学園デュエル・マスターズ WildCards【完結】   作:タク@DMP

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GR99話:鬼の王

※※※

 

 

 

「──コッオオオオオオオオオオオオオオオオオオンッッッ!!」

「……成程ねェ」

 

 

 

 酒呑童子は巨大な棍棒を零龍へと向ける。

 

「この力……やはり、テメェだけの力じゃねえな? かつての力に加えて、妙なカードが2枚組み合わさってやがる、全盛期以上ってか」

 

 元より、空から来た存在である零龍は2枚のエリアフォースカードに加えて太陽神類アマテラスの力も取り込み、最早太陽神そのものとも言える力を手に入れていた。

 結果。それは、存在するだけで全てを滅ぼすものと成り果てている。

 このまま放っておいても、人類すべてを駆逐するだろう。

 それは人間を嫌悪する酒呑童子にとっても、願ったり叶ったり──

 

 

 

「──な訳ねぇだろバカがテメェはあああああああああああああああああああああああん!?」

 

 

 

 ──なはずがない。

 自らの忌むべきものは自らの手で滅ぼしてこそ価値がある。

 勝手に当て馬にされた挙句、自らの目標を横取りしようとする零龍を酒呑童子が許すはずもなかった。

 

「俺様は、2マナで《ブラッドギア》を召喚!! テメェの力は、俺様が頂くッ!!」

「コッォオオオオオオオオオオオン」

 

 甲高い声で唸り声を上げる零龍。

 その全貌は、未だに卵の中で胎動しており不明だ。

 しかし。その中にある空亡の意識が、外敵を排除すべく──動き出した。

 

「──《怨念怪人ギャスカ》──」

「ッ!?」

 

 現れたのはスクラップに覆われたゴミの怪人。

 その力で零龍の周囲にあった手札は全て消え失せる。

 だが、それによって零龍の卵に火が一つ灯る──

 

<手札の儀──達成──GR召喚、《シニガミ丁─二式》>

 

「なッ!?」

 

 酒呑童子は目を見張る。 

 この、手札を捨てるという行為そのものが零龍を誕生させる儀式であったということに勘付いた。

 魔力が卵に集中しているのである。

 酒呑童子はデュエルの経験そのものは少ない。

 だが、これが異様なものであるということは痛感していた。

 

(卵の周囲には、4つの黒い雲……今、一つが霧散して火となって卵にくべられた。後3つの雲が卵にくべられれば──アレは目覚める、ってか)

 

 上等だ、と酒呑童子は笑みを浮かべてみせる。

 

「俺様のターンッ!! 3マナで《バクロ法師》を召喚ッ!! これによって、俺様の(シールド)を2枚、手札に加えるぜェ!!」

 

 ──それならば、目覚める前に卵を爆散させればいいだけのこと。

 すぐさま酒呑童子は《ブラッドギア》、そして《バクロ法師》による猛追を仕掛ける。

 先ずは《ブラッドギア》による1点。そして──互いのシールドが6枚以下になった時。

 逢魔が時、鬼の時間が訪れる。

 

 

 

<オーガ魔刻ッ!! 鬼タイム!!>

 

 

 

「鬼時間発動ッ!! 《バクロ法師》でシールドを三枚破壊するぜええいッ!!」

 

 

 

 躊躇などしない。戸惑いなどしない。

 零龍の卵のシールドは残り1枚となった。

 

「──ターン、エンドだぜ」

「コオオオオオオオオオオオオオン」

 

 外敵の襲来に呼応したのか、卵は──うねりだす。

 中の空亡の意識は、儀式を速やかに達成すべく、動き出す。

 

「──《ブラッディ・クロス》」

「ッ!? 山札から2枚を墓地に置く呪文、だと!?」

「……到来」

 

 卵が呟くと共に──《シニガミ》と《ギャスカ》の身体が暗い雲に包まれて消え失せる。

 そこから現れるのは、史上最悪のオレガ・オーラ。

 墓地から蘇る魔の不死鳥。

 

 

 

「──無間地獄、《卍∞ ジ・エンデザーク ∞卍》──」

 

 

 

 龍へとなり損なったまがい物の成れの果て。

 崩れ落ちた贋作が悍ましい絶叫を上げて現れる。

 依代とされたのは《ソニーソニック》。スピードアタッカーのクリーチャーだ。

 更に《シニガミ》の効果で更に墓地は増え、踏み躙られた二つの命が呼応し、そして生命の復活に卵が呼応する──

 

 

<墓地の儀・達成>

 

<破壊の儀・達成>

 

<復活の儀・達成>

 

 

 

「ッ一気に3つの儀式を……!?」

「コオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!」

 

 

 

 

 卵が産声を上げる。

 それは──全てを無に帰す虚無の龍。

 存在しているはずなのに存在していない事象そのもの。

 それが空洞の如き咆哮を上げ──

 

 

 

 

<零・龍・卍・誕>

 

 

 

 

 ──1000年の時を超え、復活する。

 

 

 

 

「我が名は──《零龍(ゼーロン)》」

 

 

 

 

 虚空に現れたそれは──虚ろなる幾つもの目で酒呑童子を睨んでいた。

 ゆうに1000メートルは超えるであろう超巨体に加え、二つの巨砲を背中に備えた生ける虚無は、挨拶と言わんばかりに酒呑童子のフィールドのクリーチャーを絶滅させる。

 

「ッ……!! おいおい、随分だな空亡さんよォ!!」

「全て、これで消え失せた……ククリ様から頂いたこの力で、私は白銀耀を絶滅させる……」

「ククリ……? ああ、ククリヒメか!! 成程なあ!! 奴ならテメェを庇う理由が分かるぜ!! あいつはクソったれたお人好し、例え怪物だろうが何だろうが、お構いなく庇護しちまう。無論、鬼である俺達でさえも」

「黙れ──私は、復活し、恩義を果たす。果たした上で──」

 

 零龍は、宣告した。

 

 

 

 

「──ククリ様も、この世界も、無に帰す」

「……おん?」

 

 

 

 それが自らの存在意義故、と零龍は付け加えた。

 親殺しか、と酒呑童子は脳裏に過る。

 それとも、自らの本来の力が戻った事で理性さえも飛んだか。

 いずれにせよ、今の零龍は文字通り全てを滅ぼすために存在している虚無そのものだ。

 

「全てのものは、零になることで初めて完成される、存在しないことが美しいのだ」

「……?」

「こと、ククリ様は麗しい……この世に存在さえしていなければ、美しいのに!! 彼女の魂をあの神の肉体から解放し解放解放解放解放」

「ッ……おうおう随分とぶっ飛んだ美学じゃねーの!?」

「そのためにはお前が邪魔だ酒呑童子……先ずは貴様からかき消すッッッ!!」

 

 虚無の主砲が酒呑童子のシールドを全て焼き尽くした。

 無論、S・トリガーなどない。

 そのまま、《ソニーソニック》を取り込んだ《ジ・エンデ・ザーク》が酒呑童子を喰らうべく飛び掛かる──

 

 

 

 

「……だけど、喰らわれるのはテメーの方だッ!!」

 

 

 

 

<逢魔が終わり、鬼エンドッ!!>

 

 

 

 

「終幕の刻──開け、《百鬼の邪王門》ッ!!」

 

 

 

 

 扉が開く。

 そこから現れるのは魑魅魍魎。

 外道の衆。

 酒呑童子の呼びかけに応えるようにして、それは現れた。

 

「盾が無いプレイヤーがいる時、クリーチャーが攻撃する際に俺様はこのカードを使うことが出来るッ!! 墓地から現れろ百鬼夜行ッ!!」

「ッ!?」

「──黄泉帰れ、《「陰陽」の鬼 ヨミノ晴明》ッ!!」

 

 現れたのは呪符を大量に構えた陰陽師の鬼。

 そして、《ジ・エンデ》の崩れ落ちた体を一瞬で消し飛ばす。

 

「──《百鬼の邪王門》は、呼び出した鬼と相手の怪物をぶつける。これでテメェはもう攻撃出来ねえな?」

「ぐっ……おのれ、酒呑童子……ッ!!」

「神類種が目覚めた時、他の神類種もまた目覚める……俺様を呼び出したのは、最も呼びやすいから……ってところだろ?」

 

 鬼の頭領でしかない酒呑童子は、神格自体は他の神に比べれば高くはない。

 しかし。

 彼は──神である以上に、鬼の頂点となる者である。

 零龍には、それが分からなかった。

 鬼というものを侮り過ぎた。

 故に──逆に食われることとなった。

 

「──俺様のターンッ!! その初めに、《ヨミノ晴明》の鬼時間で墓地から《ブラッドギア》を復活させるッ!!」

 

 更に、と彼は付け加えた。

 

「《ブラッドギア》でコストを1軽減──更に、鬼時間発動ッ!!」

 

 鬼の鼓動が高鳴る時。

 酒呑童子の高笑いが響き渡る。

 全てを破滅させる鬼の時間が到来しようとしていた──

 

「天上天下、天下布武、我が鬼の世に欠けしもの無し!!」

 

 耀の時と同じ。

 鬼タイムによるコストの軽減による降臨。

 しかし、酒呑童子とて復活してからずっと力を膨らませ続けていた。

 全盛期に至った彼にジャオウガもまた、応える──

 

 

 

「──これが俺様の鬼札(ワイルドカード)!! 絶対無敵、《鬼ヶ覇王ジャオウガ》様のお通りだァッ!!」

 

 

 

 両足が棍棒と化した骨面の大鬼が、酒呑童子の背後に立ち上がる。

 自らの依代となった大鬼を従え、彼は──叫ぶ。

 

「《ジャオウガ》が降臨した時、効果発動ッ!! 場の怪物を全て吹き飛ばすが、《ヨミノ晴明》は破壊される代わりに山札を犠牲にして生き残るッ!! 先ずはテメェだ!! 《晴明》で楯を破壊ッ!!」

 

 御札が飛び交い、零龍の最後のシールドを爆破する。

 しかし──虚無の龍とて、ただで負けはしない。 

 砕かれたシールドからはオーラのトリガー、《ニャミバウン》が現れて《ジャオウガ》を押し流そうとする──しかし。

 

 

 

 

「──《ジャオウガ》でダイレクトアタック──逢魔次元鏖殺ッ!!」

 

 

 

 

 効いていない。

 鬼の王は、水流など無かったかのように突貫し──零龍の脳天に、その脚を叩きこむ。

 

「コオアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!?」

「《ジャオウガ》は、召喚されたターン、場を離れねえんだよ! 残念だったなァ!」

 

 そのまま──捩じ切るように、ジャオウガは脚を振り切った。

 そこから次元の裂け目が産まれ──零龍の骨の身体をこじ開けていく──その中には、2枚のエリアフォースカード。

 天体のカードである太陽(ザ・サン)(ザ・ムーン)のカードが閉じ込められていた。

 それに向かって、《ジャオウガ》が蹴りを入れると──

 

 

 

 

 

「コッ、オオオオオオオオオオオオオオオオオンッッッ!?」

 

 

 

 

 一際甲高い声が上がり──遂に、零龍は内側から崩落したのだった。

 

 

 

 ※※※

 

 

 

 ──爆音が響き渡る。

 伊勢神宮を飲み込み続けていた泥は遂に止まり──虚無の龍の消失と共に完全に消滅した。

 その時、膨大な魔力を抱え込んだエリアフォースカードを起点とした魔力の奔流は天へ到達し──全ての魔力を放出しきった時、2枚のただのカードとなって、地面に落ちた。

 そして。

 何者かが太陽と月のカードを持ち去っていったことには、誰も気づかなかった──

 

 

 

 ※※※

 

 

 

「あー、クソが」

 

 

 

 吹き飛ばされた酒呑童子は、一言。

 よもや、自分でさえも爆風の巻き添えになるとは思わなかったのである。

 

「──きったねぇ花火じゃねえかよ」

 

 言った彼は、空を仰ぐ。

 ──その時。

 何かがこちら目掛けて落ちてくる。

 鋭利に、こちらの心の臓を狙うようにして。

 

「ッ!?」

 

 真っ直ぐに、地面に突き刺さった。

 巨大な槍だった。

 しかし、禍々しい目玉が槍には幾つも埋め込まれており、こちらを睨みつけている。

 

(神類種の力が籠った槍……あの零龍が飲み込んでやがったのか? 元は伊勢神宮にあったもの──?)

 

 否。そんなことは関係なかった。

 酒呑童子は、遠慮なく槍を手に取る。

 その時──脳に、一抹の存在しないはずの記憶が浮かび上がる。

 

 

 

 

”──これが俺の切札(ワイルドカード)、《勝熱英雄(ジョーネツヒーロー)モモキング》!!”

 

 

 

 

 視える。

 別の場所の、全く違う時間のその先が。

 酒呑童子は確信した。

 この槍が見せているのは、まやかしなどではない。

 

「槍よ、この俺様の未来を見通せ!!」

 

 

 

 

”──くたばれ、白銀耀!! 《ジャオウガ》でトドメだ!!”

 

 

 

”ギャハハハハハハ、俺様の勝ちだ!! 鬼の世が、鬼の世界が遂に出来る!!”

 

 

 

”人類の居なくなった世界──これで、これで、俺は──”

 

 

 

 

「──ッ!!」

 

 

 

 酒呑童子は槍を手放した。

 その先の未来は勝利。

 そして、その先に待ち受けるもの。

 自らが望んでいたもの。

 それがはっきりと映っていた。

 

「ハ、ハハハハハ、良い!! 良いぞ!! これで良い!!」

 

 桃太郎を討てば、自分を邪魔するものはなくなる。

 人類を絶滅させるという自らの目的を達することが出来る。

 酒呑童子は歓喜の笑みを浮かべた。

 視えた未来を達成すべく──本能のままに、桃太郎のところへ向かったのだった。

 

「確か──そうだ、視えた──奴の居場所は──」

 

 桃太郎の場所は、槍が教えてくれる。

 そうして樹海を突き進み──酒呑童子は遂に、見つけた。

 外界からの侵入を阻む大結界を──

 

 

 

 

「──クックックッ、前倒しになったが……テメェが目覚めたなら話は別だ!! 決着をつけてやるぜぇ──桃太郎ォォォーッ!!」

 

 

 

 

 ※※※

 

 

 

「──行くぞ、《モモキング》!!」

 

 

 

 切りかかる《モモキング》。

 その鋭い斬撃が、皇帝の3枚のシールドを全て断ち切る。

 スピードアタッカーのT・ブレイカー……その力は、明らかに以前よりも増している。

 これが、本当のキングマスターの力──

 

「更に、《モモキング》の効果発動!」

 

 俺の呼吸に合わせ、《モモキング》が再び刀を構え直す。

 二の太刀。

 こいつは、攻撃の終わりにアンタップする。

 S・トリガーが何も無ければ、このまま攻撃が通る!

 

「ふざけるな!! それでもまだ、俺の喉に剣は通らん!! S・トリガー……《マンおぶすて~る》!!」

「通らねえよ!!」

「ッ!?」

 

 砕かれたシールドから放たれた呪文を、刀で《モモキング》は打ち返した。

 そんなものは《モモキング》に効きはしない。

 

「こいつは──多色じゃない呪文やクリーチャーの効果で選ばれない! これで、二連撃目が通る!!」

「そうだ──GR召喚されたのが《全能ゼンノー》でなければな!!」

 

 《モモキング》の最後の攻撃を阻むのは、場に出たターンに攻撃できなくさせる《全能ゼンノー》だ。

 確かにこいつがいる限り、スピードアタッカーの《モモキング》は攻撃できない。 

 ……だけど。

 

「──俺がマナを残したのは……それも織り込み済みだからだ!!」

「何!?」

「……力を貸せ、モモダチ!!」

 

 俺は1枚のマナを支払う。

 キリフダッシュはクリーチャーだけじゃない。

 呪文にも存在するし、1枚だけではない。

 

 

 

「キリフダッシュ1──《モモダチパワー》!!」

 

 

 

 飛び出す桃の助太刀・モモダチ達。

 ヌンチャクを振り回すキャンベロ、飛び立つケントナーク、そしてブーメランを構えるモンキッド。

 ついに3匹が《モモキング》の傍に並び立った。

 

「桃太郎様!! 我ら、桃太郎様にお仕えする助太刀ッキー!!」

「この命、桃太郎様と共に!!」

「ぶるぶる……ボクたちが一緒に戦うキャン!!」

 

 《モモキング》は何も言わなかった。

 しかし、一度力強く頷いてみせる。

 そうだ。俺達は一人じゃ戦えない。だけど、皆で力を合わせれば──超えられる壁がある!

 

「行くぞお前ら!!」

「「「応!!」」」

 

 モモダチ達の一斉攻撃が《全能ゼンノー》を打ち砕く。

 これで、全ての邪魔な壁は消え去った!!

 

 

 

「バ、バカな──奴隷如きが!! 皇帝であるこの俺が!!」

「……《勝熱英雄(ジョーネツヒーロー)モモキング》でダイレクトアタック!!」

 

 

 

 二連撃目が──皇帝を切り裂いた。

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