学園デュエル・マスターズ WildCards【完結】   作:タク@DMP

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GR74話:デュエマ部伊勢参り──暴君龍顕現

「──《蒼神龍チェンジ・ザ・ワールド》の効果発動」

 

 

 

 魔方陣から姿を現したのは、蒼き神の龍。

 一瞬で空亡の手札が全て掻き消える。

 確かこいつの能力は──!

 

「手札をすべて捨てたでありますか!?」

「最悪だ……! このデッキ、”悠久チェンジ”だったのかよ……!」

「悠久チェンジ、でありますか!?」

「《チェンジ・ザ・ワールド》の効果で捨てた手札は10枚。そして、こうして捨てた手札の数だけ私の山札の上から1枚をシールドゾーンへ加える」

 

 言うなればその能力は、手札の枚数とシールドの枚数を入れ替える能力だ。

 しかし、手札を全て捨ててしまう関係上、山札切れに近付く上に非常に無駄が多い。

 だが──

 

「シールドゾーンにカードを置く前に──《フォーエバー・プリンセス》を捨てた時の効果発動。墓地に置かれる代わりに山札と墓地をシャッフルする!」

「っ……どういう事でありますか!?」

「これで、あいつは……捨てた手札を全て山札に仕込むことが出来る。つまり、手札に握っていたS・トリガーのカードが山札からシールドに落ちる可能性がある……!」

「その通りだ。流石に察しが良いな」

「タダの地雷デッキだと思ってたけど……! オレガ・オーラのS・トリガーで手札を増やし、シノビで守りを固めるのが目的だったのかよ!」

「それだけではない。このデッキのS・トリガーは20枚以上。ビートダウンデッキに勝ち目はないと言っても良いだろう」

「っ……!」

 

 まずい。

 《マンハッタン》を使ってしまった今、あの数のシールドを一気に吹き飛ばす事は出来ない。

 手札にある《バーンメア》だけが頼りだ。

 だけど、あいつもあいつで手札が無いので、それだけは救いだ。

 今のうちに態勢を立て直せれば、まだ勝機はある!

 ──《アポカリ》に気を付けて展開し過ぎないようにすれば、まだ勝ち目はある! こっちにはJ・トルネードがあるんだ、場数を増やし過ぎずに《バーンメア》を回収しながら戦える!

 

「そろそろ頃合いか? GRも大分捲っただろう」

「……? 何の話だ」

「まあ良い。早く出せ。貴様の切札──《バーンメア・ザ・シルバー》を」

「……お望みとあらば、さっさとぶち込んでやるよ!!」

 

 6枚のマナをタップする。

 次々に炎が巻き起こった。

 まだ走れる──もう1度、奔らせる!!

 

 

 

「疾く駆けよ、鋼の軍馬! 爆走、《バーンメア・ザ・シルバー》!」

 

 

 

 ヒヒイィン、と甲高い叫びと共にバーンメアが疾走する。

 再び、サーキットに二つの大穴が開かれた──

 

 

 

「──超天を衝いて宇宙も断つ! 《無限合体 ダンダルダBB(ビッグバン)》!」

「何度倒されても復活するでありますよーっ!!」

 

 

 

 そしてもう1枚!

 スピードアタッカーになったGRクリーチャーを場に出せる!

 ──来い《Theジョラゴン・ガンマスター》! そろそろ来るはずだ──!

 捲れるGRゾーンのトップ。

 表向きになったカードは、黄金の箔が押され、MASTERが刻まれていた。

 

「えっ──!?」

 

 ガッツポーズをするところだった。

 そのカードが、禍々しく邪悪に歪んでさえ居なければ──

 

「マスター!?」

「何だコレ──このカードは──」

 

 カードの名前も、イラストも変わっている。

 俺の知っている《The・ジョラゴン・ガンマスター》じゃない。

 

「《The・ジョギ──」

 

 その時、カードから手、そして腕を伝って瘴気が俺を飲み込む。

 何が起こっているのか分からない。

 何があったのかも分からない。

 考える間もなく。

 そして抵抗する間もなく──

 

 

 

「マスタァァァーッ!?」

 

 

 

 ──俺の意識は落ちた。

 

 

 

 ※※※

 

 

 

「──っ!?」

 

 

 

 気が付くと。

 周囲は真っ暗だった。

 此処は、何処だ?

 分からない。

 さっきまで俺はデュエルしていたはず──

 

 

 

「──シロ、ガネ、アカル──」

「っ──!」

 

 

 

 何処からともなく、声が聞こえてきた。

 パッ、と灯かりが目の前に点る。

 そこにあるのは空席の玉座。

 皇帝が座する場所──そこに手を伸ばそうとした時。

 脚は動かなかった。

 何かが俺にまとわりついている。

 背筋がゾッ、と凍える。

 まるで這うようにして、俺に纏わりついてくる──!!

 

「や、やめろ──」

 

 胸を這い、首を押さえつけ、そして口の中にまでそれは入って来る──

 頭に流れ込んで来る光景。

 これは──

 

 

 

 ──お前は偽善者だ、白銀耀。本質は、醜いエゴの塊だ。

 

 

 ──これは自己犠牲なんかじゃない。僕が……運命に決着をつけるためにやるんだ。

 

 

 ──君の甘さが君の大事な仲間を殺すんだぞ! 何故分からないんだ君は!

 

 

 ──え? 火廣金? あいつなら国に帰ったぞ。

 

 

 今までの、記憶──

 

 

 

「報われないなあ、白銀……耀……」

「っ……!!」

「壊してしまえよ。お前を肯定してくれない世界や仲間なんて、壊してしまえ」

 

 

 

 声は俺の物だった。

 玉座の上には、俺が足を組んで座っていた。

 

「お前は馬鹿だ。奴隷根性で今まで戦ってきたのは良いが……それでお前は何を得た? それで一体何を守れた?」

「あっ、ぐぅっ──」

「世界はお前に応えてくれない。仲間もお前に応えてはくれない。面と向かって嫌な顔をしないだけで、お前に合わせてやってるだけだ。そんな仲間に、何の価値がある? お前の言う仲間が……お前に何かしてくれたか? ええ?」

「そんな、ことは──」

「壊せ。壊してしまえ。(おれ)が許す。そんなに奴隷身分が好きなら──(おれ)がお前をこき使ってやる。その、有り余る怒りで」

「て、めぇはぁ──!!」

「どうした? 誰だって顔をしているな? (おれ)はずっと──お前の傍に居たぞ?」

 

 

 ──てめぇは──

 

 

 ──てめぇは──!!

 

 

 

 

「──皇帝(エンペラー)──むぐっ──!?」

 

 

 

 口の中に無数の黒い塊が押し込められ、息が出来なくなっていく。

 

 辛さが、怒りが、悲しみが──

 

 

 

 

「ぐっああああああああああああああああああああ!!」

 

 

 

 

 

 

 ──爆ぜた。

 

 

 

 

 ※※※

 

 

 

「せん、ぱい……?」

 

 

 

 紫月は耀のデュエルをずっと後ろで見守ることしか出来なかった。

 しかし──二度目の《バーンメア・ザ・シルバー》を召喚した耀の様子がおかしくなっていることは火を見るよりも明らかであった。

 シャークウガが真っ青な顔で叫ぶ。

 

「何だよ、あれ……! 《ガンマスター》の魔力とは桁違いだ!!」

「どうなってるんですか……!?」

「白銀耀は……あの謎のカードに完全に呑まれちまってやがる!!」

 

 耀の顔はもたれたままで見えない。

 震え上がったキャンベロが叫んで紫月に抱き着いた。

 

「キャイインッ……あれは……まるで、鬼のようだキャン……!!」

 

 

 

「──壊す。壊れろ。壊れちまえ──」

 

 

 

 

 

<Wake up……Iam dragon>

 

 

 

 羽根を広げる龍。

 無数の銃火器が翼や肩に取り付けられていく。

 最早、ジョラゴンを超えたジョラゴンとでも言うべきだろうか。

 

 

 

<The end of emperor shall prostrate myself at your feet──>

 

 

 

 

「──切札爆発。暴君降臨──ぶっ潰せ、《Theジョギラゴン・アバレガン》!!」

 

 

 

<──Over load!!>

 

 

 

 咆哮が辺りを揺るがし、紫月を戦慄させる。

 龍帝の暴走が、始まろうとしていた──

 

 

 

「そんな……先輩が……!!」

 

 

 

 ※※※

 

 

 

「ふっ、思った通り怒り狂ったか白銀耀」

「壊す、壊す……俺の思い通りにならねぇやつは全部壊す……!!」

 

 ──気に入らねえ。気に入らねえ。イライラする。思い通りにならない苛立ちが、怒りが、胸の奥から込み上げてきて止まらねえ。壊して、全部、黙らせてやる──テメェら全部、ぶっ壊してやる──!!

 

「あいつら皆目障りで耳障りだ──気に食わねえ──テメェらトキワギ機関も……()()()()()、全部ぶっ壊して黙らせてやる──!!」

「哀れだな、白銀耀。よもや、此処まで効くとは……日頃からストレスが溜まりに溜まっていたか? 同情するぞ」

「先ずは……テメェから……消え失せろ──ッッッ!!」

 

 無数の銃火器から漆黒のビームが撃ち放たれる。

 理性無き怒りのままの砲撃は、空亡のみならず──耀も傷つけていく。

 辛うじてそれはシールドが受け止めたが、シールドの1枚は破壊されてしまった。

 

「マスター!! どうしたでありますか!! 落ち着くでありますよ!!」

「うるせぇぇぇぇーっ!! 知ったこっちゃあるかァァァーッ!!」

「ほぎゃーっ!?」

 

 砲撃は止まる事を知らない。

 そのまま、《バーンメア》も《ダンダルダ》も巻き込んで打ち壊していく。

 

「な、何でありますかぁ!? あの《ジョラゴン》を捲った途端にマスターが……!」

「《ジョラゴン》ではない。《Theジョギラゴン・アバレガン》だ」

「ッ!? 貴様、何か知っているでありますか!」

「知っているも何も。先程、デュエルの前に一瞬だけ時止めしてGRゾーンに細工をした。ジョラゴンの生命力を暴走させたのだ」

「何と……!? こ、この、卑怯者……!」

 

 空亡は嗤いもせずに言った。

 

「卑怯? トキワギ機関の最高幹部にして全ての汚れ仕事を請け負う……それが我々【抹消者】のやり方だ」

「何てことをしてくれたでありますか! 誰よりも優しい我がマスターをよくも……許せないでありますよ……!」

「何を今更。その”優しい我がマスター”に負担を掛けていたのは何処の誰だ? 戦いに駆り出し、彼の仲間を巻き込ませ、そして離散させた……お前が言うのか?」

「あっ、う……!」

「諸悪の根源の貴様が言っても何も説得力は無いな、チョートッQ。やはり……お前達は共倒れが相応しい。白銀耀は、仲間の手によって滅びるのだ」

「ぶっ潰れろォォォーッ!!」

 

 《ジョギラゴン》の砲撃によって空亡のシールドが3枚、撃ち砕かれる。

 しかし──

 

「S・トリガー、《キューギョドリ》を《マーチス》に投影(オーライズ)し、《マリゴルドⅢ》を出す。《マリゴルド》の効果で《怒流牙 佐助の超人》を場に出す」

「なっ!? またクリーチャーが沸いて来たであります……!?」

「更に、《マーチス》のマナドライブ5で《サザン・エー》を追加でGR召喚する。そして、《サザン・エー》を破壊して2枚ドローだ。更に《キューギョドリ》の登場時効果でも1枚ドローする」

 

 空亡は再びバトルゾーンにクリーチャーを展開し、手札を増やしていく。

 加えて、《マリゴルド》の効果で場に出た《佐助》が曲者だった。

 その能力は、カードを1枚引いて1枚捨てるというもの──

 

「《佐助》の効果で《斬隠蒼頭龍 バイケン》を捨てる。その時、《バイケン》は捨てられる代わりに場に出てくる──!」

「なっ!?」

「いい加減五月蠅いな、守護獣。消えて貰おう──《バイケン》の効果で《ダンダルダ》を手札へ戻す」

 

 激流が渦巻き、《ダンダルダ》の機体は消える。

 最早、声など届かないマスターに手を伸ばしながら──

 

 

 

「マスタァァァーッ!!」

「これで貴様のターンは終わりだ、白銀耀」

 

 

 

 唸り声を上げる耀の前に、二体の蒼神龍。

 そして、ギガ・オレガ・オーラが立ちはだかる──

 

「呪文、《パーロックのミラクルフィーバー》。その能力でカードを1つ指定する。選ぶのは──《時の法皇 ミラダンテⅫ》。そして、これが出るまでデッキからカードを引き続ける──」

 

 山札がごっそりと減ったかと思えば──空亡の手には《ミラダンテⅫ》が握られていた。

 彼女は笑みを浮かべた。

 

「やはり私は──神に愛されているようだ。《バイケン》で攻撃──するとき、革命チェンジ」

 

 忍びの頭目たる蒼神龍が飛び掛かるその時、羽根を広げた天使龍へと入れ替わる。

 天使龍の放つ時計の針が、耀の身体を押さえつけた──

 

 

 

「これより貴様を抹消する──《時の法皇 ミラダンテⅫ》」

「う、うううう、てめぇぇぇぇぇぇーっ!!」

「吠えるだけとは哀れな事だ。ファイナル革命で貴様はコスト7以下のクリーチャーを召喚出来ない」

 

 

 

 動くことのできない耀目掛けて天使龍が時針を胸に突き刺す。

 

「がっ……はっ……!?」

「そして──私は《ミラダンテ》の効果で《ファイナルストップ》を唱えている。貴様はもう、何も出来ない」

「ぎ、あぁああああッ……!!」

「さらばだ、裸の皇帝。自分の醜い本性をしかと焼き付けながら──ゆっくりと滅べ」

 

 《マリゴルド》によって最後のシールドが割られた。

 しかし、もう耀は何も抵抗することが出来ない。

 ただただ空亡を睨み付けながら、燃え滾る激情のままに叫び続けるだけだ。

 

 

 

 

「──《蒼神龍チェンジ・ザ・ワールド》でダイレクトアタック」

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