学園デュエル・マスターズ WildCards【完結】 作:タク@DMP
「──ま、負けたのか、俺が……」
倒れ伏せる皇帝の前に、俺は──手を差し伸べる。
「……分かるぜ」
「え?」
「お前が言いたかったこと。全部、俺の思ってたことだからな」
「……」
「お前は俺で、俺はお前だ」
それを受け入れることが、きっと前に進むことになる。
嫌な自分。嫌な過去。
それもまた、俺自身を構成するパーツなのだ。
否定することなんて出来やしない。
「全くお前は……お人好しで、人を疑うことを知らないバカで……」
「損してばっかだよ。だけど──それが、白銀耀だ。俺が……それを望んだんだ」
失った後で分かる。
それが掛け替えのないものであるとしっかり分かったから。
未来の俺はきっと、今の俺に同じ思いをしてほしくないと分かっているから。
だから──俺は、お前の手を取ろう。
俺達は一つなのだから。
「……返すよ。お前に全部──皇帝の二つ名も、財産も、全て」
「……ああ」
頷いた俺に超GRのカードが返っていく。
その中には《ジョギラゴン》のカードも混じっていた。
そして。
その上には──
※※※
「止まっ、た──ッ!?」
紫月は目を見開く。
暴れていたジョギラゴンが、地に落ちていく。
全員は駆け寄った。
巨竜は屍のように横たわり、目の光が消えていた。
「ッ……先輩! 先輩ッ!!」
紫月は呼びかける。
恐らく中にいるであろう耀に向かって。
しかし──
「桃太郎は、何処だアアアアアアアアアアアアアーッッッ!!」
──その場に、邪気に満ちた怒号が響き渡った。
全員の視線は、その方向へと向く。
次の瞬間、空に大穴が開いた。
外からは誰も入って来れないはずの大樹海。
にも関わらず──それは白昼堂々と突き破ってやってくる。
空からそれは棍棒を振り回し、大胆不敵に現れた。
「──ッ!!」
全員は驚愕に包まれる。
現れた鬼の頭領──酒呑童子は、圧倒的な力を誇る鬼の中の鬼。
そして、神の力を振るう神類種の一角。
それが単身乗り込んできたのだ。
「ッ……そ、そんな、此処に入って来られるわけがないデス……!」
「コイツの力だぜ」
言った酒呑童子は不気味な槍を掲げる。
「──この槍を持つとよォ、未来がまるで手に取るように分かるって寸法よ!! 無論、違う場所の違う未来でさえも!! 俺自身の未来でさえも!!」
「シャークウガ。あの槍について何か分かりますか?」
「ッ……少なくともこの星由来の力じゃねえ……ただのクリーチャーには辿りつけねえ、神の領域に……至ってやがるッ!?」
「そういうことだ。例えば──」
槍を一振り。
その途端──力の座の建物が、真っ二つに切り裂かれ、あっと言う間に崩れ落ちていく──
その様を、彼らは黙ってみていることしか出来なかった。
「──時間さえも超える斬撃。鬼の力は遂に次元を超越したッ!!」
「っ……火廣金先輩ッ!! 建物の方の救助をッ!!」
手遅れだ、と感じつつも──バイク仮面に向かって紫月は叫んだ。
「あ、ああッ!!」
「させっかよ」
再び槍が振るわれる。
それと共に、先んじてブランドの身体が両断され、カードの姿へと戻ってしまう。
速い。速過ぎる。
否──時間さえも超越している。
「俺が斬ろうと思ったら、斬れる。突こうと思ったら突ける。これは、そういう槍だ」
「ッ……滅茶苦茶です」
酒呑童子は笑みを浮かべ、槍を構える。
全員が硬直していた。
太刀打ちが出来ない。
神類種は、今までのクリーチャーとは格が違う。
時間さえも超える相手には、何をしても先を越されてしまう。
「さぁてと、男は殺す。女は犯した後で殺す。好きな順で並べ──」
恐ろしい力だ。
それ以上に、この鬼の一存で──多くの命が失われてしまった。
そのことに紫月の顔が蒼褪めていく。
これが、鬼。
人智を超える強大な人類の敵。
放っておけば、人間は駆逐されてしまうだろう──しかし。
「──やれやれ、オチオチ昼寝も出来んわい」
お返し、と言わんばかりに酒呑童子に何かが勢いよく降りかかった。
鬼の王の身体が勢いよく吹き飛んだ。
「ッ……な、なんだァ!? 何が、起きたァ!?」
「……ふぅ、ようやったわい《ゲンムエンペラー》」
「──ッテメェは」
酒呑童子は起き上がりざまに目を見開く。
現れたのは巌流齋。そして、その背後に浮かぶ巨大な龍のクリーチャーの周囲には、恐らく救助されたであろう人達が掴まっている。
「──巌流齋ッ!?」
「久しいのう──酒呑童子」
「まだ、生きてやがったのか!? テメェは……ッ!!」
「もう死んでおるよ。ワシの身体はな。だが……この龍がワシを現世から離してくれんのじゃよ」
霊となった大剣豪はニヒルに笑みを浮かべてみせる。
その手には長物の刀がにぎられていた。
「それに貴様。この力をまだ使いこなせておらんのじゃろ?」
「抜かせよ巌流齋ッ!! 俺は未来が視えている!! 桃太郎を斃し、そして人類を皆殺しにする未来がッ!! 先ずはテメェらから皆殺しにしてくれるッ!!」
「……そうはならんよ」
その時だった。
何かが紫電一閃の勢いで酒呑童子に突貫した。
「ッ……!?」
弾かれるようにして、鬼の頭領は槍を振るう。
その視線の先には──
「──よう、俺は此処に居るぞ……酒呑童子ッ!!」
鬼を倒す桃太郎が刀を握って競り合っていた。
紫月は思わず振り返る。
先程まで倒れていたジョギラゴンの姿が消えている。
そして、全員は確信した。
白銀耀の──帰還を。
「先輩ッ……!」
「アカル……!」
「……部長……!」
「耀……!」
──皇帝は今、帰って来た。
「ホッホッホ、遅かったのう、ツンツン頭の小僧よ……!」
※※※
──危なかった。
帰ってくるのは大分遅れたが──何とかなったようだ。
だけど、気付かない間に俺の手には刀、鎧を見に纏い、そして頭にはハチマキが身に纏われている。
「先輩、その姿──」
「あ? ああ……なんか知らん間にこうなってた」
「知らん間に!? 何処から生えたデース!?」
「……ホッホッホ、あやつが真の意味で桃太郎に認められたということじゃよ」
誇らしそうに巌流齋は言った。
「桃太郎とは、モモキングと一心同体となり鬼を倒す英雄のことなのだから!」
「……つまり、今の部長は……
どうやら──モモキングの依代になっているんだとか何とか。
……キングマスターのクリーチャーと文字通り、一心同体となる。これが、神力の極致。
全ての煩悩を揃えた俺は──モモキングに完全に認められた!
「ッ……テメェ、桃太郎の力を──ッ!!」
俺はエリアフォースカードを手に取る。
……チョートッQは居ない。
だけど。確かにあいつは俺の傍に居てくれる。
俺の──ハートを支えてくれる。
そして、後ろには仲間が居てくれる。
何て簡単な話だったんだ。
例え離れていても、道を違えても──この絆は絶対に途切れない!
「──勝負だ酒呑童子!!」
「絶滅させてやるよ、人間ッッッ!!」
<Wild……DrawⅣ──EMPEROR!!>
※※※
──この世の命運を決める大合戦。
俺と酒呑童子のデュエルが始まった。
GRは取り戻したものの、チョートッQが不在のため、引き続き超GR無しで戦うことになる俺だが──チーム切札の力がデッキには宿っている。
(酒呑童子の場には《ブラッドギア》が1体……! 軽減してデカい奴を出したいんだな……! だけどあいつは自分のシールドを減らす。だから、その隙を突いてガン攻めする!)
「《タイク・タイソンズ》で攻撃──する時、Jチェンジッ!! 《モモダチ モンキッド》だ!!」
「ウッキーッ!! 出番だッキーッ!!」
効果でマナを一気に2枚増やす。これで5枚──
そして、そのままシールドへ先制点を加える。
これでキリフダッシュの準備は整った。
俺はマナをタップしようとするが──
「──反撃だぜェ!! 《「輪廻」の鬼 シャカ車輪》で《モンキッド》とバトルして破壊!!」
「ギャーッ、出オチかよーっ!?」
「ッ……すまねえモンキッド! だけど、キリフダッシュには繋ぐ!」
カードに戻ったモンキッドがしたり顔を浮かべてみせる。
「そうだぜ人間!! 俺の繋いだ軌跡、無駄にするんじゃねえッキーッ!!」
「おうよ任せろモンキッド! キリフダッシュ4発動! 来い、《ベアシガラ》!」
4枚のマナをタップし、俺は《ベアシガラ》を呼び出した。
その効果によってマナに更なる差をつけていく。
場にはパワー8000のW・ブレイカーが居る。
更にマナの枚数は、こっちが6枚と上回っているのだ。
そして、《ベアシガラ》の効果で手札に回収するのは勿論大型のジョーカーズだ。次のターンにしっかり繋がる。
だけど──この気味の悪さは何なんだ?
「──まあそう焦るなよ」
厭らしい笑みを浮かべた酒呑童子は2枚のマナをタップした。
来る。大きな鬼が──
「──《「大蛇」の鬼 ジャドク丸》召喚!」
甲高い声を上げ、巨大な大蛇が現れる。
僅か3マナでありながら、その存在感は確かなものだ。
そして、その毒牙が鋭く狡猾に《ベアシガラ》へと迫る──
「俺様の楯をくれてやる《ジャドク丸》──《ベアシガラ》を殺せ!!」
「なッ……!?」
牙が深々と《ベアシガラ》に突き刺さり──そのまま爆散した。
3マナで、アンタップしているクリーチャーを破壊出来るのか。呪文ではなくクリーチャーだというのに。
シールドを消費する代わりに、鬼札王国のカードは強力な効果を持つものばかりだ。
「おいおい、こんなもんじゃねえだろ!? 掛かって来いよ!! 俺様の手番はこれで終わりだぜ?」
「ッ……」
何を考えてんだ……!?
このまま攻撃してくる気配が無い。
つまり、ワンショットキルで俺を仕留める算段が付いているってことか。
あの妙な槍を手にしている以上、あの時よりも強くなっている可能性は高い。
桃太郎が目覚めたにも関わらず、俺の前に自信満々で現れた理由は──間違いなくそこにあるはずだ。
「──俺様には視えているんだ、白銀耀。視えているんだよッ!! テメェが負ける未来がなあ!!」
「ッ……未来が視えている!?」
「んなもんインチキだッキー!! お前絶対騙されやすいだろッキー!!」
「ハッ、じゃあ攻撃して来いよ。テメェの
くいくい、と挑発してみせる酒呑童子。
何か──構えているのか?
……でも、行くしかない!
「俺のターン! 5マナで《飛べ!イカロソ君》を召喚!! こいつが攻撃するとき、マナのカードを5枚までアンタップする!」
これで、キリフダッシュの準備は整った。
叩きつける!!
「シールドを、ブレイクッ!!」
「トリガーはねえよ。遠慮なく殴ってきな」
「……!?」
「分かってんだよ。この後どうなるのか……俺様がどう勝つのかも。未来が全て、視えているッ!!」
「……キリフダッシュ5! 《バックトゥー・ゴ・クーチャー》を召喚!!」
現れたのは如意棒を振り回すジョーカーズ。
コイツの効果は、《バルガライザー》よろしく山札の上からジョーカーズを呼び出すというもの。
そして、当然こいつもスピードアタッカーだ。
酒呑童子のシールドは残り3枚。だけど、此処から捲れれば──
「──捲れるのは《
「ッな!?」
先に言ったのは酒呑童子だった。
俺は、恐る恐る山札の上を捲る。
確かにデッキトップは──《モモキング》だった!
「バ、バカな! 奴は本当に未来が視えているのかケーン!?」
「そんなの有り得ないよう!」
キャンベロとケントナークが慌てふためくのが聞こえてくる。
俺だって信じられない。
だけど、当たりは当たりだ。
《モモキング》を出せば、このまま勝てる。
「──来い、俺の
「来やがったな、桃太郎ッ!!」
ついに、満を持して《モモキング》が戦場へ立った。
残る相手のシールドは1枚。
このまま決着をつける──いや、つくのか?
俺は背中に冷や汗が伝うのを感じていた。
あの底知れなさは、一体何なんだ……!?
「──《モモキング》でシールドをブレイク!!」
「……何もねぇよ」
「……そして、ダイレクトアタックだ!!」
返す二太刀目が酒呑童子に突き刺さろうとした──
「──革命ゼロトリガー、発動」
──はずだった。
俺の目の前に立ち塞がったのは──《ボルシャック・ドギラゴン》。
シールドが無い時に相手が攻撃してきたら、山札の上から進化元を呼んでそのまま進化する反撃札だ。
しかも、出た時に相手のクリーチャーとバトルする効果すら持つ。
一瞬、懸念が本当になった、と俺は戸惑ったが──同時に《モモキング》の効果を思い出す。
「──《モモキング》は多色以外のクリーチャー、呪文では選ばれない! 《ボルシャック・ドギラゴン》は効かない!」
「……みてえだな。それも未来で視た」
「はぁ!?」
「……俺のデッキの一番上が《鬼ヶ覇王ジャオウガ》でなければ、だけどな」
「な、なんだそのカード……!?」
「言ったろ。俺はもう視えてんだ。このゲームの結末がッ!!」
酒呑童子が山札の一番上を捲る。
現れたのは──彼の云った《鬼ヶ覇王ジャオウガ》だった。
「《ジャオウガ》の効果発動!! 場に出た時、全てのクリーチャーを破壊する──覇王次元鏖殺ッ!!」
《ボルシャック・ドギラゴン》が鬼の炎に焼かれていく。
「しまっ──」
消えていく。
俺のクリーチャーが。
そして、切札である《モモキング》が。
更に、あいつの場にいた鬼達も皆──怨みの爆炎によって消し飛ばされていく。
「絶滅だ──絶滅だッ!! 憎たらしい人間共を根絶するには、良い前夜祭だぜェ!! ギャーッハハハハ!!」
シールドが、そして場が更地になって尚。
酒呑童子は高らかに笑っていた。
「……さあ、行くぞッ!! 2マナで《鬼寄せの術》を発動ッ!! 効果で次に召喚するクリーチャーのコストを4少なくするッ!!」
「4……!?」
「鬼タイムにより、6軽減。更に4軽減。合計10軽減ッ!!」
酒呑童子は2枚のマナをタップした。
「天地鳴動、我は此処に在れりッ!! 逢魔が時、鬼の世が来たるッ!!」
大地が揺れ、戦場は炎に包まれる。
「──到来、俺様の