学園デュエル・マスターズ WildCards【完結】   作:タク@DMP

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GR100話:鬼と桃太郎

「──ま、負けたのか、俺が……」

 

 

 

 倒れ伏せる皇帝の前に、俺は──手を差し伸べる。

 

「……分かるぜ」

「え?」

「お前が言いたかったこと。全部、俺の思ってたことだからな」

「……」

「お前は俺で、俺はお前だ」

 

 それを受け入れることが、きっと前に進むことになる。

 嫌な自分。嫌な過去。

 それもまた、俺自身を構成するパーツなのだ。

 否定することなんて出来やしない。

 

「全くお前は……お人好しで、人を疑うことを知らないバカで……」

「損してばっかだよ。だけど──それが、白銀耀だ。俺が……それを望んだんだ」

 

 失った後で分かる。

 それが掛け替えのないものであるとしっかり分かったから。

 

 未来の俺はきっと、今の俺に同じ思いをしてほしくないと分かっているから。

 だから──俺は、お前の手を取ろう。

 俺達は一つなのだから。

 

「……返すよ。お前に全部──皇帝の二つ名も、財産も、全て」

「……ああ」

 

 頷いた俺に超GRのカードが返っていく。

 その中には《ジョギラゴン》のカードも混じっていた。

 そして。

 その上には──皇帝(エンペラー)のエリアフォースカードが光り、輝いていた──

 

 

 

 ※※※

 

 

 

「止まっ、た──ッ!?」

 

 

 

 紫月は目を見開く。

 暴れていたジョギラゴンが、地に落ちていく。

 全員は駆け寄った。

 巨竜は屍のように横たわり、目の光が消えていた。

 

「ッ……先輩! 先輩ッ!!」

 

 紫月は呼びかける。

 恐らく中にいるであろう耀に向かって。

 しかし──

 

 

 

 

「桃太郎は、何処だアアアアアアアアアアアアアーッッッ!!」

 

 

 

 

 ──その場に、邪気に満ちた怒号が響き渡った。

 全員の視線は、その方向へと向く。

 次の瞬間、空に大穴が開いた。

 外からは誰も入って来れないはずの大樹海。

 にも関わらず──それは白昼堂々と突き破ってやってくる。

 空からそれは棍棒を振り回し、大胆不敵に現れた。

 

「──ッ!!」

 

 全員は驚愕に包まれる。

 現れた鬼の頭領──酒呑童子は、圧倒的な力を誇る鬼の中の鬼。

 そして、神の力を振るう神類種の一角。

 それが単身乗り込んできたのだ。

 

「ッ……そ、そんな、此処に入って来られるわけがないデス……!」

「コイツの力だぜ」

 

 言った酒呑童子は不気味な槍を掲げる。

 

「──この槍を持つとよォ、未来がまるで手に取るように分かるって寸法よ!! 無論、違う場所の違う未来でさえも!! 俺自身の未来でさえも!!」

「シャークウガ。あの槍について何か分かりますか?」

「ッ……少なくともこの星由来の力じゃねえ……ただのクリーチャーには辿りつけねえ、神の領域に……至ってやがるッ!?」

「そういうことだ。例えば──」

 

 槍を一振り。

 その途端──力の座の建物が、真っ二つに切り裂かれ、あっと言う間に崩れ落ちていく──

 その様を、彼らは黙ってみていることしか出来なかった。

 

「──時間さえも超える斬撃。鬼の力は遂に次元を超越したッ!!」

「っ……火廣金先輩ッ!! 建物の方の救助をッ!!」

 

 手遅れだ、と感じつつも──バイク仮面に向かって紫月は叫んだ。

 

「あ、ああッ!!」

「させっかよ」

 

 再び槍が振るわれる。

 それと共に、先んじてブランドの身体が両断され、カードの姿へと戻ってしまう。

 速い。速過ぎる。

 否──時間さえも超越している。

 

「俺が斬ろうと思ったら、斬れる。突こうと思ったら突ける。これは、そういう槍だ」

「ッ……滅茶苦茶です」

 

 酒呑童子は笑みを浮かべ、槍を構える。

 全員が硬直していた。

 太刀打ちが出来ない。

 神類種は、今までのクリーチャーとは格が違う。

 時間さえも超える相手には、何をしても先を越されてしまう。

 

「さぁてと、男は殺す。女は犯した後で殺す。好きな順で並べ──」

 

 恐ろしい力だ。

 それ以上に、この鬼の一存で──多くの命が失われてしまった。

 そのことに紫月の顔が蒼褪めていく。

 これが、鬼。

 人智を超える強大な人類の敵。

 放っておけば、人間は駆逐されてしまうだろう──しかし。

 

 

 

 

「──やれやれ、オチオチ昼寝も出来んわい」

 

 

 

 

 お返し、と言わんばかりに酒呑童子に何かが勢いよく降りかかった。

 鬼の王の身体が勢いよく吹き飛んだ。

 

「ッ……な、なんだァ!? 何が、起きたァ!?」

「……ふぅ、ようやったわい《ゲンムエンペラー》」

「──ッテメェは」

 

 酒呑童子は起き上がりざまに目を見開く。

 現れたのは巌流齋。そして、その背後に浮かぶ巨大な龍のクリーチャーの周囲には、恐らく救助されたであろう人達が掴まっている。

 

「──巌流齋ッ!?」

「久しいのう──酒呑童子」

「まだ、生きてやがったのか!? テメェは……ッ!!」

「もう死んでおるよ。ワシの身体はな。だが……この龍がワシを現世から離してくれんのじゃよ」

 

 霊となった大剣豪はニヒルに笑みを浮かべてみせる。

 その手には長物の刀がにぎられていた。

 

「それに貴様。この力をまだ使いこなせておらんのじゃろ?」

「抜かせよ巌流齋ッ!! 俺は未来が視えている!! 桃太郎を斃し、そして人類を皆殺しにする未来がッ!! 先ずはテメェらから皆殺しにしてくれるッ!!」

「……そうはならんよ」

 

 その時だった。

 何かが紫電一閃の勢いで酒呑童子に突貫した。

 

「ッ……!?」

 

 弾かれるようにして、鬼の頭領は槍を振るう。

 その視線の先には──

 

 

 

 

「──よう、俺は此処に居るぞ……酒呑童子ッ!!」

 

 

 

 

 鬼を倒す桃太郎が刀を握って競り合っていた。

 紫月は思わず振り返る。

 先程まで倒れていたジョギラゴンの姿が消えている。

 そして、全員は確信した。

 白銀耀の──帰還を。

 

「先輩ッ……!」

「アカル……!」

「……部長……!」

「耀……!」

 

 

 

 ──皇帝は今、帰って来た。

 

 

 

「ホッホッホ、遅かったのう、ツンツン頭の小僧よ……!」

 

 

 

 ※※※

 

 

 

 ──危なかった。

 帰ってくるのは大分遅れたが──何とかなったようだ。

 だけど、気付かない間に俺の手には刀、鎧を見に纏い、そして頭にはハチマキが身に纏われている。

 

「先輩、その姿──」

「あ? ああ……なんか知らん間にこうなってた」

「知らん間に!? 何処から生えたデース!?」

「……ホッホッホ、あやつが真の意味で桃太郎に認められたということじゃよ」

 

 誇らしそうに巌流齋は言った。

 

「桃太郎とは、モモキングと一心同体となり鬼を倒す英雄のことなのだから!」

「……つまり、今の部長は……

 

 どうやら──モモキングの依代になっているんだとか何とか。

 ……キングマスターのクリーチャーと文字通り、一心同体となる。これが、神力の極致。

 全ての煩悩を揃えた俺は──モモキングに完全に認められた!

 

「ッ……テメェ、桃太郎の力を──ッ!!」

 

 俺はエリアフォースカードを手に取る。

 ……チョートッQは居ない。

 だけど。確かにあいつは俺の傍に居てくれる。

 俺の──ハートを支えてくれる。

 そして、後ろには仲間が居てくれる。

 何て簡単な話だったんだ。

 例え離れていても、道を違えても──この絆は絶対に途切れない!

 

「──勝負だ酒呑童子!!」

「絶滅させてやるよ、人間ッッッ!!」

 

 

 

<Wild……DrawⅣ──EMPEROR!!>

 

 

 

 

 ※※※

 

 

 

 

 ──この世の命運を決める大合戦。

 俺と酒呑童子のデュエルが始まった。 

 GRは取り戻したものの、チョートッQが不在のため、引き続き超GR無しで戦うことになる俺だが──チーム切札の力がデッキには宿っている。

 

(酒呑童子の場には《ブラッドギア》が1体……! 軽減してデカい奴を出したいんだな……! だけどあいつは自分のシールドを減らす。だから、その隙を突いてガン攻めする!)

 

「《タイク・タイソンズ》で攻撃──する時、Jチェンジッ!! 《モモダチ モンキッド》だ!!」

「ウッキーッ!! 出番だッキーッ!!」

 

 効果でマナを一気に2枚増やす。これで5枚──

 そして、そのままシールドへ先制点を加える。

 これでキリフダッシュの準備は整った。

 俺はマナをタップしようとするが──

 

「──反撃だぜェ!! 《「輪廻」の鬼 シャカ車輪》で《モンキッド》とバトルして破壊!!」

「ギャーッ、出オチかよーっ!?」

「ッ……すまねえモンキッド! だけど、キリフダッシュには繋ぐ!」

 

 カードに戻ったモンキッドがしたり顔を浮かべてみせる。

 

「そうだぜ人間!! 俺の繋いだ軌跡、無駄にするんじゃねえッキーッ!!」

「おうよ任せろモンキッド! キリフダッシュ4発動! 来い、《ベアシガラ》!」

 

 4枚のマナをタップし、俺は《ベアシガラ》を呼び出した。

 その効果によってマナに更なる差をつけていく。

 場にはパワー8000のW・ブレイカーが居る。

 更にマナの枚数は、こっちが6枚と上回っているのだ。

 そして、《ベアシガラ》の効果で手札に回収するのは勿論大型のジョーカーズだ。次のターンにしっかり繋がる。

 だけど──この気味の悪さは何なんだ?

 

「──まあそう焦るなよ」

 

 厭らしい笑みを浮かべた酒呑童子は2枚のマナをタップした。

 来る。大きな鬼が──

 

 

 

「──《「大蛇」の鬼 ジャドク丸》召喚!」

 

 

 

 甲高い声を上げ、巨大な大蛇が現れる。

 僅か3マナでありながら、その存在感は確かなものだ。

 そして、その毒牙が鋭く狡猾に《ベアシガラ》へと迫る──

 

「俺様の楯をくれてやる《ジャドク丸》──《ベアシガラ》を殺せ!!」

「なッ……!?」

 

 牙が深々と《ベアシガラ》に突き刺さり──そのまま爆散した。

 3マナで、アンタップしているクリーチャーを破壊出来るのか。呪文ではなくクリーチャーだというのに。

 シールドを消費する代わりに、鬼札王国のカードは強力な効果を持つものばかりだ。

 

「おいおい、こんなもんじゃねえだろ!? 掛かって来いよ!! 俺様の手番はこれで終わりだぜ?」

「ッ……」

 

 何を考えてんだ……!?

 このまま攻撃してくる気配が無い。

 つまり、ワンショットキルで俺を仕留める算段が付いているってことか。

 あの妙な槍を手にしている以上、あの時よりも強くなっている可能性は高い。

 桃太郎が目覚めたにも関わらず、俺の前に自信満々で現れた理由は──間違いなくそこにあるはずだ。

 

「──俺様には視えているんだ、白銀耀。視えているんだよッ!! テメェが負ける未来がなあ!!」

「ッ……未来が視えている!?」

「んなもんインチキだッキー!! お前絶対騙されやすいだろッキー!!」

「ハッ、じゃあ攻撃して来いよ。テメェの切札(ワイルドカード)とやらでなあ!!」

 

 くいくい、と挑発してみせる酒呑童子。

 何か──構えているのか?

 ……でも、行くしかない!

 

「俺のターン! 5マナで《飛べ!イカロソ君》を召喚!! こいつが攻撃するとき、マナのカードを5枚までアンタップする!」

 

 これで、キリフダッシュの準備は整った。

 叩きつける!!

 

「シールドを、ブレイクッ!!」

「トリガーはねえよ。遠慮なく殴ってきな」

「……!?」

「分かってんだよ。この後どうなるのか……俺様がどう勝つのかも。未来が全て、視えているッ!!」

「……キリフダッシュ5! 《バックトゥー・ゴ・クーチャー》を召喚!!」

 

 現れたのは如意棒を振り回すジョーカーズ。

 コイツの効果は、《バルガライザー》よろしく山札の上からジョーカーズを呼び出すというもの。

 そして、当然こいつもスピードアタッカーだ。

 酒呑童子のシールドは残り3枚。だけど、此処から捲れれば──

 

「──捲れるのは《勝熱英雄(ジョーネツヒーロー)モモキング》──桃太郎だ」

「ッな!?」

 

 先に言ったのは酒呑童子だった。

 俺は、恐る恐る山札の上を捲る。

 確かにデッキトップは──《モモキング》だった!

 

「バ、バカな! 奴は本当に未来が視えているのかケーン!?」

「そんなの有り得ないよう!」

 

 キャンベロとケントナークが慌てふためくのが聞こえてくる。

 俺だって信じられない。

 だけど、当たりは当たりだ。

 《モモキング》を出せば、このまま勝てる。

 

「──来い、俺の切札(ワイルドカード)──《勝熱英雄(ジョーネツヒーロー)モモキング》ッ!」

「来やがったな、桃太郎ッ!!」

 

 ついに、満を持して《モモキング》が戦場へ立った。

 残る相手のシールドは1枚。

 このまま決着をつける──いや、つくのか?

 俺は背中に冷や汗が伝うのを感じていた。

 あの底知れなさは、一体何なんだ……!?

 

「──《モモキング》でシールドをブレイク!!」

「……何もねぇよ」

「……そして、ダイレクトアタックだ!!」

 

 返す二太刀目が酒呑童子に突き刺さろうとした──

 

 

 

 

 

 

「──革命ゼロトリガー、発動」

 

 

 

 

 ──はずだった。

 俺の目の前に立ち塞がったのは──《ボルシャック・ドギラゴン》。

 シールドが無い時に相手が攻撃してきたら、山札の上から進化元を呼んでそのまま進化する反撃札だ。

 しかも、出た時に相手のクリーチャーとバトルする効果すら持つ。

 一瞬、懸念が本当になった、と俺は戸惑ったが──同時に《モモキング》の効果を思い出す。

 

「──《モモキング》は多色以外のクリーチャー、呪文では選ばれない! 《ボルシャック・ドギラゴン》は効かない!」

「……みてえだな。それも未来で視た」

「はぁ!?」

「……俺のデッキの一番上が《鬼ヶ覇王ジャオウガ》でなければ、だけどな」

「な、なんだそのカード……!?」

「言ったろ。俺はもう視えてんだ。このゲームの結末がッ!!」

 

 酒呑童子が山札の一番上を捲る。

 現れたのは──彼の云った《鬼ヶ覇王ジャオウガ》だった。

 

「《ジャオウガ》の効果発動!! 場に出た時、全てのクリーチャーを破壊する──覇王次元鏖殺ッ!!」

 

 《ボルシャック・ドギラゴン》が鬼の炎に焼かれていく。

 

「しまっ──」

 

 消えていく。

 俺のクリーチャーが。

 そして、切札である《モモキング》が。

 更に、あいつの場にいた鬼達も皆──怨みの爆炎によって消し飛ばされていく。

 

 

 

 

「絶滅だ──絶滅だッ!! 憎たらしい人間共を根絶するには、良い前夜祭だぜェ!! ギャーッハハハハ!!」

 

 

 

 

 シールドが、そして場が更地になって尚。

 酒呑童子は高らかに笑っていた。

 

「……さあ、行くぞッ!! 2マナで《鬼寄せの術》を発動ッ!! 効果で次に召喚するクリーチャーのコストを4少なくするッ!!」

「4……!?」

「鬼タイムにより、6軽減。更に4軽減。合計10軽減ッ!!」

 

 酒呑童子は2枚のマナをタップした。

 

「天地鳴動、我は此処に在れりッ!! 逢魔が時、鬼の世が来たるッ!!」

 

 大地が揺れ、戦場は炎に包まれる。

 

 

 

 

「──到来、俺様の鬼札(ワイルドカード)──《鬼ヶ逢魔 エンド・ジャオウガ》ッ!!」

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