学園デュエル・マスターズ WildCards【完結】   作:タク@DMP

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GR81話:力の座──力の守護獣

 ──力の座。

 それは三重県伊勢市のとある山に樹海に隠された結界によって秘匿された修行場。

 巌流齋を名乗る剣豪の亡霊が取り仕切るそこは神秘のシェルターとでも言うべき場所である。

 従って。此処は日本に住む「怪異」を知る裏の人間が多数隠れ住む場所でもあるということ。

 何より、神社本庁──つまり伊勢神宮とのコネクタもしっかり出来ている訳で、紫月の耳にも耀達の居場所は伝わっていた。

 

「白銀耀が向かったというのは、その力の座で間違いないということだケン」

「何でそんなものが三重に隠されてるんですか、おかしいでしょう」

 

 裏の業務に携わる神職の修行場……伊勢神宮に限らず、様々な家柄の人間が訪れるのだという。

 眉唾だったが、彼らがそこに居る以上紫月は駆け付けざるを得なかった。

 

「で、貴方の力を借りている訳ですが……何時になったら着くんですか?」

「そう焦る事は無いケン」

「マスター、皆揃って命はあるみてーだから先ずは落ち着こうぜ? そりゃあ不安になる気持ちは分かるけどよ……」

「……私があの時、先輩の代わりに空亡や鬼と戦っていれば」

「過ぎた事を悔やんでも仕方ないケン」

「でもっ──足手纏いは、もう嫌なんです」

 

 思い返せば悔やむ事ばかりだ。

 まだ手の打ちようはあったのではないか、と。

 一歩間違えれば全滅も有り得た展開だ。

 自分に出来る事は無かったのか? そう思うときりがないのは分かっていた。

 分かっていたが──そう易々と割り切れるほど簡単ではない。

 

「分かっています。分かっていますよ。白銀先輩は今回の件で私が思いつめるのを良しとしないでしょう。でも……」

「もう良いだろマスター。あんたの失態は、俺の失態でもあるんだ」

「シャークウガは──」

「俺はチョートッQと違って、戦闘力が高い訳じゃねえ。カードとしての性能も、あんたが頭悩ませてデッキ組んでるくらいには難しい事なんて分かってらァ。だけど、それでもあんたには感謝してんだぜ。あんたが俺を使って全力を尽くしてる事なんて、皆分かってる事だ」

「……」

「だから、此処は俺達二人の非ってことで手打ちにしねえか? マスター」

「……そう、ですね。ごめんなさい」

「しかし、あれだけの戦闘を潜り抜けたのだ。ナイーブになるのも無理もないケン。普通の女子ならば、とっくの昔に心が折れているだろう」

「折れる訳には、いかないんです。逃げるのは簡単です。でも、大好きな人が傷つくのは……もっと嫌なだけですよ」

 

 言ってしまえば、戦ってきた理由はそれだった。

 今は? と問われると、きっとそれだけではないと答えることも出来る。

 しかし──原点はやはりそこだった。

 

「こんなクサい事昔は言えなかったですけど。今なら……言えます。何処かの馬鹿な人の熱いものが伝染ってしまったからですけど」

「バカな人、か……白銀耀か?」

「ええまあ──何で分かったんですか。読心術持ちですか」

「お前ら距離近いケン。後、白銀耀は──桃太郎に選ばれた以上は、そんな奴って気がしたケン」

 

 ケントナークは溜息を吐いた。

 真っ赤になった頬を抑えながら、気を逸らすように彼女は言った。

 

「桃太郎に選ばれるのになにか条件が? 白銀先輩がそれに当てはまっていたのですか?」

「第一に鬼の如き豪傑であるべし、と聞いているケン。だが、それでいて純然たる武人であること、そして神職の力を持つ事、条件は山盛りケン」

「待ってください。白銀先輩は神職では──」

「坂田の家の少宮司が原因だケン」

「そういやあいつ、死に際に……いや、死んでねえけど、なんか白銀耀にやってたな」

 

 そのやり取りはシャークウガも目撃していた。

 手を握り締めた際に行われた魔力のやり取り。

 それに耀が気付く余地はあの状況では無いに等しく、恐らく彼も自分の体内で起こった変化を自覚してはいないだろうと言う。

 

「……魔力の受け渡しケン。それで、白銀耀の西洋式のマナが倭式の神力に変質したんだケン」

「マナが変質? それ、大丈夫なんですか?」

「要は家の中の洋式トイレを改築して和式トイレに変えたみたいな感じってことだな!」

「何故トイレで例えたんですか」

「方式を変えてもトイレはトイレだろ? だから、悪影響は……そんなに出ねえ、と思う。懸念はあるけど」

「……まあ貴方が言うなら些事なのでしょう。懸念とやらは後で聞きます。それで? マナが変わった事で、あの人は桃太郎に選ばれた、と」

「じゃなきゃ、そもそも桃太郎は飛びつきもしなかったはずだケン」

「でも、白銀先輩は……桃太郎は何故、鬼に敗れたんですか」

 

 伝承によれば──鬼を倒した桃太郎は、鬼に対して強力な特効を持っていてもおかしくはない、と紫月はゲーム脳で分析する。

 それほどまでに強いからこそ、桃太刀達も桃太郎を求めていたはずだ。

 しかし、結果は耀の敗北に終わった。

 

「一つ。やはり酒呑童子が強過ぎる事──」

「……それは認めざるを得ないですね」

「そして……恐らく、まだ桃太郎は白銀耀を認めていないケン」

「認めていない?」

「それがさっきの懸念だな。上位のクリーチャーを扱いこなすってことは、それ相応の精神と力が求められる。ただ使役するだけじゃダメなんだよ」

「白銀先輩でも、ってことですか?」

「ああ。伊勢神宮の連中が言ってたろ?」

 

 難しそうな顔でシャークウガは言ってみせた。

 あの異常なほどの魔力を秘めたカードを思い起こすように。

 

 

 

「あのモモキングってのは十ある王のカードの一つだ、と」

 

 

 

 ※※※

 

 

 

 突如始まってしまった、俺と桑原先輩のデュエル。

 エリアフォースカードを使った戦いである以上、どちらかが傷つくのは明白。

 一体、何考えてんだよ……!

 

「先ずは種蒔きだ。《ラ・トビ・トール》召喚!」

「カブトムシのクリーチャー……グランセクトか!」

 

 先攻の桑原先輩は3ターン目から動き出した。

 現れたのは、ラスト・バースト持ちのグランセクトだ。下手に破壊すれば、下の呪文面の効果が発動してしまう。

 ……でも、それまでのはずだ。普通にブーストするだけなら、マナ加速を入れれば良いだけだし。

 どっちにせよ、今までの先輩のデッキとはかなり趣が違う。マナには《テック団の波壊Go!》が置かれてるわけだし。

 《タイク・タイソンズ》を出して滑り出しは順調だった俺だが……相手が何をするデッキなのかイマイチ分かりかねてきたぞ。

 

「《タイク・タイソンズ》で攻撃──する時、《ドンドド・ドラ息子》に革命チェンジ! 効果で山札の上から4枚を表向きにして、《メラビート・ザ・ジョニー》を手札に加える!」

「……ブレーキってモンを知らねえみてーだな。流石ジョーカーズってところか」

 

 シールドが1枚、叩き割られる。

 だけど──すぐさまそれは収束していった。

 S・トリガー……なのか!?

 

「だけど、止めてやる。展開しろ、《Dの博才 サイバーダイス・ベガス》!」

「っ……!」

 

 戦場は巨大なカジノに塗り替えられる。

 手札から水の呪文を放つことが出来る、D2フィールド……!

 こいつが居るだけで、攻めるのが難しくなるのは明白だった。

 

「さあ来るか? 退くか?」

 

 しかし、問われて気付く。

 このデッキを手に取った時点で退路など無いのだと。

 

「……押すしかない!」

 

<ジョーカーズ疾走!! キリフ・ダッシュ!!>

 

 皇帝のカードが熱を帯び、手札の桃太刀が唸りを上げる。

 本体は此処には居ないからか声は聞こえてこないけど──

 

「《モモダチ モンキッド》召喚! 効果でマナを増やす! ターンエンドだ!」

「次のターンには《メラビート》か……速いのは相変わらずだな」

「弱くなったなんて、言わせない……! 俺は、俺には──守らなきゃいけないやつが居るんだ!」

 

 紫月を。

 そして、この現代を。

 やらなきゃいけない事は沢山ある。

 だから──俺は挫けるわけにはいかないんだ。

 

 

 

「……悪いが、今のテメェにゃ無理な話さね」

 

 

 

 しかし。

 それを否定するかのように桑原先輩は言ってのける。

 そこに何時ものような熱さはない。

 

「なん、で──」

「今のテメェに言っても仕方ねえことだ。テメェは心のどっかで、俺に勝てないって思ってる」

「そんな訳無い! まだ勝負は始まったばかりじゃないですか!」

「違うと思うなら俺に勝ってみろ。呪文、《邪魂創世》で《ラ・トビ・トール》を砕く」

「っ……《邪魂》!?」

「こいつの効果は知ってるよな? クリーチャーを殺して、3枚引く呪文だ。だけど、そこに《ラ・トビ・トール》が加わって化学反応(グラデーション)が起こる」

 

 

 

<LAST BURST>

 

 

 

「芸術は爆発だ、ってな」

 

 

 

 黒い煙に飲み込まれ、爆発四散する《ラ・トビ・トール》。

 しかし──そこから、桑原先輩の手札が、そしてマナが一気に増えていく。

 

「ラストバースト呪文、《ケンドリック・ハーヴェスト》! 効果でカードを2枚マナに置き、そして1枚マナからカードを回収してもよい──まあ今回は回収無しだけどな」

「ウッソだろ……!? マナが2枚、手札が3枚増えた……!?」

「《ベガス》の効果で更に1枚ドローしてターンエンド。まさか、この程度で怖気づいたって言わねえよな?」

「っ……」

 

 そうだ。

 何を今更臆する必要がある。

 俺は──此処で止まっているわけにはいかないのに!

 

「魂を燃やせ──点火(イグニッション)J・O・E(ジョーカーズ・オーバー・エクスプロード)!」

 

 《ドンドド・ドラ息子》の効果で、コストを2軽減!

 これで──決める!

 

 

 

「これが俺の灼熱の切札(ザ・ヒート・ワイルド)! 《メラビート・ザ・ジョニー》!」

 

 

 

 これは、紫月が組んでくれたデッキなんだ。

 それにキリフダッシュが加わって、更に強くなっている──はずなんだ。

 負けて、負けてられないんだ。

 

「マスター・W・メラビート発動! 《サンダイオー》と──《モモキング》をバトルゾーンに!」

「っしゃーっ! 久々にこの姿の出番でありますよ!」

 

 サーキットを駆ける巨大な鋼の巨人が戦場に降り立つ。

 場とマナのジョーカーズの数は既に10枚を超えており、サンダイオーの刀は赤く熱を帯びて輝いている!

 

「《サンダイオー》のシールド焼却条件達成! そのまま、《サンダイオー》でシールドを焼却する!」

「我の攻撃は、ブロック不能でありますよ! もっとも、そっちの場はがら空きでありますがなーッ!」

「D・スイッチ発動」

 

 次の瞬間だった。

 賭博場が一気に反転し──

 

 

 

「さあて、綺麗にしようかね! 《テック団の波壊Go!!》でコスト5以下を全バウンスだ!」

「っ……!」

 

 

 

 《モンキッド》と《ドラ息子》が激流によって押し流される。

 シールドは全て削り切れるが、リーサルから遠のいてしまった……!

 

「ま、まだだ! 《サンダイオー》でW・ブレイク! このシールドは墓地送りだ!」

「問題ねえよ。それで? 残り2体もどうせ殴るんだろ。殴らねえと、両方共山札送りだからな──」

「勿論! そして、これだけ手札があれば次のターン以降も追撃が掛けられる!」

「だろうな」

 

 《メラビート・ザ・ジョニー》の火炎弾が火を噴いた。

 それが桑原先輩のシールドに突き刺さる──

 

「ニンジャ・ストライク4、《ハヤブサマル》でその攻撃を止める」

「ッ……そんなっ……!?」

「止めるに決まってんだろ。俺だってシールドは惜しい」

「……《モモキング》でW・ブレイク!」

「通す」

 

 切り刻まれる2枚のシールド。

 そこにS・トリガーは無い。 

 仕留め切れはしなかったが、ターンの終わりにJ・O・Eの効果で場の3体が山札の一番下に行って、俺の手札も3枚増える。

 これだけあれば次のターンも猛攻が仕掛けられる……!

 

「さて、耐えきれた訳だが……そろそろ行くか?」

 

 彼は──7枚のマナ全てをタップしていく。

 何を唱えるんだ?

 増やしたマナを使って──

 

「骨身に刻め、これが俺の新しい芸術だ!」

 

 これは、呪文……!?

 浮かび上がったのは闇の紋章。

 闇で7コストの呪文……まさか!

 

 

 

「《ロスト・ソウル》で手札を全部捨てな!!」

「な──ッ!!」

 

 

 

 あれだけ大量にあった俺の手札は全て墓地へ叩き落とされてしまった。

 さ、最悪だ!

 デッキの回りを優先していた所為で、《ルネッザーンス》を抜いていたのが裏目に……!

 

「う、そ、でしょっ、何でそんなカード……!?」

「これが、俺なりのアイツへの決別さね。(ストレングス)の本質は、相手の力を奪って跪かせること。それに則った戦いをしてるだけだ」

「っ……」

「これが……弱い俺が辿り着いた、強者を喰らう毒針だと知れ!」

 

 ま、まずい。

 手札を全て失ってしまうなんて。

 完全に、やることが無くなってしまった……!

 

「俺のターン……《バングリッドX7》を召喚してターンエンド……!」

「白銀。一つ問うぜ。テメェは一体、何の為に戦っている?」

「……そりゃあ、決まってるじゃないですか。守りたい人が居るから……!」

「だろうな。だけどよ、今のテメェにはとてもじゃねえが無理だ」

「っ……!?」

 

 どういう、ことだよ。

 何でそんな事言うんだよ桑原先輩。

 俺に。俺に一体何が足りないっていうんだ……!?

 

「まあ──自覚が無いのは当然のことだ。普通、自分の本質なんて自分で分かりっこないからな。だけど、今のテメェは非常にマズい。マズい状態なんだよ」

「何が言いたいんですか、桑原先輩……俺は問答をしに来たわけじゃ──」

「テメェが揺らいでるのは、まさにそこにあるんだよ白銀。テメェは、テメェが戦っている本当の理由が分かってねえんだ」

 

 ……?

 俺が戦う理由。

 そんなの一つしかないじゃないか。

 仲間が傷つくのが嫌だから。

 仲間が助けられないのが嫌だから──

 

「俺はッ……!」

「テメェのボランティア精神は美徳だ。美徳だが……あまりにも病的だ」

「ッ……びょう、てき……!?」

「前から思ってたんだよ。テメェは真っ直ぐで、仲間思いで──だけどな。あまりにも自分を顧みなさすぎる」

「……」

「シー・ジーの奴じゃねえが……ハッキリ言ってテメェの在り方は歪だ。それが、今になってテメェを蝕んでいる」

「俺はッ……!」

「それが何故なのか、テメェは自分で分かってねえんだ。それが、テメェの目が揺れている原因だ」

「っ……!? な、そんな訳無い!」

 

 俺は、ずっと仲間の為に戦ってきた。

 そして、今度は紫月の為に戦ってきた。

 だけど、今の俺に何が足りない?

 

 

 

「皆の為に……紫月の為に……戦ってるんだ!! そこに、何も間違いなんかありゃしないでしょうが!?」

 

 

 

 ──それだけの、はずなんだ──!!

 

「そのためには、俺は……何だってやってやるって決めたのに……俺には、まだ足りないものがあるって言うんですか!」

「……見るに耐えねえな」

「ッ……!?」

「今のテメェにゃ何にも救えはしねえ」

 

 胸を握り締める。

 

「な、そんな──」

「俺のターン。8マナをタップ──」

 

 突如鳴り響くアラート音。

 暴風が、吹き荒れる。

 何なんだ、いきなりッ……!?

 

 

 

双極災害(ツインパクトハザード)最終詠唱(ラストワード)

「──暗転しろ、《終葬(ついそう)5.S.D.(ファイブセンスダウン)》」

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