学園デュエル・マスターズ WildCards【完結】   作:タク@DMP

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GR91話:十王のカード──霹靂閃電の猛攻

 ──バイク仮面と矢継のデュエル。

 バイク仮面の背後にも巨大な禁断の鼓動が6つの封印によって縛られていた。

 

(バイク仮面ってことは、ほんまにバイク使って来るんかな……)

 

 既に嫌な予感をさせつつも、矢継は3枚のマナをタップする。

 稲光が彼の盤面に奔った──

 

「──3コストで《ケンザン・チャージャー》! 効果で山札の上を捲って、それがブロッカーか呪文なら手札に回収するで! 《ドラゴンズ・サイン》をバリバリ回収や!」

 

 浮かび上がる剣の紋章から、呪文が矢継の手札に加わる。

 それは、燃え滾る溶岩が火山から溢れ出るカードだった──

 

「さあ、ワシの爆龍皇は疾風怒濤にして疾風迅雷──焼き尽くしたるわ」

「──知らん。焼けろ」

「あ?」

「……情け無用。戦闘開始」

 

 タップされるのは──2枚のマナ。

 バイク仮面は奔りだした。

 矢継よりも、ずっと先のスピードの領域へと──

 

「強襲戦用意──《ヘブンズ・フォース》から《暴走獣斗(ジェット)ブランキー》をバトルゾーンへ」

「……はぁぁぁぁ!? マジか!? マジで赤白バイクなんかお前ェェェーッ!!」

「何が疾風怒濤で疾風迅雷だ。俺は今非常に機嫌が悪い──」

「機嫌が悪いィ!? さっきまでノリノリで不審者やっとったやんけぇ!!」

「──焼けろ。というか焼き切れろ。この姿を見た者は例外なく轢殺する」

 

 ヒーローとは何だったのか。

 バイク仮面は途端に重低音で唸りながら、ソニック・コマンドの《ブランキー》を呼び出す。

 現れたのはバイクに跨り、ヘルメットを被った猿人。

 そのままバトルゾーンをさながらサーキットよろしく爆走する──

 

「──オペレーション、侵略(インベード)。準備に入れ! 《ブランキー》で攻撃──する時、情け無用、侵略開始!!」

「あ、あかん、この流れはあかん……ッ!」

 

 さしもの矢継も、このデッキの恐ろしさは知っていた。

 赤白バイク。最速2ターン目から《ヘブンズ・フォース》で4コストのソニック・コマンドを走らせ、そのまま侵略させる恐怖の権化のようなデッキだ。

 侵略先は当然──パワー1万オーバーの凶悪な進化ソニック・コマンドたち。

 それが2ターン目3ターン目に飛んで来る恐怖は、開幕から矢継を戦慄させていた。

 

 

 

「──戦車(チャリオッツ)、加速形態──侵略進化《熱き侵略 レッドゾーンZ》ッ!!」

 

 

 

 手札から飛んで来たのは、車輪を拳に取り付けた深紅のロボット。

 まるでバイクが人になったかのような容貌のそれは、狂い狂った速度で矢継のシールドに突貫した──

 

「封印を墓地へ置く。進化ではないクリーチャーに重ねられた時、《レッドゾーンZ》は相手のシールドを1枚墓地へ叩き落とす」

「ぐぅっ……!? クッソォ、ほんまに狂った速さやな! 認めたるわ、その根性!」

「更に《ブランキー》の効果発動。攻撃時にカードを2枚引くか、相手のシールドを1枚ブレイクするか相手に選ばせる。さあどちらだ? 選べ! 択ぶのだ!」

「どっちも地獄や無いか!!」

 

 赤白は速度と引き換えに手札消費が酷く、安定性に欠いている。

 故に手札を与えてしまえばその欠点は補われて、いよいよ取り返しがつかない。

 矢継の選択肢は──

 

「ブレイクや! もう1枚追加ブレイクを喰らう!」

「そうれ! 合計3枚ブレイクだ!!」

 

 回し蹴りが矢継のシールドを薙ぎ払った。

 これで、早くも残り1枚に──しかし。

 その追加ブレイクが矢継の寿命を永らえさせた。

 

「S・トリガー発動! 《アイズ・ワイド・シャッター》! 効果で《レッドゾーンZ》をタップして、次のターンは起き上がれんようにするで!」

「チッ、フリーズか。命拾いしたな。君も部長と同じ──運命に好かれている者のようだが」

「部長?」

「……こっちの話だ」

「部長って、まさかあのデュエマ部の部長か? あいつ、お前らの事明らかに知っとるみたいやったけど」

「知り合いではない。あんな男は知らん。焼くぞ」

「ボロ出したのはお前やろ!!」

 

 あーもう知らん、と頭を掻きながら矢継は5枚のマナをタップする。

 開幕からボロボロにされたが、決して悪い状態ではない。

 上手く行けば、このままバイク仮面を倒すことが出来る準備は整っている。

 

「感謝するで変態の兄ちゃん! あんさんが増やしてくれた手札、一気に爆発させたるわ!」

「ッ……変態だと」

「いや変態ですやん。山ン中そんな恰好で出てくるのはお化けか変態ですやん」

「もうお化けで良い……」

「ほんまに何があったんや、この人……まあええわ。今、ワシの場にはクリーチャーが居らへん。やからなぁ、こいつはコストが3軽減されるんや!!」

 

 稲光がマナゾーンから迸る。

 火、そして光。

 それが彼の周囲を舞った──

 

「さあ、バリバリ行くでーッ!! 爆発を愛し、爆発に愛されたドラゴン、って言えばええんかぁ! ニトロ・ドラゴンのお出ましや!」

「コイツ、人の科白を──」

「──奔れ稲妻(イナズマ)、走れ火焔(ホノオ)、疾風迅雷──《雷龍ヴァリヴァリウス》!!」

 

 バトルゾーンにミサイルが突き刺さり、爆風を巻き起こす。

 砂塵が晴れた後には──ジェット機の如き容貌の雷龍が咆哮を響かせていた。

 その全身には紫電が迸っている──!

 

「ッ……来たか」

「さあ行くで、爆龍の軍勢の必殺技ァ!! 《ヴァリヴァリウス》は当然スピードアタッカーや! ガチでマジの大爆発、マジボンバー7発動ォ!!」

 

 地面を蹴り、バイク仮面のシールド目掛けて突撃する《ヴァリヴァリウス》。

 その身体から幾つも地面にばら撒かれていく──

 

「素人のお前に教えたるわ! マジボンバーはなぁ、手札と山札の上を捲って、その中から指定されたコスト以下のクリーチャーを1体場に出せるんや! 《ヴァリヴァリウス》のマジボンバーは7! コスト7以下が飛び出るで!!」

「ッ……成程な。ぶちょ──白銀耀もその技の前に引き潰されたわけか」

「ああ。ちょろかったでアイツ。何で桃太郎に選ばれたのか、分からへんくらいにはなぁ!!」

 

 溶岩がバトルゾーンを埋め尽くす。

 矢継の背後に火山が現れ、大鳴動と共に爆発し──火山雷が鳴り響いた。

 

「さあ来い、ワシの王! 最強のキングマスターカード!」

 

 浮かび上がるのは──爆弾の紋章。

 そこにBの文字が刻まれていく。

 

「──天地神明、神鳴(カミナリ)の如く怒り爆ぜよ!」

 

 それは火山より生まれし爆龍の子。

 かつて鬼を滅した爆龍の軍勢の統率者の歴史を示すが如く、次々に文字が戦場に刻まれていく。

 

 

 

    

    

    

 

 

 燃え滾る溶岩に浮かぶ卵。

 それを中から食い破り、それは爆ぜるように誕生した──

 

 

 

「──爆誕!! 《爆龍皇 ダイナボルト》ッ!!」

 

 

 

 それは、新たなる時代を告げるドラゴン。

 全身に紫電と閃光が迸る火砕流と火山雷を司る爆龍の皇帝。

 今まさに、思うがままに戦場を溶岩一色に埋め尽くさんと羽根を広げた──

 

「火と光のドラゴン──ッ!! そんなものを矢継の家は隠し持っていたのか……東洋魔術の家系にしては、まあまあと言ったところだが……!」

「《ダイナボルト》はワシの切札! そんな事言ってられる場合かいな! 先ず、《ヴァリヴァリウス》でW・ブレイク!」

「っ……受ける……!」

「そして、《ダイナボルト》で攻撃するとき、W・マジボンバー6を発動するで!」

「Wだと!?」

「そうや! こいつのマジボンバーは特別性! 只のマジボンバーと一緒にされたら困るで!」

 

 火山の龍帝が咆哮し、バイク仮面目掛けて飛空する。

 そして、溶岩を翼で切ると、爆発が巻き起こり、二体の仲間を連れてくる──

 

「2体か……マスター・W・メラビートのようだッ……!」

「ハハハハッ、ジョーカーズのそれよりもこっちは自由度が高いんや! なんでも出せる訳やからな! 山札の上から2枚を見て、その中からコスト6以下を2体場に出す! 先ずは《その子供、可憐につき》を場に出すで!」

 

 溶岩から飛び出したのは相手の相手の進化クリーチャーとスピードアタッカー、そしてマッハファイターをタップインさせる少女型ヒューマノイド。その能力で、仮にバイク仮面がS・トリガーで次のターンを拾ったとしても反撃を許さない姿勢だ。

 だがこれだけでは矢継は飽き足らず、もう1体の増援を呼ぶ──

 

「そして2体目ェ!! 《パンヌダルク》を召喚や!」

「ッ……ジョーカーズだと」

 

 ──飛び出したのはフランスパンにジャンヌダルクを合わせたような奇妙なクリーチャーだった。

 思いも寄らぬ場所から現れたジョーカーズにバイク仮面は目を丸くさせる。

 

「見てみぃ!! こいつは場に出た時、ワシのクリーチャーを全部纏めてアンタップするんや!!」

「っ……赤白特有の連続攻撃か!」

「んあ? 何かメイちゃんがそんな事言いよったな……まあワシはそんなん知らへんけど、これで《ダイナボルト》も《ヴァリヴァリウス》も、もう1回攻撃出来るっちゅうわけや!」

 

 ありとあらゆるクリーチャーとの噛み合わせ次第でどのような挙動も可能にする。

 それが爆龍の皇帝の恐ろしさだった。

 この構築では《ダイナボルト》が走り出した時が最期。後は彼の思うがまま──

 

「これがダイナボルトの恐ろしさや! デッキの中身次第で展開も連続攻撃も自由自在! ジョーカーズやろうがビートジョッキーやろうが、ダイナマイト・ドラゴンの前には従うしかあらへんっちゅうわけやねん!」

「……」

「白銀耀もあんさんも大した事あらへんかったなぁ!! はははは、あの白銀耀よりもワシの方がよっぽどジョーカーズの使い方が上手いみたいや!! ワシはまだ手札に《パンヌダルク》したためとんねん、お終いや!」

「……もう良い」

 

 《ダイナボルト》の翼がバイク仮面のシールドを2枚、叩き割る。

 これで残るは1枚──

 

 

 

「──もう黙れ。口を開くな。虫唾が走る」

 

 

 

 ──しかし。

 その前に矢継のクリーチャーは全て、閃光の前に叩き伏せられる。

 

「はっ……!?」

「S・トリガー発動、《1、2、3、チームボンバーイェー!》。この呪文の効果は知っているよな? 相手のクリーチャーを全員タップし、パワー6000以下の《可憐》を粉砕する」

「は、はぁぁぁ!? ちょ、ちょい待て!! 待つんや!!」

 

 矢継は衝撃を隠せなかった。

 止められるところまでは想定内だったものの、よりによって飛んで来たのはチームボンバーの呪文。

 矢継家でなければ持ち得ないカードであった。

 

「な、何でや!? 何でお前がそのカードを──」

「──情け無用、殲滅戦用意」

 

 連続攻撃はそこで遮断された。

 ターン返しを想定していたであろう《可憐》も見事粉砕され、矢継を守るものは何も無い。

 飛んでくるのは──侵略を控えた轟速の暴徒たちだ。

 

「──4マナをタップ。《GOOOSOKU・ザボンバ》召喚」

「ま、またチームボンバーのカード……!?」

「こいつはソニック・コマンドでスピードアタッカー。そして、マジボンバー3を持つ。さて、何処かの粋がりが半端に手札をくれたな、有り難い」

 

 サーキットを爆走する《ザボンバ》に追走し、更なるクリーチャーが飛んで来る。

 

「先ず、《ザボンバ》で攻撃するとき──侵略、《轟く侵略 レッドゾーン》ッ!」

 

 刻まれるのはⅧ。

 戦車を意味する数字。

 全身が情熱の赤に包まれた赤き機体が姿を現す──

 

「効果で相手のパワーが一番高いクリーチャーを1体破壊する。《ダイナボルト》を破壊!!」

 

 出てくるなり、強烈な蹴りで《ダイナボルト》を溶岩に沈めてしまう《レッドゾーン》。

 そのまま、龍帝を踏み台にして轟速の侵略者は進軍する──

 

「ッ……なあっ!? な、しまったぁ!? やけど、封印は全部落ち取らへん!! 打点は足りんはずや!」

「《ザボンバ》のマジボンバー3発動。手札から《巡巡─スター》を場に出す」

「そ、そいつはぁ!?」

 

 またも現れたチームボンバーのクリーチャー。

 その能力は、場のクリーチャー1体をアンタップする事。

 再び、《レッドゾーン》は起き上がる──

 

「……さて、何だったっけか──こういう時はこういえば良いのか? 俺の方がマジボンバーの使い方が上手い、と」

「お前は何なんや……何者や!! 何で、何で矢継家のカードをお前が……!!」

「──これは()()()()から聞いた話なのだが……数年前。魔導監査学会が矢継家に立ち入り調査を行った事がある」

「ッ……!?」

「その時、矢継家は何枚かのカードを寄贈して手打ちにしたらしいが……さて、その時。当時アカデミー生でインターンシップの途中だった新人魔導司に、あろうことかウザ絡みしてデュエルを挑んだ挙句返り討ちに遭った命知らずが居たらしい」

「お、お前まさか……!!」

 

 矢継の中で嫌な記憶が頭を過る。

 何故、この男が今になって──

 

「当時も今も減らず口は変わらないな君は──喋りさえしなければ生焼けで済んだものを」

「お前は、ひ、ひひ──」

「そんなに口を開けたいならガソリン焼きにしてやる。喜べ、あの料理はよく爆ぜるらしいじゃあないか」

 

 シールドの無くなった矢継に、《レッドゾーン》の拳が迫る。

 

 

 

「──《レッドゾーン》でダイレクトアタックッ!!」

 

 

 

 渾身の一撃。 

 頬に車輪の拳が回転しながらめり込んだ。

 塵のように吹き飛んだ彼を見て──バイク仮面は一言。

 

 

 

「何も知らない癖に部長を語るんじゃない。只々、不愉快だ」

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