学園デュエル・マスターズ WildCards【完結】   作:タク@DMP

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GR90話:十王のカード──波濤万里の大号令

 ドラグハート・クリーチャーは吹き飛ばされ、場にあった大型ドラゴン達は全て手札に戻されてしまった。

 ただのS・トリガーの呪文のはず。

 全バウンスなんて凶悪な効果、あるはずがないと歯噛みする。

 

「──な、何が起こったの……!?」

「《ウェイブMAX》はなぁ、相手のマナゾーンよりコストの大きいクリーチャーをぜぇんぶ持ち主の手札に戻しはるんよ。そして、もう1つの効果はマナを1枚増やして1枚マナから回収出来るんや」

「そ、そんなに強い呪文、あっていいの!?」

「両方の効果を使えるんは、場に自然と水のクリーチャーが居る時だけやけどなぁ」

「《コモリ》が居るから効果が両方発動したっていうの……!」

「そそ。ほな、行かせてもらうで──うちの手番や」

 

 妖艶に微笑むメイの頬は上気しており、息遣いが荒い。

 危機感、そして負けるか否かというギリギリの瀬戸際が彼女を興奮させていた。

 

「うちなぁ、強い人とヤるとスイッチ入ってしまうんよ。激しいと、猶更……!」

 

 ドラゴンレディも別の意味で危機感を抱いていた。

 自分よりちっこく、尚且つ恐らく胸が生えてすらいないであろう目の前の少女が色気マシマシで迫って来る様に。

 ──ってか、あたしってそんなに女としての魅力無いの!? 

 

「でもっ、そっちはもうシールド無いじゃない! しかも、あたしの封印は後1枚だからね!」

「モルネクで有効な6コストって、1枚しか積めへん《マナロック》と色が合わへん《ハヤブサリュウ》に《ジアース》と《シシオーカイザー》やろ? しかも、《ジアース》は不死鳥で捲れた時に美味しくないから入らへん」

「うぐっ……!」

「そして《ハヤブサリュウ》は、マナに光があらへんから出てこない。後は──《スクランブル・チェンジ》と《フェアリー・ギフト》が懸念ってところやけど、不死鳥型なら入れるスペースは無い。ドラゴンが少なくなって濁るからや」

「うぐぐぐっ……!」

「やから、せいぜい序盤にマナに置いてしまった《シシオー》しか6コストは入っとらへんのや。まあどの道禁断の封印は全部剥がせへんし、怖くあらへん」

 

 全て彼女の言う通りだった。

 事実、今のドラゴンレディに有効牌は無いに等しい。

 デッキに使われているカードから逆算して、採用されているカードや次に出てくるであろうカードを完全に見透かしてしまっているのだ。

 

「──ほな行こか? うちは8マナをタップ」

「8マナ──!?」

「追加コストを払う事で、バズレンダはその能力をその数だけ連続して使える! バズレンダ、3連チャンや!」

 

 4つの自然と水のマナに、続いて4枚のマナが追加で注がれる。

 揺蕩う波の如き鬣をなびかせた駿馬が姿を現した──

 

 

 

「来ぃや小娘、踊ったるわ──マナを追加して神力強化(バズルアップ)、《ウマキン・プロジェクト》!」

 

 

 

 小娘じゃないし、と言いかけたのも束の間。

 駿馬が駆けた場所から、魔力が次々に溢れ出てメイの手に、そしてマナゾーンへ注がれていく。

 

「この子のバズレンダ効果はなぁ、1回につき山札の上から2枚を見て1枚を手札、1枚をマナに置くんよ。それを3回発動するよ!」

「そ、そんなっ……!?」

 

 これで、メイのマナゾーンのカードは合計11枚。

 手札も大量に増えてしまった。

 

「しかもこの子のパワーは、マナの枚数だけ+1000されてパワー11000や。放っておいたら、どんどん強くなるんどすえ?」

「くっ……! 何なのよ、本当に……!」

 

 しかし、最早ドラゴンレディに立ち止まるという選択肢は無い。

 

「あ、あたしのターン! 5マナで《不死鳥の術》をもう1回撃つよ!」

「ッ……ああ。握ってはったん。もう1枚──あは。ええよ。そう来ないと面白くあらへんもん!」

「これでっ……何か良いの来て!」

 

 封印はこれで全て落ちた。

 その中にあったドラゴンは──絶対勝利の象徴たる龍と戦士。

 

 

 

「──これがあたしの覇道だ! 《勝利宣言(ビクトリー・ラッシュ) 鬼丸「(ヘッド)」》!」

 

 

 

 それは、攻撃する度にガチンコ・ジャッジを行い、勝てば追加ターンを得るという言わずと知れた凶悪切札。

 再び訪れた危機を前に、メイは──舌なめずりした。

 まだ、まだ自分を愉しませてくれるのか、と!

 

「ええよ! もっと激しいのを──うちに頂戴!」

「っ……そして、あたしの封印は全部落ちた! 見せて上げて! 真の姿! これで禁断解放だよ!」

 

 ドラゴンレディの声に合わせて禁断の鼓動が弾け飛ぶ。

 バトルゾーンに、封印の槍が降り注いだ──

 

 

 

「──禁断解放、《伝説の禁断 ドキンダムX》!!」

 

 

 

 君臨した禁断の存在は、その真の姿を現した瞬間に相手の全てのクリーチャーを封印する。

 山札の上から1枚を裏向きにしてそのカードの上に置くのだ。

 こうして封印されたクリーチャーは居ないものとして扱われる──!

 そして、追撃するように龍に跨った戦士が剣を振り上げた。

 

「《鬼丸「覇」》でダイレクトアタック──する時、ガチンコジャッジ発動!!」

 

 最早、オーバーキルと言わんばかりにドラゴンレディはガチンコ・ジャッジを仕掛ける。

 捲れたカードは《バトクロス・バトル》。

 しかし──

 

「うちは《水上第九院 シャコガイル》。追加ターンは得られへんかったね」

「くっ……だけど攻撃は通るはず!」

「言ったやろ? 踊ってあげるって! ニンジャ・ストライク7発動、《怒流牙 サイゾウミスト》」

 

 しかし、その攻撃は突如現れた巨人の忍者によって遮られる。

 《サイゾウミスト》は墓地と山札のカードをかき混ぜ、即座にシールドを作る事でメイを直接攻撃から死守した。

 

「やっぱりいたんだ、シノビ……でも、まだ《ドキンダムX》が攻撃出来る! ダイレクトアタック!」

「もう1枚、《サイゾウミスト》! さっきの《ウマキン》で回収しとったんよ」

「そ、そんなぁっ!?」

 

 一瞬で作られた光の壁が無数に降り注いだ槍を吸収してしまった。

 これで──メイは全ての攻撃を耐えきってしまったことになる。

 

「そしてS・トリガー、《フェアリー・シャワー》。マナを1枚増やして手札を1枚増やすわ。さて、それで終わり?」

「タ、ターンエンド……!」

「主君、まずいぞ! 相手は手札もマナも貯め切っている!」

「さあて、お礼はたっぷりせんとなぁ……よろしおす?」

 

 回ってきたメイのターン。

 7枚のマナがタップされ──更に追加で、6枚のマナが注がれる。

 彼女の足元に、大波の紋章が浮かび上がった。

 

「……ええよ。行こう? 此処からが楽しいんや」

「ッ……な、何!?」

「見せたるわ。うちの切札。十王のカードが一つ。その咆哮で巨獣をも従わせる水の獅子──」

 

 足元は──水面と化す。

 静かなるそこに、石が投じられたかのように波紋が広がった──

 

 

 

「一波僅かに動いて兆波従う──億千万里の彼方先までも!」

 

 

 

 彼女の指に灯が灯る。

 次々に文字が刻印の如く水面に刻まれていく。

 それが王の王たる所以、その歴史を示すかのように──

 

 

 ──浮かび上がったのである。

 ドラゴンレディが戸惑う間もなく、何処からともなく咆哮が聞こえてくる。

 

 

 

「──天地神明、波濤の先へ届き轟け──《キング・マニフェスト》!」

 

 

 

 水面は形を変えた。

 百獣を従えし、水の獅子へと──!

 

「っ……こ、これが、十王のカード……!?」

神力強化(バズルアップ)──三回。契約王《キング・マニフェスト》のバズレンダ3を3回使う。さあ、大号令……たんとお聞きやす」

 

 水面を揺るがすは百獣の王の叫び。

 それは戦場に大穴を幾つも開け、そこから巨獣を呼び打す──

 

「《マニフェスト》のバズレンダ効果! 1度につき、うちは1回、山札をシャッフルしてその一番上を見る」

「えっ、うそ、まさか……!」

「そして、それがクリーチャーか呪文やったら……好きに使えるんや。《ウェイブMAX》引いた時点で、あんさんの敗けよ」

「ッ……やっば……!!」

 

 《ドキンダムX》には致命的な欠点がある。

 それは、禁断解放した後にバトルゾーンを離れた場合、持ち主が負けるということだ。

 この時点で除去呪文を引けば、メイの勝ちとなる。

 そして、除去呪文が引けなかったとしても──

 

「一回目──むぅ、すかたんや。《バズレンダでマナが大変な事に!?》」

「っ……あ、危なっ……!!」

「二回目──《セブンス・タワー》。メタモーフで、マナが7枚以上あったらマナを3枚増やす」

「な、何だ、拍子抜け! デッキの殆どをリソース増やすカードに充ててるから、ハズレが多いんだ!」

「あはっ、何も知らへんのやねえ。確立は収束する。キング・マニフェストの大号令を三回も打ったんや。なんも起こらへんこと……あるわけないやろ?」

「な、何を今更……!」

 

 三回目。

 轟く咆哮によって空に開いた大穴は──特大サイズだ。

 

 

 

「お越しやす、異形の神──ふふっ、あんたはやっぱり最高のカードや……!」

 

 

 

 突如。

 雲行きが大きく変わった。

 空は暗雲が覆い、何故か巨大な月が現れている。

 まだ夜ではないはずなのに、月は──ぎらぎらと嫌な程に輝いていた。

 

 ──やっと、分かった。この子とデュエルしてる時に感じた嫌な感覚──!!

 

「あんたの英雄がどれほど大きくとも()()()()()()より大きい」

 

 ドラゴンレディの脳裏には──いつも仏頂面をしている、因縁の後輩の姿が浮かぶ。

 

「おんたの仲間がどれほど多くとも()()()()()()より多い」

 

 ──あたしがどう足掻いても、掌の上で転がされてるような……そんな感じ……!

 

 

 

「あんたらの食欲がどれほどあろうとも──()()()()()()より貪欲だ」

「ッ……!!」

 

 

 

 ──()()()()()()……あたしじゃ、この子には……何度やっても勝てない……!!

 

 抵抗する意思が、削がれていく。

 今まで現れたふざけたカード達とは訳が違う、彼女の真の切札。

 それは、滅亡という名の永遠を焼き付ける異形の神──

 

 

 

「そういうわけで、エルドラージが勝つのだ──《引き裂かれし永劫 エムラクール》!!」

 

 

 

 ──ドラゴンレディの脳裏には未来永劫、今日この日の記憶が焼き付けられるだろう。

 恐らくそれは、今まで彼女が空間内のデュエルで見てきたどのような異形とも違う。

 まるで大陸から無数に触手が生えたような怪物が、空より飛来してきたのだ。

 そして、何より恐ろしいのは──このような強大な怪物でさえも呼び寄せてしまう契約王の咆哮。

 力の座を守る水獅子の本領は、強大な力を波紋の如く連続する大号令で容易く呼び寄せてしまうことだったのである。

 

「あはっ、この台詞……一回言ってみたかったんよ! 嬉しいなぁ、嬉しいなぁ!」

「あっ、えぅ、何、なの……!?」

 

 無邪気にはしゃいでみせるメイに対し、最早ドラゴンレディは戦意を喪失しつつあった。

 目の前にある怪物を前にして──

 

「──《エムラクール》はエルドラージにしてゼニスのクリーチャー。召喚して場に出た時、もう1回自分のターンを得る」

「っひょ、拍子抜け! コストを踏み倒して出てきたから、召喚時効果は発動しないはず!」

「何言うてはるん? 《キング・マニフェスト》で場に出したクリーチャーはなぁ、コストを支払わずに召喚した扱いなんよ。ゼニスの召喚時効果も発動する」

「な、何なの!? め、滅茶苦茶じゃない……!」

 

 つまり、それは目の前の怪物が実質スピードアタッカーである事を示していた。

 だが、その前に《鬼丸「覇」》目掛けて《キング・マニフェスト》が飛び掛かる──

 

「この子はマッハファイターや! 《マニフェスト》で《「覇」》を破壊!」

 

 これで、バトルゾーンには《ドキンダムX》だけ。

 だが、それだけでは彼女は飽き足りないのか、即座にターンを終了する。そして、溜まりに溜まったマナを全てタップし──あろうことか、もう一度大空に大穴をこじ開けた。

 

「15マナ──2体目の《エムラクール》召喚するわぁ」

「はぁっ!?」

「これで、もう1回うちのターンやね。確実に決めたいんよ──纏めて全部焼き払うよ。覚悟はええ?」

 

 直後。1体目の《エムラクール》の瞳が不気味に光り輝き──ドラゴンレディのマナゾーンを、そしてバトルゾーンを覆う。

 それは滅亡の光。問答無用で全ての命を奪う殺戮の権能。

 

 

 

「──滅殺6発動」

 

 

 

 直後、ドラゴンレディのマナゾーンのカード、そしてバトルゾーンのカードが浮かび上がる。

 戸惑った様子で彼女はメイの顔を見た。

 

「こ、これって──」

「滅殺6──ああ知らへんのね。まあええわ。《エムラクール》が攻撃するとき、相手は自分のバトルゾーン、シールドゾーン、マナゾーンにある表向きのカードを合計6枚選んで墓地に置くんよ」

「6枚……は、はぁぁぁ!? 6枚!? そ、そんなの──」

 

 それが、《エムラクール》の恐怖の象徴たる所以だった。

 ドラゴンレディの表向きのカードは──マナゾーンにある6枚のカードと《ドキンダムX》しかない。勿論、後者を選んだら即負け。

 故に、マナゾーンの全てが焼かれた。

 そして──彼女のシールドが纏めて3枚、吹き飛ばされていく。

 

「そしてもう1回うちのターン」

 

 

 この日。ドラゴンレディは悟った。

 世の中、上には上が居るものなのだと。

 そして絶対に喧嘩を売ってはいけない人種が居ると言う事を──

 

 ──こ、これ、嬲り殺しだ……! あの子と同じだよ……!

 

 

 

「3度目のうちのターン──《エムラクール》で攻撃するとき、滅殺6発動」

 

 

 

 無論。

 表向きのカードなど《ドキンダムX》しか無い。

 そのままシールドも、場のカードも、マナのカードも──全部纏めて吹き飛ばされたのだった。

 

 

 

「《ドキンダムX》、撃破──うちの勝ちやね♪」

「ま、負けましたぁ……」

 

 

 

 オーバーキルも大概であった。

 王の大号令の後には──塵一つ、残らなかったのである。

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