学園デュエル・マスターズ WildCards【完結】   作:タク@DMP

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GR89話:十王のカード──不審者

 ※※※

 

 

 

「──何でワシまであんさんの修行に付き合わなあかんのやーっ!!」

 

 

 

 次の日の朝。

 道着姿で修練場の入り口にやってきたのは──矢継とメイだった。

 どうやら、巌流齋の爺さんに言われてやってきた……だけではないらしい。

 

「お前の所為や! 全部お前の所為や!」

「うるせーよ知らねーよ、俺何にも知らねンだけど」

「”桃太郎の使い手が覚醒するまで家に戻ってくるな”って言われたんや!」

「ええ……」

「うるさいよハヤテ」

「あだぁっ!?」

 

 激昂する矢継の爪先に踵が落とされた。

 その場で蹲って悶絶する彼に俺は憐みの視線。

 ふ、不憫だ……。

 

「そんで、うちはハヤテのお目付け役ってところやね!」

「お目付け役のお目付け役か……」

「やかましいわ……ワシはお前が死にそうになっても手助けせぇへんからな」

「あーそうかよ。そっちこそ熊に食われないようにな」

「ワシが此処の熊なんかにビビるわけないやろ! ワシは此処の熊に食われかけて80針縫うたことがあるんやからな! 今更、怖くあらへんわ!」

 

 死に掛けてんじゃねーか! 

 そりゃそうだよな、猪と熊に何度も遭遇して無傷で生還してる桑原先輩がおかしいだけだよな。

 それにしても本当に大丈夫かよコイツ……。

 

「もう二人共! 喧嘩したらあかんよ! これからは3人で修業を完遂させなあかんのやから!」

「チッ……わぁーったわ」

 

 道着姿のメイが窘める。

 それを見てか、ようやく矢継も渋々と言った様子で先に山の中へ入っていくのだった。

 

「ケントナーク、キャンベロ、モンキッド、残りの煩悩の場所を指し示してくれ!」

「「「了解っ!」」」

「煩悩は後5個……でも、1日1つのペースなら十分間に合うでありますな!」

 

 チョートッQの言う通りだ。

 時間はまだ十分にある。

 

「白銀さんっ、頑張ろ! うち、応援してはるから!」

 

 桃太刀のカード3枚を手に持ちながら俺は次の煩悩を探しに、行くのだった──しかし。

 この時は思いも寄らなかったのだ。

 これ以上にトンチキな事態が起こるなどとは……。

 

「……ところでメイさん?」

「ん? 何?」

「……その手に持ってるのって、何?」

 

 彼女は──特大呂敷包みの結び目を握っていた。

 体躯に比べて明らかにサイズがおかしいそれは今にも地面に着きそうだ。

 

「……あ、分かった! 修行に使うんでしょ!」

「うちの弁当やけど?」

「……ウッソだろ?」

 

 食うのか。その量を全部食うつもりなのか? 正気?

 

 

 

 ※※※

 

 

 

「オイ良いか、今度こそ熊の住処に足を突っ込まないようにするんだぞ」

「分かってるケーン」

 

 正直メイの弁当の量には驚いたが、こっちも昼飯は用意している。

 朝に弱い紫月が、俺の為に食堂の職員と協力して弁当をサプライズで作ってくれたのだ。

 中身が今から気になるんだよなあ、ふふふ。

 

「おい、顔が浮かれとるぞ」

「あぁ!? そんな事ねぇよ!」

「はっ、まあええけどな。熊に食われてもワシは助けてやらんぞ──」

 

 うるせー、熊の恐ろしさくらい分かってるよ!

 だけど今回はケントナークとチョートッQがずっと見張ってくれてるんだ。

 ……そう言えば、残りの2体は何処行った?

 

 

 

「おいコラァ! それは俺のモンだっキィ!」

「違う! 僕のモノ!」

 

 

 

 ……何か騒がしいな。なんかいい匂いがしてるし。

 すっげー嫌な予感がするんだけど。

 俺は意を決して振り返った。

 そこには──

 

 

 

「ちょっとぉ!! 唐揚げは僕のモノだキャン!!」

「おいコラ、俺だって唐揚げは食いたいに決まってんだろッキィ!!」

「モンキッドはバナナも食べただろ!?」

「お前はハンバーグ食ってたッキィ!!」

 

 

 

 おい畜生二匹。

 その、俺の真後ろで広げられてる弁当箱……誰のものか言ってみろ。

 既に中身は唐揚げだけになっており、その最後の一個もキャンベロが食べてしまった。

 そういや紫月言ってたな。

 今日は唐揚げ弁当だって──

 

 

 

 ※※※

 

 

 

「マスター、申し訳ない……我が熊を見張っていたばっかりに……」

「すまないケン……」

「うん、良いんだ。お前らはよく頑張ってくれたからさ」

 

 

 

 久々に……キレちまったよ……。

 アホ二匹にはしっかりと拳骨喰らわせておきました。食べ物の恨みは怖いぞ。

 

「何と言うか……災難やったね……」

「同情するな、カレーをくれ……はぁ、何で俺ばっかこんな目に」

 

 俺よりも煩悩塗れのお供の所為で弁当が、それも紫月に作ってもらった弁当が無くなってしまった。

 一体何を食えば良いんだ……。

 険しい山を登り、早一時間。今日のコースは岩壁の多い場所。

 歩いているだけで足がだんだん痛くなってくる。

 これ多分、登山とかによる身体的な修行も兼ねてるんだろうな……俺にとっては別の修行になりつつあるけど。

 

「昼飯が無いのは辛いな……メンタルに来るやろ? うち、ちょっと分けたげようか?」

「良いよ良いよ、俺は適当にその辺のモンでも拾って食うから」

「おー、そうやな、そんでもって餓死しろ。骨は熊が拾うやろからな」

「ハ・ヤ・テ!」

「人の好意は素直に受け取っておけばええねん」

  

 く、くっそう、コイツ言わせておけば……幾ら量が多いからって、いっぱい食べる体質なのかもしれないのに分けてくれ、だなんて言い出せるわけねえだろ。

 というか、この量は明らかに大食いの人間が食う量だろ。

 武士は食わねど高楊枝。我慢だ我慢。たかが一食くらいなんだ。

 

「まあええわ。もうそろそろで平地に着く。そこで一旦休憩と行こうや」

「そ、そやね……うちも、もう疲れた……」

「俺も別の意味で疲れた……ケントナーク、煩悩はまだ見つからないのか?」

「ううむ、反応が弱いケン……上にあるのかもしれないケン」

「まだまだ先は遠いな……」

 

 この山、頂上までかなりあるぞ。

 登り過ぎると、今度は降りる時に苦戦するかもしれないし。

 そしてサンダイオーでショートカットしようにも、どうやらこの山の内部に張り巡らされた結界で魔力の消耗が激しくなっているらしく、乱用は出来ないのだという。

 どうやらクリーチャーが外から侵入した時に、力を弱める為の防衛機構としての役割を果たしているんだとか。

 なんせ不可侵領域を超えてくる以上、相当な力を持っているのは確実だとかなんとか……考えたくも無いな。

 ともかく、もうしばらくは徒歩での移動になりそうだ──

 

 

 

「──そこな修行の者! ちょっと待った!」

 

 

 

 道なき道を登り切り、平地に足を踏み入れた俺達。

 だがその時、何処からともなく声が響いてくる。

 俺達が辺りを見回すと──奥の木から影が二つ、飛んで来た。

 

「な、何だ!?」

「一体何事や!?」

 

 思わず身構える。

 しかし。

 それはクリーチャーではない。 

 人だ。それも二人。一体何なんだ──

 

 

 

「愛と勇気とプラモデルを愛する戦士、バイク仮面!!」

「愛と勇気と剣を愛する女戦士、ドラゴンレディ!!」

「「推参!!」」

 

 

 

 ──仮面で顔を覆ったスーツ姿の男女は、唐突に現れるなりポーズを取ったのだった。

 ……。

 何だこれ。

 何なんだこれ。

 辺りに沈黙が訪れる。

 なんか、すっごく既視感のある二人なんですが……一体何処の何方なのでせう。

 いやさ確かに前にもこの流れ見たよ? 三日月仮面。今となっちゃ懐かしいよな。

 

「俺はプラモデルを愛し、プラモデルに愛された男……今の俺に信用出来るのはプラモデルだけだ」

「いや知らねえんだけど」

「あ、あたしは……えーと、剣に愛され剣に愛された女! 趣味は、えーと、丸太の素振り!!」

「ヒーローの名乗りは自己紹介じゃねえよ」

 

 もうやだ。もうやめてくれ。

 こいつら、声とこの喋りからして思い当たる節があり過ぎる。

 いや、でも、待てよ。仮にアレだよ? 苗字と名前にヒの付くあいつだったとしてだぞ? あいつは国に帰ったって言ってたはず。

 だとすれば只の偶然の一致か? そうだ。そうに決まってる。

 

「なあ白銀はん。こいつら何なんや。まさかお前の知り合いか?」

「知らない、仮にそうだとしたら次会う時は知り合いじゃない、タダの他人だ」

「知り合いではない。俺達は山の精だ」

「そ、そう! スピリチュアルなアレなの! 分かる?」

 

 これ以上設定盛るな!! マジでややこしくなるから!!

 

「ええ? それじゃあ、タダの不審者って事なん!?」

「ち、違う! ふ、不審者なんかじゃないんだから! 見たら分かるでしょ!? ヒーローよヒーロー!」

「いや不審者やろ」

「失敬な。俺達は巌流齋老子に言われ、此処まで山を登って先回りしていたのだ。君達──じゃなかった諸君らを試す為にな」

「ってことは、あの爺さんの差し金って事やな!」

「二人も寄越すってことは、うちらも鍛えるつもりやったんやね!」

 

 ……。

 俺はチョートッQと顔を見合わせる。

 

「マスター、あの二人って──」

「言うな。今あいつらの正体を知ったら、俺はそいつと次に顔を合わせた時に他人のフリをしないといけなくなる」

「いや、でも、どっからどう見ても……」

「何だ。俺達の姿が知り合いに似てるのか? だとすれば見間違いだ。此処は君の心を映し出した煩悩が彷徨う場所。俺もまた、煩悩なのかもしれんぞ──」

「……そ、そうなのか?」

「君の中で、その人物に引っ掛かりがあるのだろう。だから俺達が君の中の知り合いの姿を借りて顕現した……それだけの話だ」

 

 ……すっげー早口で語ったな。

 流石に無理があると思う。だけど──有り得なくはない。

 今までも偽物事件があった以上、目の前にいる2人があいつらではない可能性も十分にある……のか?

 

「「カ、カッチョいい~~~!!」」

 

 そしてキャンベロとモンキッドに関しては目を輝かせてる始末だし。

 もういいや。こいつらは放っておく。

 

「さて、進みたければ我々を倒すんだな。力を示してみろ」

「マスター。事実奴らの力は神力に包まれているでありますよ! 我らの知っている彼らと少し違うというのは確かであります……」

「……付き合ってやるかあ、茶番に。そんでもって、その覆面ひっぺがしてやらぁ」

「待ちィや、白銀はん」

 

 前に進み出たのは──矢継だった。

 

「タダでさえ腹減っとんのに、こんな所で体力使ってどうするつもりや?」

「そ、それは……そうだけど」

「此処は大人しくワシらに任せとき。こんなふざけた奴らに負ける訳あらへんやろうからなぁ。おい、バイクなんたらって奴。ワシとやろうや」

「じゃあ、うちドラゴンレディとやるっ!」

「やから、さっさと桃太刀連れて先に行くんや!」

 

 言うなり二人は──それぞれの十王のカードを、バイク仮面とドラゴンレディに掲げる。

 

 

 

<──BOMBER!>

 

「天地神明、爆龍の軍勢よ──」

 

<──WAVE!>

 

「天地神明、波濤の軍勢よ──」

 

 

 

 次の瞬間──空間が開く。

 こうして、怪しい二人組と矢継とメイはそれぞれ戦う事になったのだった──

 

 

 

 ※※※

 

 

 

 ──メイとドラゴンレディのデュエル。

 メイのマナゾーンには自然と水のカード。

 対して、ドラゴンレディのマナには多色のドラゴンの《偽りの王 ヴィルヘルム》が置かれていた。 

 だが、それよりも特筆すべきはドラゴンレディの背後にある巨大な鎖に縛られた何かだ。

 

「っ……禁断の鼓動……!」

 

 メイの口から思わず漏れ出た。

 最初からバトルゾーンにあり、条件を達成する事で真の姿を見せる特殊なカード《禁断~封印されしX~》。

 その条件は、火のコマンドが場に出る度に墓地に置かれる封印を全て外すというものだ。

 つまり、メイにとって時間的猶予は余りないとみても良い。

 ならばやるべき事は自分のやりたい事を押し通すということだ。

 

「──うちのターン。《つぶやきブルーバード》を召喚!」

「……今何て?」

 

 自分の姿よりもトンチキな名前のクリーチャーが場に出てくる様にドラゴンレディは首を傾げ、そして己の耳を疑った。

 見た所、青い鳥のクリーチャーのようだが、見た事も無ければ当然効果も分からない。

 ドラゴンレディは──脳筋だった。 

 考える事をやめた。

 2ターン目が回って来る頃にはメンデルを打つ事しか頭に無かった。

 

「呪文、《メンデルスゾーン》! 効果であたしの山札の上から2枚を表向きにして、それがドラゴンならマナに置く──ダブルヒット!」

「……流石ドラゴンデッキやね。速い……!」

 

 やけど、と彼女は続けた。

 

「うちの方が、もっと増えるよ。うちのデッキ、大食いやから……手札もマナも沢山要るんよ!」

「なあっ!? 青緑でそんなにマナを増やす方法なんて……」

「あるに決まってはるよ、ドラゴンの不審者さん。うちは2マナで《【神回】バズレンダでマナが大変なことに?!【驚愕】》を唱えるからね」

「な、何なの!? さっきからふざけた名前のカードばっかり!」

「そっちにだけは言われたくあらへんのやけど……」

「あたしだって、好きでこの格好やってるわけじゃ……」

「こほんっ、《バズレンダでマナが大変なことに!?》はそのまま使えばマナを1枚増やすだけの呪文」

「な、何だ、タダのフェアリー・ライフじゃん……」

「だけど、この効果はバズレンダを持ってはるんよ」

「ば、バズレンダ!?」

 

 次の瞬間、《つぶやきブルーバード》がメイの周りを飛び回る。

 そして彼女が手に掲げていた呪文の効果が──倍増した。

 

「《つぶやきブルーバード》の効果で、バズレンダを持つ効果をターン中初めて使った時、それをもう1回使う。マナを合計2枚増やす!」

「んなっ!?」

「これだけで終わらへんよ! うちにはまだ3マナ残ってはるから……《眼鏡妖精コモリ》を召喚するね!」

 

 3枚のマナがタップされ、浮かび上がるのは波にWが刻まれたマーク。

 飛び出したのは、パソコンを片手に眼鏡をかけたスノーフェアリーのクリーチャーだった。

 彼女の周囲にはカラフルな文字が飛び交っており、さながら動画サイトのサムネイルのようだった。

 

「な、何そのクリーチャー……!」

「《コモリ》の効果で、カードを1枚引いて1枚マナゾーンに置く! これでターン終了やからね!」

「っ……よく分からないカードばっかり! だけど、やってる事はマナを増やしてるだけ……あたしの方が、速い。そして、重い!!」

 

 ドラゴンレディは即座に5枚のマナをタップする。

 そして──

 

「呪文、《爆流忍法 不死鳥の術》! あたしのバトルゾーンにあるカードを2枚墓地に置いて、その中から火の進化じゃないクリーチャーをバトルゾーンに出す!」

「しまっ……不死鳥型……!?」

「場にあるカード……《禁断》の封印を2枚、墓地に置く!」

 

 封印はカード扱い。

 よって、この呪文の効果で指定して墓地に置くことが出来る。

 そしてその中に火の進化ではないクリーチャーがあれば──

 

 

 

「沙羅双樹の花の色──刃は儚き夢想の如く!! 

抜刀、《無双龍幻 バルガ・ド・ライバー》!!」

 

 

 

 ──問答無用で、降臨する。

 現れたのは、コスト10の超巨大アーマード・ドラゴンの《バルガ・ド・ライバー》だ。

 その頭部には戦車を暗示するⅧの数字が浮かび上がり、そして消えた──

 

「──コホンッ、そこな女子よ。俺とこの後一緒に茶でもどうだ?」

「ドライバー! 自重、自重! 今はそんな事言ってる場合じゃないでしょーが!」

「すまない主君よ、しかしこれは最早俺に刻まれた因果だ。美しい女子を見たら口説きたくなるのが男のサガ、違うか?」

「違うから! 真面目にやって!」

 

 ドラゴンレディは慌てて、自らのクリーチャーに叫ぶ。

 まるで漫才をやっているような1人と1体にメイは唖然としてしまう。

 

「……うちは、何を見せられてはるの?」

「うっさい! 《バルガ・ド・ライバー》はスピードアタッカーのT・ブレイカーなんだから! シールドを攻撃──する時、効果発動!」

「やれやれ、俺の主君はせっかちで困る。レディには先ず手優しく──なっ、と!」

 

 二刀を抜いた装甲竜の斬撃は次元を切り裂き、ドラゴンを龍の永遠の住処たる龍幻郷より呼び出す。

 現れたのは──

 

「《超戦龍覇 モルトNEXT》、召喚! その効果でマナゾーンに火のカードが5枚以上あるから、《爆銀王剣 バトガイ刃斗(ハート)》を装備するよ! 更に、封印を1枚墓地へ!」

 

 ──ドラグハートを極めた龍剣士。

 切り裂かれた次元から、銀河の如く熱く煌く剣が手に握られた。

 

「っ……モルネク!? このタイミングで出てくるなんて……!」

「失敬。どうやら、俺の剣は手加減出来なかったようだ」

「ラッキー! このまま、押し切ってやるからねっ! T・ブレイクだよ!」

 

 砕かれる3枚のシールド。

 その中にS・トリガーは無いようだ。

 そのまま、赤く燃える銀河の剣《バトガイ刃斗》を振り上げた《モルトNEXT》が斬りかかる──

 

「《バトガイ》を装備したクリーチャーで攻撃するとき、効果発動! 山札の上から1枚を捲って、それがドラゴンだったら場に出す!」

「っ……れ、連ドラ……! 凄い上ブレやないの!」

「上ブレ上等! 押し潰す! 出たのは《龍世界 ドラゴ大王》だよ!」

 

 突如、彼女の背後から超巨大な龍の覇王が姿を現す。

 それは、龍以外の存在を許さない圧政者だ。

 その掌に《つぶやきブルーバード》は押し潰されてしまう。

 

「大王まで……そ、そんな、ウソやろ!?」

「そして、ターン中ドラゴンが出たのが初めてじゃないから《バトガイ》の龍解条件達成だ!」

 

 龍の剣が空高く放り投げられ──煌めく。

 それは、銀河を宿した星龍となり、戦場へ降り立った──

 

 

 

「龍解、《爆熱王DX バトガイ銀河》!!」

 

 

 

 僅か、後攻3ターン目にしてドラゴンレディは凶悪な布陣を完成させてしまった。

 《バトガイ銀河》は攻撃するとき、カードを1枚引いて手札からドラゴンを場に出す凶悪なドラグハート・クリーチャー。

 更に、場には《ドラゴ大王》が居て、ドラゴン以外のクリーチャーは場に出せない始末。

 加えて、シールドは──《モルトNEXT》の攻撃で全て割られてしまった。

 ──その龍を見やるなり、メイの手が震える。

 

 

 

「──あかん」

 

 

 

 ──ぽつり、と漏らしたその言葉。

 ドラゴンレディは眉を顰めた。

 心が折れた?

 

「そんなにドラゴン仰山出して……おっかないわぁ」

「ん……?」

「……怖いなぁ、そんな激しくされたら……」

 

 ──いや、違う。

 

 

 

 

「……()()()()()やないの」

 

 

 

 

 刹那。

 シールドが光り輝く。

 

「……ふぇっ!? ぬ、濡れるって、それって──」

「あは。何考えてはるん? ほうら、みぃんな濡れるよ。纏めてびしょ濡れや──S・トリガー、《得波!ウェイブMAX》」

 

 そして──瞬きする間も与えなかった。

 ドラゴンレディの場に、あれだけ並んでいたドラゴン達は──纏めて押し流されていく。

 

「はっ!? ウ、ウッソ!? 何でぇ!?」

「しゅ、主君んんんん!? 何で全滅ゥ!? お、俺の出番ぎゃあああああ!?」

「ドライバー!?」

「……やっぱ、デュエマは激しくないとあかんわぁ。昨日から本当に強い人ばかり。こんなにええ事ばかりで、うち死ぬんかなあ。ふふっ」

 

 そして。

 眼前から龍が失せたドラゴンレディの視線は、必然的に目の前にいる少女に注がれる。

 その瞳は──滾っていた。

 

 

 

「そや。お礼にたっぷり愛でたるから……覚悟してぇな?」

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