸共焼き切った。

 多頭の大蛇の如き神帝は、それでも尚破壊を止めない。

 無限に、攻撃し続ける。

 しかも、その隣には決して触れられない天馬と獅子の神々までいる。

 この2つをどうにかしない限り、勝機は無い──

 

「──いや、どうにかしてやらァ!! 《ジューサー》が破壊されたからGR召喚──っ」

「今更何が出ても無駄だって言ってるだろ? 分からなかったかなあ、なあ!? オイ!!」

 

 再び砕かれた2枚のシールド。

 何とか《サハスラーラ》を止めるカードが来ないと……!

 

「先輩っ……!」

 

 俺の手を掴む紫月。

 その視線はバトルゾーンを向いていた。

 ああ、そうだ。奴ら気付いてないのか。 

 完全にこっちを殺す事しか頭に無いみたいだからな。

 

「……引いてやるよ。神様だろうが、宇宙だろうが、未来だろうが──俺はぶち抜く。でっかい風穴を、ぶち抜いてやるぜ!」

 

 砕かれたシールド。

 そこから飛んできたのは──

 

 

 

「S・トリガー、《バイナラドア》で《サハスラーラ》を山札の一番下へ!」

 

 

 

 神さえも殺す、道化の反撃。

 それが一瞬で《サハスラーラ》を山札の一番下へ引きずり込む。

 イカルス達が顔を顰めた。

 

「こんな所で引くなんて、運だけは良いんだねーっ!」

「だけど甘いよ! 《ペガサス・レオパルド》が残っている!」

「トドメまでは持っていけないけど、こんな事もあろうかって奴だよ! 可哀想だけど、《プチョヘンザ》でロックを掛けるからねーっ!」

「それもきっと無理だぜ」

「はっ、童貞野郎の強がりだ! 《ペガサス・レオパルド》、革命チェンジしろ──」

 

 天馬と獅子は──その場から動かなかった。

 彼らの言う事など受け付けないと言わんばかりに、苦し気に首を横に振っている。

 

「なっ……!」

 

 イカルス達が目を見開くのが確かに見えた。

 

「な、何で──」

「お前さっき、俺の《ジューサー》を破壊したよな? 破壊された《ジューサー》はGR召喚したんだ」

 

 

 

 

「ブーン……ブーン……ブーン……」

 

 

 

 バトルゾーンで絶えず洗脳周波を流し続ける小さなクリーチャー。 

 それに彼らは気付かなかった。

 

「……《全能ゼンノー》。こいつの効果で、クリーチャーは場に出たターンに攻撃出来ない。デュエマの最も基本的なルールが書かれたカードだぜ!」

「それを先輩が言っても説得力は……まあ良いでしょう」

「馬鹿な! リンクしたゴッドだぞ!? 召喚酔いはしないはず……!」

「神も所詮は、クリーチャー! ルールは守らねえとなあ!」

 

 これで、このターンの攻撃は止められた。

 後は……仕掛けるだけだ!

 

「ふ、ふざけるな……! こんな事があって堪るか……! こんな事なら、さっさと《ペガサス・レオパルド》から攻撃していれば……! お前が余計なことを言うからだぞイカルス……!?」

「えー、でも乗り気だったじゃんかさーっ!」

「うるさいッ! 俺がこのターンで奴らを蹂躙する完璧なプランが……!」

「このくらいで破綻するなんて、最初っからプランの体を成してなかったんだよーっ」

「なんだとぉ……!」

 

 あーあ、とうとう仲間割れまで始まっちまった……どうすりゃ良いんだアレ。

 

「先輩。それなら見せつけてやれば良いでしょう」

「見せつける?」

「……本当の絆は、遺伝子なんかでは測れないってことですよ。水文明の力、今こそ使う時では?」

「それもそうだ。俺達の積み上げてきたもんを、ぶつける時だ!」

 

 序盤に有効なカードがかなり手札に来ていたからか、切札はシールドから加えられたカードのうち、1枚しかない。

 ジョラゴンマンハッタンも、《スロットン》も使えない。

 なら──こいつに賭けるしかない!

 

「6マナをタップ……さあ頼むぜ!」

「っ、こんな事してる場合じゃないイカルス! あいつ仕掛けて来るぞ!」

「大丈夫だよ! このデッキ、守り分厚いんだよ? あいつらが耐えられたのに、アタシ達が耐えられない理屈は無いと思うんだけどねーっ!」

「そ、それもそうか! それもそうだよなあ! だってオレ達──」

「言わせねえよ! 問答無用で引き潰す!」

 

 炎のサーキットが荒れ果てた廃墟に敷かれていく。

 生み出されていくマナが──

 

 

 

「疾く駆けよ、《バーンメア・ザ・シルバー》! 効果で二回GR召喚だ!」

 

 

 

 ──鋼の騎馬を呼び起こす!

 焼け落ちるような悪夢を見せろ!

 全速力で戦場を駆け抜ける《バーンメア》がお前を引き潰す!

 

「並走するのは、《Theジョラゴン・ガンマスター》……そして!」

 

 そしてもう1発。

 超GRゾーンへ繋がる穴が開く。

 今だ相棒。

 三位一体、重ねた力を繋ぎ合わせる時だ!

 浮かび上がるのはⅣ。皇帝の数字!

 

 

 

「──これが俺の、無限大切札(ムゲンダイワイルドカード)!!」

 

 

 

 飛び出す《ダテンクウェール》、浮上する《ダルタニック》。

 そして──地面を駆ける《ダンガスティック》。

 3体のパーツが組み変わり、一つのロボへと変形していく──

 

 

 

無限連結合体(インフィニティ・トランスコンビネーション)

 

 

 

「──超天を衝いて宇宙も断つ! 《無限合体 ダンダルダBB(ビッグバン)》!」

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