学園デュエル・マスターズ WildCards【完結】   作:タク@DMP

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第7話:白銀の弾丸─リターンマッチ

俺は白銀 耀。部員不足で同好会状態と化したデュエマ部の部長をやってる、ちょっと普通じゃない高校2年生。だけど、此処最近の日常は実体化するクリーチャー・ワイルドカードによって非日常と化していた。

 そんな俺は、つい最近に大敗を喫した。

 突然現れた、魔導司(ウィザード)を名乗る訳の分からんヤローにデュエルで完敗したんだ。

 そいつは転校生の火廣金 緋色。どうやら、俺達の関わっている怪事件について何か知っているようだ。

 成す術なく敗れた俺は、ワイルドカードと戦う為のアイテム・エリアフォースカードを奪われてしまう。

 戦う為の手段を奪われた事と、圧倒的に強い相手と戦うのに億劫になっていたが、後輩の紫月の計らいで彼女の師匠・黒鳥レンに特訓を付けて貰うことに。

 すっげー強かったし、とても敵わなかったけど色んなことを教えて貰った。

 美学の事は俺にはまだよく分からないけど――

 

「……よしっ」

 

 ――もう1回、ゼロから作り直したこのデッキで……今度こそ、あいつ(火廣金)に勝つ……それはともかくだ。

 レアカードに色んな不幸があって恵まれない俺だが、やはりこのデッキにはパンチが足りない。

 明日はもう学校。土日を挟んで俺が変わった事を、火廣金のヤローに見せつけてやらなきゃいけない。

 それに、紫月にブラン、桑原先輩の期待に加えて、花梨にも心配掛けちまったから、ここでケジメを付ける。

 

『マスター、組み終わったでありますか?』

「ああ。一応な……でも、あいつのデッキは火単速攻だった。だから、シールドが無い状態でこっちが殴ったら発動する革命0トリガーとかにも警戒する必要がある。シールドさえ焼き払えば俺の勝ちだったらいいのに……」

 

 デッキを作っている時は、終わりの無い迷宮と言いようのない閉塞感に襲われる時がある。その時程、自分のカードプールの狭さを恨む時は無い。

 結局の所、全部俺の壊滅的なカード運が悪いのだから仕方がない。

 とはいえ、たらればや例外を気にしていたらきりがない。

 もう、割り切るところは割り切るしかないのだろう。

 

『やれやれ、まさか我々を信頼していないでありますか?』

「いや、信頼してるよ。《チョートッQ》や《ダンガンオー》にも何度も世話になってるし……それに、《ジョリー・ザ・ジョニー》が居なくたって、勝機が無いわけじゃねえんだから。それに、昨日一昨日で色々カードも買ったしな。結局肝心のマスターカードは手に入らず終いだが」

 

 余り心配し過ぎるのも此奴らに失礼だ。

 今まで助けられた分、俺も頑張らないといけないと改めて感じる。

 

『とはいえ、《ジョリー・ザ・ジョニー》は我らがジョーカーズ種族のマスター……ぜひとも、マスターには手にしていただかないと、でありますよ』

「いつかはな……とにかく、これが今の俺に出来る全力だ。あのスカした面を、ぶち抜く!」

『その意気でありますよ!』

 

 俺達は、デュエマ部室に集まっていた。

 今日も花梨の顔は晴れないまま。火廣金も午前、午後、ともに表立った動きは無かった。

 しかし。今度はこっちから仕掛けてやる番だ。

 

「何というか、見違えたみたいデス」

「ああ」

 

 ブランの言葉に、俺は生返事を返す。

 見違えた、か。確かにこの2日で俺は覚悟完了している。

 まだ、納得のいかないところは幾つかあるが、取り合えずやりたいことは出来るはずだ。

 

「で、そっちはどうなんだ?」

「どうも、学校からは出ていないみたいデスネ……」

 

 双眼鏡で新校舎の玄関の方を覗くブラン。完全に怪しい人だが、部室に居ながら火廣金が放課後に何をやっているのかを探るにはこれしかないのだ。ともかく、まだ学校に居るのならばチャンスはいくらでもある。

 ブラン曰く、彼もワイルドカードを探しているのは確実である以上、他にもそういったカードが無いか虱潰しに探し回っているのではないかとのことだ。

 つまり、ワイルドカードが現れた場所に必然的に彼も現れるということだ。

 ただし、問題は尽きない。

 

「で、これから勝負しに行ったとして、だぜ……あいつエリアフォースカード持ってんのか? あいつに勝ったとして、無理矢理あいつらの本拠地を吐かせるか?」

「自白剤ってのがあってデスネ……」

「オイ」

「嘘デスヨ。でも、こっちが向こうと対等である、と思わせないと取引も何もないデス」

 

 でも、とブランは続けた。

 

「きっと、アカルならやってくれる――根拠は無いデスケド、そんな気がシマス」

 

 おいおいそれで良いのか、探偵。とはいえ、信用してくれてるのか。

 

「――多分、心配には及びませんよ」

 

 そう言って部室に入ってきたのは、紫月と桑原先輩だった。

 

「遅かったな、紫月。それに桑原先輩も……部活は大丈夫なんですか?」

「大勝負を控えた後輩に激を飛ばしてはいけないのか?」

「……有難く受け取っておきます」

 

 応援してくれる人が1人でも多いのは、非常に心強い。

 今、俺がやってることは決して無謀な事じゃないってことが改めて安心できる。

 心の支え、ってやつか。

 

「で、先輩。シャークウガ曰く、火廣金先輩はエリアフォースカードをずっと持っているようですよ」

「何?」

『理由は分からねえよ。だけど、これは攻め込むチャンスじゃねえか? ギャハハハハ!』

『何で笑ってるでありますかコイツ』

 

 成程。それなら、やっぱり今すぐ畳みかけるしかないな。

 いつあいつが、仲間にエリアフォースカードを手渡すか分からない。

 ……いや、あるいはもう手渡して貰って、再び手元に返して貰ったってことか?

 猶更理由が気になるが……。

 

「で、此処からが本題です。先輩」

 

 言った紫月は、手に持った小包を机に置いた。

 どうやら、配達で届いたものらしい。宛先は紫月。

 しかし、曰く彼女に贈られたものではないという。

 

「師匠から先輩への贈り物です」

「黒鳥さんから?」

「はい。電話で聞きましたが、住所を知っている私を経由して渡したんだそうです」

 

 その小包を剥くと、中からはカードが出てきた。

 保護用のスリーブに包まれていて、中身は分からないが――

 

「デュエマのカード、のようですね」

「中身次第じゃ、またデッキの組み直しだぞ。まあ、だとすれば使わねえ手はないがな、白銀」

「レアカード運が壊滅的に低い白銀先輩が、そうそう良いカードにありつけるとも思えませんが」

「何てこと言うんだ!」

「デモ、何でアカルに?」

「この間の特訓……師匠も久々に現役時代を思い出せたようです」

 

 現役時代。

 黒鳥さんは、デュエリスト養成学校に通っていたんだよな。だとしたら、そこでもライバルが居たのに違いない。

 俺との試合が、本当にそれを思い出させるくらいに良かったのかなあ? 俺的には惜敗だったから、向こうからすればギリギリだったとも言えるのかもしれないけど。

 

「だから、そのお礼とのことですよ」

「そうか。んじゃあ、遠慮なく――」

 

 そう言ってカードを見ようとしたその時。

 チョートッQが叫ぶように言った。

 

 

 

『ワイルドカードの反応でありますよ! オマケに、エリアフォースも一緒であります!』

 

 

 

 部屋の空気は凍り付く。

 ということは――火廣金の奴が動き出したという事でもある。

 いや、そうじゃなかったとしても、俺達が出ないといけない。

 

『恐らく、もうエリアを開いているぜ、この様子だと……しかもあの野郎、案の定エリアフォースを持ってやがる』

「では、急ぎましょう。先輩」

『マスター! 急行するであります!』

 

 俺は皆の顔を見回す。

 そして、頷いた。

 

 

 

「よし、リベンジマッチと行くか!」

 

 

 

 ※※※

 

 

 

「――よう、グラサン野郎」

「……」

 

 凍てつくような静寂と共に、機械人形の如く彼は振り返る。無機質な表情。戦闘ロボットやターミネーターなんざ俺は本当に見たことは無いけど、こんな顔をしてるんだと思わせるような冷たさ。

 その手に握られているのは、《紅神龍バルガゲイザー》のカード。

 案の定、ワイルドカードを探して出向いて狩った後のようだった。

 

「……負け犬が俺に何の用だ? オマケに金魚の糞のように、ぞろぞろと」

 

 侮蔑を込めた言葉を投げかけた火廣金は、こちらを睨んだ。

 何をしに来たんだと言わんばかりに投げかけた視線の先には、ブラン、桑原先輩、そして紫月の3人が立っていた。

 

「全員でかかってくれば、俺からエリアフォースを奪い取れるとでも思ったのか?」

 

 憎々しげに言った彼に、桑原先輩が間髪入れずに返した。

 

「浅いな。テメェら魔法使いサマに実力行使で勝てるわけがねーって、俺らだって解ってる。それに、そんなやり方は美しくないってもんだぜ」

「それに、今回の”勝負”。私達が立ち会うのは当然だと思いますよ」

「何故なら、ワタシ達デュエマ部に突き付けられた挑戦状のようなものデスからネ!」

 

 俺は別に良いって言ったんだが、結局彼らは着いてきた。

 火廣金は呆れたように肩を竦める。

 

「……という事は、今日戦うのは”また”白銀耀か」

「おう、そうだぜ。文句あっか」

「文句はない。だが――」

 

 にたぁ、と彼は粘っこい嘲笑を浮かべた。

 滅多に笑う事をしない彼が初めて見せた笑みは、毒々しいものであった。獲物を目の前に舌なめずりをする蛇のような表情。

 皮肉な事に、彼が使っているのは蛇に喰われる側の鼠である。

 

「お前が? 俺達がマークしていたプレイヤーの中で最も最弱のお前が、この『灼炎将校(ジェネラル)』にもう1度挑む? 笑わせるなよ……」

 

 成程な。

 そういうことか。なかなかに俺は嘗められているらしい。

 確かに、ブランのような判断力も、紫月のような戦術眼も、桑原先輩のような経験も、俺にはない。

 だけど――

 

「何だ? まさか、その俺に負けるのが怖いから勝負を受けないって言うんじゃあるめーな」

「その逆だ。わざわざ策を弄さずとも、2枚目のエリアフォースカードを奪えるのだ。俺は『灼炎将校(ジェネラル)』。戦に長けた魔導司。真っ向から戦って成果が得られるなら、これ以上の喜びは無いだろう」

「あっそ。んじゃあ、勝負の内容はこっちが決めていいよな」

 

 ――こっちだって負けるわけにはいかない。

 負けられない理由があるんだ。

 

「賭けるものは当然、エリアフォースカード。俺が勝ったら、お前が今持ってるエリアフォースカードを俺達が奪い返す」

「俺が勝ったら、手に握ってあるもう1枚も戴くぞ」

 

 次の瞬間、熱が俺の背を焼いた。

 飛びのくと、背後には炎が吹きあがって壁のようになっている。

 辺りを見回すと、それは俺と火廣金を囲うようにして広がっていた。

 

「これは――!?」

「人が多い。お前からエリアフォースを奪うのを邪魔されるのは困る」

 

 彼が手をかざすと、床、廊下は紅蓮に染まっていき――次第に辺りは、火山の噴火口のような背景となった。 

 じりじりと肌を焼く熱。

 間違いない。炎も、そして温度も本物だ。これも魔導司の力ってことか!?

 

「魔導司はこうしてデュエルの為の”決闘結界”を生み出すのだ。覚えておけ」

「へっ、こっちから展開する手間が省けたぜ!!」

 

 強気に返事した俺だったが、やはり緊張は隠せない。胸を握りしめ、心臓の高鳴りを抑える。

 体の内から、外から、熱が奔流となって闘志と共に駆け巡っていくようだった。

 透明なシールドが生み出されていき、40枚のカードがデッキケースから飛び出して束となり、俺の手元に置かれる。

 目の前の火廣金も同様だ。

 

『ヒイロの兄貴ィ!! さっさと潰しちまうッス!!』

「言われるまでも無い。これより、B・A・D(バッド・アクション・ダイナマイト)な殲滅作戦を開始する」

『マスター、超超超可及的速やかに敵を排除するでありますよ!』

「おう、脳天に風穴をブチ開ける!!」

 

 画して、2度目の火廣金と俺のデュエルが火蓋を切ったのだった――

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