学園デュエル・マスターズ WildCards【完結】   作:タク@DMP

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GR65話:帰還──再会

 ※※※

 

 

 

「ぅあ、痛……」

 

 

 

 病室で刀堂花梨は、ゆっくりと目を開く。

 最初に目に映ったのは──金髪の少女の姿。

 

「カリン、起きたデス!?」

「……ブラン」

「もーう、すっごく心配したデスよ!?」

 

 ──そうか。あの時……あたし、滅茶苦茶に撃たれて……。

 

「主君よ。すまない……守れなかった」

 

 声が聞こえた。

 そこには、戦車(チャリオッツ)のカード。

 そして──申し訳なさそうに言葉を発するバルガ・ド・ライバーのカード。

 

「……バルガ・ド・ライバー……良いよ。盾になってくれたの、知ってるし」

「……ああ」

「でも、何だったんだろう……あれって」

「シャークウガがマフィアに改造されていて、大暴れしたデス」

「シャークウガ……紫月ちゃんところの鮫さんが!?」

「だが、既に暴走は終わっている。色々トラブルはあったようだが、もう直に──」

 

 

 

「花梨!!」

「刀堂先輩っ!」

 

 

 

 病室に飛び込んで来る声。

 そこには……ボロボロの白銀耀、そして暗野紫月の二人の姿があった。

 

「彼らが全て終わらせたようだ」

 

 色々言いたい事はある。

 こっちも身体はズタズタ。

 しばらく表に出る事は出来ないくらい、無数の穿ち傷がある。

 しかし、それでも……帰って来た二人を見ると安堵の息を吐いた。

 

 

 

 ※※※

 

 

 

 俺達もボロボロ。イカルス達もボロボロ。

 何とか退散させることこそ出来たが、奴らを取り逃す結果に終わってしまった。

 怪我をしたアカリを連れ、何とかロストシティの病院に辿り着いた俺は……花梨の病室に来ていた。

 全身に包帯を巻いた彼女を見て、俺は痛ましい気分になる。激昂していた火廣金も、やりきれなかったのだろう。

 

「……良かった。二人とも、無事だったんだ……」

「シヅクーッ! おかえりデース!」

「ちょっとブラン先輩! 自重! 自重! 此処病室ですから!」

「Oh……Sorryデース……」

「でも本当に皆、来てたんですね……」

「僕もな」

「師匠まで……」

「げんなりした顔をするな。翠月もいる。後で顔を合わせておけ」

「いえ、もう顔を合わせました。すごい剣幕で飛びついてきましたよ」

 

 あれもあれで大変だった。

 「しづ!? 本当にしづなのね!? しづーっ!?」と言って抱き着いて来たんだからな。

 床に倒れ込みそうになる勢いだったぞ。

 

「刀堂先輩……お体は」

「へーき。急所は外してるって。魔力の弾だから、身体にダメージは蓄積してるけど……外傷の一つ一つはそうでもないってさ」

「お前なら大丈夫だって思いたかったけど……すげぇ重傷だって聞いてたからよ。一時はどうなる事かと」

「あはは、実際今立てないからねー……」

「……本当にすまねぇ事をした、刀堂の嬢ちゃん!」

 

 ポン、と飛び出すのはシャークウガ。

 その変わり果てた姿にビクリ、と肩を震わせる花梨だったが、声色からして「彼」だと気付いたのだろう。

 そういえば結局、花梨はシャークウガの姿そのものは見てないのか。

 

「そっか、あんたがシャークウガ!?」

「こうしてみると、サイボーグそのものデス……」

「おいブラン」

「ごめんなひゃい、デス!?」

 

 余計なことを言う探偵の頬を引っ張る。

 実際、こうなっちまったのはシャークウガ自身が一番気にしているはずだ。

 こいつの過失じゃないとは言っても……心中は察するに余りある。

 

「まあ……この通りだぜ、面目ねえ」

「……シャークウガの所為じゃないし……あたしは気にしてないんだけど」

「だけど、この街もあんたも、火廣金も……俺様が傷つけた事には……」

「鮫の字。無用な責任を背負うでない。ヌシを使って好き勝手したマフィアの連中が全て悪い」

「そうであります! あいつら本当、サイテーでありますよ!」

 

 サッヴァーク、そしてチョートッQがシャークウガに向かい合う。

 この3体が並ぶのを見るのも……久しぶりな気がするな。

 

「爺さん、新幹線……」

「おかえりであります、シャークウガ!」

「守護獣組もこれで完全に揃ったのう」

「そうだよシャークウガ。貴方が気負う必要は無いから」

「……そうかよ」

「言ったでしょう、シャークウガ。どうなっても……私達は貴方の味方です」

「……ああ、でも。死ななくて……良かったぜ。もし仲間に手を掛けてたら、って思うとよ俺様は……」

 

 事実、ロストシティの被害は甚大だ。

 多くの怪我人が出ている。

 シャークウガを殺してでも止めなければ、と言っていた火廣金も穏やかではなかったのだろう。

 それでも……俺はシャークウガを見捨てたくは無かった。

 

「シャークウガ。罪悪感がそれでもあるなら……貴様に出来るのは守護獣としての役目を全うし続ける事だと思うぞ」

「黒鳥レン……」

「そうです。勝手に離れることは、もう許しませんよ。シャークウガ」

「……おう、わかったぜ」

 

 ……まあ、こっちは何とかなりそうだ。

 花梨の方はシャークウガに根を持ってないみたいだし。

 

「……ねえ、ところで……火廣金は!?」

「火廣金? あ、あいつは……」

「あいつも一緒に居たの! どうなったの!?」

「……それは……」

 

 何とも、説明しづらい。 

 あの後、火廣金と戦闘した場所にも戻って来たのだが、あいつの姿は無かったのだ。

 一体何処へ行ったのだろう。

 というか、花梨に火廣金の事について何て言えば……。

 

「怪我自体は平気だ。あいつは魔法使い、しかし……貴様を守れなかったのが、大分気掛かりのようだ」

「そ、そうなんだ……でも、あたしの所為で落ち込んでほしくないよ……」

 

 ぎゅっ、と彼女は手を握り締める。

 

 

 

「だって……あたし、あいつに何回も良くしてもらったもん……これ以上足引っ張ったり心配かけたくなかったのに……」

 

 

 

 ※※※

 

 

 

「──派手にやられたな、アカリ」

「いっつつ……大丈夫ですよ、この程度」

 

 弓矢で貫かれた右手の手当を受けながら、アカリはトリスと向かい合っていた。

 話すのは今後の事。

 レジスタンスの拠点とロストシティをどうやって守るかだ。

 

「奴らは共闘を申し込んでいたらしいじゃないか。奴ら、下手したら報復してくるんじゃないか?」

「逆ですよ。私達よりよっぽど大きなトキワギを相手にしているのに、こっちに戦闘を仕掛けに来ると思います? それこそ大日本帝国の二の舞です」

「……だと良いがな」

「仮に来たところで、こっちにはエリアフォースカードの戦力が沢山あるんですから。問題は……その戦力が大分消耗している事ですけど」

「……もう一つ、お前に言っておこうか」

「何ですか?」

「あいつらは……お前と違って訓練も何も受けていない唯の人間だ」

「……」

「お前はエリアフォースカードを持っているだけで簡単に戦力に数える。この私でさえもあいつらを戦力に数えがちだ。だけど……脆い」

「……それは重々、ですけど」

「あいつらが頼りにならないとかそういうことを言ってるんじゃねえ。だけど……無茶苦茶な事はさせたくはない。何度も戦わせて、あいつらの心を痛めつけたくはないんだ」

「それは……」

「こんな事言ったら、あいつらに丸くなっただのなんだの言われそうだから嫌だったけどね。でも……あたしも何だかんだで人間を愛してしまったんだろうな。グズで、愚かな人間共をさ」

 

 トリスは老いた瞳を伏せた。

 彼女の周りにいた魔導司は、散り散りに。

 ファウストも──ワイルドカードの氾濫の際、死んだ。

 残ったのは大きなダメージを負って、人体錬成が出来なくなった彼女だけだった。

 

「あいつらをちょっとの間だけで良い、現代に戻してやってくれ」

「……分かりました」

「しかし、ペトロパブロフスキー重工の合成人間が和平か……奴ら、何考えてんだかな……」

「さあ……?」

 

 考え込むトリスが書類を目にする間、アカリは手の甲の傷を眺めていた。

 そして、小さく──少し楽し気に呟いた。

 

「……ひょっとしたら、()()()()()()()()()()襲い掛かって来るかもですね」

「冗談でもそういう事言うなよ……」

 

 トリスが眉を顰めた。

 そうなれば、白銀耀達にもまた強くなってもらわなければならない。

 当然、アカリにもだ。

 

「じゃあアカリ。そろそろタイムダイバーの準備を頼む」

「はーい、了解です」

 

 

 

 ※※※

 

 

 

「イカルス、酷い目に遇ったね……」

「ふーんだ、アタシまだイカルスの事怒ってるもん」

「悪かったって、許せよ。帰ったらたっぷり愛してやるからさ」

「……むぅーっ」

 

 ボロボロの二機の合成人間は空をふよふよ飛んでいた。

 極東のこの辺りには既に目を付けている。

 次はペトロパブロフスキー重工の戦力を裂いてでも圧力をかけてやろう。

 この報復は──必ず果たさねばならないのだから。

 

「本当に、許せないなあ……許せないよ。高貴なオレ達の顔に泥を──」

 

 

 

 パン、パァン!!

 

 

 

 乾いた音が、二、三回響いた。

 

 

 

 

 イカルス──少年の方は、自分に何が起こったのか最期まで分からなかった。

 胸には、ぽっかりと大きな空洞が開いていた。

 

「え?」

 

 ごふっ、と口から大量の赤い水が噴き出す。

 

「かっ、はっ──」

「えっ、ウソ……イカルス!?」

「こ、れって──」

 

 ギロリ、と後ろを振り向く。

 そこに浮いていたのは──冷徹な瞳を覗かせる、群青のガンマン。

 イルカの姿へ変えた自らの愛馬に跨り、空を飛んでいた。

 

「《ジョリー・ザ・ジョルネード》……!? な、何でこんな所に……? 気配なんて、しなかったのに……大分、離れたのに……!」

「あの、星の女の……何でこんな所にまで……追いかけて……!」

「イ、イカルス!! 駄目だよ!! 喋っちゃダメ──ッ!!」

 

 ぐんっ!

 音を立てて、G・A・ペガサスが顕現して彼らを空の果てまで連れ去った。

 

「だ、ダメだよイカルス! 死んじゃ嫌! 死んだら、嫌! だからねっ──!?」

「あ、ぐぁ──い、か、る、す──」

「イカルス!? イカルス──!?」

 

 抱きかかえる恋人の目から光が失せた。

 がくり、とその頭が力無く横たえる。

 

 

 

「嫌……嫌ぁぁぁぁーっ!!」

 

 

 

 乾き、淀んだ空に絶叫が響き渡った。

 天馬は羽を広げて空を駆ける。

 別離、憎悪、そして横たえる悲劇を乗せて──

 

 

 

 ※※※

 

 

 

「お前らには世話になったな。ハングドマン商会の件、残りはこっちに任せろ」

「こっちこそ。色々病院とか手配してくれてありがとな、トリス」

「礼には及ばんさね」

 

 トリスは笑みを浮かべると手を振る。

 

「そんじゃあ、また次も呼ぶことになると思うが……」

「申し訳なさそうな顔すんなってトリス。エリアフォースカード集めは任せろ!」

「……ああ。頼んだぜ、白銀耀」

 

 タイムダイバーに乗り込んだ俺達。

 正直、俺も怪我でボロボロだし、花梨も完治までは大分掛かるだろうとのことだ。

 とはいえ、魔法によって治癒力は大分強くなってはおり──

 

「もう動けるようになった……凄いね、魔法ってほんとに」

「俺もだ。腹の傷、もう痛くな、いだだだだ」

「調子に乗るからでありますよ、マスター……」

 

 ──まあ、放っておけば治りそうなくらいには快復している。

 何とかなりそうだな、この調子なら。

 

「本当に皆さん……ご迷惑をおかけしました」

「迷惑だなんて言わないでくだサーイ! シヅクは、私の大事な友達デス! 何処に行っても見つけ出すつもりデシタよ!」

「うわーん、もう、しづーっ! しづ、二度と勝手に何処か行っちゃダメ! 駄目よ! 本当に!」

「みづ姉……本当にすみませんでした」

「あはは、姉妹の仲が良いのは良い事だけどね」

 

 向こうで紫月との再会を喜び合っている皆を見て、思わず頬が緩んだ。

 本当、夢みたいだよ。ずっと当たり前だった光景なのにさ。

 これで、何もかも元通り……って訳じゃないけど、一先ず全員で現代に帰るという目標は達成できたのだろうか。

 

「白銀。そう言えば火廣金がまだ居ないようだが」

「え!? あいつ、マジで何処行ったんだよ……」

 

 あいつまだ来てないのか。

 どうしたんだろうな……。

 

「貴様等大分拗れてただろう。早めに禍根は取り除いておいた方が良いぞ」

「それは……分かってますけど」

「ねえ、火廣金と何かあったの?」

「あったっていうか、なんつーか……」

 

 

 

 

「──今戻った」

 

 

 

 全員の視線が声の方を向く。

 そこには、全身に包帯を巻いた火廣金の姿があった。

 バツが悪そうに彼はこちらの方を向くと──

 

「……悪かったな」

 

 その一言だけ言うと、そのまま個室へ入っていってしまった。

 

「……?」

「怒っては、ないのでしょうか?」

「まあ、元々シャークウガの処理の方針でモメてただけだしな……」

「ねえ耀! 火廣金怒らせたの!?」

「いや、もう大丈夫! 双方で解決したから!」

 

 ……解決したと思いたいんだがな。

 現代に帰ったら、もう一度……腰を据えて話さないといけないな。

 

「それでは皆さん! 現代……2018年に戻りますよ!」

『じゃあ、行くよーっ! 潜っちゃうからね!』

 

 アカリの声、そしてせんすいカンちゃんの声が溌剌と響く。

 タイムダイバーは、元の時代目指して時の回廊へと潜った──

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