学園デュエル・マスターズ WildCards【完結】   作:タク@DMP

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GR79話:邪王駕

「《ドクガン竜》を召喚!!」

 

 

 

 現れたのは──龍に鬼の字を重ねた装甲竜(アーマード・ドラゴン)!?

 嘘だろ、こんなやつ見た事ねえぞ……!?

 

「龍も俺の手に掛かれば鬼と成る──!」

「っ……ドラゴンで鬼とか聞いてねえぞ!!」

「クカカカッ、強い物に強い物を混ぜりゃあ、そりゃあ鬼強ってモンよ!! 《ドクガン竜》で攻撃──する時、《カタブランプー》の(リキ)を5000削って磨り潰す!!」

 

 龍の一閃が《カタブランプー》を切り裂いた。

 つまり、こうか。攻撃時に相手のパワーを-5000する、スピードアタッカーで──

 

 

 

「一撃で引き潰す!! 双刃を喰らえ!!」

 

 

 

 

 ──W・ブレイカーってことか!!

 砕かれたシールドを見やり、俺は光ったカードを突きつけた。

 

「S・トリガー、《モモダチパワー》で《キズグイ変怪》を破壊する!」

「チッ、首の皮一つ繋がったか。だけど──既に鬼の時間は始まってるんだぜェ!」

「……?」

「此処からは黄昏時……鬼の魔刻だ。テメェは俺様に勝てない」

「何言ってやがる。切札を出しただけで油断するのはやめておいた方が良いぜ! こっちには桃太郎が居るんだからな!」

 

 そうだ。

 今砕かれたカードの中に、俺は活路を見出した!

 桜桃に封じられていた桃太郎の力……今こそ使う時だ!

 

「俺のターン! 《モンキッド》でシールドを攻撃!」

「ウッキィーッ!! 俺様の出番だぜ!!」

 

 バナナのブーメランが酒呑童子のシールドを切り裂く。

 これで──相手のシールドは残り2枚だ!

 

「だから言ってんだろ? 勝てねえってよ──」

「!?」

「……逆襲(ストライク・バック)発動、《ザンジ変怪》が伏兵にいたんだよ、ヴァァァーか!!」

 

 割られたシールドを糧に、いきなり飛び出したのは金色の体毛に包まれた獣。

 それが、《キャンベロ》を追いかけ回し、噛み砕いた──!

 

「ぎゃいんっ!?」

「キャンベロ!? S・バック獣を抱えてたのか……!」

「《ザンジ》の効果で、テメェの妖怪の力を4000削った。ちったぁ怖気づいたか?」

「っ……!」

 

 まずい。

 相手の場にはクリーチャーが2体。

 しかも場数を減らされた今、このままでは俺はこのターンで勝負をつけることができない。

 となれば──取ることが出来る手段は一つしかない。

 

「油断してんのも今のうちだぜ、酒呑童子! 俺の切札(ワイルドカード)でお前を倒す」

「わいるど、かーどぉ? 何だぁそりゃあ」

「どんな困難も打破できる……最高の切札って意味だ!」

「人間!! キリフダッシュを使え!! 今こそ桃太郎様を呼び出すんだ!!」

「分かってる! キリフダッシュ発動!」

 

 支払うマナは火と自然の5枚。

 これで……桃太郎を呼び出す準備は出来た!

 

 

 

<ジョーカーズ疾走!! キリフ・ダッシュ!!>

 

 

 

 桜の花が舞い落ちる。

 皇帝(エンペラー)のカードが燃え滾るように赤く輝いた時、目の前には黄金の紋章が刻まれた。

 

「マスターの紋章……!?」

「いや、違うでありますよ……!」

 

 息も絶え絶えなチョートッQの声が聞こえてきた。

 今にも死にそうといった体だ。

 

「お前、大丈夫なのか!?」

「まずまずであります……! それより、アレを見るでありますよ! マスターの紋章と似て非なるもの……しかし、恐ろしく強い魔力が込められている……!」

 

 熱風が吹き荒れる。

 俺もその名を呼ぶとしよう。

 桃太郎改め、お前の本当の名を!

 

 

 

「これが俺の切札(ワイルドカード)──《勝熱(ジョーネツ)龍 モモキング》、召喚!!」

 

 

 

 紫電が辺りに迸る。

 思わず腕で目を覆った。

 そして瞼を開ければ、そこに居るのは二刀を携えた桃色の龍だった。

 

「っ……これが、桃太郎? いや、モモキング……!!」

 

 思わず肌が震える。

 ジョラゴンとはまた違う、龍の威厳。

 こいつは1000年もの歴史を抱えたクリーチャー。

 何でだろう、こいつなら鬼も倒せる気がする……!

 

「お、おおお、遂に桃太郎様の登場ッキーッ!!」

「ブルブル……何か怖いキャン……何にも言わないし……!」

「何だって良い! 力を貸してくれ、《モモキング》!!」

 

 カードをタップすれば、龍はすぐさま酒呑童子目掛けて切りかかった。

 このまま押し切る!

 

「何だよ。ようやく桃太郎様のお出ましか──」

「《モモキング》はスピードアタッカー! そして、W・ブレイカーだ!」

「……と思ったのに、蓋を開けてみりゃこの様か?」

 

 一瞬だった。

 シールド目掛けて走っていた《モモキング》は、いきなり地面に捻じ伏せられる。

 その腕には、《ザンジ変怪》が食らいついていた──

 

「モ、モモキング!?」

「バァカ、言っただろ? 既に鬼の魔刻は発動していると!」

 

 

 

<オーガ魔刻!! 鬼・タイム!!>

 

 

 

 戦場が一気に暗く塗り替えられる。

 空は不気味な夕陽が差し込み、鬼達に刻まれた紋様が爛々と輝いた。

 

「っ……何だ、これ!?」

「これが俺達、鬼の力。鬼時間だ。テメェと俺のシールドが6枚以下の時、鬼は恩讐の力で強くなる」

「は、はぁ!? 何だそれ……!」

「マスター、《ドクガン竜》の能力が追加されてるでありますよ!」

「そうだ! 《ドクガン竜》の鬼時間で、俺のクリーチャーは全員守護(ブロッカー)になってるってわけさね」

「ブロッカーだろうが関係ねえ!!」

 

 《モモキング》の刀が《ザンジ変怪》の首を切り落とした。

 そして、再び酒呑童子目掛けて切りかかる──

 

「《モモキング》がバトルに勝った時、カードを1枚引いてアンタップする! このまま残りのシールドを貰うぞ!」

「ッハハハハハハ!! テメェら人間は何も分かってねえ! 斬ったくれえで、俺達鬼の恨みが消えると思ってんのか? ちゃんちゃら甘いとはこのことだぜ! やっぱり、絶滅するしかねえな!!」

 

 言われたその時、気付いた。

 《モモキング》の腕には、まだ《ザンジ変怪》の首が食らいついたままだ。

 

「っま、まさか──!」

 

 そうか、道理でらしくないと思ったんだ。 

 闇のクリーチャーが、ただブロッカーを付与するだけじゃない、と。

 

「くたばれ、桃太郎!!」

 

 《ザンジ変怪》の目が妖しく輝く。

 その首が紫色の炎に包まれると、一瞬で《モモキング》の身体を焼き尽くしてしまった。

 

「んな、馬鹿な……!?」

「ハハハハハ!! 《ドクガン竜》が居る限り、俺の鬼は死んだら倍返しするぜ」

「最大の肝はスレイヤー付与だったのでありますか……!」

「っ……!」

 

 破壊されてしまった。《モモキング》が……!

 嘘だろ。桃太郎ってこんなもんだったのかよ!?

 

 ──いや、まだだ、何考えてやがる俺……!

 

 俺は、何を動揺してるんだ?

 まだだ。まだ大丈夫だ。

 俺のデッキには、他にも切札が居る。

 まだ、負けたって決まったわけじゃない。

 そのはずなのに……この薄ら寒さは何なんだ?

 

「はぁーあ。つまらねえなあ。1000年前はもっと強かっただろ、桃太郎!! もっと俺様を愉しませろォ!!」

「うるせぇ! まだデュエルは終わっちゃいない!」

「い~や終わりだ。こんなつまらねえ遊戯は死合いなんかじゃあねえ」

 

 腕を組んだ酒呑童子は言い放つ。

 

 

 

「やっぱり──脆弱で薄汚ェ人間は滅びるしかねぇなあ!!」

 

 

 

 タップされるのは5枚のマナ。

 そして、浮かび上がるのは──《モモキング》と同じ黄金の紋章だ。

 赤黒い煙が辺りに満ちる。

 

「奪うぜ、テメェの言葉。最高の切札って意味だっけか? ククク、だけど切札は俺の性には合わねえなあ──」

「っ……!?」

「天上天下、天下布武、俺達鬼が全てを奪う!! 力が全て、勝てば官軍!! さあ泣け、叫べ!! 脆弱なる人間共ッ!!」

 

 肌が震えた時、俺は漸くこの薄ら寒さの正体に気付いた。

 鬼の抱える大鬼。

 俺は──自分でも気づかぬ間に、奴の抱えていた鬼札に恐怖していたのだ、と。

 

 

 

 

「これが俺様の鬼札(ワイルドカード)!! 《鬼ヶ鬼 ジャオウガ》様のお通りだァ!!」

 

 

 

 巨大な棍棒を振り上げた骨面の大鬼が咆哮を轟かせる。

 これが、酒呑童子の器になったクリーチャー……!?

 ダ、ダメだ、デカすぎる。

 直視するだけで、魂を持っていかれそうだ。

 

「わ、我らは……こんな、奴と戦ってたのでありますか……!?」

「バカ! 気を動転させるな! こんな状況……幾らでも乗り越えてきただろ!?」

 

 こいつのコストは見た限り10コスト。

 鬼タイムでコストを軽減させて場に出てきたのか……!

 

「こいつは強ェぞ!! 流石は俺の器の鬼ってだけはある!! 《ジャオウガ》でテメェの最後のシールドを叩き潰すぜェーッ!!」

「S・トリガーがあれば、耐えられるッ……!」

「バァカ!! 例え天運がテメェに味方しようがしまいが、もう関係ねえ!! 此処は鬼の世界、鬼を怒らせたらどうなるか、教えてやろうじゃねえか!!」

 

 奴の墓地からカードが浮かび上がる。

 ま、まさか──

 

「《ジャオウガ》で攻撃するとき、墓地からコスト7以下の火か闇の妖怪を場に出す!! 《キズグイ変怪》、死んだ恨みを今こそ晴らせ!!」

「なぁっ!?」

「そして──ぶっ潰す!!」

 

 シールドが砕かれる。

 出てきたのは──

 

「S・トリガー……《ヘットルとフエートル》でブロッカーの《ドクガン竜》を破壊──」

「はっ、呆気ねぇな。所詮、桃太郎を使おうが使うまいが、期待外れだったな」

 

 赤い獣の牙が光る。

 嘘だろ。

 また、負けるのかよ俺──しかも、こんな所で──!

 

 

 

「《キズグイ変怪》でトドメだ!!」

 

 

 

 ※※※

 

 

 

「っ……がっかりだぜ。桃太郎にも、テメェにも」

 

 

 

 全身が、もう痛みも感じなかった。

 駄目だ。

 修羅場は乗り越えてきたつもりだったけど──今度こそダメかもしれない。

 守護獣も、桃太刀も、皆倒れ伏せている。

 もう、何も出来ないのか……?

 は、はは、こんな訳の分からないラスボスにやられる幕切れも物語があって良いのかもしれない。

 ……。

 

 

 

”はいっ。当然です。私にとって、お爺ちゃんは若くてもお爺ちゃんですからっ”

 

 

 

 はは、アカリ。

 俺、怒られちゃうな。

 お前に貰ったGRの力を悪用されて、挙句の果てにはこの様だ。

 あれだけ信じて貰って、色々してもらって──こんな所で、終わるなんて──

 

「オイこら、何か申し開きは……あんのか?」

「いぎぃっ……!?」

 

 

 

 ごりっ

 

 

 

 腕から何かが砕ける音が聞こえてくる。

 酒呑童子が俺の腕を踏み躙っている。

 鬼の力は、人間のソレをはるかに凌駕していた。

 

「ねぇみてえだな。さぁーて、お望み通り、殺して──」

 

 振り上げられた棍棒。

 思わず目を瞑った──その時。

 

「……おいテメェ。何で龍を身体ン中に宿してやがる?」

「……?」

 

 あれ?

 まだ……死んでない?

 

「……冥途の土産だ。聞いてやろうじゃねえか。何でテメェの身体の中に龍が居る? それもタダの龍じゃねえ、下手したら桃太郎のそれを凌ぐヤベー代物……オイ、何で隠してるんだ? 言ってみやがれ! この俺様をナメてたのか!?」

 

 こいつ、俺の中のアバレガンが見えてたのか!?

 

「……テメェを起こした空亡が、俺の切札を諸々全部俺の身体ン中に封印しちまったからだよ……」

「……ンだと? 空亡がァ? あいつっ、余計な真似を!」

 

 ……こいつ、怒りだしたぞ。

 待てよ。

 アレか……もしかして、これはもしかするぞ。

 勝負に水を差されて……怒ってるな?

 幸い、意識はさっき腕を折られたのでハッキリしてる。死ぬ程痛いけど。

 それでも命あっての物種だ。

 こいつを倒すなら、生き残らねえと……!

 

「ってことはテメェ、本気じゃなかったって事か?」

「本気で戦えなかった、が正しいな。……にしても残念だぜ」

「んあ?」

「いや、良い。ぶっちゃけお前に折られた腕が痛くて痛くて……そろそろ楽にしてくれねえか?」

「……言え。テメェの頭ァ潰すのは後にしてやる」

「だってそれ言ったら、お前絶対に怒って俺を殺すだろ?」

「怒らねえから言ってみろ。鬼はウソを吐かねえ」

「……テメェ、俺の中に封じ込められたドラゴンが怖いんだな?」

「ッ……何だと?」

「そうだ、そうに決まってる。だって鬼の頭領ってんなら、龍だろうが何だろうがバッタバッタなぎ倒しちまうんだろ? なのに、今此処で俺を殺すってことは……俺の中に居る龍が怖いんだ」

「て、て、めぇ、言わせておけば──ぶっ殺して」

「怒らねえんじゃなかったのか? 鬼はウソを吐かねえんだよな?」

「う、ぐ、ぐ」

 

 正直、此処からは既に舌先だけで喋っていた。

 読んだことのある漫画から拾ったフレーズを思い出しながら煽る事しか考えられなかった。

 それに、何もせずに死ぬか、何かして死ぬなら──俺は後者を選ぶ。

 現にコイツ、もう少しで乗せられそうだ!

 

「一ヵ月もありゃあ、龍の封印をどうにかして、お前を倒すだけ強くなれるのに……お前は此処で俺を殺しちまうんだな?」

「……」

「あーあ、それなら仕方ねえ。だけどがっかりだぜ。鬼の頭領がこんな腰抜けだったなんて──な」

「……クッ」

「どうぞ一思いに。ま、後は俺の仲間が──テメェを殺しに行くから覚悟しとけよ」

 

 棍棒が振り上げられた。

 あ、死んだわコレ。

 

 

 

「……クッカカカカカ!!」

 

 

 

 どすん!!

 

 

 俺の顔の横に棍棒が突き立てられている。

 ……あれ? 生き残った?

 

「良いぜ、俺様相手にそれだけナメた口を利ける人間は初めてだ!! 俺もなぁ、気になってたんだよ。桃太郎もヤケに弱すぎるし、テメェの中に居る龍とやらも気になる。となりゃあ、テメェを殺すのは惜しい」

 

 マジで?

 や、やった、これで──

 

 

 

 

「二週間後だ。二週間後に日本を火の海に変える」

「え?」

 

 

 

 ──ちょっと待て。

 期間、短くなってないか?

 

「それだけ時間がありゃあ、俺様も完全に力を取り戻せる。こんなちっぽけな島国、一瞬で滅ぼせる。分かるか? 今の俺様は神類種なんだからな」

「……」

「分かったな? それまでに、俺様を愉しませるくらいに強くなってみせろ。俺様は京の都の清水で待っている」

「……はっ、ははは」

 

 ちょっと待てよ。

 日本を一瞬で火の海に変える? 

 こいつ、ハッタリでも──いや、鬼はウソを吐かねえんだっけか。

 

「もし約束を破ってみろ? テメェら人間を絶滅させる。勿論テメェも一緒にだ」

 

 ……。

 ビビってられるか。

 どうせ倒さなきゃいけない相手だったじゃないか。

 

 

 

「上等じゃねえか!! 今度こそぶっ倒してやる!!」

「クハハハハ、気に入ったぜ人間!! 弱いがテメェは芯が通ってやがる!! 楽しみにしてるぜ、2週間後をな!!」

 

 

 

 

 鬼の姿が立ち消えになる。

 そうして、自分が助かったのを確信すると──先ず、全身に痛みが襲い掛かるのだった。

 ──もし、次負けたら日本中が焦土に?

 胃が痛くなるどころの話じゃない。

 元々ヤバい奴とは分かり切ってたけど……空亡もなんて奴を復活させてくれたのだ!

 腕は恐らく粉々だし、今は立つ事もままならない。

 2週間でまともにデュエル出来るようになるかも怪しいのに……!

 

「どうすれば、良いんだよ……!!」

 

 

 

「よう、相変わらず死にかけてんなテメェは」

 

 

 

 その時だった。

 ブスリ、という音が聞こえた気がした。

 折れた腕には──巨大な鍵状の針が刺さっていた。

 直後。

 再び俺は死ぬ程の激痛に苛まれたのだった。

 そうして、俺が何度か失神しかけた後の事。

 元凶たる彼は──背後に見覚えのない蜂の超獣を従え、死に体で過呼吸気味な俺の顔を覗き込む。

 朦朧としていた意識は──俺を見つめる彼の顔を見ると吹っ飛んでしまった。

 

 

 

 

「桑原……先輩!?」

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